「検察官の起訴、違法」国に220万円の賠償命令(京都新聞 共同通信 http://d.hatena.ne.jp/grafvonzeppelin/20060316/p6経由)
窃盗罪などの無罪判決が確定した愛知県東郷町の電気工事業青山崇さん(37)が、国に約2000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁の佐久間邦夫裁判長は16日、「検察官の起訴は違法だった」と認定、国に約220万円の支払いを命じた。
検察官の起訴が違法だとして国家賠償を認めた判決は珍しいと思います。
佐久間裁判長は判決で「被害者宅から採取された青山さんの指紋が犯行時のものかどうか疑問があったのに、検察官は捜査を尽くさなかった。有罪判決を期待できるだけの合理的根拠が客観的に欠けていたのに、起訴した」と指摘。
つまり、薄弱な証拠で起訴した点が違法ということですね。
ところが
原告側が「裁判官が保釈を認めなかったのも違法」と主張した点については、佐久間裁判長は「裁判官が不当な目的をもって裁判をしたなどの特別の事情はなかった」として退けた。
というわけです。
国賠判例に詳しくありませんので、これが判例の基本的な考え方なのかもしれませんが、裁判所は裁判官には甘いんだな、という印象をもってしまいます。
起訴が違法になるほど証拠の脆弱性が明白な事件について、その明白な脆弱性を看過ないし無視して保釈請求を却下した裁判官の判断は何ら違法でない、ということになります。
間抜けな検察官の起訴は違法になるが、馬鹿な裁判官の保釈却下は違法でない
ということでしょうか。
判決では、裁判官は「不当な目的をもって裁判をした」わけではないから違法でない、と言っていますが、検察官だって、「不当な目的をもって」起訴したわけではないと思います。
現在の判例はともかく、「不当な目的」などという主観的なしかも被疑者・被告人からの立証がほとんど不可能な要件を国家賠償の要件にするのはおかしいのではないかと思います。
裁判官の判断においても、客観的に明らかに証拠評価を誤ったと認められる場合には、その判断は違法として国家賠償を認めてもよいのではないでしょうか。
もっとも、保釈請求に関して言えば、保釈の時期によって、検察官が判断の基礎とする証拠と裁判官が判断の基礎とする証拠が変わってくる場合がありますので、起訴は違法だが保釈却下は違法でないという場合は当然ありえます。
若干論点がずれますが、保釈請求は証拠が弱いほど認められにくいという現実があります。
変な話ではありますが、証拠が弱いということは罪証隠滅の余地ないし危険性が大きいということになってしまうからです。
検察官の能力不足によって証拠が弱いが故に保釈が認められない、ということであれば、被告人にとってはたまったものではありません。
保釈の裁判実務を変えなくてはならないというのは、刑事弁護における緊急課題です。
起訴そのものが違法というのはすごいですね。
確か、捜査機関の逮捕状請求は証拠上相当の理由が認められないため違法だが、それを認めて逮捕状を発布した裁判官の判断には違法性がなかったという判決もありました。
たしかに「裁判所は裁判官に甘い」という印象は、拭いきれませんね。
保釈の判断は検察のいいなりという実情を踏まえた判断なのでは?
an_accused さん
起訴そのものが違法という判断の当否は証拠関係を見てみないとなんともいえませんが、検察官だけ違法だと言うのはなんだかな〜という感じです。
ぽんた さん
笑い事ではありませんが、笑わせていただきました(^^;
それを言っちゃ〜、裁判所としてはおしまいよ、という感じですが、もっと仕事をしてほしい裁判官はいますね。
朝日新聞によると,名古屋高裁で起訴が国賠法上違法とされた判決が確定したようです。
野次馬から見れば『へ〜』なのですが。
>間抜けな検察官の起訴は違法になるが、馬鹿な裁判官の保釈却下は違法でない?
こういう裁判こそ、あの『安田弁護士』にお願いしたら良いのでは?
>kisslegg さん
情報提供ありがとうございました。
http://www.asahi.com/national/update/0712/NGY200707120001.html