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飲酒運転、同乗も懲役 ひき逃げ厳罰化 道交法改正試案(asahi.com 2006年12月28日12時51分)

 報道自体は、飲酒運転やその周辺行為に対する厳罰化改正試案の報道なのですが、その中にウィニー判決を考える材料がありましたので紹介します。

 運転者に車や酒を提供した人については、車と酒が飲酒運転の犯罪成立に欠かせない「道具」であることから、運転者と同等に厳しい直罰規定を新設する。これまでは飲酒運転の幇助などで立件していたが、運転者をあおったり、アルコール臭を消す消臭剤を渡したりする一般的な幇助行為と区別した。

 この記述のニュースソースが不明確なのですが、記者自身の言葉とは思えません。
 取材対象の法務省(か国交省?)の担当者つまり法律のプロの意見だと思われます。
 法務省の担当者とすると検事の可能性が極めて高いです。
 (訂正 我ながら頭ぼけてますね^^; 警察庁の担当者のようです)

 この記述の重要な部分は、「運転者をあおったり、アルコール臭を消す消臭剤を渡したりする一般的な幇助行為」というところです。
 言い換えますと、一般的な幇助行為としては、運転者をあおったり、アルコール臭を消す消臭剤を渡したりすることが想定されている、ということです。
 これは言外に、客が車を運転することを単に知って酒を提供しただけでは一般的な幇助行為として必ずしも十分でない、という感覚を示していると読めます。
 そして、このような感覚が法務省の担当者の感覚である可能性が高い、ということです。
 (訂正、警察庁の担当者の感覚も同様のようです。)

 だからこそ、つまり客が車を運転することを単に知って酒を提供しただけでは幇助行為と認定することに問題があるから、改正試案は幇助とは別の独立処罰規定を定めたと思われます。
 酒類提供による幇助行為を類型化して厳罰化したと見ることもできます。

 ウィニー判決に対して、「知っていたら処罰されるのか。そんなことは不当だ。」という批判がありますが、ウィニー判決も「知っていたら幇助」とまでは言っていないと思います。

 同様の指摘として、小倉先生の「京都地裁はさすがにそこまで大胆ではない」。

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コメント(19)

 僭越ながら、「種類」は「酒類」の誤変換ではないでしょうか?

> これは言外に、客が車を運転することを単に知って酒を提供しただけでは一般的な幇助行為として必ずしも十分でない、という感覚を示していると読めます。

幇助行為として十分ではないのではなく、幇助以上の正犯に近い、つまりより悪質であるということですよね?
「運転者と同等に厳しい直罰規定を新設する」
運転者=正犯と同等なわけですから。

従ってWinnyの判決との関連性はよりわからなくなりました。

No.2 クルンテープさん。

そうではなくて、「厳罰化」改正試案が、単に車や酒を提供する行為を、
運転者を煽ったり、アルコール消臭剤を渡したりする一般的な幇助行為と区別して、
「殊更に」直罰規定を設けると言う事は、運転者に車や酒を提供することが、
一般的な幇助行為として幇助犯が成立するに足りうる定型性を持っていないと言う風に読むのが
法律的な考えだと思います。

即ち、酒を提供したり、車を提供する行為は、
運転者を煽る行為やアルコール消臭剤を渡したりする行為よりも
当罰性が低いと考えうるのです。

> No.3 zero さん
> 即ち、酒を提供したり、車を提供する行為は、運転者を煽る行為やアルコール消臭剤
> を渡したりする行為よりも当罰性が低いと考えうるのです。

う〜ん、それだとどうして酒類提供者にアメを渡す人間(=幇助者)より、重い刑罰が科せられねばならないのか、よく分からなくなってしまうのですが。

> > 酒を提供したり、車を提供する行為は、運転者を煽る行為やアルコール消臭剤を渡したりする行為よりも当罰性が低い
> それだとどうして酒類提供者にアメを渡す人間(=幇助者)より、重い刑罰が科せられねばならないのか(No.4 中山さま)

飲酒運転禁圧のために、政策的に、厳罰にしたいからですよ。

刑法理論の一般原則によれば、
車で来店した人に酒を提供するというだけでは、飲酒運転の幇助行為とまでは言えないので、処罰することはできない。
(幇助犯として処罰されるのは、酒を飲んで運転するように特に勧めるとか、飲酒検問を免れるためにアルコール消臭材を渡すような、飲酒運転のために具体的に直接役立つ行為が想定される。)
そこで、特別に、酒や車を提供する行為を処罰する規定を設けたいというのです。

しかし、このような独立共犯規定は刑法理論上、問題があるとされています。
「正犯なくして共犯なし」と言われるように、正犯者が少なくとも違法性をもって処罰対象とされなければ、その教唆者や幇助者は処罰されないことが原則です。正犯により法益侵害が生じなければ、教唆行為や幇助行為を処罰する必要はないと考えられているのです。
ところが、独立した処罰規定を設けるならば、正犯者が途中で行為を中止して実際には法益侵害が生じなかった場合であっても、教唆者や幇助者については既に犯罪成立しており処罰は免れないことになる、これは行き過ぎではないかというのです。
例えば、本件では、
居酒屋に車で来店した客が酒を飲んだが、最終的に運転代行を頼んだので飲酒運転はしなかったとしても、店主のほうは客に酒を出した時点で既に犯罪が成立しており処罰される−というおそれがあります。
処罰範囲が過大にならないように、法文の規定の仕方をよく検討する必要があります。

>店主のほうは客に酒を出した時点で既に犯罪が成立しており処罰される−というおそれがあります。

つーことは、飲食店主は、自動車で来店した客には、飲まない免許所有者を確認しない限り、酒を提供してはいかんということになりますかな。結構大変そう。吉野家でビールを頼む客など、車で来たかどうかどうやって確認するんだろ?

ところで「アルコール臭を消す消臭剤」って売ってるんですか?普通の自動車用室内消臭剤をわざわざ渡すということなのか(そんな奴いるか?)、アルコールは体臭からも分かるので口臭防止剤では余り役に立ちそうもないですし。

>これは言外に、客が車を運転することを単に知って酒を提供しただけでは一般的な幇助行為として必ずしも十分でない、という感覚を示していると読めます。

そうなんですかね。
この記事の書き方では、「酒」と「車」に直接関与する(特別?)行為に対して、どちらにも絡まない行為(消臭剤、あおりなど)を一般的幇助行為と言って区別しているだけでは?
「一般的」の意味が「通常ある(想定される)」ではなく、酒と車が絡まない(幇助)行為を言っているだけで、だとも読めます。
逆に言うと、車を運転すると知って「酒」を提供する行為もこれまでは幇助行為で処罰できるのだが(それが記事の「これまでは飲酒運転の幇助などで立件してきたが」に表れている)、半分の法定刑では今の社会では不十分なので、同じ刑にする特別規定を設ける、というように理屈づけている(読む)のではないでしょうか。
しかし、特別規定を設けても、立証が難しいでしょうね。
なお、No5でも「規定の仕方」とあるように、おそらく実際に飲酒運転に及んでいないのに独立して処罰する条文ではないだろうと思います。

>ハスカップさん

 ご指摘ありがとうございます。
 しばらくPCを触れませんでしたので遅れましたが訂正いたしました。

>クルンテープ さん
>従ってWinnyの判決との関連性はよりわからなくなりました。

 私が引用した部分に実務家の幇助というものの感覚が表れているという限度での関連性の指摘でした。

>zero さん、中山さん

 YUNYUN さんの説明のとおり、一般的な幇助理論を飲酒運転という特別な領域について政策的に修正したものと考えられます。

 ただし、YUNYUN さんが指摘された問題点がありますので、被提供者が飲酒運転したことを処罰条件にするなどの工夫が必要だろうと思います。

>オジヤマ虫さん

 飲食店の店主が客に酒を出す行為を外形的に見ますと、「客の注文に応じて酒を出す」というもので、客が運転者であろうと非運転者であろうと全く同じなのです。
 それを「店主がこの客は運転者だと知っていた」という主観のみに基づいて処罰するというのは非常に問題があります。
 一般的は幇助犯規定の適用はそう簡単ではないのです。
 また慎重でなければならないのです。


たぶん酔っぱらい運転で事故になる確率は日本全国で同じだろうと思うのですが、酒を提供する例えば宴会の習慣とか交通機関の整備の状態とかは日本全国ではかなり違うでしょう。

そうなると「幇助」というのが「単に知っている以上」としてもその中身はそれぞれの土地の文化などによって変わるのでしょうかね?

裁判員裁判では判決に影響が出るかな?

いえ、私は「一般的な幇助行為」の意味の捉え方が違うのでは?、「言外に・・・」の部分の読み方(理解の仕方)が読みすぎではないか?、と言いたかっただけです。
そう読むことによって一定の方向への結論に使うのではなく、端的に問題点を指摘するなら良いのです。
再度言いますと、元々の記事は「一般的行為=酒提供が絡まない幇助行為の態様」という用語の使い方に過ぎない(逆に言えば「特別的行為=酒提供が絡む幇助行為の態様)のではないかということです。
その処罰の当否については別です。
「・・・一般的な幇助行為として必ずしも十分でない、という感覚を示していると読める」というところを問題にしているのですが、わかってくださいますかね。

>オジヤマ虫さん

 私が引用した記事の書き出しは「運転者に車や酒を提供した人については、」ですから、記事が言うところの「一般的な」という言葉は、酒について言えば、飲食店の店主が客に酒を提供する場合に限定した上での話と読みました。

No.10 オジヤマ虫さん

酒、車が正犯行為に不可欠であるから、それらを提供する行為類型の方が違法性が高いように見えるかもしれません。

しかし、刑法理論的にどちらが正犯行為を物理的・精神的に助長しているかと言うと、、
オジヤマ虫さんが言われる特別幇助行為よりも、一般的幇助行為(刑法では余り使わない言葉ですが)
として挙げられているような行為の方なのです。

やはり、酒、車を提供する行為よりも、酒を飲むよう煽ったり、車を運転するよう煽ったり、
また、アルコール消臭剤があるから大丈夫と消臭剤を渡す行為の方が、正犯行為を容易ならしめたと言えるでしょう。

それ(一般的幇助行為の用語は使わない)は分かっているつもりですが、新聞記事(記者の言葉・用語の使い方)ですからね、またその取材源の人が使った言葉にしても、私には彼らなりの使い方をしていると思うのですが、再度記事を読むことをお勧めして、この点は終わりにします。

消臭スプレーの例えとwinnyの配布では方法として異なる面もある
スプレーは「違法行為実行者に直渡し」の様に記述しているのに対して
winny(に限らずフリーソフト一般)は「誰でも取得できる状態」です

スプレーとwinnyを例えとして同列に扱うのならば
「スプレー(など違法行為用途可能物)を「路上に放置した」
の様な例えにしなければ論点のスリカエになると思います

例題:「ナイフを路上に放置した、ないしゴミ箱に捨てた」
⇒犯罪の凶器として使用された

これも幇助なんでしょうか?

幇助犯の概念のお勉強としてご教示いただけましたら幸いです

No.14 いのげさん

>スプレーとwinnyを例えとして同列に扱うのならば
>「スプレー(など違法行為用途可能物)を「路上に放置した」
>の様な例えにしなければ論点のスリカエになると思います

判決や争点から、Winny事件においても、単に開発や提供のみを問題にしてる訳ではありません。
改良行為や、開発者の供述等も問題となっています。
したがって、スプレーを「路上に放置した」という事案では
開発者の行為をより消極的に評価している点で、事案として不十分であり、
論点の摩り替えならぬ、事案の摩り替えとなって居ます。

同様に巷に溢れる包丁理論や、高性能車開発、提供者の例えも、
開発者の行為と比較して、幇助犯として正犯者への関与の度合いを
より消極的に評価した所が出発点となっており、事案の摩り替えです。

私見として開発者の行為を全体的に見ると、ここで言われる、
特殊的幇助行為よりも一般的幇助行為に関与の度合いが近く、
判決での評価も、一般的な刑法概念に基づいたものであり、
アクロバチックで、特殊な解決を図ったものとは考えて居ません。

ここで理解しておかなければならないのは、例え、類似する事件があっても、
世の中に一つとして全く同じ事件など無いと言う事です。

幇助犯の概念の勉強は刑法総論の基本書や参考書を熟読する事をお薦めします。
幇助犯概念を正しく理解するには他の共犯理論や共犯概念、
更には構成要件・違法性・有責性と言った犯罪論を理解する必要がありますので
ネットの掲示板の遣り取りで、幇助犯の概念を勉強するというのは
不可能では無いにしても、膨大さという量的問題や非効率性から言って、
合理的とは思いません。

たしかにその通り 事例は同じでないのなら
たとえを使うこと自体が不適切です
で、裁判原資料を読もうとなると
どこかに傍聴記でもあるかと検索してみましたが
まとまったのはありませんでした

第4・5・7回公判
http://mrmts.com/jp/ethics/ethics.html
18回?
http://d.hatena.ne.jp/joho_triangle/20051212#p2

壇弁護士ブログにも書いてあるかもしれません
http://danblog.cocolog-nifty.com/index/

元の資料が見れなかったら何ともいえんですな
刑法総論の本は多少もってますが故意犯には
あんまり興味なかったので未読です
当直中に読んで見ませう

>ここで理解しておかなければならないのは、例え、類似する事件があっても、
世の中に一つとして全く同じ事件など無いと言う事です。

これって医療でも言えることなんですが
医療関連司法に反映されているかについては
疑問に思ってますです

>YUNYUNさん
居酒屋に車で来店した客が酒を飲んだが、最終的に運転代行を頼んだので飲酒運転はしなかったとしても、店主のほうは客に酒を出した時点で既に犯罪が成立しており処罰される−というおそれがあります。

いまさらなネタですが…。これはちょっとおかしいのでは。
少なくとも因果的共犯論を採っている判例・実務では,正犯が実行に着手しないと共犯も実行に着手したことになりません(実行従属性)。つまり,居酒屋が酒を出したとしても,その時点で可罰的になるのではなく,酔客が運転した時点ではじめて居酒屋の店主に飲酒運転の幇助罪が成立します。

もっとも,居酒屋の店主等を直接処罰する条文をもうける警察庁試案の立法趣意は,提供者を重罰化すると共に,幇助犯構成だと正犯についての証明が必要となるので,これを軽減する意図もあるのではないでしょうか?

No.17 かけだし理論家さま

No.5で私は、まさに理論家さまが指摘された点を論じたつもりでした。
> このような独立共犯規定は刑法理論上、問題があるとされています。(No.5)

現行刑法には、「運転者に酒を供する行為」を処罰する条文がありませんから、運転者が飲酒運転の違反行為をした場合に、それに荷担した共犯者としてしか処罰されません。
しかし、警察庁が考えているように、運転者に酒を供する行為自体を独立の構成要件化すれば、形式的にその行為が「正犯」と扱われることになるので、運転者の行為とは独立的に処罰されます。

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> 幇助犯構成だと正犯についての証明が必要となるので,これを軽減する意図もあるのではないでしょうか?(No.17 かけだし理論家さま)

確かに、独立処罰規定の手続法的な効果はそうなりますね。
検察官請求証拠は、酒屋の前の駐車場の写真のみ。運転者の飲酒検問結果やどこの店で飲んだかの事情聴取は不要になります。

似たような問題は、未遂・予備行為の可罰化についても生じます。
未遂・予備を処罰するためには、当然ながら、(既遂罪としての)結果発生や、行為と結果との因果関係の立証は不要です。
通常、未遂・予備罪の刑は、既遂罪の刑と比べて軽く定められていますが、十分重く設定することにより、訴追側の立証負担を軽減しつつ、取り締まり効果を上げることが期待されます。
共謀罪法案は、そのことを狙ったものとも言われています。

Winny判決では、法によって保護されるべきものとして著作権を念頭においており、Winnyの開発者も充分な能力があるのだから、著作権を無条件に侵害しないだけの機能制限を合わせて開発してからFreewareとして提供する責務(注意義務みたいなもんでしょうか、素人ゆえ詳しくないけど)があっただろうという常識的な判決と受け取りました。

一方、この飲食店の酒類提供を飲酒運転幇助行為で有罪とする法運用は常識的に見てやりすぎじゃないかとの感を抱いていましたが、
>No.17 かけだし理論家さんのコメント
を見て、蓋し当然の論理的疑義を鋭くご指摘だと感じ、やはり警察検察裁判所の仕事やり過ぎの危険が増大するのかなと改めて危惧を抱きました。こちらのほうには暴走制限機能やfail-safe機能は付いているのでしょうか?ご存知のかたおられれば教えていただければしあわせです。

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