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死刑求刑事案に対する控訴審判決を二つ紹介します。

控訴審は被告に死刑判決 大阪・平野の母子殺害事件(asahi.com 2006年12月15日12時17分)

 大阪市平野区のマンションで02年、主婦森まゆみさん(当時28)と長男瞳真(とうま)ちゃん(同1)が殺害された事件で、殺人と現住建造物等放火の罪に問われた大阪刑務所刑務官でまゆみさんの義父の森健充(たけみつ)被告(49)=休職中=の控訴審判決が15日、大阪高裁であった。島敏男裁判長は「前途ある2人の命を奪うなど結果は極めて重大。反省の態度も示しておらず、極刑はやむを得ない」と判断。森被告を無期懲役とした一審・大阪地裁判決を破棄し、求刑通り死刑を言い渡した。

一審支持し、控訴審も無期判決 愛知・殺人身代金事件(asahi.com 2006年12月15日12時46分)

 愛知県新城市で03年4月、建設会社役員松井紀裕(としひろ)さん(当時39)が殺害され、家族が電話で身代金1億円を要求された事件で、強盗殺人と恐喝未遂などの罪に問われた同市の元食品会社社長後藤浩之被告(41)の控訴審判決が15日、名古屋高裁であった。門野博裁判長は「凶悪な犯行で刑事責任は極めて重大だが、周到な計画に基づくものではなく、極刑にはちゅうちょを覚える」と述べ、無期懲役(求刑・死刑)とした一審判決を支持、検察、弁護側の双方の控訴を棄却した。

 つまるところ、被害者の数が結論を左右したみたいですね。
 愛知の事件の犯情も相当悪質ですが。

 報道の範囲で、判決にコメントをしてみます。

 まず、大阪の事件ですが、第三者の犯行を主張するなどの完全否認事件で、決定的な直接証拠も無かった事案のようですが、毅然とした姿勢で死刑を宣告した判決だと思います。
 事実認定の当否については、証拠関係全体を精査しないとコメントできません。

 なお、無期懲役を言い渡した地裁判決は

05年8月の一審・大阪地裁判決は、森被告が刑務官として16年間まじめに勤務していたことなどを踏まえて無期懲役を言い渡した。

とのことですが、「16年間まじめに勤務していたことなどを踏まえて」というのが何を言いたいのかよくわかりません。
 死刑を言い渡す度胸がなかったというのが本音ではなかろうか、と憶測しています。

 次に愛知の事件ですが、

 門野裁判長は昨年5月の一審・名古屋地裁と同様、「金品強奪と身代金の要求を事前に計画していた」と判示。一方で、殺害現場が目撃される可能性の高い駐車場だったことなどを挙げ、「殺害行為はたまたま条件が整ったため。強固な意志があったとは断定できない」とした。
   「殺害行為はたまたま条件が整ったため。」というところがどういうことなのかよくわかりません。  犯行前には殺害を全く考えていなかったと言うことなのでしょうか?  それなら「殺害は偶発的」というと思いますが、、、

 殺害手段は「絞殺」のようですが、「絞殺」を認定しながら「強固な意志があったとは断定できない」というのも釈然としません。
 一般論としては、絞殺は確定的殺意が認められやすい殺害方法です。

 情報の少ない報道に基づくこれ以上のコメントは無益みたいですね。

 最後にひとこと

 また、捜査員が取り調べで後藤被告の元妻と子の声を録音したテープを聴かせた点に触れ、「心理的な動揺を与えて供述を引き出す意図があった。捜査手法として妥当とはいいがたい」と指摘した。

 否認事件の取調べというのは、何らかの意味で「心理的な動揺を与えて供述を引き出」そうとするものですが、やはりやりすぎはいかん、ということでしょう。

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コメント(1)

大阪地裁・高裁と、あいついで死刑判決が下されました。

私の記憶が正しければ、島敏男判事は前任地が高松高裁で、部統括判事をなさっておられ、高松高裁でも逆転死刑判決を下された経緯があり、刑事司法にたいへん厳しい方だとお見受けしました。

素人の私がいうのもなんですが、今回の判決も、量刑の均質性を保持するべく、3名の裁判官で合議の上に合議を重ねて出した結論だと思われます。

当該事件に関しては、一審判決文が最高裁サイトの下級審判例として載っていました。しかし、何故か今は削除されております。新潮45(9月号)に事件の背景が書かれているので、興味のある方は古本屋でお求めください。

正直な話、判決文や雑誌記事を読むと、被告人にも酌むべき事情があると思います。被害者のご主人(被告人にとっては養子)の借金500万円の保証人になり、それを肩代わりしたとか、その他種々思うところがあるのですが、なにぶん、ご遺族(ご主人)の名誉にかかわることなので、ここでは述べません。ただ、大阪の新聞にはご遺族として、ご主人ではなく、まゆみさんのご両親のコメントが掲載されておりました。

決定的に心証を悪くしたのは、ようやくヨチヨチ歩きができ、片言のことばを発したばかりのいたいけな幼児までも、頭骸骨が陥没してしまうまで殴り、その上で浴槽に沈めて殺害したことだと思います。この行為で被告人は、モトケン先生のお言葉をお借りすれば、死刑というレールに乗っかってしまったと思うのです。

警察官から刑務官に転職した、いわば捜査を熟知している被告人が、マンション階段途中の灰皿に、タバコの吸殻を無防備に置いていくことや、陽も明るい午後に、人目につき易い自家用車で犯行現場を訪れていることから、確固たる殺害の計画性をもって、訪問したのではないのではないかと思うのです。

被害者のまゆみさんに横恋慕の情を異常なまでに抱き、ストーカー化してしまったようですので、部屋の中でどのようなやり取りがあったかは、被告人のみぞ知ることですが、当家に飼っていた二匹の小型犬も殺害されていることを考えると、被害者とのやり取りの中で、被告人は激情型の性格を爆発させ、可愛さ余って憎さが百倍の心情に達し、周囲にいる生きているもの全てを殺害し放火に至ったのではないかと思うのです。


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