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死亡事故:男性はねた女性に無罪判決 横浜地裁(毎日新聞 2007年1月25日 15時00分)

 04年、乗用車を運転中に男性をはねて死亡させたとして、業務上過失致死に問われた女性(65)に対し、横浜地裁は25日、無罪(求刑・禁固1年4月)を言い渡した。倉沢千巖裁判官は「目撃者の証言に疑問があり、検察官の証明は十分でない」と述べた。

 業務上過失致死傷事件というのは、比較的無罪率の高い罪名です。

 事故は04年7月、神奈川県藤沢市の交差点で発生。検察側は目撃証言から「女性が左折中、横断歩道を自転車で渡っていた男性をはねた」と主張。女性と同乗していた家族は「青信号を直進していたら、突然男性が飛び出した」と供述していた。

 横浜地検交通部経験者としては、ぞっとするような難事件です。

 判決は「捜査・公判を通じ、女性の供述や家族の証言が一貫しており、検察官の尋問にも揺らいでおらず信用性がある」と判断。複数の目撃証言が互いに矛盾することも指摘した。

 必ずしもそうとは言えないけどな、とは思いますが、これは全ての供述証言を詳細に検討する必要のあるかなり微妙な判断です。

 証拠も見ずに、起訴検事や上司を馬鹿だ、間抜けだとは到底言えない事件です。

女性側の望月賢司弁護士は「ほぼ主張通りの判断してもらった。ただ、遺族のことを思うと複雑な気持ちだ」と話し

 保険金の額にも影響するでしょうね。

 検察官控訴の可能性がありますので、まだまだわかりませんが。

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コメント(5)

検察が証言をすべて公開しているのでしょうか?していると言うことが前提になると思いますが、もし、都合の良い証言だけを選んでいるのであれば問題だと思います。証言を手に入れるにしてもバイアスのかからない方法で証言を手に入れ、その上で第三者にある程度の判断してもらう必要があると思います。
その上で裁判所が判断するしかないですね。なんか、医療訴訟に通じるものがあってすっきりしないですね。

刑事裁判の証拠調べのやり方について。

> 検察が証言をすべて公開しているのでしょうか?(No.1 yama さま)

「証言」というのはやや不正確ですが。
検察側が人の話を証拠とする方法は、2通りあります。
・供述調書 警察・検察が関係者から事情聴取して、聞き書きしたもの
・法廷での証言

「供述調書」は捜査側が被告人の有罪立証に役立てるという目的に沿ってまとめたものですから、本質的にバイアスがかかっていると言わざるを得ません。
そこで、刑事訴訟法は「伝聞証拠排除の法則」を定め、誰かが作った聞き書き(供述調書)よりも、法廷に証人を呼んで直接に話しを聞くほうが原則であることを定めています。
しかし、実際上は、関係者全員の話を法廷で聞いていては、大変時間がかかります。要点だけをまとめた供述調書を読む方が、何倍ものスピードで審理を進めることができて、効率的です。
そのため、弁護人が同意した供述調書については、証人尋問に代えて供述調書を書証(紙に書いた証拠)として取り調べ、不同意にした人だけを証人として法廷に呼んで証言してもらうという方法をとっています。現実には、大半の裁判では証人を呼ばずに供述調書だけを調べて終わりにしており、伝聞法則が逆転している、「調書裁判」であると批判されています。

ところで、捜査過程で作成された供述調書その他の証拠類は、全てが裁判に提出されるわけではなく、訴追を行う検察官が、立証に必要かつ十分なものを選択して、裁判での証拠調べを請求します。
弁護人が同意・不同意を言うために、検察官は裁判に出そうと思う書証については事前に弁護人に開示しなければなりません。
しかし、検察官が証拠請求しないつもりの書類は、弁護人が見る機会もなく、そのまま埋もれてしまうことになります。そうすると、特に被告人に有利な内容の証拠を、検察官が隠し込んでいないかが問題となります。
弁護側としては、事件の内容からして当然にこういう証拠があるはずだと考えるものは、開示せよと要求しますが、そもそもどんな証拠が存在するかを知らないのですから、請求しようがないというのが、実情です。

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なお、本件では、検察官の証拠隠しという問題ではなく、
検察官が証拠請求した供述調書の記述自体、または、法廷での証言内容が、各人バラバラで食い違っており、誰の話が信用できるかが問題になった事案と思われます。

事件の当初から言うことが「一貫している」人については、信用性が高いと判断されます。
反対に、途中で言い分を変えたとき、例えば被告人が捜査中に自白していたが、裁判になってから否認に転じたような場合は、信用性がないと思われやすい。一旦認めてしまうと、取り返しが付かないと言われるゆえんです。

リンク先が切れてしまう可能性があるので引用を

福島産科事故:被告産婦人科医、起訴事実を否認 初公判で

弁護人とともに入廷する加藤医師(左)=福島市の福島地裁で26日午前9時45分、今村茜写す 福島県立大野病院(同県大熊町)で04年、帝王切開手術中に女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、加藤克彦被告(39)の初公判が26日、福島地裁(大沢広裁判長)であった。加藤被告は「死亡や執刀は認めますが、それ以外は否認します。切迫した状況の中で精いっぱいやった」と起訴事実を否認した。

 冒頭陳述で検察側は、応援を呼ぶべきだという先輩医師の事前のアドバイスを被告が断ったことや、胎盤はく離開始5分後の血圧降下など大量出血の予見可能性があったことなどを指摘した。

 弁護側も冒頭陳述を行い、明白な医療過誤とは異質と指摘。胎盤はく離は現場の裁量で、事後の判断は結果責任の追及になると反論し、産科専門家の意見も聞いていないと捜査を批判した。

 起訴状によると、加藤被告は04年12月17日、帝王切開手術中、はがせば大量出血するおそれがある「癒着胎盤」であると認識しながら、子宮摘出手術などに移行せず、手術用はさみで胎盤をはがし失血死させた。また、医師法が規定する24時間以内の警察署への異状死体の届け出をしなかった。【町田徳丈、松本惇】

 ◇被告 落ち着いた声で書面読み上げる

 「1人の医師として患者が死亡したのは大変残念」。初公判で加藤被告は起訴事実を否認する一方、死亡した女性に対しては「心から冥福を祈ります」と述べた。黒っぽいスーツを身につけ、落ち着いた声で準備した書面を読み上げた。

 加藤克彦被告が逮捕・起訴されて休職となり、昨年3月から県立大野病院の産婦人科は休診が続いている。同科は加藤被告が唯一の産婦人科医という「1人医長」体制。再開のめどは立たない。

 隣の富岡町の30代女性は加藤被告を信頼して出産することを決めたが、休診で昨年4月に実家近くの病院で二男を出産した。女性は「車で長時間かけて通うのも負担だった」と振り返る。二男出産に加藤被告が立ち会った女性(28)も「次も加藤先生に診てもらいたいと思っていた」と言う。

 一方、被害者の父親は「事前に生命の危険がある手術だという説明がなかった」と振り返る。危篤状態の時も「被告は冷静で、精いっぱいのことをしてくれたようには見えなかった」と話す。

 病院の対応にも不満がある。病院側は示談を要請したが父親は受け入れず、05年9月の連絡を最後に接触は途絶えた。昨年11月に問うと、病院は「弁護士と相談して進めていく」と答えたという。「納得できない。娘が死んだ真相を教えてほしい。このままでは娘に何も報告できない」と不信感を募らせる。【松本惇】

 ■「通常の医療行為」の結果責任追及 医師界に危機感

 この裁判では、加藤被告を逮捕、起訴した捜査当局に、全国の医師から強い批判の声が上がっている。背景には、通常の医療行為で患者が死亡した結果責任を、医師個人が追及されているのではないかという危機意識がある。医師の刑事責任を負うべき判断ミスか、1万例に1例といわれる「癒着胎盤」のために起きた不幸な事故か。医師法で届け出義務が課される異状死の定義があいまいという指摘もあり、裁判の展開を多くの医療関係者が注目する。

 最大の争点は「癒着胎盤」のはく離を中止すべきだったかどうか。検察側は「癒着胎盤と分かった時点で大量出血しないようにはく離を中止し、子宮摘出に移行すべきだった」と医師の判断ミス、過失ととらえる。これに対し、弁護側は「臨床では止血のために胎盤をはがすのは当然で、出血を放置して子宮を摘出するのは危険」と通常の医療行為だと主張する。

 このほか、癒着胎盤の程度や大量出血の予見可能性なども争点となる。

 日本産科婦人科学会の昨年12月の発表によると、06年度(11月まで)に同会に入会した産婦人科医は298人で、2年間の臨床研修が課される前の03年度の375人から2割程度減少した。同会の荒木信一事務局長は「産科医の過酷な労働状況や訴訟リスクに加え、大野病院の事故が減少に拍車をかけた」と分析している。【松本惇】

毎日新聞 2007年1月26日 12時00分 (最終更新時間 1月26日 13時33分)

ここで遺族は「危篤状態の時も被告は冷静で、・・・」と言っていますが、こういう緊急時に大騒ぎする医師がいたらそれこそそんな医師には任せられないというのが普通の人の感覚だと思うのですが・・・・。あまりにも遺族の主張は感情論になりすぎで論理的妥当性に欠けていると思います。
しかし、医療人たる我々はそういう感情論も一応真摯に受け止める必要性があると思います。ただ、問題はその後の行政、司法の対応です。また、マスコミといった第四の権力の暴走を止めることも必要です。患者や患者の家族の意見は聞くだけ聞く、しかし正当性を主張し、よりよい医療に向けて啓蒙活動をしなければならないのだと思います。
そういう意味で加藤医師の冷静な態度というのは評価できます。しかし、一般の人には冷酷と映るのでしょうか?

思いっきり違う内容のレスを書いてしまいました。
> モトケンさま
これと、その前のレスを削除して頂けますでしょうか?お手数おかけ致します。

しまさま
ご丁寧なご回答ありがとうございます。ということは、この案件については被告人の言うことが一番信用できると言えそうですね。

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