先日の「取調べの可視化」に対して、ヒロコさんから
>モトケンさんの意見は、警察で取り調べられる人は全て罪を犯しているという前提で言われていると思われます。
というコメントをいただいたんですが、正直これはショックでした(^^;
ヒロコさんがどういうところを根拠にこのように思われたのか聞いてみたいところですが、それはそれとして検察庁の事件処理に関する統計資料を紹介しておきます。
平成16年の犯罪白書の資料ですが上から6番目の図表6罪名別検察庁終局処理人員を見ていただきたいと思います。
重大事件の典型として殺人事件を見て見ますと、処理総数1568人であり、殺人事件を検察庁が独自捜査することはまずありませんから、これらは警察で取り調べて検察庁に送致した人数です。
これに対して実に3分の1に相当する522人が起訴猶予以外の理由によって不起訴になっています。
起訴猶予以外の理由の大半は嫌疑不十分つまり証拠不十分であると思われます。
この数字から見ても検事がかなり慎重に検討していることが分かります。
少なくとも平均的検事が、「警察で取り調べられる人は全て罪を犯している」とは考えていないことが明らかだろうと思います。
そして、私もそれほど平均から外れた検事だったとは思っていないのです。
私が起訴した事件で無罪になった事件は1件もありませんでしたし、認定落ちした事件も私が確認した範囲で1件だけでした。
というわけで半ば言い訳半ば自慢話になりましたが、検事は警察の捜査を鵜呑みにはしていないことをご理解願いたいと思います。
追記
y_okamura先生のさらに詳細な分析があります。
一度ご覧ください。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~y_oka/dayary/daiary.htm
の「2005年11月21日(月)殺人事件処理状況」です。
三分の一が嫌疑不十分というのは,多すぎる感じがしますね。
殺人・放火とくれば,すぐに連想するのが措置入院。
>私が起訴した事件で無罪になった事件は1件もありませんでしたし、
>認定落ちした事件も私が確認した範囲で1件だけでした。
>
> というわけで半ば言い訳半ば自慢話になりましたが、
検事は警察の捜査を鵜呑みにはしていないことをご理解願いたいと思います。
おはようございます。
「取調べの可視化」という文脈を上記の前提で書かれていたと知って
かなりのショックを受けています。
取り調べを警察と検察で分けては考えていません!
ビデオ録画についても警察は録画で検察は録画せずなどと分けて考えては
いませんでした。
申し訳ないけど「そこまで縦割り行政的に染まっているいたのですか?」
と大変なショックを受けたのです。
全然理解できないとご理解下さい。
酔うぞ拝
>酔うぞさん
私のこの投稿は、ヒロコさんの
>モトケンさんの意見は、警察で取り調べられる人は全て罪を犯しているという前提で言われていると思われます。
に対する反論として書いたもので、制度論としての取調べの録画の要否または可否に直接言及したものではありませんし、まして
>ビデオ録画についても警察は録画で検察は録画せずなどと分けて考えてはいませんでした。
というご指摘をなぜ受けるのか理解できません。
私は、検事の取調べこそは、録画されて何ら恥じることのないものであるべきだと考えています。
なぜなら、裁判所の法廷での尋問も取調室の取調べも本質的には違わないと思っているからです。
もし、日本で取調べの録画が制度化されるとするならば、そのハードルはかなり高いと思いますが、検察官の取調べの録画のほうがハードルは低いと思いますし、まず検察官の取調べの録画から採用されるだろうと予想しています。
そして検察官の取調べの録画については、私は制度化したほうがよいと思っています。
つまり、酔うぞさんのご指摘とは逆の認識です。
逆といっても、警察の取調べの録画が不要というわけではありませんが。
私がそう思う根拠は、少なくとも私が自分で起訴した事件の自分の取調べについては、違法な点はもちろん不当な点もなかったと自負しているからです。
>>私が起訴した事件で無罪になった事件は1件もありませんでしたし、
というのはそういう意味です。
補足すれば、私の取った調書の任意性が争われたという話は聞いていませんし、信用性の面でも、起訴事実に影響するような調書も認定落ちの限度で1件しか確認していないということです。
>y_okamura先生
検察庁の処理総数は身柄事件だけではないですから、告訴告発にかかる事件もある程度あると思います。
その点も踏まえて嫌疑不十分以外の不起訴理由としては、
嫌疑なし
時効完成(迷宮入り事件)
心神喪失
などが考えられますね。
殺人罪で起訴猶予が48件もあったのにはちょっとびっくりです。
モトケン先生
ご回答ありがとうございます。
時効完成がイヤだから,時効完成間際に送致させて,起訴猶予にするんじゃなかったかなと思います。そう考えれば,起訴猶予48件の意味も解る気がします。
また,ギリギリ正当防衛の事件も48件の中に入っているのかなとも思われます。
平成16年度は,いまだ懲役3年時代ですが,裁判所の判断を仰がずに検察庁だけで起訴猶予にするという感覚だったのでしょうか。
「無罪は検事の勲章」という世代感覚ですので,かなりずれたコメントでごめんなさい。
数日、インターネットを開いてなかったので、このようなエントリを立てておられるのを知らず。お騒がせてしまって、すみません m(__)m
ちょっと言葉が過ぎたようです。
警察であれ、検察であれ、取調べの可視化は、被疑者の人権(と言うと、何でも人権・人権と騒ぎ立てる!と批判する人もいますが)を守るためには必要であると思っているので。でも、それは、被疑者及び関係者のプライバシーを全面公開することを理由に可視化に反対することとは、また違うと思います。
可視化(録画・録音)は基本で、その内容を必要に応じて公開する、ではいけないのでしょうか。
>y_okamura先生
そういえば「時効完成」で不起訴にするのはまずかったみたいですね。
職務怠慢と思われちゃいますからね(^^;
でも、時効完成の代わりに嫌疑不十分にするのではなかったかな、とおぼろげな記憶をたどっております。
さすがに殺人罪で起訴猶予というのはレアケースだと思いますので。
例えば、嬰児殺、正当防衛や心神喪失の一歩手前などに限られているように思います。
いずれにしても被疑者不詳で起訴猶予は論理的に困難かと(^^;;;
モトケン先生
身の程もわきまえず,殺人事件処理状況なる駄文をしたためました。
お暇な際にでも,冷やかしてやって下さい。
>y_okamura 先生
詳細な分析ありがとうございます。
本文追記で紹介させていただきました。
想像以上に心神喪失が多いことが分かり勉強になりました。
>ヒロコさん
>可視化(録画・録音)は基本で、その内容を必要に応じて公開する、ではいけないのでしょうか。
いけなくはないと思いますが、ひとことでコメントするには難しすぎる問題です。
警察や検察からは「録画や録音をすれば真実の供述が得られない。」という声が聞こえてきます。
本当にそうなのか、が問題になります。
また、取調べをしたことも取調べを受けたこともない人間が、取調べ状況の録音や録画を見てどのように評価するか、正しく評価できるか、という問題もありそうです。
さらに、一度収集された情報は秘密にしようとしても必ず漏れる(可能性がある)という問題を指摘しておきます。
その上で、どのような制度設計をするのかが問題です。
制度として考える場合、誰もが納得する目的を持った制度だとしても、必ず弊害というものが生じます。
理想的かつ完璧な制度などありえないのです。
ヒロコさんが(他の多くの方もですが)問題にしている共謀罪も、目的としては正当なものを持っているわけですが、弊害が深刻かつ重大であることが問題なのだろうと考えています。