エントリ

 9月27日の朝日新聞に特集記事が掲載されていましたが、手元に朝日新聞がなかったので今日になってようやく読めました。

 私がほぼ毎日目を通すブログに弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」があります。
 落合弁護士は私と似たような経歴の持ち主のようで、アクティブに投稿されていている内容には興味深いものがたくさんあります。
 その落合弁護士が最近書かれた記事が、取調べの可視化についてです。

 取調べの可視化というのは、密室での取調べの状況を事後的にきちんと検証できるようにしようということで、具体的には取調べ状況の録音や録画ということになります。
 弁護士会では以前から取調べの可視化を強く要求しており、警察や検察庁はそれに強く反対しているという構図があります。
 これまで数多の否認事件、再審事件で自白調書の任意性(無理矢理虚偽の自白させられたのではないかという問題)が激しく争われてきたのですが、取調べというのは警察(または検察庁)の取調室といういわば密室の中で行われるものですから、取調べの状況を裁判で明らかにする証拠というのは、被告人の供述と取調官の証言という供述証拠(つまり嘘が介在しうる証拠)しかなく、水掛け論になる場合が多いのです。
 必ずしも決め手に乏しいこの水掛け論に対する判断を求められる結果、裁判は長期化し、結論が変転し、冤罪が生じることにもなります。
 そこで、取調べ状況を客観的に立証できるようにしようというのが取調べの可視化であるわけです。

 この問題に考えるには、まず取調べ実態または実情というものを知らなければいけないと思われるわけですが、実は私自身、他の検事がどのような取調べをしているのか全くといっていいほど知りません。
 新任検事当時に、数ヶ月ほど先輩検事と同じ部屋にいてその先輩の取調べを横で見ていたくらいで、その後は全然見ていませんし、他の検事に私の取調べを見せたこともありません(何人かの司法修習生に同席させたことがあるくらいです。)。
 警察官の取調べももちろん直接見たことはありません。調書を読んだり被疑者から聞いたりして推測することができるだけです。

 その意味で、取調べが密室で行われている、というのは間違いないところです。

 有罪・無罪を左右する証拠、場合によっては死刑になるかどうかを決定づけるような証拠の価値が、水掛け論のあげくに決められるというのは極めて深刻な問題と言わざるを得ず、流れは可視化の方向にあると思われます。
 しかし、自ら取調べを経験してきた私としましては、可視化の議論は単純に結論を出せない問題です。
 運用上の問題も含めて、これから弁護士の視点も加味して考え直してみようと思います。

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コメント(6)

 司法制度の設計の問題であり,現状で,取調の可視化をすることは,犯罪者天国を招来するものと考えております
 密室の中での取調によって初めて自供は得られるものと考えます
 問題は,その自供と客観証拠が符合することを,捜査主任検事が十分に検証することではないでしょうか
 密室での取調によって,いかなる調書でも作成できますが,その筆を抑えることができなければ,捜査主任検事は務まらないものと考えます

 当地では,このような上品な話ではなく,一体,捜査主任検事が何を考えているのか解らないような追起訴状がまかり通っているのが現状です

 司法取引等々の議論もありますが,現状の法制度としては,来るべき裁判員裁判制度です。この制度の中では,証拠開示の範囲が広がりすぎ,末端組員の調書を採るのも困難になるかと思われます
 ヤクザの抗争事件で末端組員の調書すら採りがたくなりそうな雲行きです

 すでに法制度化された裁判員制度の中ですら,司法取引は益々困難になるものと思われ,取調の可視化など,当分先の議論かと思われます

 なるほど冤罪防止等のうたい文句は結構ですが,取調過程を全て録画するなどの方策で,虚偽自白が無くなるとは考えません
 むしろ,捜査をがんじがらめにすることによる不利益こそ重要視すべきだと考えます

「ど素人」として、いつも読ませていただいておりますが、今回は

「なんで!?すぐ可視化すればいいじゃん!見られて困るものがあるのか!?」

などとまったく単純な考えが浮かびました。そんな単純なことではないのですね;
しがない弁護士さんのコメントに

<密室の中での取調によって初めて自供は得られるものと考えます>

と、ございましたが、ほほ〜なるほど〜なんて思いながら読みました。密室が人に及ぼす効果は、さまざまなものがあるのでしょう。長所、短所含めて。

>しがない弁護士さん
ヤメ検とはいえ弁護士からこのような端的な消極意見をお聞きしますと、私も批判的意見が書きやすくなります。

>yukiさん
>「見られて困るものがあるのか!?」
実際にある程度の取調べを経験したものでなければ分からないかも知れませんが、たしかに取り調べる側にとっても、取り調べられる側にとっても、後で誰が見るか分からない状況では話しにくいことがあります。
被疑者(取調べられる立場です)の重大なプライバシー、場合によっては生命・身体の安全にかかわる場合もあるのです。

こんにちは。
はじめまして。

 一応法律を勉強している者の端くれとして、このような実務家の方の生の声は、とても勉強になります。


>取調の可視化

 「取調の録画」という方法についての危惧は非常に説得的であると感じました。

 というわけで、URL欄のリンク先に書いた僕の提言はいかがでしょうか♪

 ぜひぜひご検討を。


(…えっと、リンク先、あえて偏見に満ちた内容になっていますが、あんま怒んないでくださいね、…あくまで、冒頭にあった「自由なコメント」ということで一つ…)

あ、すいません、
「自由なコメント」はここではなかったですね…。
冒頭のエントリーにしろということでしたか…。

えっと…、ごめんなさい。

ボクシングファンさん、はじめまして
たとえ暴論でも(^^;
真摯なご意見ならどこでも自由にコメントしていただいてけっこうです(^^)

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