エントリ

 このため、導入される部分判決制度では、例えば、被告がA、B、Cの三つの事件で起訴された場合、裁判官が裁判を三つに分離する決定をし、それぞれ別の裁判員を選ぶ。裁判官はすべての審理を担当する。

 A、B両事件の裁判員は、有罪か無罪かの結論を示す「部分判決」を出して任務を終える。最後のC事件の裁判員は、C事件の有罪・無罪を判断した後、三つの事件を総合的に判断して量刑を決め、最終の判決を出す。もしC事件で「無罪」と判断したとしても、先行した2事件の部分判決を基に量刑を決める。

 誰が考えたのか知りませんが、かなり無茶苦茶な制度のように思います。

 例えば、いずれも殺人事件のA事件、B事件、C事件が起訴され、被告人は全ての事件を否認した。
 A事件とB事件の裁判員は被告人を有罪としたが、C事件の裁判員は被告人の弁解の信用性を認めて無罪にした。
 このような場合には、C事件の裁判員がA・B事件の有罪の結論に疑問を感じるのは当然であると思われます。
 そのようなC事件の裁判員がしたA・B事件の量刑判断が適正になされていないおそれがあると感じるのはごく常識的な感覚ではないでしょうか。
 
 そのような場合にも敢えて裁判員に量刑判断をさせるというのであれば、A・B・C事件とは全く別の量刑担当裁判員を選ぶというのならまだ理解できます。

 この制度では、最後に量刑を決める裁判員がC事件の審理しか見聞きしていないため、すべての事件を担当した裁判官と情報面で格差が生まれ、対等な議論ができなくなるのではないかとの指摘があった。そこで、改正法には公判のビデオ録画も盛り込まれた。裁判の様子を録画したビデオを見ることで、裁判員は被告の反省の態度などを直接確認し、裁判官との情報格差を埋めることができる。

 これで「裁判官との情報格差を埋めることができる。」と考えるのは、かなりお気楽な考えだと感じられます。

 どの程度の場面を録画するのでしょう。
 そしてどの程度の場面を再生するのでしょう。
 録画は全面録画するとして、それを全てC事件の裁判員が見るのでしょうか。
 そうだとすると、結局C事件の裁判員は全ての事件に関与するのとあまり変わらない時間拘束されることになってしまいます。
 一部だけ見るのであれば、どういう基準でビデオを編集するのかが問題になります。
 そもそも、録画された画面を見ただけで、情報格差が埋められると考えること自体、裁判における情報というものをはなはだ薄っぺらなものと考えている証拠だと思われます。
 こんな情報で、量刑を決められる被告人または被害者・遺族はたまったものではないのではないでしょうか。

 どんどん見えてくるほころびをその場しのぎに取り繕っている印象があります。

 裁判員制度の制度設計段階でまともな検討がなされていなかったことがまた明らかになりました。

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コメント(16)

法施行前に改正法案が提出される裁判員法って、いったい何なんでしょう。
詰めていなかったことが、丸分かりです。

被告人がA、B、Cの3つの事件で起訴された場合、同じ被告人なのに裁判を3つに分離するって、どういう感覚なんでしょう。
でも、これ、法務省提出の法案ですね。
法務省は無理やりやらされたんでしょうか。
それとも、既に成立してしまった裁判員法の不備を取り繕うには、これしか方法がなかったんでしょうか。

裁判所も弁護士も国民も、こんな法律だけど、従わざるを得ないんですもんね。

いや裁判員法成立段階から附帯決議か申し送り事項で、この種併合罪の場合の対策を施行前の法改正を含めて検討せよとなっていたはず。
要するに、アメリカのように複雑困難な事件でも陪審員(裁判員)何ヶ月も拘束すればよいのでしょうが、国民にも立法者にもそこまでの覚悟がないということがもたらした結果でしょう。

あれっ、pになってる。No.2↑はpsq法曹です。(^^;

 東京、埼玉、千葉で三件の強盗殺人事件を起こしたとして東京地裁に被告人が起訴され、区分審理となったとして、東京都民が埼玉や千葉の事件を裁くことに納得するのでしょうか・・・?

>No.2 p ことpsq法曹さん

>検討せよとなっていたはず。

 つまり、立法側に検討不十分のままの見切り発車であることの自覚があったということでしょうか?

>国民にも立法者にもそこまでの覚悟がないということがもたらした結果でしょう。

 同意

この裁判員制度について、法関係者が「素人にわかるのか?」と思うことが、医療関係者が医療関係事件に関して法関係者に思っていることと同一のような気がしていたりします。

>そもそも、録画された画面を見ただけで、情報格差が埋められると考えること自体、
>裁判における情報というものをはなはだ薄っぺらなものと考えている証拠だと思われます。
とか、そのまま単語を置き換えできそうで・・・

>No.6 らぃ さん

 私は、事前に様々なデータを検討した上で手術の執刀をした医師と、手術の様子を録画したビデオを見ただけの医師とを比較して、見ただけの医師が執刀した医師と同じ程度の情報を得ることができるとは思えないのですが違いますか?

 ましてそのビデオが編集されていた場合は、、、

> 区分審理となったとして、東京都民が埼玉や千葉の事件を裁くことに納得するのでしょうか・・・?(No.4 高野 善通 さま)

管轄が成立しさえすれば、犯罪行為地が他府県である犯罪を裁くことに問題はないと思います。現行法でも弁論分離したからといって、管轄が失われるわけではありません。

土地管轄は、犯罪地のほか、被告人の現在地でもよい(刑事訴訟法2条1項)。
身柄事件では、被告人を現に勾留している拘置所or警察留置場のある地域(=捜査する警察署のある地域)の裁判所に起訴するのが普通です。

法律の問題ではなく、裁く側の裁判員、あるいは裁かれる側の被告人の感情という意味でしたら、
日本は全国が同一の法体系の下にあり、法執行の実情についても、特に刑事司法に関しては均一性が高い国ですから、
犯罪行為地の法廷に拘る意識は少ないのではないかと思います。

どうせ裁判員制度改装するなら陪審員制度に変更すれば改装に伴うコストが無料に近いくらい安くあげられるでしょうに(笑)。
ついでに前にPINEさんが専門家としてご推奨の「はやとくん」システムを採用してくれればもっと倹約できて機能アップできるんでしょう?(笑)。
さらに陪審員なら私も出来そうだから裁判のたびに急に貧乏になる心配から解放されて個人的にもうれしいんですけど。(笑)

きっと何とかなるんではないでしょうか(根拠なし。素人の意見と聞き流してください)。とっても面倒だろうとは思いますが。裁判官にとっては。
最高裁は開かれた裁判所の実現に注力するよりも、こうゆうの↓を何とかする方が仕事の順序としては正しいような気がしますが。制度論的にはともかく、こんな状態でできるのだろうかとギモンに思ってしまいます。

昨年1年間に地裁浜松支部(志田洋支部長)に持ち込まれた刑事裁判の被告の延べ人数は前年比で2割増の1027人となり、本庁の静岡地裁を60人以上も上回った。裁判の増加の背景には浜松地区での外国人犯罪の急増がある。地裁刑事部は4人、浜松支部には3人の裁判官がいるが、書記官数では約2倍の開きがある中で、本庁よりも多い裁判をこなしている。志田支部長は「許容量はほぼ限界に達しつつある」と、ため息交じりで話している。http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050218

まあ5年あるから大丈夫と思っていたのかも。

ただ、裁判員の負担軽減策としての位置づけのようですから、予定通り施行されるように法制度を整えたと考えることもでき、実際の運用でこれを使わないようにすることも、やろうと思えばできるかも。(長期審理の覚悟のある裁判員を選ぶ?)
運用で切り抜けるのが得意な日本人!

おや、裁判員制度導入の最大の目的は審理の迅速化じゃなかったですか?私の勘違い?(笑)

> 裁判員制度導入の最大の目的は審理の迅速化じゃなかったですか?(No.12 ぼつでおk¥10万(医)さま)

そりゃ勘違い。
裁判員導入のためには、迅速化せねばならんということで。目的と手段が逆ですわ。
公判前整理制度とかもその一環です。

早くしたいだけなら、職業裁判官だけで判断するほうが早いです。余分な説明も要らないから。
裁判員なしの裁判でも、集中審理方式でやっていかんという法は無いし。

>No.13 YUNYUN(弁護士)さん
コメントありがとうございます。
そうでしたか(笑)。

しかし、複数の人の判断を集約して結論を出す方式として評価の定まっている陪審員方式を、思いつきで作り変えたら肝腎の判断の集約機能が失われていたというのが日本の裁判員制度の変な(お粗末な)ところであるように思います。
ある程度以上に成功している陪審員制度をそのまま導入して、運用しながら身の丈に併せていく方法をとるべきではないでしょうか。もともと歴史的に独創性が発揚されないお国柄の日本としては(笑)。

>モトケンさん
その通りだと思いますよ。
だからこそ

映像だけをみた医師の意見を証拠として提出する方に対する医療の方

映像だけを裁判員の意見を判決に使用するという話をみた法曹の方

の反応が同じだと思う、と書いたつもりだったんですけど。

>No.15 らぃさん

 要するに、玄人同士でも、直に見るのとビデオを見るのとは違う。
 素人同士でも同じ。

 ということが言いたいわけです。

 玄人と素人の違いを言っているのではなく、直に見ることとビデオを見ることの違いを言っているのです。

 つまり、このエントリのらぃさんが引用された部分は

>法関係者が「素人にわかるのか?」と思うこと

とは直接関係のない話なのです。

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