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 秋田県藤里町の連続児童殺害事件で、殺人罪などに問われている畠山鈴香被告(34)が、長女彩香(あやか)さん(当時9)の殺害について、殺意を否定する説明を弁護士らにしていることが、関係者の話でわかった。

 ニュースソースがはっきりしませんが、報道の範囲でコメントしますと

 橋の上から約8メートル下の川に子供を落としておいて「殺意はない」というのははなはだ説得力がありませんから、「わざと落とした」という点を否認して、長女が誤って落ちたという事実を主張するのかな、と思います。

ただ、橋の上で母子をみたという目撃証言のほかに、物的証拠はないとされる。

 つまり、捜査段階の自供を支える証拠は何もないに等しいです。
 つまり、捜査段階の自供の任意性・信用性が全ての事件ということになりますが、最近の取調べに関する不祥事の報道が裁判官に影響していないとは思えません。
 とはいうものの、本件では

 一方、米山豪憲君(当時7)殺害について弁護側は、起訴事実について認める方針。

 一連の捜査の中で、彩香ちゃん事件でので自供に任意性・信用性を争いつつ、豪憲君事件でのそれを争わないというのは、弁護テクニックとしてはかなり難しい部類に入るだろうと思います。

 本件は、自供の信用性に依存する事件ですが、こういう事件は珍しくないわけでして、一般的に「物証のない自白は信用性がない」と言ってしまうと起訴できない(または無罪になる)重大事件が相当数でることになります。
 こういう事件の切り札としては、どうやら「取調べの可視化」しかないように思います。
 「取調べの可視化」は供述の信用性の存否に関する資料を提供してくれます。
 つまり、可視化によって、自供の信用性がないと判断される場合もあると判断される場合もあるわけで、常に弁護側に有利であるとか、捜査側に不利であるとか言えないわけです。

ただ、畠山被告について精神鑑定を請求し、責任能力について争うという。

 豪憲君事件の弁護戦術のようです。
 ただ、彩香ちゃん事件は否認しているわけで、精神鑑定にあたっては彩香ちゃん事件に関する供述の信用性の判断が精神鑑定にも大きく影響すると思うのですが、その点、鑑定人の精神科医がどの程度判断可能なのかについて、私は懐疑的です。
 となると、精神鑑定結果の信頼性に問題が生じるのではないかと思っています。
 特に、彩香ちゃん事件の自供の信用性判断が、鑑定人と裁判官とで異なっている場合は鑑定結果の信頼性に重大な疑問が生じるのではないでしょうか。
 鑑定段階では裁判官の心証は明らかではないわけですから、このような事態は十分ありうることです。

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コメント(3)

>精神鑑定を請求し、責任能力について争うという。
常々思っているのですが、責任能力は否定するが行動の自由は欲しいというのは違和感があるのですが。
もちろん、「あのときは心神喪失だが、いまは健全(だから、裁判で無罪だし、今から以後は行動の自由を認めろ)」というのは理論的にはありですけれど、心情的にはね。

端的、思考実験です。
満月の晩には心神喪失状態になる字義通りの「狼男」君が実在するとして(つまり月夜の晩には心神喪失になると言うことを検察も医師も裁判官もすべて認めてる被告がいるとして)、現行法ではどのように裁かれ、また裁判以後の「狼男」君の行動の自由は制限されるのでしょうか?
「狼男」君は、条件が満月とわかっているから、無罪にはするが満月時のみ行動の自由を制限するというのもありかとはおもいますが、では、
「既に数回以上、紛れもなく心神喪失状態での犯行を繰り返しているが、心神喪失状態になる条件がわからない(満月の晩に相当するものがわからない)被告(専門家は条件がわからない以上心神喪失を今後起こして犯行を行う可能性は否定できないと言っている)」の場合はどうでしょう。
日本国民は、はたして、このような被告に、以後の行動の自由を認めて、再犯時にそれは仕方ないよねと言えるんでしょうか?
(頭の体操です。狼男君は実在しないから答えられないというのは無しで)

 本件ではないと思いますが、心神喪失無罪になった場合の被告人については、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」というのが適用されます。
参考サイト
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/09/s0926-6f.html

モトケンさん ありがとうございました。
確かに池田小事件の後ですか、そんな法律が出来たなあと思った覚えが。熱しやすく冷めやすいです、我ながら。
でも、参考サイトの図を見ても目がくらくらしただけで、あまりイメージわきませんでした。
この制度うまく働いているんでしょうか?

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