エントリ

 これはPINE先生のブログのエントリーにコメントしたものですが、

 訴訟遅延テクニックというのは、私も使う場合があります。
 例えば執行猶予期間切れ間近の被告人で、控訴すれば期間経過が確実な場合などです。
 しかし、それも限度があるものでして、私としては少なくとも裁判所のひんしゅくを買わないようにしています。

 ある程度の訴訟遅延行為は許容されると思っていますが、、方法論的に見て国民の支持を得られれないやり方、特に、脱法的と見られるようなやり方をしますと、弁護人の権限や自由を制約するような制度論、端的に言って制度改悪論を誘発することを危惧しています。
 具体的には、弁護人抜き裁判法案が問題になります。

 私は安田弁護士のやり方を「訴訟遅延行為」と断言しましたが、今回に限っては「弁護人の交代に基づく訴訟準備のため」という大義名分はかろうじて維持されている、と思っています。
 ですから裁判所も次回期日を指定したのでしょう。
 しかし、次回期日もドタキャンしたり、さらには弁護人を辞任して別の弁護士の選任・準備の名目で訴訟遅延を図ったりすれば、明らかな脱法行為と言わざるを得ないと思います。

 命がかかっている事件の裁判の弁護人を誰にするかは被告人にとって極めて重要な問題です。
 したがってこれまでの弁護人との信頼関係にわずかなひびでも入れば弁護人の交代は当然のことであると思います。
 しかし、弁護人の交代は当然にはその時点における訴訟進行状態をご破算にするものとは考えられません。
 極端な例を挙げますと、控訴審で新たについた弁護人が、自分は一審に関与していなかったのだから、もう一度一審の審理をやり直して欲しい、と言ったところでそんなことは通用するはずがありません。
 審理の途中で交代した弁護人の弁護活動は、やはりそれまでの訴訟の進行状態によって制約を受けざるを得ないと考えます。

 その観点で見てみますと、前弁護人に対して約3か月の準備期間を認めていた裁判所が、必ずしも十分な理由がないドタキャンにもかかわらず、さらに1か月以上の準備期間を与えた訴訟指揮は、新弁護人に十分な配慮を払ったものと考えます。

 それにもかかわらず、弁護人がそれに従わないということになりますと、その弁護人の行為はもはや訴訟準備のためという正当な目的とは別の目的があると見られても仕方がないと思われます。

 安田弁護士の意図は、先に述べたように、裁判長の定年退官を利用して現在の合議体による裁判を回避することにあることは明らかです。
 この意図は、簡単に言いますと、自分の気に入らない裁判官による裁判は受けたくない、ということです。

 しかし、そのようなことは、一定の忌避事由がない限り認められません。
 認められないことを弁護人の交代とそれに伴う訴訟準備名目で行おうとすると、それはまさしく脱法行為です。

 弁護人が次回期日においても同じことを繰り返せば、裁判所もそれなりの毅然とした態度を取ることになるのではないかと予想しています。
 つまり、弁護人抜きでの訴訟進行です。
 もちろん、そんなことをすれば弁護士会から強い批判が出ます。

 そうなりますと、将来的に同様の事態が生じた場合に備えて、弁護人抜き裁判を明確に正当化するための法案成立の動きが世論の支持を背景として出てくるとしても何の不思議もないのです。
 そしてそのような事態は、刑事弁護全体に対する重大な侵害です。

 これが私の危惧しているところです。

関連ブログ
http://d.hatena.ne.jp/pre-jurist/20060316

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コメント(5)

TBありがとうございます。
弁護人の訴訟態度や被害者のコメントなどがマスコミによって報道され、世論が「弁護人の遅延行為を許すような制度はおかしい。」と盛り上がれば、そうした世論を背景に法務省あたりが法案を提出しそうな気がします。
はっきりいって弁護士会の政治力なんてアテになりませんから、法案が通ってしまう可能性があります。
そういう意味でも、処分の請求を受けた各弁護士会がどういう調査をするのかは、重要だと思います。

TBありがとうございます。弁護士さんの意見が聞けて参考になりました。

コメントありがとうございます。
やはりどんな世界にもルールという土俵があり、その土俵際での駆け引き、せめぎ合いがありますね。
今回の件はあからさまに土俵の外に出たように思います。
そして、世間は「弁護活動」に対する一律の不信感を持ってしまっています。
もし、弁護士会が安田弁護士の行為を問題なく容認する形になれば、世論は完全に弁護士全体にたいしての認識を改めることになりかねません。
もともと世論が注目していた裁判なのに、世論の見方というものを全く計算に入れていなかったように思います。
裏を返せば「世論などどうでもいい」という考えがあったのではないかと感じてしまいます。
このことが「人の心を見ない弁護士」と世間の目には写り、不信感を煽っているのでは無いでしょうか?
いずれにせよ弁護士会の英断を期待したいと思います。

トラバありがとうございます。事態がわかりやすく コメントしてあり 大変 参考になりましたが 被害者の立場にたつと 腹立たしい限り。
一般人からすれば こんなことは 許されないと思います。

今回の件で第2東京弁護士会にクレームを入れました
私は全くの法律素人であるので、詳細には触れませんでしたが、素人からみても異常な事態で職責を果たしていないとして何らかの処分を求めました
こんなもんですかね・・・

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