緊急!!今枝弁護士より求釈明書を受領した方へ(2)
その(1)を書いたのでその(2)を書かないと落ち着かないなと思っていたのですが、長ったらしくてどうにも論理的でないので面倒くさい思いが先にたってなかなか手がつきませんでした。
論理的でないというのは、橋下ブログのこのエントリ(以下、「橋下エントリ」といいます)は懲戒手続と懲戒請求者の民事損害賠償責任の話をごっちゃにしているからです。
橋下エントリが引用している平成19年4月24日の最高裁判例(こちらに引用)は民事損害賠償責任の判例であって、懲戒手続の中身とは関係ありません。
懲戒請求者の最大の関心事も今枝弁護士らから民事訴訟を起こされないか、起こされたら負けて損害賠償をしなければならないのではないかということだと思います。
私もその観点でこのエントリを書いています。
皆さんの懲戒請求が違法にならないことは,僕が訴えられた裁判での答弁書に詳しく記載しました。
今枝弁護士が引用する平成19年4月24日の最高裁の判例は,皆さんには妥当しませんし,そもそも判例を間違って解釈しています。
これは橋下弁護士の見解ですが、私の見解は違います。
今回の懲戒請求者に対しても、判例の考え方は妥当すると思います。
ただし、判例の考え方が妥当するということは、直ちに懲戒請求者が民事訴訟で敗訴することを意味しません。
懲戒請求者の懲戒請求が判例が要求する基準を満たしていれば、敗訴しません。
問題は満たしているかどうかです。
簡単に言えば,皆さんの懲戒請求書に記載されている弁護士の行為が,報道等で明らかになっている範囲であれば,虚偽でも何でもありません。
橋下弁護士は、懲戒請求者に記載された事実(ここでは弁護士の行為)が真実であれば、懲戒請求は違法にならない(つまし損害賠償責任を負わない)と言いたそうですが、そうではありません。
判例の事案においても懲戒請求書に記載された弁護士の行為は虚偽ではありませんでした。
対象弁護士の行った訴訟活動が正しく記載されていたのです。
しかし、懲戒請求者に損害賠償責任が認められました。
問題は、懲戒請求書に記載された弁護士の行為が虚偽かどうかではなくて、懲戒理由にあたる行為なのかどうかです。
真実を書いたとしても、それが懲戒理由に当たらない行為であったとすれば問題になるのです。
あとは,それが弁護士会の信用を害するものか,弁護士の品位を失うべき行為なのかを弁護士会が評価するだけの問題ですから,皆さんの手から離れる問題です。
平成19年4月24日の最高裁の判例は,請求に法律上及び事実上の根拠がない場合に,請求者がそのことを知りながら,または普通に注意を払えば知り得たのにあえて請求をした場合に請求を違法としただけです。
この部分は、懲戒手続と民事訴訟をごっちゃにしている典型的な部分です。
たしかに懲戒手続の観点では、弁護士会が懲戒理由にあたるかどうかを判断すれば足ります。
あれば弁護士会は懲戒処分をするでしょうし、なければしません。
懲戒請求の対象になった弁護士としては、懲戒理由なしと判断されれば懲戒手続としてはそれで終わりです(異議申立はできますが)。
しかし、懲戒理由がない場合においては、懲戒請求者の民事責任の話は終わりません。
そこから始まると言えます。
そして、懲戒請求者の民事責任があるかどうかは、弁護士会が判断するのではなくて、(提訴を前提として)裁判所が判断することです。
橋下弁護士の書き方は、意図的にそこから目を逸らさそうとしているように読めます。
請求するのに,詳しく詳しく調査・検討しろとは全く言っていません。
この部分もごまかしです。
たしかに判例は「詳しく詳しく調査・検討しろ」とは言っていません。
しかし、「何も調査しなくていい」とも言っていないのです。
橋下弁護士自身が「普通に注意を払えば知り得たのにあえて請求をした場合に請求を違法としただけです。」と言っているように、判例は「通常人としての普通の注意」を払うことを要求しています。
問題は、何について「通常人としての普通の注意」を払って調査すべきかということです。
ここで橋下弁護士は、
だいたい調査・検討しろと言っても,弁護士の活動について一般市民は調査権を与えられていません。
一般市民が弁護士の活動をチェックしようとしても,その手立てが全くないのです。
と言っており、その後の記載からも、対象弁護士の行動についての調査の要否を問題にしているようです。
しかし、私の判例の理解によれば、これは半分だけ正しいに過ぎません。
結論的には明らかに懲戒請求者の皆さんをミスリードしています。
たしかに、懲戒請求の対象となる対象弁護士の行為が実際に存在していなければ懲戒請求は認められません。
しかし、懲戒請求が認められない場合としては、懲戒請求の対象となる行為が認められない場合だけでなく、対象とした行為が存在するとしても、それが懲戒の理由にならなない場合も懲戒請求は認められません。
最高裁判例が懲戒請求者の責任を認めたのは、まさしく後者の場合なのです。
今回の場合に即して言えば、光市弁護団が荒唐無稽(と評価される)主張をしたという事実の存在を前提にして、
1 それが懲戒理由にあたるのか。
2 懲戒理由にあたらないことが明らかな場合に、懲戒請求者は懲戒理由の有無について通常人としての普通の注意のレベルの確認を行ったのか
ということが問題になります。
橋下弁護士は1について確信をもってあたると言っていますが、私はその主張が被告人の供述に基づく限り、明確にあたらないと確信をもって言っています。
あとは弁護士会がどう評価するか,弁護士会の信用を害する行為,弁護士の品位を失うべき非行にあたると判断するかどうかだけの問題です。
懲戒手続に関する限り、そのとおりでしょう。
近い将来に結論が出ると思います。
ただし、懲戒理由にあたらないという結論が出た場合
皆さんの請求自体が違法になるわけがありません。
とは断言できません。
その後に民事訴訟が提起された場合において、懲戒請求者の皆さんが、懲戒理由がないのにあると思ったことについて、「通常人としての普通の注意」を払ったかどうかが問われるのです。
「通常人としての普通の注意」を払っていたとしたら懲戒理由にあたらないことがわかったははずだ、と裁判所(弁護士会ではなく)が認定した場合は、負けますよ。
事実の存否ではありませんよ。
懲戒請求者の皆さんの判断の根拠が問われるのです。
追記
上記最高裁判例の全文(pdf)