エントリ

 ちょっと刺激的なタイトルをつけましたが、私、かなり頭に来ています。
 ネット上には見当たらなかったのですが、今日付けの朝日新聞紙面に

 「問題捜査」公判中も自覚
 県警・検察、裏付け巡り

という見出しの記事があります。
 例によって、県警と検察が公判途中から捜査の問題を認識して協議を繰り返していたことを報道するものです。

 私が頭に来たのは、そのような協議の中で、地検側が県警に対して

また、11月2日の協議では地検側から「検察庁でも消極意見はあった。しかし、主任(検事)が起訴すると決めたら、これに従うのが組織捜査。消極意見が出るのは当たり前」と弁明していた。

と報道された点です。
 
 もっとも、この報道の情報源は県警側だと思われますので、そのまま文字通りに受け取っていいのか疑問が残ります。正直言って、「誰がこんな馬鹿なことを言ったのか、しかも検察の事情を知らないわけではない警察に対して」という気がします。
 がしかし、報道された以上、報道にかかる発言のばかばかしさは指摘しておく必要があると思って書きます。

 主任検事というのは、事件の捜査・処理を担当する検事のことですが、その担当は上司である次席などから命じられます。つまり、原則として主任検事は平検事です。
 検事は独任制の官庁と言われていまして、たとえ平検事でも検事1人の判断と権限で事件を起訴することができます。
 しかし、これは法制度上の話で、現実的には上司の「決裁」というのが必要であって、いくら主任検事が起訴したいと言っても、上司である次席・検事正が首を縦に振らなければ起訴できません。

 「決裁」というのは、経験豊富な上司が、後輩である主任検事の捜査をチェックし、主任の判断が適正かどうか、捜査が尽くされているかどうか、証拠の判断に誤りはないかなどを確認し、問題点があればそれを指摘して指導し是正させるというものです。
 逆に言うと、上司には、主任の報告を聞いて問題点を見抜く能力が要求されるということです。

 主任と上司の意見が対立する場合はありますし、主任と上司の議論の結果、主任の意見が通るということももちろんあります。

 しかし、本件ほど問題が多い起訴については、ほとんど議論の余地がありません。

 供述は変遷している。
 自供内容自体が不自然不合理。
 会合の存在の客観的裏付けがない。
 アリバイがつぶされていない。
 
 これらはいずれも、起訴時点でチェックが可能だった事項です。
 というか、上司たるもの当然チェックすべき基本事項です。
 これらがきちんとチェックされていたら、起訴を認める決裁をする上司がいるとは正直思えないのです。
 で、結局、本件は起訴されたわけですが、そうすると、本件の起訴にあたって、当時の主任の上司は 基本的なチェックをしなかったか 決裁する能力がなかったか、のどちらかということになります。

 私としては、主任検事にも大きな問題があったと思いますが、起訴を認めた上司にこそ重大かつ深刻な問題を感じています。
 起訴の実情を知っている検事なら、そしてまともな検事なら私と同様の危惧を持つものと信じます。

 そうであるにもかかわらず、上記報道にかかる地検側の発言は、それが警察に対するものであるとしても、「しかし、主任(検事)が起訴すると決めたら、これに従うのが組織捜査。」などと言って全ての責任を主任に転嫁するような発言をすることは恥ずかしくないのか、と強く感じる次第です。

 まあ、協議に臨んだ検事としては、地検側の捜査があまりに杜撰なのが十分わかっていたので、主任検事1人をスケープゴートにするしかなかったのかな、とも思いますが。

参考記事
http://mytown.asahi.com/kagoshima/newslist.php?d_id=4700026

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コメント(8)

某病院の院長が、警察に異常死体を届けなくても良い、って言ったのに。
後になって、主治医の責任にした、ってのと似ていますかねw
院長が必要ない、って言ったのを振り切って、末端の医者が警察に言うって事はできないでしょうに。

本文の最終2段の文章、モトケンさんがそういう風に受け取るとはちょっと意外です。
別にスケープゴートにするつもりの発言ではないと思いますよ。
「主任(検事)が云々」というのはよく使われるフレーズではないでしょうか。
そこには当然、決裁を得て、という文言が内在しているわけで、省略しただけでしょう。部外者への使い方として舌足らずというのはあるにしても。

上司の責任という気持ちは分かるにしても、むしろ、最後の2段の表現はミスリードするような気がします。直前の段で止めたほうが趣旨が伝わると思ったもので。

>主任(検事)が起訴すると決めたら、これに従うのが組織捜査

>そこには当然、決裁を得て、という文言が内在しているわけで、省略しただけでしょう。

検察で「決裁」という言葉がどのような意味で使用されているかは存じませんが、通常役人の世界で「決裁」といえば、終局的な判断及びその責任は、起訴する旨の起案をした主担者ではなく、起訴する旨の判断をした決裁権者が負うことになります。

仮にも、決裁を見る上司は、原則最難関の司法試験を通ってこられ、数々の事件経験を積まれた優秀な人ばかりでしょうから、実際に真剣に決裁をみて、誰一人として本件のような結末に至る杜撰なものであったと気が付かないとは思えないのですが。

この地検では、役人の世界で言う「○○○バン」が常態化していたという危惧を持ちます。本当に、「主任が決めている」状態になっていたのではないか。これまでは、たまたま起案がしっかりしていたから(もしくは結果オーライ?)、大きな問題にはつながらなかったが、本件のような杜撰なものであれば、チェックが働かないのでこういう結末になるということではないかと思います。

上司が上司として存在する意義は、単に組織の管理だけではなく、業務内容の精査と部下の指導育成という2つの大きな責務にあることはいうまでもありません。「○○○バン」はその最も大事な2つの責務を放棄し、ひいては組織としての仕事を放棄することに他なりません。図らずも、「組織捜査」といいながら、大事な部分で組織としての対応を放棄したその危険な体質を、「主任が」云々という言葉にみた気がします。

あくまでも、これは報道内容が虚偽ではない場合のことです。また、警察のメモも、自分たちに都合のいいように書いていることも考えられますので、あくまでもそれらが事実であったという前提での話ですよ。こういっとかないとまた「メディアリテラシーがない」とか、「想像で他人を批判するな」と怒られますんで(^^;

>psq さん

 報道が正確であるという留保つきで、

>そこには当然、決裁を得て、という文言が内在しているわけで、省略しただけでしょう。

 たしかに警察相手の発言としては、決裁があることが当然の前提になっていたと読む余地はありますし、私もその可能性を考えましたが、

>消極意見が出るのは当たり前

 ここにいう消極意見は誰が述べたものかを考えますと、決裁の場で発言権があるのは主任と上司だけと思われますので、普通に読みますと、

 「上司は反対したんだけど、主任が起訴すると言ったので起訴になった。」

という文脈に読めてしまいました。

>主任(検事)が起訴すると決めたら、これに従うのが組織捜査

 お役所では、意志決定が組織としてなされたものであるならば、一般的には、組織名で
「省庁・都道府県・市町村名」としては、と言います。個人名もしくは、役職を以て言うことは、私の経験では聞いたことはありません。
 上記の発言は、組織捜査と「組織」と言いながら、個人が決定したと言っています。
 警察も同じ官僚機構であり、このようなことは百も承知のはずですから、経緯を説明するなら、どうしてそのような判断をしたのかを言えばいいだけです。
 そういう意味で、私もモトケン様と同様に
> 「上司は反対したんだけど、主任が起訴すると言ったので起訴になった。」
という文脈に読めてしまいました。

 のように受け止めました。

この種事件では、応援検察官が居るんではないでしょうか、チーム内に様々な意見はあるでしょう。そして、主任が決め上司も決裁(同意)したということかと。
念のために言いますと、検察の決裁は、「法律上」は他の役所と違う意味かと思います。

 結局のところ、国策の八百長事件何じゃないでしょうか、
燕雀いずくんぞ、鴻鵠の志を知らず
ともいう言葉がありますし、「成否を誰か論う」という感じで、見下ろされているのかも。
 ツバメや、雀ばかり何でしょうか?
 それだけ深刻な背景事情もありそうです。

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