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一審の死刑判決支持、被告の控訴棄却 熊本・男女殺害(asahi.com 2007年10月03日13時34分)

 被告側は一審と同様、「強盗殺人の目的はなく、殺人と盗みの罪にあたる」などと主張し、一審判決は事実誤認だと訴えていた。

 一審判決によると、松田被告は03年10月16日午前11時20分ごろ、木下啓子さん(当時54)方に押し入り、木下さんと内縁の夫の貸金業三浦隆雄さん(同54)を、持参した包丁で刺殺し、現金約8万円や腕時計などを奪ったとされる。

 このニュースだけを見て言えば、貸金業者の家に押し入って現金を奪っているのだから、強盗殺人の目的はなかったという弁解は荒唐無稽と言えなくもない。

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コメント(26)

素人の質問です。
被告は「殺人と強盗は別」との主張ですから、強盗殺人の認定には「盗目的の殺人」が必須条件、と見えますが。
その理解で良いでしょうか。

 殺す前に金品を奪う目的があったかどうかが重要です。
 あれば強盗殺人。

言葉の本来の意味から見て、被告人の主張をいれても彼の手によって行われた犯行は、殺人強盗(相手を殺して強制的に抵抗を排除した状態で他者の所有に属する金品を自己の所有とした=盗んだ)であり、犯行開始から終了までを単位犯行時間とすれば殺人強盗と強盗殺人は完全に同義となると思われます。
素人な年寄り(笑)の意見ですが。

No.3 ぼつでおk さん
法律上は,
あらかじめ盗取の意図があった場合は,強盗殺人又は強盗致死(刑法240条)で,殺人の後に盗取の故意を生じた場合は,殺人罪と窃盗罪(又は占有離脱物横領罪)の併合罪となりますから,まったく意味が異なります。

学説上でも,殺人→盗取の場合,強盗殺人罪の成立を認めるものは藤木説くらいしか思い当たりません。

FBさんに補足

強盗殺人の法定刑は死刑又は無期懲役(刑法240条後段)
殺人+窃盗だと,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役(実務上はまずあり得ないが,50万円以下の罰金併科も不可能ではない。)(刑法199条,235条)
仮に殺人+強盗と考えるなら,死刑又は無期若しくは5年以上の懲役(罰金併科の余地なし。)(刑法199条,236条)

死刑,無期を選択できるという点では同じですが,殺人+窃盗,殺人+強盗だと,かなり裁量の幅の広い有期懲役刑も認められており,法律上は扱いが大きく異なります。

さすがです。
完璧に整理しましたね。

「貸金業者の店」に押し入るなら強盗目的
「貸金業者の家」に押し入ったのなら殺人が目的
という主張はできそうなので、殺人をして盗みをはたらいたというのは、筋の通った主張になるではないでしょうか?

 この件の被害者が、「自宅=店舗」だった場合は無意味な主張ですが・・・

>素人意見 さん

 あんまりマジに突っ込まれると困るんですが

 ご指摘の点はかなり当を得た指摘だと思います。

 他の証拠を見てみないとわからないところが多いですが。

No.7 素人意見 さん

確かに,店より家の方が,盗取(または強取)の意図はなかったという主張は通りやすそうです。それでも,殺人→盗取にしたければ,怨恨等,殺人の動機を強固に主張する必要がありそうですね。ただ,ヘタをすると計画的な犯行として刑法199条で死刑に持って行かれそうな気がしますので,怨恨による殺人だが,被害者に落ち度があった…というシナリオを主張しなければ難しそうです。

ええと、みなさんのレスがたくさんいただけましたので、また愚見でもあえて述べなくちゃ失礼に中りますよね(笑)。

人間、犯行中というのは必ず本人は犯罪を意識しながら行っているものです。まさか他人の身体に包丁を突き刺しながら世間や警察が自分の行いを罰することなく褒めてくれると信じる者もいないでしょう。犯罪と自分でわかっているから逃亡や隠滅を図る訳です。
このケースでいうと、殺人を終えた時点で本人の犯行中意識が終了したと見做せるでしょうか。自首するか完全に15〜20年逃げおおせるまで終了しないでしょう。殺人によって始まった犯行中意識が自首を選ばないまま金品の窃盗に及んでいますから、逃亡のために強奪を働いたということになり、一つの犯行中意識下の複数の行為は順序を問う必要はなく単に加算されるだけでしょう。よって罪状は殺人+強盗(絶対強権下に盗む)=強盗殺人と考えたのが>No.3というわけです。

No.3の補足説明になりましたでしょうか。

No.10 ぼつでおk さん
>このケースでいうと、殺人を終えた時点で本人の犯行中意識が
>終了したと見做せるでしょうか。

その点はもう完璧に犯行中意識が終了した,と言っちゃいますね。少なくとも殺人罪という行為(主観と客観の統合体)は終了したという。

また,強盗殺人罪自体が,全ての行為が強盗の故意の下におこなわれていなければ成立しませんから,やはりその理屈は使えない,ということになります。(逆に強盗自体は未遂に終わっても,強盗の故意の下で被害者を殺してしまえば,強盗殺人罪の既遂です。)

 便乗して、>No.5についてシロートからの質問です。

 この事件の場合、被害者の方は二人とも亡くなっているわけで、「殺人+窃盗→5年(×1.5?)」や、「(殺人+)強盗致死→無期以上」にはなっても、「殺人+強盗→5年以上」にはならないのでは?

>No.11 FB さんのコメント
レスありがとうございます。

法治主義社会の社会人として生きる以上刑法に対する「遵法意識」が必要と思います。犯行中意識という言葉は脳科学的用語としてではなく「遵法意識」の対立語として書きましたことを付言させてください。後出しゴメンナサイ(笑)ですが。

ややテクニカルな話をしますがご了承を。

本件の弁護人の主張を前提とすると,
殺人+殺人+窃盗となります。
ここで最大限被告人に有利な量刑を考えるとすると,
・殺人罪2つについて,有期懲役刑(5年以上20年以下)を選択する
・窃盗罪について懲役刑(1月以上10年以下)を選択する
となります。
そして,これらは併合罪というルールによって一つの刑にまとめ上げられます。
その際には,最も重い罪の刑を基準として,その長期にその2分の1を加えることとなります。
#短期(5年以上)の方には2分の1を加えるというルールは適用されない点に注意が必要です。

殺人罪は5年以上20年以下ですが,併合罪による加重を行うと,5年以上30年以下となります。
まとめると,殺人+殺人+窃盗で科すことのできる有期懲役刑の幅は5年以上30年以下です。

強盗について同様の検討をします。
殺人+殺人+強盗と考えた場合で有期懲役刑に処すことを考えると,
・殺人罪2つについて,有期懲役刑(5年以上20年以下)を選択する
・強盗罪については刑の選択の余地なく5年以上20年以下の有期懲役
併合罪の処理をすると,結論としては,5年以上30年以下の有期懲役となります。

もちろん,これらの検討は有期懲役刑を相当と考えた場合の処理です。

SouさんがNo.12 ミ ´Å`彡 さんに対する完璧なレスを書かれているのでNo.4の訂正のみで…

No.4 FBの訂正です。
>殺人→盗取の場合,強盗殺人罪の成立を認めるものは藤木説
と書きましたが,調べてみたら,藤木説では殺人罪+強盗罪でした。訂正してお詫びします。

気になっていた「殺人+窃盗→5年(×1.5?)」への回答だけだったので,やっぱり答えておきます…,

No.12 ミ ´Å`彡 さん
>「殺人+強盗→5年以上」にはならないのでは?

判例実務の立場から考えると,殺人罪×2が先行した場合,その後の財物奪取行為に強盗罪が成立した例はなく,「死者の占有」概念を認めて,あとは被害者の死と財物奪取行為の接着性を考慮して「なお占有があったか」を基準として,占有が認められる場合は窃盗罪,認められない場合は占有離脱物横領罪としているようですが,その限界は微妙です。

ただ,学説上は上述の藤木説が,被害者の死という抵抗不能状態の利用を捉えて強盗罪とする立場も無くはありませんが。個人的には強盗罪は強姦罪と違って機械利用類型を認めません(昏睡強盗罪も犯人が被害者を昏睡状態に陥れる必要があり,既に昏睡状態に陥っているものから財布を盗れば,窃盗罪に過ぎません)ので,説明としては厳しいのではないかと思います。

悪いくせで言葉を思いつきで書いては自分でもわかりにくくしちゃってました。
>No.10,13の犯行中意識は要するに「罪の意識」です。説明がくどくてすみません。こういうのも「年寄りの繰言」症状ですね、きっと(笑)

No.11,15 FBさんに質問です。

居直り強盗が殺人を犯したケースでは一連の行為全体に強盗殺人罪を適用するべきと愚考しますが、刑法理論ではどうなりますでしょうか?

No.18 ぼつでおk さん
>居直り強盗が殺人を犯したケースでは一連の行為全体に強盗殺人
>罪を適用するべきと愚考しますが、刑法理論ではどうなりますで
>しょうか?

居直り強盗が強盗の手段として殺人に及んだ場合は,基本的には窃盗(占有移転の有無によって未遂or既遂)罪と強盗殺人既遂罪の両罪が成立して,侵害法益の実質的同質性に鑑みて前者は後者に吸収されて包括一罪になると思います。

>No.19 FB さん
ご教示ありがとうございます。もう少しよろしいでしょうか。

居直り強盗という場合、犯行着手時には空き巣狙い程度の罪の意識しか持たないケースが多いと思います。
見つかってそれ以上罪を重ねることなく逃走すれば、強盗よりも軽罪でしょう。
しかし、はずみで家人2人を殺害したとします。その後本来の目的である金品を略取して逃走した時、犯人の犯した罪は強盗殺人と認定されるべきだと考えますが、これは刑法理論ではどうなるのでしょうか。

お手すきの時にでもお答えいただければ幸甚です。

 解説ありがとうございます。結果的に死なせておいて「殺人+強盗」ってのは、あんまりニュース等で聞いたことないもので、何なのかと思いますた。

 この件はたし、質屋やってる自宅兼店舗だった気がしますねえ。被害者と犯人の苗字が小中の同級生と一緒で、しかも犯人が同級生の兄と同姓同名・同年齢で気になったので、記憶に残ってた気が(;´・ω・)

No.20 ぼつでおk さん
>見つかってそれ以上罪を重ねることなく逃走すれば、強盗より
>も軽罪でしょう。

そうですね。普通の住居侵入窃盗ですから,住居侵入罪(刑130)と窃盗罪(刑235)の牽連犯(刑54)となります。


>はずみで家人2人を殺害したとします。その後本来の目的で
>ある金品を略取して逃走した時、犯人の犯した罪は強盗殺人
>と認定されるべきだと考えますが、これは刑法理論ではどう
>なるのでしょうか。

「はずみで」というところの意味が気になりますが…
仮に家人にばれたので…ということであれば,最終的に強盗殺人罪(刑240)の成立を認めることになりますね。この場合,殺害行為があくまで金品奪取の機会に行われていることが重要です。なお,物色行為があれば,窃盗罪に着手したことになるので,盗品を物色中,家人に見つかってコレを殺害したというのであれば,見つかる前の物色中の行為について,別途,窃盗罪(刑235)が成立します。(但し,No.19で回答の通り,包括一罪ですが)

なお,窃盗が既遂に至っている場合に,逃亡の機会に家人に暴行・脅迫を行った場合は事後強盗罪(刑238)で,殺意をもって死亡させれば(事後)強盗殺人罪(刑240)になります。

さらに,蛇足ですが,予め強盗の故意で…見つかったら殺してやろうと思って…,物色行為に及んだところ家人に見つかり意気喪失して何も盗らずに逃げた場合は,客観面が窃盗未遂罪に過ぎませんので,窃盗未遂罪(刑235,刑243)で処罰されることになります。

>No.22 FB さん
刑法理論を明解にご講義くださいまして大変ありがとうございます。

素人である私は、人が罪の意識を持って人道に反する行為を「行った」時に「犯行」を認定するしかなく、犯行の罪の重さも「汝殺すなかれ。盗むなかれ。犯すなかれ。偽るなかれ・・・。」とか「不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不飲酒」五戒とかいわゆる戒律感覚に照らして自分なりに思うしかないのですが、幸いにして刑法の認めるところと大きな乖離はないようでした。

さらに、「蛇足ですが」でおっしゃったことが私には一番重要なことのように思えました。すなわち、犯行中で「罪の意識」下にある状態でも、考えてもなされなかった行為は罪に問われない、刑法では行為以外は罪に問われようがないということが確認できた、と思いました。
先ごろ話題になった「共謀罪」導入の考え方の根本的誤りを明らかにするものではないでしょうか。

No.19、No.22
非法律家の方にはその説明でよいのですが、細かいものの法律を学んだ者として。

吸収されて包括一罪というのは、表現上は穏当ではなく、吸収されたら強盗殺人単純一罪、という表現になるかと思います。

特に事後強盗の場合は、時系列的には窃盗の着手があり、その意味で窃盗罪成立という表現になったと思います。
しかし、事後強盗に及んだ瞬間に吸収されますので評価として窃盗罪は別に成立せず、包括一罪ではなく単純一罪です(予備罪が吸収されるのと同様の論理)。

>No.24 psq法曹 さんのコメント
>特に事後強盗の場合は、時系列的には窃盗の着手があり、その意味で窃盗罪成立という表現になったと思います。

窃盗罪が事後強盗罪に「吸収される」というのは明らかですが,その意義は良く解明されていません。法条競合の吸収関係というのであれば,基本的には一行為でなければなりませんが,窃盗行為と事後強盗行為が同一行為と評価するのは難しいと思います。また,そもそも,私自身もそれについて窃盗罪と事後強盗罪の両罪が成立すると書いたつもりはありません。(No.19では事後強盗には触れていません)

>(予備罪が吸収されるのと同様の論理)。
私自身は採りませんが,既遂罪が成立した場合の,予備罪・未遂罪も形式的には成立して包括一罪とみる考え方もなくはありませんが…(例えば西田総論390頁)
また,同書では法条競合に吸収関係を認めると同時に,包括一罪についても吸収関係を認めておりますので,

>吸収されて包括一罪というのは、表現上は穏当ではなく、
というご指摘も,必ずしも当を得ていないと思います。

なお,居直り強盗については,前件窃盗が既遂で後件強盗が未遂の場合,包括一罪とするのは,学説上は事後強盗との均衡上,強盗既遂罪とすべきという主張もありますが,大阪高判昭和33年11月18日高刑集11巻9号573頁から,窃盗既遂罪と強盗未遂罪の包括一罪であることは明らかでしょう。
前件窃盗が未遂で,暴行・脅迫によって後件強盗が既遂になった場合は,多くの基本書には窃盗未遂罪は強盗既遂罪に「吸収される」と書いてありますね。これをどう読むかは様々でしょうが,「窃盗未遂の点は強盗罪に吸収されて包括的に強盗罪が成立する」(川端各論271頁)等もありますので,包括一罪という読み方は必ずしも間違っていないと思います。

No.25
別な見方もあると言いたかっただけですので。
事後強盗については私の読み間違いでしたね(No.22居直り強盗の記述でした)、ごめんなさい。

居直り強盗の場合には包括一罪でいいのですが、その前の「吸収される」という表現に違和感があったからです。
それは、実務では「包括一罪」というのは罪が成立した上での一罪だと考えており(公訴事実に各別に書くのが普通)、「吸収される」となると控訴事実を各別に書かないので、違うであろうという感覚があったからです。

関連図書の記載はともかくとしての意味ですので、ご了解ください。

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