k_penguinさんからトラックバックをいただいたので、その記事のリンク先のニュースを見てみました。
裁判員制、量刑検索が可能に 証拠は減量 最高裁試案(asahi.com)
まず、量刑判断についてですが
現在、裁判官は量刑を決める際、過去の似たような事件でどんな判決が出たかを裁判所の「量刑検索システム」で調べ、参考にしている。試案はこのシステムを使いやすく改良し、裁判員はもちろん、検察官と弁護人にも開示するとした。
とのことですが、
ただ、過去の判断が裁判員への「押しつけ」になってしまうと、「市民の健全な社会常識を反映させる」という本来の制度趣旨に反するため、参考の仕方には注意が必要、との意見もある。
とあるように、何のために裁判員に量刑判断をさせるのかわからなくなる恐れが大きいと思います。
先例に従っていれば安心と考えるのは何も裁判官ばかりではないでしょう。
次に、こっちのほうが圧倒的に重大問題の事実認定と証拠についてですが、
法律の専門家ではない市民が重大な刑事裁判に参加し、裁判官と一緒に判決を出す。このため最高裁は「膨大な証拠や書類をもとに、長い期間審理するいまの仕組みを思い切って改める必要がある」として、わかりやすさと簡素化を実現するための検討を進めている。
という方針のもとに、
また、これまでは段ボール数箱分になることもあった証拠を大幅に減らすことにも力点を置く
そうです。
しかし、これまで証拠が段ボール数箱分になることもあったのは裁判官が細かいことを言うから、というのが最大の理由だったと思いますが、裁判官というのは急に大胆になれるものなんでしょうか?
裁判員制度の対象になるのは重大事件ばかりだというのに。
控訴審では裁判官だけで裁判をしますが、そのときに、控訴審の裁判官が証拠が足りないと言い出さないか保証の限りでありませんね。
特に死刑が問題になる事件では、裏づけの裏づけのさらにその裏づけの証拠が必要だと思うのですが、そうなると証拠が大量になるのは当然です。
証拠は、その量を問題にするより、いかに裁判員にわかりやすく整理されているかのほうが重要だと思います。
次に
検察側の主張がまるごと正しいものとして裁判員に刷り込まれないよう、現在の検察側冒頭陳述のうち争いのない部分とある部分とを分け、裁判員に争いのある部分を重点的に判断してもらう狙いがある。
ですが、これについては概ね賛成です。
しかし、
(証拠を減らすために)検察官と弁護人が争いのない点については公判前に「合意文書」をつくり、簡潔な証拠として示す制度の活用を提唱している。
これは証拠の減量にどれだけ効果があるかわかりませんね。
重大事件であればあるほど、公訴事実に争いがなくても情状つまり量刑が問題になりますし、情状関係事実については、弁護人と検察官には常に争いが生じ得ますから。
私は、情状関係についてはほとんど全ての事件は否認事件だと思ってます。
さらに
検察官の提出した証拠に弁護人がたとえ同意しても、裁判官はそのまま採用せず、有罪・無罪の決定や量刑に必要かどうかを吟味してから採否を決める
これは変ですね。
これでは裁判官が証拠の採否によって裁判員の事実認定や量刑を誘導できることにならないか心配です。
検察官も弁護人も、裁判員に対する立証を念頭において証拠請求をし、同意不同意を判断するはずですから、まず当事者である検察官と弁護人の意思を尊重すべきではないでしょうか。
私のブログへのコメントありがとうございます。
asahi.comの記事についてはこちらのエントリーの方がより具体的に問題点を指摘されていまして、感服いたしました。
ただ、ワタシは弁護士ではないので、その辺訂正お願いします。
裁判官が証拠の採否によって裁判員の事実認定や量刑を誘導する危険については私も感じました。
一般の方を参加させておいて意見を誘導するのでは、何のために民意を裁判に反映するのかわかりません。
その辺を煮詰めないまま、ただ制度の運用を急いでいるような気がします。
トラックバックとコメントありがとうございます。
コメントをいれておきました。
わたしは裁判員制度がうまく行けば良いなと思ってはいますが(その範囲では賛成派ですね)一番の障害が裁判員が拘束される日数つまり裁判の日数であろうと思います。
現在のところ2〜3日で結論が出るということになっていますが、よーいドンで裁判員が関わって2〜3日後に量刑まで決定するということが可能なのか?それほど判定しやすい程情報が整理されているのか、検察・弁護とも(裁判所も)裁判の速度を速めるものだろうか?と実務的な点について「きれい事の範囲だけで考えて良いのか?」と思っています。
k_penguin さん
弁護士さんではありませんでしたか?
失礼しました。
とても法的感覚が鋭いので弁護士さんと確信したんですが(^^;
本文の該当部分を削除しましたm(_ _)m
>その辺を煮詰めないまま、ただ制度の運用を急いでいるような気がします。
いろんなところが煮詰まっていないように思います。
酔うぞ さん
>2〜3日後に量刑まで決定するということが可能なのか?
私も疑問です。
少なくとも今までどおりの立証レベルを求めるのであれば無理ではないかと思います。
しかし、2〜3日というのが一般市民を拘束できる物理的限界のように思います。
主婦であれば1週間(月〜金で5日)は何とか可能かもしれませんが、ある程度責任のある仕事をしている人はやっぱり無理ではないでしょうか(主婦が無責任というわけではありませんが)。
となると、2〜3日で判決可能な事件だけ裁判員制度でやる、というある意味で本末転倒の事態が生じるかもしれません。
裁判員制度における立証のあり方は今までどおりでいいのか、どこをどう変えるべきなのか?
ここも煮詰まっていない部分だと思います。
私は、2〜3日で終わることは「ありえない」と言い切れます。
というのも、論理的に見て、「ヨーイドン」で裁判員が関与しても、最も単純な「単一事件」「単一被告人」「争点が比較的単純」という条件を満たしていた事件であるところで、「事件の全体像を把握して心証を形成する日」と「判決の結論を出す日」の2日必要だからです。これが「複数事件」だったり「複数被告人」だったりすると、とても2〜3日では済まないというのは明らかだからです。