埼玉・川口の園児死傷事故:男に懲役5年判決 さいたま地裁「危険な運転癖」(毎日新聞 2007年3月16日 東京夕刊 キャッシュ)
この事故は遺族らが危険運転致死傷罪の適用を強く求めたが検察が通常の業務上過失致死傷罪で起訴し、最高刑の懲役5年の求刑を行い、求刑どおりの判決になったわけですが、
中谷裁判長は、井沢被告が交通違反を繰り返し、同じ脇見で物損事故を3カ月前に起こしたと指摘。生活道路で急加速しながら脇見運転したことを「危険運転行為と実質的危険性に差異のない過失」として、「懲役5年をもってしても社会的非難、罪責を十分に評価しきれない」と断罪した。
これは、要するに、検察は危険運転致死傷罪で起訴すべきだった、と言っているように聞こえます。
追記(3月22日)
このエントリは、異例に強い裁判官の非難評価に脊髄反射的に反応して書いたもので、反省しているところです。
以前にも触れた記憶がありますが、この事故に対して危険運転致死傷罪を適用するのは相当困難です。
たぶん、危険運転致死傷罪を適用する検事はいないだろうと思います。
もちろん裁判官もそのことは十分理解しているはずですので、このエントリの本文は適切ではなかったな、と反省しているわけです。
危険運転致死傷罪の作り方がとてもへたくそだと思わせる事件ではあります。
しかし、裁判官が「「危険運転行為と実質的危険性に差異のない過失」と言ったのはよく理解できます。
報道では「脇見運転」という表現が見られますが、本件は単純な脇見運転事案ではありません。
「脇見運転」は前方不注視の原因ですが、本件は脇見が常習的であることに加え、暴走とも言えるハンドル操作の誤りが直接原因と思われますので、過失の程度は重大です。
裁判官としては、遺族・被害者に対する最大限の配慮も込めて、被告人を糾弾したものと思います。
報道された限りでしか分かりませんが、危険運転致死傷の構成要件を満たすことはかなり困難な事案であると思います。この裁判官も、危険運転致死で起訴されたら無罪にしたと思います。「実質的危険性は同じ」というのは、やはり、「形式的には構成要件を満たさない」というのが前提となっていて、どちらかというと検察批判というよりも、立法府批判のように感じました(それが正しいかどうかは別として)。
だいたい、構成要件を分別しすぎなのが良くないのではないでしょうか。
業務上過失致死傷の法定刑の上限をあげるだけではだめなのでしょうか?それは他の故意犯との関係から難しいのでしょうか?
>それは他の故意犯との関係から難しいのでしょうか?
交通事故以外の業過との兼ね合いだと思います
現行法の「業務」の概念が雑というか広範すぎます
私はいい判決だったと思いましたよ。
刑は上限の5年にしか出来ないけど、最悪の事故を起こした常習的危険ドライバーを精一杯糾弾した、判事さんの思いのこもった判決だったと。
ならば裁判長は訴因変更命令を出すか、訴因変更の勧告を出せばよかったと思います。確かそんな訴因の判例があったように思います。
傷害致死罪などの判決で「実質的に殺人に匹敵する行為」などといわれることがたまにありますが、それと同じでしょう。
また、「典型的強盗殺人とは事案を異にする」「実質的に強盗殺人と変わりない」といった発言もたまに耳にします。
今回のもその一種と思っています。
「危険運転で起訴すべきだったと言っている」と見るには無理があると思います。
>危険運転致死で起訴されたら無罪にしたと思います。
実際にこのような事はあるのでしょうか?
無謀運転による死傷事故の裁判がある度に「どうして危険運転致死で起訴しないのだろう?」って思ってしまいます。
起訴された時点で「危険運転致死では無罪になる可能性があるから業過致死傷で立件した方が良い」みたいな事を裁判官が検察に進言するようなことってあるのでしょうか?
詳しい方教えていただけませんか?
危険運転致死で起訴されていても、実際には無罪にはなりません。
裁判官は、公判中に、危険運転致死の成立が微妙または困難と判断すれば、「予備的訴因」に業務上過失致死を付け加えるように検察官に勧告します。
その一例です↓
http://www.sanyo.oni.co.jp/newsk/2007/01/11/20070111010002441.html
生活道路が車優先で舗装されていたことは、事故に関係無いことなんだろうか?最近の車が舗装路での加速レスポンスの良さを売り物として造られていることは無関係?この被告人が業務において社会的に成熟し切っていないのは本人の反社会的法律無視性向のせい?車運転していない時もやくざ屋や暴走族の看板上げて生活してる人じゃないようだけど、彼らよりも社会人として悪質な違反行為なのかな。目が二つしかなくてぼけばかりかましながらでしか運転できないぼつでおkには、この人がほんとうに中谷裁判長がいうような「懲役5年をもってしても社会的非難、罪責を十分に評価しきれない」ほどの心底憎むべき悪人だとまでは思い至らないな。ぼつでおkだから(笑)おつむが少し足りないのかな。
或る時はぼとでおk又或る時はぼけでおつ而してその正体はぼつでおkな、ぼそぼそタワゴトでした(笑)
>危険運転致死で起訴されていても、実際には無罪にはなりません。
yさん、事例まで提示して頂いたうえ、コメントありがとうございます。
ただ、気になるのは
>伊藤裁判長の勧告で同罪を予備的訴因として追加した
とありますので、本件の場合は、たまたま裁判長の裁量で追加した業過致死が適用されましたが、裁判長の勧告が無ければ無罪になった可能性もあったということなんでしょうね。
被告は提訴されたようですね。
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/m20070320k0000m040144000c.html
正直、減刑は望めないように思えますし、今後の補償を考えると、
これ以上被害者や遺族の方々の感情を刺激するのは、
得策ではないと思うのですけど。
当初「弁護士に刑を受け入れると話している」と報道されていた記憶があるのですが、
いかなる心境の変化があったのでしょう?
提訴取り下げられたようです。
結局なんだったんだろう?
実刑判決が確定して収監されると身分は受刑者となり、気軽に親族や関係者と面会できなくなります。そのため、受刑前の身辺整理(経営会社の業務引継ぎや離婚手続きのツメ)をするために関係者との面会で打ち合わせの期間を要する場合、かたちだけ上訴(控訴や序国)する被告人がいます。そういう方は身辺整理が済んだ段階で上訴を取り下げるそうです。
また、ひょっとしたら刑が軽くなるかもと上訴したけれど、弁護士と詳細に打ち合わせたら、減刑の見込みはほとんどなく、受刑の開始が遅れる分だけ出所・社会復帰が遅れるだけだとわかり、上訴を取り下げる場合もあるそうです。
珍しいのは、高裁所在地在住の親族や知人に一目会いたいばかりに上訴して、高裁所在地に移管(身柄移送)されて、心行くまで高裁所在地で面会を重ねる方もいるようです。新潟地裁から東京高裁、青森地裁から仙台高裁、釧路地裁から札幌高裁……という具合に。特に実家の両親が高齢で高裁所在地在住だと長期刑の被告人に傾向が見受けられるとか。出所までに両親が亡くなる可能性が高い長期刑や無期刑だと。被告人も人の子だと思いました。
以上は、昔のアルバイト先の弁護士先生から教わったネタです。
>No.9 DJニャンタロウさま
裁判所には不当な無罪を避けるため訴因変更に向けて動く義務が生じる場合があるようです。
ハスカップさん、お教えいただきありがとうございます。
なるほど、上告理由にも色々あるのですね。
ただ、今回の場合はその理由がはっきりしないと、
被害者側に悪い印象与えるだけだと思います。
まあ、私が心配する話でもないですが。
とりあえず、この事故も一区切りですか。
加害者の方はここからが長い贖罪の始まりでしょうけど。
追記しました。
ちょっと訂正してます。
No.13 ハスカップ様
わああ、ありがとうございます。
これです、この事例が知りたかったんです。(^-^)
>モトケン先生
当時のマスコミ記事をサイトで検索してみたら、ご指摘のように危険運転致死罪の適用はもともと無理な事案だったようですね。だから訴因に対する求釈明も訴因変更の勧告もしなかったようです。
とすれば、マスコミで発表されている判決内容は、裁判官による遺族への精一杯の配慮と暗に立法の問題を指摘したような感じを受けました。だから、法務省は自動車運転業務上過失致死傷罪を新設しようとしたのでしょう。
いつもためになる解説をありがとうございます。m(_ _)m