筋弛緩剤事件については冤罪説がかなり強く主張されています。
週刊誌でもいろいろ書かれているようです。
その中の一つを紹介しますが、これはちょっと眉につばという感じです。
あくまでも週刊誌の記事に関するコメントですから、今回の判決の当否に直接言及するものではありません。
岩上安身氏というノンフィクション作家のウェブサイト「Web Iwakami」の記事です
2月10日付の「勾留日記」にはこんな記述がある。
<PM5:45〜9:00
1910回も、殺人者、人殺し、お前が殺したんだぞ。(中略)マスキュラックスで殺したんだぞ!! 認めろ!!>
弁護団が守被告に確認したところ、1910回という数字は、この日のわずか3時間あまりの取調べの間に、仙台地検のK検事が守被告に対して「人殺し」という言葉を浴びせた回数であるという。守被告は、机の下で指を折りながら数えていたのである。
この記事のとおりだとしますと、私としましては守被告の虚言癖を疑います。
検事が仮に「人殺し」という言葉を何回も言ったとしても、その回数を指折り数えながら1910回もカウントするというのは普通ではありません。
少なくとも異常な性格を窺わせます。
検事から厳しい取調べを受けながら「人殺し」と言う回数を延々と数えられる神経の持ち主が、逮捕されてすぐにやってもいない殺人未遂行為を認めるなどとは到底思われません。
岩上氏には失礼ですが、噴飯物です。
ついでに指摘しますと、このページの見出しは以下のようなものです。
「お前の後ろに霊が見える」
「人殺し」
「死刑にしてやる」
守被告「自白」の裏にあった
「異様な取調べ」一部始終
しかし、記事をよく読みますと、取調検事が「お前の後ろに霊が見える」、「人殺し」、「死刑にしてやる」などと言ったとされる時期は、守被告が否認に転じた後のことです。
つまり、「『自白』の裏にあった」とは言えない時期のことです。
この見出しは、ほとんど虚報と言ってもいい代物です。
私は、こういう言い方をする物書きを信用できません。
私は、犯罪報道の問題性についても指摘していますが(例えば、広島小1女児殺害事件容疑者逮捕)、その逆の冤罪報道についてもかなり強いバイアスを感じます。
冤罪かどうかは、つまるところ法廷で明らかにするしかないわけですから、その判断資料は法廷に表れた証拠しかありません。
そうなりますと、冤罪かどうかを判断するためには、法廷に十分な証拠が提出されるかどうかと、その証拠をいかに適切に評価するかが主要な問題になると思います。
前者の問題で重要なのが、証拠開示の問題であり、取調べの可視化の問題です。
後者についていえば、裁判官の判断が適切かどうかを学者や実務法曹を含む一般市民が検証できる状況が必要だと思います。
既に紹介していますが、この事件についてはasahi.comの筋弛緩剤事件公判に一審の各公判期日の要点がまとめられています。
この記事の被告人質問の項を読んでみますと、被告人の供述がかなり不自然であることがわかります。
これから裁判員制度で否認事件が審理されることを考えますと、もっと詳細な公判の審理状況が報道され、それについて読者が自由に論評できる状況が生まれれば、裁判員予備軍の一般市民の方が冷静かつ適切な判断をするためのシミュレーションになるように思います。
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