エントリ

 彩香ちゃん殺害事件の陰に隠れているような感がありますが、この問題はシンドラー社のエレベータの比ではない危ない話なのではないかと思っています。

 問題となった湯沸かし器は、半密閉式と言われる形式で、電動の強制排気ファンによって酸素供給を確保しながら燃焼するもののようです。
 つまり、強制排気ファンが作動することを前提にして燃焼効率などを設計しているはずですから、強制排気ファンが作動しなくなれば、直ちに不完全燃焼の恐れが生じ、不完全燃焼が生じれば毒ガスと言って全く差し支えない危険性を有する一酸化炭素(COガス)が発生します。

 一酸化炭素の危険性については、参考としてここを挙げておきますが、れっきとした毒ガス扱いです。

 ということは、安全装置が作動しない状態で問題の湯沸かし器を使用するということは、室内で毒ガス発生器を作動させることに他ならないことになります。

 製造元のパロマ側は、しきりに不正改造を問題にしています。

パロマ器事故、改造「単純作業で可能」 安全装置働かず (asahi.com 2006年07月15日23時29分)

 パロマが原因として強調するのは安全装置が作動しなかった点だ。同社は15日、以前から把握している事故は6件ではなく7件だったと説明を変えたが、いずれも不正改造が施され、安全装置が機能を失っていたとしている。

 しかし、

パロマ事故、基板構造にも問題か…不正改造と複合要因(2006年7月18日15時38分 読売新聞)

によれば、

これについて、同課が、補修した複数の業者に事情聴取した結果、同社製の湯沸かし器は「コントロールボックス内のはんだ割れが多い」「耐用年数が短い」などという証言を得た。

のように、湯沸かし器自体の構造上の問題が指摘されており、安全装置の脆弱性が不正改造を誘発した疑いがあります。

捜査1課は、同社製湯沸かし器のCO中毒事故について、〈1〉コントロールボックス内の「はんだ割れ」で故障が多発〈2〉修理業者が排気ファンが停止してもガスが供給されるよう配線を不正改造した――など複合要因が絡んでいるとみている。(同上)

 また

パロマ湯沸かし器事故27件に、半数は非改造(2006年7月18日15時7分 読売新聞)

によれば、最近までに明らかにされた27件の事故(だんだん増えてきます)について

同社の内部調査によると、改造によるものが14件で、改造によらないものも13件あった。

 改造によらないものは、時間がたったことによる安全装置の劣化などだった。

 同社は、当該機種を無償で新型に交換する方針。

ということであり、発生件数的に見ても、不正改造が原因と強調する根拠がありません。

 作動を止めれば湯沸かし器が毒ガス発生器になってしまう安全装置について、容易にその作動を止められるような構造になっていることも構造上の欠陥と言ってもいいのではないでしょうか。
 
 これまでの報道によると、1985年ころから断続的に同種の事故が発生し、最近の報道では、発生件数27件、死者は20人にのぼっています。
 パロマ本社は事故発生の都度その情報を把握していたようですが、公にすることなく、会社や下請け修理業者だけで対処しようとしたようです。

 しかし、問題の湯沸かし器を修理する可能性のある修理業者全てに不正改造の防止を徹底することができたのでしょうか?
 
 不正改造は、いろいろな動機でなされたようです。
 交換部品がないので応急措置として行われた場合もあるでしょうし、部品交換より安上がりなので、ユーザーの希望により行われた場合もあったと思われます。賃貸住宅に設置されたものなどはこのパターンがけっこうあったのではないでしょうか。

 しかし、その際、不正改造を行えば、安全装置が作動しなくなること、安全装置が作動しなければ湯沸かし器が毒ガス発生器になること、という重大な危険性について、ユーザーにきちんと情報提供がなされていたのでしょうか?

 そう考えますと、不正改造による事故が最初に発覚した段階で、きちんと広報活動を行うべきだったと言わざるを得ません。
 有効な情報開示を行う能力があったのはパロマ本社しかなかったはずだからです。
 そうすれば、確実に死者の数は少なくなっていたはずです。

 パロマの担当者らは、松下電器のファンヒータ問題についての松下の対応をどのような目で見ていたのでしょう。
 もはや例え修理業者の不正改造が原因であったとしても(そうでない事故もあるのですから)、作りっぱなし売りっぱなしでは済まないことをパロマに対して徹底的に知らしめる必要があるように思います。

 パロマは人の命を軽く見過ぎています。

 ほかにも書きたいことはありますが、とりあえず一区切りです。

追記
 事故数は27件、死者20人 パロマが調査結果を公表(ヤフーニュース(共同通信) - 7月18日18時2分更新)

パロマの小林弘明社長は会見で「(14日の)前回発表より事故件数が増え、われわれの認識のなさをおわび申し上げる。経営者としての責任認識がなく、申し訳なく思う」と謝罪した。

 一応謝罪しているようですが。
 報道なので、他に何を言ったかわかりませんが、この報道だけから読みますと、当初は事故件数を正確に把握していなかったことについて社長として謝罪しているように読めます。
 問題はそんなところではないと思うのですが。

 下記「★セブンスター・ナイト★」さんによれば、もう少しまともなことを言っているようです。


関連ブログ
 生活雑貨QC110(ナショナルの対応、パロマへの影響)
 経営コンサルタントのささやかなカウンターパンチ!(再び「企業の責任とは」を考える事件が・・・パロマ。)
 ★セブンスター・ナイト★(パロマ 死者20人)

続報
 パロマ事故器、3分でCO濃度致死量に…警視庁実験(2006年7月19日14時32分 読売新聞)

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コメント(3)

私がかつてガス会社のサービス部門にいたときは、「安全装置を短絡させてガスを使わせるな」ということをくどいくらい先輩からいわれたものです。
これ、裏を返せば、それをやる人間がいたということですよね。

それもあって、私はパロマを一方的に断罪できないです。(甘いかもしれませんが) 第一報を聞いたときは、勝手に改造することまでパロマが責任とれるか、と思ってしまいました。

しかし、安全装置の劣化というのがよく分かりませんね。元記事もくわしく書いているわけではないですし。ふつう、安全装置はそれが壊れてしまうとガス機器の使用は不可能になるような仕組みにしてあるはずなんですが。別のブログのコメント欄にはパロマの機器が特に内部構造に問題があったわけではない、と書きましたが、私の思いこみだったか、うーーむ。
ちなみに、安全装置を短絡させてガスを使用させた人間はやはり業務上過失致死の罪に問われるんでしょうか?

>nov さん

>勝手に改造することまでパロマが責任とれるか

 法的な責任という観点では難しいかもしれません。
 しかし、企業としての姿勢としては、到底信頼に足るものとは思えません。
 他のメーカーはどうかというとそれもわかりませんが。

>ちなみに、安全装置を短絡させてガスを使用させた人間はやはり業務上過失致死の罪に問われるんでしょうか?

 これは問われるべきだと思います。

 

相当以前から事故が起こっていたことをパロマは認識していたのですね。TVのニュースを見ていてパロマって2社あったのかと思い新聞等を読んでみると販売会社である「株式会社パロマ」とその子会社で製造を行っている「株式会社パロマ工業」なんですね。

更にネットで調べてみると、非上場同族会社、即ち個人企業なんですね。でも、資本金は775億円で、従業員10,400名であり、2005年度の連結売上高は2413億円。給湯器の国内シェアは約2割で、同約4割のシェアを持つリンナイに次ぐ2位である。

個人企業(実際は同族株式会社ですが)で、この規模はすごいと思います。でも、個人企業であるが故に発生した事件であるかも知れないと思ってしまいます。冒頭に「パロマは認識していた。」と記載したのですが、本当は会社ではなく、個人なのです。個人が得た情報を組織が対応できなかった。対応できる仕組みが会社内部に構築されていなかった。個人企業・同族会社の場合、オーナー社長の権限が非常に大きいんですね。放っておけば、従業員はオーナー社長の顔色ばかり見て仕事をするようになってしまう。

それにコーポレート・ガバナンスなんて日本で叫ばれ始めたのは、21世紀になってからだと思うのです。

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