エントリ

 最近、匿名性に関する議論をよく目にします。
 今日読んだのは、企業法務戦士の雑感さんの「匿名」は悪か?

本来、情報を取捨選択して対応する、 という“基本”を一人ひとりのネットユーザーが守っていれば、 「匿名」による凶暴な“攻撃”がなされたとしても、 さほどの脅威にはならないはずであって、 にもかかわらず、現在のような“不健全”な 状況が生み出されているのは、 “安易に情報に飛びつく”受け止める側の意識に 問題があるように思われるのである。

と述べておられますが、考え方としては、正しいと思います。

 しかし、安易に情報に飛びつく受け手が、現実に極めて多数存在するというのも事実です。

 そして、その事実に基づいて深刻な被害を受ける人があることもまた事実です。

 しかしながら、このような状況(匿名による攻撃情報の流布)は、本質的にはインターネットが普及する以前から存在したわけです。
 ただ、インターネットの普及によって、匿名による攻撃情報の流布が容易になり、一般化し、より凶暴化しているという事実は指摘できると思います。

 インターネットがなければ、一人部屋の中で鬱々とつぶやいていた怨念を、今や簡単に全世界に向けて大声で叫ぶことができるのですから、しかも匿名でです。

 しかし、匿名情報は所詮匿名であり、そして人は嘘をつくことのできる動物であることを考えると、匿名の情報はまず疑ってかかるというのが当然の発想であるはずです。

 しかし、そのような発想がない人があまりいも多いというのが実感です。
 人は、匿名でなくても容易に人を信じます。
 検事として多くの詐欺事件を捜査してきましたが、冷静かつ論理的かつ常識的に考えれば手放しで同情できない被害者はたくさんいます。
 あまりにも無知なのです。
 どう無知かといいますと、他人をすなわち自分を騙そうとしている人間が存在するという事実について無知なのです。
 自分の周りに悪意が存在する可能性について思いがいたりません。
 毎日のように犯罪がマスコミで報道されているにもかかわらずです。

 自由主義社会において当然に求められる自己防衛意識が欠落していると言ってもいいと思います。

 インターネットの普及は、情報自由主義の加速と見ることができると思います。
 日経のコラムではブログの炎上も話題になっていましたが、自ら情報自由主義社会に登場する以上、自由主義の危険性についての認識と理解がなければ、自由主義の根本理念としての自己責任の結果として淘汰されるのかもしれません。
 その意味で、企業法務戦士さんの

むしろ、某巨大掲示板のような場は、 “情報の取捨選択”“誹謗中傷との付き合い方”を学ぶ上での格好の教材として 活用すべきなのであって、 その「匿名性」ゆえに一概に批判するのは、 見当違いの議論というべきではないだろうか

とのご意見はとても示唆的です。

 とはいうものの、いかなる自由も無制約ではなく、無知だからといって保護に値しないとは言えませんから、規制に関する議論が出てくるのは当然であり、自己規制が働かなければ他律的規制が現実化する可能性があります。
 そして他律的規制が容易に一般的ないし恣意的規制に転化する危険があることは多くの方が指摘されているとおりです。

 不適切、不当、不法、違法な言論は、言論において攻撃されるのが言論の自由のあるべき姿だと思います。
 そして、その勝敗を正しく判定するのは、個人個人の健全な良識でなければならないと思います。


PS
 自由というものについて、もっと義務教育において教えるべきだと思っているのですが。

追記(H18/3/9)
 関連ブログエントリ
 谷みどりさんのBlog炎上(Matimulog)
 コメント欄での議論が興味深いです。

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コメント(6)

ご指摘の通りだと思います。学校現場でももっと
きれい事ではなく、現実を教えないといけないと思っています。
特にこの業界に多いきれい事と、問題が起こったら連帯責任という体質は辟易します。

デモシカ さん
 コメントありがとうございます。
 「この業界」というのは学校のことですね。
 私は、義務教育(現在では高校も含めていいかもしれませんが)には、人が社会で生きていくための最低限度の知識を与えることが求められると考えているのですが、全然不十分だと思います。
 学校の授業として、株取引や商売を体験させることがニュースになっていますが、これがニュースになること自体がおかしいのでありまして、経済活動の基本くらいは必須科目として教えてほしいと思います。

 そしてもっと重要なことは、自由には責任とリスクが伴うということを、小さいうちから叩き込まないとだめだと思います。

昨年の5月に開かれたコンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウムのテーマは「匿名性」でした。

参加者300人を主催者側がパーティー会場で、匿名派・実名派に分けて席を作り「どっちかに座れ」と強制して、その後ディベートの要領で「匿名派ですが・・・」などと意見を述べました。

もちろん、実際的には中間的なところに大半の意見は集約されるのですが、そもそも「どちらかに決めろ」というのが無理というかナンセンス。
おそらくは、ほとんど追跡可能であるID制などが良いのかな?なんてところでしたね。

しかし、商取引における現金取引が匿名のためにあることを考えると、ネットワークだけ追跡可能にするというのは無茶だとも言えるわけで、問題は匿名に隠れて意味の無い発言をするような風潮というか発想が良くないことだ、いった感じで追跡可能な発言を多くする、といったところが妥当なんじゃないでしょうか?

内部告発には匿名が不可欠だとか、学術、技術(商用)の発言では実名が不可欠だというのは、それぞれネットワーク上の発言の種類の両端であると思います。

中間をどうするか、は世論が染める事でしょう。

いつも読ませていただいております。初めて申し上げます。放埒と自由というのは言うも空しいでしょうか。
メディアも含め、弾の飛んでこないところでの言いたい放題は、恥ずかしいことを教えるべきと思います。
人前でものを言うことが畏れおおいのは、目立つからでなく、言葉の力は大きいから、責任の重さにおののいて緊張すべきだと教えなければいけないと。
匿名性はたいした問題ではなく、言った以上は責任をとりなよ、という大人の態度だけが必要だと痛感しています。

たぬき さん
 コメントありがとうございます。
 そうですね。
 みんなに大人の態度があれば、状況はかなり変わるでしょうね。

私も時々、某掲示板を見ますが、かなり役に立ちます。特に自分の知らない世界について
知るために有用です。確かに嘘も多い。だけど、すぐに嘘であると指摘されるから、誤ることは少ない。勉強になるです.....

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