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取材源の秘匿、一部認めず 読売記者尋問巡り東京地裁(asahi.com 2006年03月14日21時34分)
国家公務員から取材、記者に証言拒絶認めず…東京地裁(2006年3月14日21時51分 読売新聞)

藤下健裁判官は「記者が得た情報が、国家公務員の守秘義務に反して得られた可能性がある場合、取材源の開示を求めるのはやむを得ない」と述べ、取材源を明かすよう命じた。(読売)
決定は、情報源が仮に国税庁職員など政府職員の場合、課税情報を記者に伝えることが国家公務員法の秘密漏洩(ろうえい)罪に当たると指摘。「このような場合に証言拒絶を適法として認めると、犯罪行為の隠ぺいに加担することになる」とした。さらに決定は、記者が取材源を明かすことで政府職員らからの取材が難しくなったとしても、「法秩序の観点からはむしろ歓迎すべき事柄」と述べた。(読売)

 これはかなりものすごい決定だと思います。

 はっきり言って、報道機関の存在意義をほとんど認めていない決定でしょう。
 1件の公務員の守秘義務違反を明らかにすることと将来的な取材の自由全体及び国民の知る権利を秤にかけて、前者のほうが重いと判断したものです。
 憲法感覚ゼロの裁判官という感じです。

 ちなみに

この訴訟では読売新聞のほか、NHK、共同通信の各記者が嘱託尋問を受け、同様に取材源に関する証言を拒絶をした。このうち、NHKの記者については昨年10月、新潟地裁が証言拒否をすべて妥当とする判断を示している。(読売)

ということです。

 この決定の最大の理由は

記事は97年、日米の税務調査で所得隠しが分かり、追徴課税されたことを報じた。米国会社は「米政府側が日本の国税当局に情報を開示し、そこから漏洩(ろうえい)された情報が報道され、損害を被った」として米政府を相手に米アリゾナ州連邦地裁に提訴。米側が最高裁などを通じて東京地裁に尋問を嘱託していた。(朝日)

 特に

米側が最高裁などを通じて東京地裁に尋問を嘱託していた。

ことにあると見るのは穿ちすぎの見方でしょうか。

 つまり、東京地裁の裁判官としては最高裁から尋問を嘱託された以上、それに最大限に応えなければ出世が怪しくなると考えた、というわけではないですよね、たぶん。

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コメント(7)

こんにちは。「ニュース・ワーカー」管理人の美浦と申します。今回の藤下決定で感じた私見をトラックバックさせていただきました。藤下裁判官の「ヒラメ」疑惑(笑)は、わたしはけっこう当たっているのではないかと思います。

美浦さん
 コメントありがとうございます。
 藤下裁判官は今日(3/17)の東京高裁の決定を読んでどう思っているでしょう。

疑問が一つ。雑誌記事による名誉毀損の民事訴訟では、出版社側が取材源を秘匿したために真実性の立証ができず敗訴することがあるようですが、これに対して、報道の自由を侵害するという批判はないように思います。本件とは別次元の問題なのでしょうか?
自分としては、「取材源の秘匿」というのも、結局はマスコミが今後の商売をしやすくしたいがための業界ルールに過ぎず、外部の人間がそれによって不利益を受けることは不当なようにも思えるのですが・・・・。

関連する問題をもう一つ。番組の映像を刑事裁判の証拠として採用することについては、マスコミから「報道の自由を侵害する」などと強い批判があります。しかし、なぜ報道機関という一企業が集めた情報のみが「証拠として使えない」という特権的な扱いを受けるのか疑問に感じます。会社や業界団体が、「今後の活動に師匠が生じるから〇〇は裁判の証拠に使えないようにしよう」と申し合わせたとしても、そんな理屈は通らないと思いますし、現に和歌山のカレー事件等でも証拠として採用されているようです。これと「取材源の秘匿」をどこまで尊重するかという問題はリンクしないのでしょうか?

PAMPY さん
 コメント及びご質問ありがとうございます。

 まず、出版社側が取材源を秘匿したために真実性の立証ができず敗訴する場合についですが、これは、記者が取材源を明らかにすることを強制されないことと、明らかにしない結果敗訴することは別問題だと思います。

 強制される、ということは意思に反して求められるということであり、強制されないということは任意ということになります。
 任意の判断の結果、民事訴訟で敗訴することはある意味当然のことと思います。
 あまりうまく説明できません(^^;

 次に、番組の映像を刑事裁判の証拠として採用することについてですが、これについては私は、特に問題がないと考えています。
 既に公にされている情報だからです。
 マスコミが公にした情報だけ別扱いする理由が見いだせません。
 異論のある方が多いと思いますが、異論があれば個々に反論を試みたいと思います。

御回答ありがとうございます。番組の映像については常々疑問に思っておりまして、あまり説得的と思える説明に触れたことがありません。有力な「異論」はあるのでしょうか・・・・。

取材源の秘匿ですが、やはり「強制」という所が問題になるのですね。ただ、仮に今公開を命じる決定が確定しても、マスコミとしては命令に従って取材源を開示することはなく、結局罰金をいくらか払ってオシマイになると思うのです。金額がいくらになるかは知りませんが、マスコミにとって痛くも痒くもない額であることは確かでしょう。万一、記者が収監されるとしても、別に今後の仕事に不利益もないでしょう(業界では英雄扱いされると思われます。)。

とすると、取材源開示の「強制」とは言っても、それによる実質的ダメージはないようにも思うのです。あるとしても、果たして、民事訴訟で取材源を秘匿したことによる損害(低額の慰謝料を支払うこと)と、どれだけ質的に異なるのかというと疑問もあるのですが・・・・。

記者に対して拷問による取材源の自白を迫ることが考えられない以上、どちらのケースも、マスコミが損得をハカリにかけたうえで任意に対応を選択できる(取材源を明らかにして金の支払いを免れるか、秘匿して今後の取材活動の円滑を期すか)問題のようにも思えます。そうであれば、マスコミにだけ、取材源を秘匿してよいとの特権を与えるべきかは疑問なのですが、いかがなものでしょうか?

各紙とも、民主党のメール問題では散々「情報源を明らかにせよ」と論陣を張っておいて、いざ新聞記者が対象になると「取材源の秘匿は当然のルール」と言い張るのは、はたから見るとどうも気持ちが悪い対応に映ります。

取材源の秘匿の問題は、対権力との関係では報道の持つ意義・重要性は極めて重要だと思います。

ただし、報道によって名誉を毀損されたと主張する者との関係では、その真実性の証明において取材源の秘匿は免責事由にならないと考えています。

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