弁護権侵害:飲酒事故で妻死なせた男の弁護士が提訴(毎日新聞 2007年1月5日 20時13分 (最終更新時間 1月5日 20時54分))
福島県鏡石町で昨年11月、酒を飲んで車を運転し、妻(当時43歳)をはねて死なせたとして業務上過失致死と道交法違反(酒気帯び運転)の罪で起訴された同町の会社役員、滝口重被告(45)の弁護人が5日、弁護権を侵害されたとして国と県を相手取り、慰謝料など200万円を求める訴訟を福島地裁郡山支部に起こした。訴えたのは斎藤利幸弁護士(54)。訴状などによると、斎藤弁護士は滝口被告が起訴された翌日の06年12月15日に県警須賀川署で滝口被告に接見し、起訴後に署員から遺棄致死容疑で取り調べを受けたことを知らされた。斎藤弁護士は「刑事訴訟法に違反する」として同署に中止を通告したが、同19日にも取り調べが行われた。
同法198条は検察官や警察職員による被疑者の取り調べを認めているが、被告の取り調べについては規定していない。斎藤弁護士は「起訴後の拘置を利用して取り調べ、重罪に変更しようとしている」と主張している。五十嵐広和・同署副署長は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。【福沢光一】
私も訴状を見ていませんので、よくわからないところがあるんですが、
どこが弁護権の侵害になるのかはっきりしません。
上記の遺棄致死罪の被害者が起訴済みの業務上過失致死罪の被害者のことであるとしますと、たしかに取調べは違法である可能性が高いです。
こんな取調べを認めたら、殺人未遂の容疑者が殺意を否認したらとりあえず勾留満期に傷害で起訴しておいて、その後で殺意の有無を取り調べることが可能になってしまい、勾留期間を20日間に制限した法の趣旨が無視されてしまいます。
しかし、違法な取調べがイコール弁護権の侵害になるとは思えません。
違法な取調べの被害者は被取調者(本件では被告人)であって、弁護人ではないからです。
ただし、違法な取調べを理由にして接見を拒否されたのであれば弁護権の侵害になると思います。
このあたりは訴状を読んでみないとこれ以上コメントできません。
以下は余談ですが、どうしてマスコミは「勾留」を「拘置」と言うのでしょう。
記者はけっこう法律用語の正確性を気にするのですが、勾留についてはなぜか「拘置」ですね。
特に、
斎藤弁護士は「起訴後の拘置を利用して取り調べ、重罪に変更しようとしている」と主張している。
のように弁護士の言葉として括弧書きで書かれますと、非常に違和感を覚えます。
弁護士は絶対に「拘置」なんて言いませんから。
まあ、専門家的知識をひけらかしているような蛇足コメントですが(^^;
追記
より詳しい報道を引用しているブログがありました。
起訴後の取調べと「弁護権侵害」(取調べ可視化 最前線)
起訴後の被告人の任意取調べにおいて弁護人の取調べへの立会権があることを前提に、この立会権を侵害して取調べを行ったことをもって「弁護権侵害」と主張する趣旨だろうか...(・_・")?
私も (・_・")? です。
現在、弁護人の取調べへの立会権は認められていません。
認めるべきという意見が強く主張されているだけです。
勾留の「勾」が常用漢字ではないからでしょう?
被告人を被告、強姦を婦女暴行など彼らの意識による「人権尊重」もあります(最近少し変わったかな?)。
いつも疑問に思っているので、この際質問させてください。
別件逮捕・勾留って違法じゃないのでしょうか。
重大事件の場合、明らかな別件逮捕だと思われる事例が報道されることがありますが、批判的な論調はほとんど見られません。
違法だという私の認識が誤りなのでしょうか。
テレビニュースや新聞を見ていて思うのは、ただ事実を垂れ流しているようにしか見えない、ということ。こういうことがあった、誰々がこう言ったというだけ。何がどう問題なのか、法律上の問題なのか、事実上・政治上の問題なのか、マスコミにはそれすら判断する能力がないのかどうなのか。でも、実際には、編集作業を経て私たちの目や耳に触れるわけですから、何かしら意図があるのかと勘ぐってみたくなったりもする。
さて、別件逮捕・勾留は違法なんですが、何をもって別件逮捕・勾留というかは争いがあるようです。
本件では別件逮捕は問題になっていないようですが、私的には、原則的には、逮捕・勾留事実につき、逮捕・勾留要件が備わっていれば適法であり、勾留後の別件取調べは、取調事項の許容範囲の問題と考えております。
ちょっと専門的なことをはしょって説明してますので、わかりにくいかもしれませんが(^^;
>重大事件の場合、明らかな別件逮捕だと思われる事例
逮捕・勾留自体は適法で、その後の取調べが違法になるかも、って理解でいいですね。
>No.5 mさん
私の基本的な考えはそうです。
但し、勾留事実を全く調べないとかほんとに形式的にしか調べないようなあまりにも露骨な別件逮捕の場合までそう言っていいかどうかは疑問です。
いくら逮捕・勾留要件が認められるとしても濫用的勾留として違法になるのではないかと思います。
>批判的な論調はほとんど見られません。
>違法だという私の認識が誤りなのでしょうか。
マスコミ、一般人も含め、別件逮捕を悪いことと思ってないのではないでしょうか。むしろ、悪い奴はどんな手段でも取り調べろと(いつ自分が「悪い奴」のレッテルを貼られてそんな目に合うか考えると怖いですが)。
逮捕勾留も取調べ目的だと普通の人は思ってるような気がします。
>No.7 m さん
>マスコミ、一般人も含め、別件逮捕を悪いことと思ってないのではないでしょうか。
そう思います。
以前に こんなエントリを書いてます。
>逮捕勾留も取調べ目的だと普通の人は思ってるような気がします。
実務的には、勾留は取り調べのために行うと言っていいと思います(^^;
ご紹介頂いたエントリ読みました。
「違法捜査を容認または期待してるかのような記事」にはどっきっとしました。マスコミの社会的使命は?などと考えてしまいます。
どうも、逮捕=犯人→社会的制裁OKのような図式。
「無罪推定原則」は法律上の有罪・無罪にのみ妥当するというので本当に良いの?
素朴な疑問です。
本文に追記しました。
> bamboo さん へ
日本では、別件逮捕は当たり前に行われていると思います(数の把握は出来ませんが)。マスコミもその点を指摘する事はほとんどありません。日本のジャーナリズム精神も、日本国民の人権意識もその程度なのかもしれません。またそれを問題にする立法、司法関係者もほとんどいないように思います。
マンション耐震構造偽造で有名になった、イーホームズ株式会社の藤田東吾氏の場合もその例だと思います。イーホームズの架空増資と耐震強度偽装を結びつけて、実刑を狙ったようですが、裁判所では関連性を否定され、執行猶予になったようです。詳しい経緯はWikipediaにもでています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/藤田東吾
別件逮捕とは直接関係ありませんが、今月公開される痴漢えん罪の映画「それでもボクはやってない」もご覧ください。日本はとても恐ろし司法国家であることを忘れてはいけません。