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時速20キロの衝突でも危険運転致傷罪、最高裁が判断(2006年3月16日23時0分 読売新聞)

自動車を時速20キロで運転中に信号無視をして衝突事故を起こし、相手にけがをさせたのは危険運転致傷罪に当たるかどうかが争われた刑事裁判で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は、14日付の決定で、「時速20キロは重大な危険を生じさせる速度と言えるから、危険運転致傷罪が成立する」との判断を示した。
同罪は、<1>信号無視<2>重大な危険を生じさせる速度――が重なったケースなどで成立する。
弁護側は「時速20キロでは重大な危険は生じない」などと主張したが、第2小法廷は1、2審に続いて弁護側の主張を退け、被告の上告を棄却した。

 刑法の世界では、構成要件というのは、罰則の定め、またはその内容のことを言います。

 本件で問題となる危険運転致死傷罪の構成要件は、記事にあるとおり、

赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し

です。

 平均的ドライバーの常識的な語感では、時速20キロは「ゆっくりした速度」と言えると思いますが(だからこそ弁護人は「時速20キロでは重大な危険は生じない」と主張しています)、状況によっては「時速20キロでも重大な交通の危険を生じさせる速度」になるという判断であろうと解釈しています。

 しかしそうであるならば、そもそも「速度」などを問題にする必要はなかったのではないかと思うのです。

 車というものはは、状況次第では、どんなにゆっくり動いていても(たとえ時速5キロ以下でも)、50センチも動けば人を殺してしまう場合があるのですから。

 端的に「四輪以上の自動車を運転して、重大な交通の危険を生じさせ」とだけ規定すればよかったように思います。
 
 最高裁の判例が出ましたので、すでにどうでもいいことですが、立法としては下手くそだったのかな、という感想を持ちました。

 ちなみに、スピードの出し過ぎによる事故も危険運転致死傷罪になりまして、上記とは別に

その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで四輪以上の自動車を走行させ

という構成要件が規定されています。

 法律解釈として説明しますと、「重大な交通の危険を生じさせる速度」と「進行を制御することが困難な高速度」とは、表現の仕方が異なります。
 表現の仕方が異なるということは、意味が違うということになります。
 つまり、「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは、「高速度」である必要はない、という解釈が可能です。
 最高裁もそう読んだのだろうと思います。

 落合弁護士のブログに関連記事があります。

 Heimweh nach der Zukunftに最高裁の決定内容と批判的意見、書籍紹介があります。

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コメント(7)

立法裏話。

>赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し

危険運転致死傷罪は、私のローの先生がイギリスに立法調査に行った際に、イギリス法にこの条文を見つけ日本にファックスしたところ、訳したものがそのまま立法されて驚いたと話していました。

>立法裏話。
 そのまま立法したのか、一応考えたのかよくわかりませんが(^^;

 趣旨としては構成要件の明確化または適用範囲の限定という意識または意図があったのだと思います。

 が、その意図は成功しなかったようですね。
 最高裁から一蹴されたような感じです。

その先生によると、

「ほんとそのまんま」

だそうです。
先生は、
「ドイツ的な厳格な構成要件の解釈をする先生からは批判も多い」
と言ってました。
要するに、
「俺のせいじゃない」
と言いたいみたいですw

>「ほんとそのまんま」

 手抜きですかね(^^)
 改正時の国会での議論をチェックしたいところですが、どなたかソースをご存知の方はいませんか。
 これは私の手抜きです(^^;

国会の議事録は、ここで検索できます。
http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_srch.cgi?SESSION=2667&MODE=1

第1回国会から入っています。

第153回国会衆議院法務委員会平成13年11月06日議事録の発言第48、古田政府参考人の答弁に「重大な交通の危険を生じさせる速度」の意味があります。上げられた例では時速40キロです。

無記名さん
 情報提供ありがとうございます。
 後ほどコメントしたいと思います。

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