「医療事故調」実現へ 警察関与、重大事のみ 与党案(asahi.com 2007年11月30日09時05分 ウェブ魚拓)
読売の社説
トラックバックURL: http://www.yabelab.net/mt4/mt-tb.cgi/2929
私はこのブログ上での皆さんの議論を読ませていただいて 「刑事責任は重過失までにしたほうがいいのでは」 と考えるようになっていたのでこうした動きは良いことだと思います。 まあ、結局警察が動いた時に「この程度なら軽過失だ。重過失じゃない」という批判はおきそうですが。
ただ、読売の社説にある「医療死亡事故が起きた場合、医療機関から地方委員会への届け出を義務化」すると言うのはどうなんでしょうか? 私は素人なのでちょっと良く分からないのですが「手術したあと死んだ」のと「医療死亡事故」の違いが良く分かりません。モデルとなった航空・鉄道事故調査委員会の場合、「航空・鉄道事故」は結構はっきりと分かると思うのですが「医療死亡事故」の定義ってはっきりしたものなんでしょうか?
ろくろくびさん、とりあえず、こちらをどうぞ。http://ameblo.jp/kempou38/entry-10057470455.html
つーか、ソ連参戦キター!!
税金の最高の無駄使いに思えますね。
任意団体の様な形で作るなら、その様な運動をされる方がいても良いのでしょうが、何故税金を投入しなければいけないか不思議に思います。
患者側が医療事故死だと思ったなら、解剖を申し出るべきで、解剖をせずして判断するのは、おかしいし。
刑事事件、民事訴訟、ADRは、それぞれ残る。結局は、マスコミ対策と人気取りだけのための事故調査委員会となる恐れはないのかと思いました。
厚生労働省は、もっとまじめに日本の医療を良くする仕事をすればよいのに!
No.2 10年前にドロッポしました。 さん 情報ありがとうございます。やはり届出義務には問題ありそうですね。せいぜい調査協力義務程度にしておいたほうがよさそうな気がします。
死亡例は全例届ければいいだけですよ。
現実には航空・鉄道事故調査委員会が関与しても刑事訴訟になっています。重過失の定義も定まっていません。従って、これで刑事事件にならないということにはならないでしょう。 また、おそらく民事で過失がないのに賠償を払わねばならないという現実もそのままです。だから刑事・民事との兼ね合いをどうするかが争点ですね。 今のままではだめだけれども、ともあれ形になったのは評価します。何とか委員会スタートまでに諸問題を解決してほしいところです。 真実の究明、事故防止への役立て、紛争解決ということを目的にするのであれば、私は反対はしません。後はソフト面で変えていけば良いのではないでしょうか?
PS 私は一応小松先生のご著書はすべて読んでいますのでいろいろな問題点があるのは知っています。
憲法32条(国民の裁判を受ける権利)や憲法76条(司法権は裁判所に専属する。行政機関は終審として裁判を行えない)がある以上どのような組織を作っても刑事・民事訴訟は避けられないでしょう。むしろ委員会の調査結果が訴訟に与える影響(判決のみならず訴えを提起するか否かも含めて)のほうが重要になると思います。
調査委員会の調査結果の信頼性が高ければ医療者側も法曹関係者も納得のいく結果になっていくのではないか、と期待しています。 そのためにも大切なのは人選であろうかと思います。
>厚生労働省は、もっとまじめに日本の医療を良くする仕事を>すればよいのに!
>真実の究明、事故防止への役立て、紛争解決ということを目>的にするのであれば、私は反対はしません。
>調査委員会の調査結果の信頼性が高ければ
貴殿らは「あの」厚生労働省を何だと思っておられるのですかw? 私はドロッポして後悔した事も罪悪感を抱いた事もありませんが今回ほど「逃げといてよかったああああああ!」と痛感した事はありませんww。
>No.8 10年前にドロッポしました サン
「貴殿らは「あの」厚生労働省を何だと思っておられるのですかw?」 それに対する私のレスは、「エ〜!厚生労働省だけですか?」と、なってしまします。
ムーアの「Sicko」を見て、相当日数も経過するのに、消え去りません。日本のもので日本の医療崩壊について、あれほどのインパクトを与えるものが、ないからではないかと私は思えます。(例外は、このモトケンブログです。)
最近、NHKのクローズアップ現代が医療関係について番組を何日間か放送していました。(例えば、ADRや在宅緩和ケアとか)でも、現象だけを捉えていて、本質には迫っていない。あえて、医療費問題からは、遠ざかっているのはと思ってしまします。
米国で、”Iran: Nuclear Intentions and Capabilities”というNIC(National Intelligence Council)の報告書が12月3日に出されました。日経のニュースは以下ですが、日本はマスコミが、その代表でしょうが、全て一色になりすぎていると感じます。 http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071204AT2M0401204122007.html
私はエントリ本文で引用された記事の次の一節が気になります。
調査報告書は、医療機関と遺族の和解や調停、示談などにも「活用できる」とした。
「活用できる」とはどういうことだろうか? 裁判での証拠として「活用できる」ということだろうか? 民事訴訟だけか、それとも刑事訴訟にも証拠として「活用できる」のか?
裁判での証拠として「活用できる」のであれば、調査委員会の調査は裁判での「事実審理」の手続を、調査委員会に移すだけのことになってしまう恐れがある。調査委員会報告書が出されたら、その報告書の記載事実を根拠にして、その結果を待ってましたとばかりに訴訟提起、という事態にはならない保証があるのだろうか。
調査委員会が単に事実の調査だけを行ない、損害賠償や慰謝の領域に踏み込まず、紛争解決の機能を持たないのであれば、「新制度により、訴訟が減ることを期待」することは無理ではなかろうか。紛争解決機能を持たない単なる調査機関の新設は、医療訴訟の減少には逆に作用しかねないと私は懸念します。
>No.10 法務業の末席 さん 11月30日自民党医療紛争処理のあり方検討会の原案から、 診療行為に係る死因究明制度等について(案)、訴訟関連部分を引用すると。
【民事手続との関係】 (10)民事手続においても、委員会の調査報告書は活用できることとする。 (11)医療機関と患者・ご遺族の間に立ち中立・公平な立場での解決を図る仕組みである裁判外紛争処理(ADR)の活用の推進を図る。 (12)裁判外紛争処理を推進するため、医療界、法曹界、医療法に基づく医療安全支援センター(地方公共団体)、厚生労働省等からなる協議会を設置し、情報や意見の交換等を促進する。 【行政処分との関係】 (13)行政処分のための審議については、委員会の調査報告書を参考に、委員会ではなく厚生労働省の医道審議会が行う。 (14)行政処分に当たっては、医師等に対する再教育や医療機関におけるシステムエラーの改善に重点を置いたものとする。 【刑事手続との関係】 (15)刑事手続に当たっては、本制度を念頭に医療事故の特性や行政処分の実施状況等を踏まえつつ、故意や重大な過失のある事例その他悪質な事例に対象を限定するなど、謙抑的に対応すべきものとする。 (16)委員会の調査報告書は、刑事手続に使用することを妨げない。
【行政処分との関係】 (13)行政処分のための審議については、委員会の調査報告書を参考に、委員会ではなく厚生労働省の医道審議会が行う。 (14)行政処分に当たっては、医師等に対する再教育や医療機関におけるシステムエラーの改善に重点を置いたものとする。
【刑事手続との関係】 (15)刑事手続に当たっては、本制度を念頭に医療事故の特性や行政処分の実施状況等を踏まえつつ、故意や重大な過失のある事例その他悪質な事例に対象を限定するなど、謙抑的に対応すべきものとする。 (16)委員会の調査報告書は、刑事手続に使用することを妨げない。
となっております。活用できるというからには、民事訴訟の証拠書類として採用可能であると理解していますがどうでしょうか。
>No.8 10年前にドロッポしました。 さん おっしゃりたいことがよくわかりませんが・・・。
この件に関して、私はこのままではだめだけれども、形になったのは評価します、と言いたいです。 「あの」厚生省でありますが、すべて後手に回っている感はぬぐえませんが、遅まきながら何とかしようと言う姿勢を見せるのは悪いことではないと思います。 それに厚生相に任せていられない!と言ったって、他に実際に誰に任せればよいのでしょうか?医師会でしょうか?マスコミでしょうか?それとも公安ですか?法曹ですか?患者団体ですか?それぞれ単独の組織に任すことはできません。 理想はいろいろな分野の国民が現実を交えながらディスカッションし、無理のない範囲でなるべく理想を実現していくことだと思います。しかし、もちろん限界があります。そこでとりあえず厚生省が中心になって、やっていくと言うことはやむを得ないと思うのです。 ただ、官僚に抜けている、「現場の声をきちんと聞く」、「机上の理論から脱却する」という姿勢は必須だと思いますし、今の官僚にはそれが決定的に欠けています。 願わくば、もう少し早く現場の意見をきちんと聞いてやるように努力するべきです。
すべてを許せなくなったら、どんな世の中になるかわかりません。ある程度の妥協も必要ではないでしょうか?
>No.8 10年前にドロッポしました。 さん 上に政策あれば下に対策あり、ですね。 裁判員制度については私も秘策を(バレバレでつ)用意してます(笑)。
>No.12 yama さんのコメント どのような治療にも必ず副作用による合併症がありますから、めいめい覚悟の上でやる時はやる、仰るとおり決して行うことが必要な時期だと思います。死を覚悟して手術を受ける時のように。
あのまったく論理的でない「調査報告書の刑事捜査への活用」の条項に起因する合併症で、制度施行後無用の血が大量に流れると予想されますが、とにかく今できることは、問題が起こったときに早く対処ができるよう、原因となりそうな制度の欠陥部分を予め想定して注意を集中しておくことくらいでしょうか。 下々の対策でつね(笑)。
こういった日本の戦術戦法の拙さは旅順攻撃以来進歩が全くないですね(笑)。あんなの統治術になり得るはずもないのに(笑)。 まあ学ぶ国ではなく慣れる国だからそれもしょうがないのでしょう。上に行くほど学びを捨てて登って行きますから(笑)。 あ、上が愚かしい政策で下が賢い対策の国なら、さしずめ愚兄賢弟国家かな(爆)。
No.11 田舎の消化器外科医 さま
情報提供ありがとうございます。引用された原文が公開されいるHPなども教えて頂ければ、なお有り難いのですが。
引用された内容を読む限り、民事訴訟の証拠として利用できそうですね。それどころか『(16)委員会の調査報告書は、刑事手続に使用することを妨げない。』というくだりは、刑事訴訟の証拠として活用することを妨げない、と読み取れます。
ということは、この調査委員会の調査はまさしく「裁判での事実審理」の代用の性格を持つ、と私には思えます。実際に調査委員会に事故を報告して調査に臨む医療者は、法廷に臨むのと同じ自己防衛の注意を払って陳述しないと、調査報告書を後日法廷で「動かぬ証拠」として使われる恐れがあるように感じます。
取り敢えず、これは自民党の案に厚労省が乗っかった訳で、実際に法制化するには衆参両院での国会審理が必要です。現時点では絵に描いた餅に過ぎず、法制化された訳ではありません。反対する医療者の方がこれから政治的運動を活発にすれば、阻止したり中身を大きく改変させることも可能かと思います。また衆院は自民党が過半数ですが、参院は民主党が過半数ですので、自民党原案のままで参院民主党が審理に応ずるかどうかなど、まだまだ反対する医師の側で政治活動できるポイントは沢山あるように思います。
法務業の末席 さん、横から失礼します。
> 実際に調査委員会に事故を報告して調査に臨む医療者は、法廷に臨むのと同じ自己防衛の注意を払って陳述しないと、…
事故調査としては最も好ましくありません。インシデント・アクシデント報告制度でも、院内事故調査でも、関係者が処罰対象にならないことを明示しないとうまく機能しないことは周知の事実です。始末書で事態が改善した例しはないのです。
まして、多くの人命のかかった事故調査で率直な事実確認が行えないのでは、近い将来に禍根を残します。事故は何度でも繰り返されていくことになるでしょう。
さすがに訴訟に証拠として採用しようとするとこのような事態が不可避であることは、厚労省も内閣法制局もよく理解しているであろうと思いますし、国民の生命を何とも思わぬ無責任と、医療者に対する深刻な悪意も感じます。
代議士も厚労省試案をよく理解できていない状況にあるようです。
かと言って、この辺りをきちんと整理するためには、「被害者」の加罰希望にどう対応するのか、訴訟が起こらない手当が必要です。具体的提案が必要かと思います。
No.9 ある経営コンサルタントさん、 …確かにw。 No.12 yamaさん、 いや、基本的には貴殿のおっしゃる通りなのですが、これまでのところ、厚生労働省が何か思いつきを実行するごとに事態は改善どころか悪化する一方ですからねえ…。今回だけ例外、ってのは望み薄かと。私ははっきりいって、連中には昼間からエロ本でも読んでてもらってた方がマシだと思ってます。 No.13 ぼつでおkさん、 冬山に登りさえしなければ雪崩にはあいませんw。まあNo.5 うらぶれ内科さんのおっしゃる「全死亡例報告による飽和攻撃」でもイケるか。
No.15 rijin 様
私のNo.14での主張は、事故調査としては最も好ましくないことは理解しております。理解していますが示された原案からすると、この事故調のありかたは問題があり過ぎて、この案では医療者が刑事・民事の両訴訟に引きずり出されるリスクが減るとは思えません。
私には民事訴訟リスクを減らすには、事故調とADR機関が裏表の関係で整備されるのが必要だと思います。「ADRの活用を図る」となっている原案からは、自民党医療紛争処理のあり方検討会が紛争解決について、認識が甘いのではないかという印象を拭えません。事故調査報告書を証拠として「活用」できるからには、事故調査委員会で医療者に有責とされた場合、その事故調査報告書を証拠として賠償請求訴訟を起こすのは防ぎようが無いように思えます。
刑事手続きについても、原案では「謙抑的に対応すべきもの」と位置づけられながら、そのすぐ次の項に「委員会の調査報告書は、刑事手続に使用することを妨げない」となっており、運用によっては捜査機関のお先棒担ぎになりかねないリスクを内包しているように思えます。
こうした原案を読んだ個人的な感想を率直に医療者への助言に結びつけると、「自己防衛の注意を払って陳述すべし」という主張になってしまいました。事故調査委員会設置の本来の目的からすれば、事故調での陳述は司法上の免責を付与しなければ逆効果になりかねません。しかし、司法免責は今の日本の法体制では無理だろうと思いますので、中途半端な位置づけの事故調委員会の新設に賛成できない私の気持ちが文章に表れた結果と思って下さい。
さて、では「具体的提案」となりますと私にも良い知恵はありません。民事訴訟の面では先に書いたとおり、大規模で半公的なADR機関の整備でしょうか。事故調に直属のADR機関を作り、調査報告書を活用しての紛争解決を図りたければ、まずそのADR機関で調停を受けないと損害賠償請求訴訟を起こせないルール、というのはどうでしょうか。
また、公表する事故報告書は氏名・所在地・日時などの情報を仮名やぼかした表記で具体性を薄くしておき、そのままでは訴訟の証拠として使うには不十分なないようにしておく。当事者や検察などがどうしても訴訟の証拠として使えるような詳細な調査資料の開示を請求した場合に、事故調委員会の中に設けた専門の小委員会で、詳細資料の開示の可否を審査した上で開示するルールというのもどうでしょうか。行政官庁内で情報公開請求を審査する委員会が設置されていて、情報公開請求に対してプライバシー配慮から墨塗りするかなどをチェックしていますが、そのようなチェック権限を事故調査委員会に予め与えておくというプランです。
No.17 この御時世、患者側(遺族も)には原文と同じ写しの情報開示でしょうから、患者側が告訴したら写しを提供できるので簡単に捜査機関の手に渡るでしょう。
ADRは契約ならば事前に契約書に盛り込んでおけば、訴訟を提起しても妨訴抗弁(契約どおりにADRで解決しなさいという意味)になり、民事訴訟は避けられます。
しかし、次の2点の考慮点あり。 1 医療事故の場合は、診療契約違反という側面もありますが不法行為型でもありますので事前に契約しておくのも困難(事前に一条項入れておいてもいいが果たしてうまく行くかどうか不明)。
2 それに医療ADRは、裁断型の仲裁ではなく、和解・調停などの当事者合意型になるのでしょうから、合意ができなければ、いずれ民事訴訟になる可能性はあります(数はもちろん減る)。
ところで、刑事事件を避けたいなら、「調査委」の告発を要件とする手もありますが、ことは刑法の問題ですから無理でしょうかね。 でも警察も検察も懲りていると思いますので(最近の不起訴増大)、事故調で死因が究明されて当事者間で解決するなり、それなりの行政処分がなされるなら、ますます不起訴になるのでは?
なお、昨今のニュース(学位に絡む謝礼)で気になったことは、事故調に厚労省役人や医療関係者が関与するのは性質上当然ですが、どんな形であれ「金銭の授受」が行われないよう・・・(挑発に聞こえるかもしれませんが、それだけでアウトになるので、老婆心です)。 そんなことは論外として、遥かに高度な倫理・姿勢が求められます。
法務業の末席 さん、psq法曹 さん、こんにちは。
コメントありがとうございました。
基本的に法理上の問題よりも、医療現場での死によって傷ついた患者家族をどう救うのかという問題だと考えています。そこがおざなりだと、立法措置が空洞化することは避けられません。
法理で言えば、たとえばドイツ連邦の場合、各州医師会が主体の職業裁判所は、故意犯などの疑いで通常の刑事裁判が行われた場合は、その間、調査等を停止します。(時効も停止するのだろうと思いますが、確認できていません。)職業裁判所については下記(特に判例提示の後ろ)を御覧下さい。
東京医科歯科大学名誉教授 岡嶋道夫 先生HP ドイツの医師職業裁判所の判例 http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/m412/m416.htm
つまり構造上、州医師会による事実認定とADR、職業裁判所による倫理審査と資格審査あるいは罰金刑等、さらに通常の民事訴訟という階梯を辿ることになっているわけです。
厚労省二次試案の場合も、これと同じような階梯が念頭にあるものと思います。重要な差違は、岡嶋名誉教授がご指摘のように、それが医師自身の自律の中から出るものではなく、医療崩壊の主因となっている厚生労働省官僚による恣意的な制度となっているということです。
読売新聞社説(12月6日付 医療事故調査委 医師と患者の相互信頼に必要だ )のように、目的が正しければ方法はどうでもいいというような粗雑な議論では、この件は処理できないと考えます。
読売新聞社説 12月6日付 医療事故調査委 医師と患者の相互信頼に必要だ http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071205ig90.htm
No.18 psq法曹さま
法律的なアドバイス、ありがとうございます。
特にADRの妨訴抗弁の要件については、大変参考になりました。 私ども社労士の世界でも、個別労働紛争に関してトラブル(解雇や給料、労働契約の面でのトラブル)が増えており、雇用主にとって訴訟リスクが急速に高まって来ています。役所や民間が設置するADR機関も整備されつつあり、また裁判所では労働調停の制度が用意されました。こうした制度は「和解・調停などの当事者合意型」の仲裁制度ではありますが、当事者にとって「いきなり訴訟」より遙かに負担は軽くなります。その面でご指摘頂いたように、予めADR前置を雇用契約書に盛り込んでおく、という手法は使えるのではないかと思いますので早速研究してみます。
rijinさま
医療事故調査委員会が医療者にとって良い制度なるのか、それには現場の実態を知っている医療者が、どれだけ検討案に「注文」を付けるのかが鍵ではないかと思います。医療者からの「注文」の声が無ければ、現場の実態を知らない役人と政治家が作る、使い勝手の悪い中途半端な制度になってしまうのではないでしょうか。 No.15でrijin様の「具体的提案が必要」との末尾の一節は、まさしくその通りだと思います。
法務業の末席 さん、こんにちは。
残念ながら、厚労省も自民党案のとりまとめに当たっている大村秀章代議士も、現場に聞く耳を持ちません。
どうしたもんだか、厳しいところに来ています。
大野病院の帝切産婦死亡症例が刑事事件という結果になった原因があの「事故調査報告書」にあると考えていますが、あのケースでは術後直ちに産婦人科と麻酔科と整形外科(院長)の3人の専門医のカンファでいったん病死と判定し届け出に及ばずとしました。
しかし後になって院長が検討不足の疑義を抱き、自院の実態を知らぬ他院の産婦人科専門医にだけ事故調査鑑定を依頼してつくられたのが問題の「事故調査報告書」です。 医学的真実を究明しようという目的からすると、そもそもこのような事故調査のやり方と経緯そのものがまったく合理的なものではなく、その結果まったく合目的的でなかったと思います。
大野病院裁判の端緒をこの不適切な事故調査方法にあると分析する立場から、私なりに今回の医療事故調査委員会についてその構成内容と運用の実際を考えるとすると、予期し得ぬ(厳密な確率学的にではなく現実的に妥当なレベルの医学的注意を払った上での不可抗力的治療中突発イベントによる)患者死亡が起こった場合、事故調査委員会の立ち上げを24時間以内に行なって病死か異状死かを決定するようにするのが現時点では最も現実的なやり方ではないかと思うものです。
それを実現するには、以前本館でも述べたと思いますが現場の各科専門医を召集して現場で詳細な検討を行なう、ドラマ「ER」のカゥンティ病院での事故調査検討会のような制度しか、現時点で私の少ない脳味噌では(笑)想起できかねます。
No.20 >こうした制度は「和解・調停などの当事者合意型」の仲裁制度ではありますが、
1 この表現を見るに、誤解があります。 ADRは裁判以外の解決を広く指し、仲裁・調停・和解などがあります。 「仲裁」とは、仲裁人の判断に従う(結果が自分の意に沿わなくても)というものであり、必ず裁断型になります。 ですから「当事者合意型の仲裁」という表現は自己矛盾であり、「当事者合意型のADR」と言うべきところです。その意味では、私の先のコメントも曖昧でした。
もしかして、仲裁を話し合い解決と思っているとしたらそれは誤りで、裁判類似の裁断になります。もちろん、仲裁の過程で和解ができることもありますが、それは概念としては仲裁とは呼ばない代物です。
2 それから民間ADRについては、新しい裁判外紛争処理手続の利用の促進に関する法律(ADR促進法)で法務省の認証を得れば、訴訟が存在していても4か月間を限度として手続停止効が認められます。
3 行政型ADRについては、それぞれの法律で要件効果が定められており、これが区々になっていたはずですが、ADR促進法とアンバランスが生じないように徐々に法改正しているところだと思います。
4 雇用契約の場合には、立場の強弱が大きいので、契約書に書いたからといってそのままOKかは疑問ですが、まあ研究ということですから、よく研究してください(無責任で失礼)。
No.23 psq法曹様
いつも親切なアドバイスを頂き、ありがとうございます。 法令用語の概念については、私自身は過去に法学部などで系統立てて学んだ経験が無く、資格受験の際に自己流で身に付けた知識ですので、理解不足や混乱は自覚しており、恥ずかしく思うことも多々あるのが実情です。機会あるごとに勉強していかざるを得ず、このブログ投稿欄でのpsq法曹様はじめ、皆様からのご教示は大変ありがたいものです。
なおこれは弁護士の方々には釈迦に説法かと存じますが、裁判外の紛争解決を制度化したのは労使関係の分野が古く、労働関係調整法が昭和21年制定され、その後平成16年のADR促進法制定より3年早い平成13年には、個別労働紛争の解決の促進に関する法律が制定施行され、実際に裁判外の紛争解決が行なわれてきた歴史があります。こうした労使の裁判外紛争解決制度では、基本は委員が提示する「斡旋」であり、紛争当事者は提示された斡旋案を受諾するか、拒否して次の段階として裁判(労働関係紛争法では労働委員会→裁判、個別労働紛争では紛争調整委員会→裁判)に駒を進めるかという裁断に近い制度設計となっています。こうした制度設計の概念は、終戦後の民法改正や労基法制定などの戦後法制の整備より早い時期に、GHQが労働組合法や労働関係調整法を急がせ、アメリカ直輸入で持ち込んだシステムと言われております。
大分トピズレの話題が長くなりました。医療の世界ではADR機関など紛争解決の制度整備は緒についたばかりのようですが、労使紛争における裁判によらない紛争解決の手段は、上記の行政型制度以外にも複数のシステムが用意されていて、それぞれが役割分担をしながら運用してきた歴史があります。医師や医療業界の皆様方がこうした歴史のある労使の紛争解決制度などを研究して、医療の世界にも使える部分は参考にされることも検討してみてはいかがでしょうか。
私はこのブログ上での皆さんの議論を読ませていただいて
「刑事責任は重過失までにしたほうがいいのでは」
と考えるようになっていたのでこうした動きは良いことだと思います。
まあ、結局警察が動いた時に「この程度なら軽過失だ。重過失じゃない」という批判はおきそうですが。
ただ、読売の社説にある「医療死亡事故が起きた場合、医療機関から地方委員会への届け出を義務化」すると言うのはどうなんでしょうか?
私は素人なのでちょっと良く分からないのですが「手術したあと死んだ」のと「医療死亡事故」の違いが良く分かりません。モデルとなった航空・鉄道事故調査委員会の場合、「航空・鉄道事故」は結構はっきりと分かると思うのですが「医療死亡事故」の定義ってはっきりしたものなんでしょうか?
ろくろくびさん、とりあえず、こちらをどうぞ。http://ameblo.jp/kempou38/entry-10057470455.html
つーか、ソ連参戦キター!!
税金の最高の無駄使いに思えますね。
任意団体の様な形で作るなら、その様な運動をされる方がいても良いのでしょうが、何故税金を投入しなければいけないか不思議に思います。
患者側が医療事故死だと思ったなら、解剖を申し出るべきで、解剖をせずして判断するのは、おかしいし。
刑事事件、民事訴訟、ADRは、それぞれ残る。結局は、マスコミ対策と人気取りだけのための事故調査委員会となる恐れはないのかと思いました。
厚生労働省は、もっとまじめに日本の医療を良くする仕事をすればよいのに!
No.2 10年前にドロッポしました。 さん
情報ありがとうございます。やはり届出義務には問題ありそうですね。せいぜい調査協力義務程度にしておいたほうがよさそうな気がします。
死亡例は全例届ければいいだけですよ。
現実には航空・鉄道事故調査委員会が関与しても刑事訴訟になっています。重過失の定義も定まっていません。従って、これで刑事事件にならないということにはならないでしょう。
また、おそらく民事で過失がないのに賠償を払わねばならないという現実もそのままです。だから刑事・民事との兼ね合いをどうするかが争点ですね。
今のままではだめだけれども、ともあれ形になったのは評価します。何とか委員会スタートまでに諸問題を解決してほしいところです。
真実の究明、事故防止への役立て、紛争解決ということを目的にするのであれば、私は反対はしません。後はソフト面で変えていけば良いのではないでしょうか?
PS 私は一応小松先生のご著書はすべて読んでいますのでいろいろな問題点があるのは知っています。
憲法32条(国民の裁判を受ける権利)や憲法76条(司法権は裁判所に専属する。行政機関は終審として裁判を行えない)がある以上どのような組織を作っても刑事・民事訴訟は避けられないでしょう。むしろ委員会の調査結果が訴訟に与える影響(判決のみならず訴えを提起するか否かも含めて)のほうが重要になると思います。
調査委員会の調査結果の信頼性が高ければ医療者側も法曹関係者も納得のいく結果になっていくのではないか、と期待しています。
そのためにも大切なのは人選であろうかと思います。
>厚生労働省は、もっとまじめに日本の医療を良くする仕事を>すればよいのに!
>真実の究明、事故防止への役立て、紛争解決ということを目>的にするのであれば、私は反対はしません。
>調査委員会の調査結果の信頼性が高ければ
貴殿らは「あの」厚生労働省を何だと思っておられるのですかw?
私はドロッポして後悔した事も罪悪感を抱いた事もありませんが今回ほど「逃げといてよかったああああああ!」と痛感した事はありませんww。
>No.8 10年前にドロッポしました サン
「貴殿らは「あの」厚生労働省を何だと思っておられるのですかw?」
それに対する私のレスは、「エ〜!厚生労働省だけですか?」と、なってしまします。
ムーアの「Sicko」を見て、相当日数も経過するのに、消え去りません。日本のもので日本の医療崩壊について、あれほどのインパクトを与えるものが、ないからではないかと私は思えます。(例外は、このモトケンブログです。)
最近、NHKのクローズアップ現代が医療関係について番組を何日間か放送していました。(例えば、ADRや在宅緩和ケアとか)でも、現象だけを捉えていて、本質には迫っていない。あえて、医療費問題からは、遠ざかっているのはと思ってしまします。
米国で、”Iran: Nuclear Intentions and Capabilities”というNIC(National Intelligence Council)の報告書が12月3日に出されました。日経のニュースは以下ですが、日本はマスコミが、その代表でしょうが、全て一色になりすぎていると感じます。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071204AT2M0401204122007.html
私はエントリ本文で引用された記事の次の一節が気になります。
「活用できる」とはどういうことだろうか?
裁判での証拠として「活用できる」ということだろうか?
民事訴訟だけか、それとも刑事訴訟にも証拠として「活用できる」のか?
裁判での証拠として「活用できる」のであれば、調査委員会の調査は裁判での「事実審理」の手続を、調査委員会に移すだけのことになってしまう恐れがある。調査委員会報告書が出されたら、その報告書の記載事実を根拠にして、その結果を待ってましたとばかりに訴訟提起、という事態にはならない保証があるのだろうか。
調査委員会が単に事実の調査だけを行ない、損害賠償や慰謝の領域に踏み込まず、紛争解決の機能を持たないのであれば、「新制度により、訴訟が減ることを期待」することは無理ではなかろうか。紛争解決機能を持たない単なる調査機関の新設は、医療訴訟の減少には逆に作用しかねないと私は懸念します。
>No.10 法務業の末席 さん
11月30日自民党医療紛争処理のあり方検討会の原案から、
診療行為に係る死因究明制度等について(案)、訴訟関連部分を引用すると。
となっております。活用できるというからには、民事訴訟の証拠書類として採用可能であると理解していますがどうでしょうか。
>No.8 10年前にドロッポしました。 さん
おっしゃりたいことがよくわかりませんが・・・。
この件に関して、私はこのままではだめだけれども、形になったのは評価します、と言いたいです。
「あの」厚生省でありますが、すべて後手に回っている感はぬぐえませんが、遅まきながら何とかしようと言う姿勢を見せるのは悪いことではないと思います。
それに厚生相に任せていられない!と言ったって、他に実際に誰に任せればよいのでしょうか?医師会でしょうか?マスコミでしょうか?それとも公安ですか?法曹ですか?患者団体ですか?それぞれ単独の組織に任すことはできません。
理想はいろいろな分野の国民が現実を交えながらディスカッションし、無理のない範囲でなるべく理想を実現していくことだと思います。しかし、もちろん限界があります。そこでとりあえず厚生省が中心になって、やっていくと言うことはやむを得ないと思うのです。
ただ、官僚に抜けている、「現場の声をきちんと聞く」、「机上の理論から脱却する」という姿勢は必須だと思いますし、今の官僚にはそれが決定的に欠けています。
願わくば、もう少し早く現場の意見をきちんと聞いてやるように努力するべきです。
すべてを許せなくなったら、どんな世の中になるかわかりません。ある程度の妥協も必要ではないでしょうか?
>No.8 10年前にドロッポしました。 さん
上に政策あれば下に対策あり、ですね。
裁判員制度については私も秘策を(バレバレでつ)用意してます(笑)。
>No.12 yama さんのコメント
どのような治療にも必ず副作用による合併症がありますから、めいめい覚悟の上でやる時はやる、仰るとおり決して行うことが必要な時期だと思います。死を覚悟して手術を受ける時のように。
あのまったく論理的でない「調査報告書の刑事捜査への活用」の条項に起因する合併症で、制度施行後無用の血が大量に流れると予想されますが、とにかく今できることは、問題が起こったときに早く対処ができるよう、原因となりそうな制度の欠陥部分を予め想定して注意を集中しておくことくらいでしょうか。
下々の対策でつね(笑)。
こういった日本の戦術戦法の拙さは旅順攻撃以来進歩が全くないですね(笑)。あんなの統治術になり得るはずもないのに(笑)。
まあ学ぶ国ではなく慣れる国だからそれもしょうがないのでしょう。上に行くほど学びを捨てて登って行きますから(笑)。
あ、上が愚かしい政策で下が賢い対策の国なら、さしずめ愚兄賢弟国家かな(爆)。
No.11 田舎の消化器外科医 さま
情報提供ありがとうございます。引用された原文が公開されいるHPなども教えて頂ければ、なお有り難いのですが。
引用された内容を読む限り、民事訴訟の証拠として利用できそうですね。それどころか『(16)委員会の調査報告書は、刑事手続に使用することを妨げない。』というくだりは、刑事訴訟の証拠として活用することを妨げない、と読み取れます。
ということは、この調査委員会の調査はまさしく「裁判での事実審理」の代用の性格を持つ、と私には思えます。実際に調査委員会に事故を報告して調査に臨む医療者は、法廷に臨むのと同じ自己防衛の注意を払って陳述しないと、調査報告書を後日法廷で「動かぬ証拠」として使われる恐れがあるように感じます。
取り敢えず、これは自民党の案に厚労省が乗っかった訳で、実際に法制化するには衆参両院での国会審理が必要です。現時点では絵に描いた餅に過ぎず、法制化された訳ではありません。反対する医療者の方がこれから政治的運動を活発にすれば、阻止したり中身を大きく改変させることも可能かと思います。また衆院は自民党が過半数ですが、参院は民主党が過半数ですので、自民党原案のままで参院民主党が審理に応ずるかどうかなど、まだまだ反対する医師の側で政治活動できるポイントは沢山あるように思います。
法務業の末席 さん、横から失礼します。
> 実際に調査委員会に事故を報告して調査に臨む医療者は、法廷に臨むのと同じ自己防衛の注意を払って陳述しないと、…
事故調査としては最も好ましくありません。インシデント・アクシデント報告制度でも、院内事故調査でも、関係者が処罰対象にならないことを明示しないとうまく機能しないことは周知の事実です。始末書で事態が改善した例しはないのです。
まして、多くの人命のかかった事故調査で率直な事実確認が行えないのでは、近い将来に禍根を残します。事故は何度でも繰り返されていくことになるでしょう。
さすがに訴訟に証拠として採用しようとするとこのような事態が不可避であることは、厚労省も内閣法制局もよく理解しているであろうと思いますし、国民の生命を何とも思わぬ無責任と、医療者に対する深刻な悪意も感じます。
代議士も厚労省試案をよく理解できていない状況にあるようです。
かと言って、この辺りをきちんと整理するためには、「被害者」の加罰希望にどう対応するのか、訴訟が起こらない手当が必要です。具体的提案が必要かと思います。
No.9 ある経営コンサルタントさん、
…確かにw。
No.12 yamaさん、
いや、基本的には貴殿のおっしゃる通りなのですが、これまでのところ、厚生労働省が何か思いつきを実行するごとに事態は改善どころか悪化する一方ですからねえ…。今回だけ例外、ってのは望み薄かと。私ははっきりいって、連中には昼間からエロ本でも読んでてもらってた方がマシだと思ってます。
No.13 ぼつでおkさん、
冬山に登りさえしなければ雪崩にはあいませんw。まあNo.5 うらぶれ内科さんのおっしゃる「全死亡例報告による飽和攻撃」でもイケるか。
No.15 rijin 様
私のNo.14での主張は、事故調査としては最も好ましくないことは理解しております。理解していますが示された原案からすると、この事故調のありかたは問題があり過ぎて、この案では医療者が刑事・民事の両訴訟に引きずり出されるリスクが減るとは思えません。
私には民事訴訟リスクを減らすには、事故調とADR機関が裏表の関係で整備されるのが必要だと思います。「ADRの活用を図る」となっている原案からは、自民党医療紛争処理のあり方検討会が紛争解決について、認識が甘いのではないかという印象を拭えません。事故調査報告書を証拠として「活用」できるからには、事故調査委員会で医療者に有責とされた場合、その事故調査報告書を証拠として賠償請求訴訟を起こすのは防ぎようが無いように思えます。
刑事手続きについても、原案では「謙抑的に対応すべきもの」と位置づけられながら、そのすぐ次の項に「委員会の調査報告書は、刑事手続に使用することを妨げない」となっており、運用によっては捜査機関のお先棒担ぎになりかねないリスクを内包しているように思えます。
こうした原案を読んだ個人的な感想を率直に医療者への助言に結びつけると、「自己防衛の注意を払って陳述すべし」という主張になってしまいました。事故調査委員会設置の本来の目的からすれば、事故調での陳述は司法上の免責を付与しなければ逆効果になりかねません。しかし、司法免責は今の日本の法体制では無理だろうと思いますので、中途半端な位置づけの事故調委員会の新設に賛成できない私の気持ちが文章に表れた結果と思って下さい。
さて、では「具体的提案」となりますと私にも良い知恵はありません。民事訴訟の面では先に書いたとおり、大規模で半公的なADR機関の整備でしょうか。事故調に直属のADR機関を作り、調査報告書を活用しての紛争解決を図りたければ、まずそのADR機関で調停を受けないと損害賠償請求訴訟を起こせないルール、というのはどうでしょうか。
また、公表する事故報告書は氏名・所在地・日時などの情報を仮名やぼかした表記で具体性を薄くしておき、そのままでは訴訟の証拠として使うには不十分なないようにしておく。当事者や検察などがどうしても訴訟の証拠として使えるような詳細な調査資料の開示を請求した場合に、事故調委員会の中に設けた専門の小委員会で、詳細資料の開示の可否を審査した上で開示するルールというのもどうでしょうか。行政官庁内で情報公開請求を審査する委員会が設置されていて、情報公開請求に対してプライバシー配慮から墨塗りするかなどをチェックしていますが、そのようなチェック権限を事故調査委員会に予め与えておくというプランです。
No.17
この御時世、患者側(遺族も)には原文と同じ写しの情報開示でしょうから、患者側が告訴したら写しを提供できるので簡単に捜査機関の手に渡るでしょう。
ADRは契約ならば事前に契約書に盛り込んでおけば、訴訟を提起しても妨訴抗弁(契約どおりにADRで解決しなさいという意味)になり、民事訴訟は避けられます。
しかし、次の2点の考慮点あり。
1 医療事故の場合は、診療契約違反という側面もありますが不法行為型でもありますので事前に契約しておくのも困難(事前に一条項入れておいてもいいが果たしてうまく行くかどうか不明)。
2 それに医療ADRは、裁断型の仲裁ではなく、和解・調停などの当事者合意型になるのでしょうから、合意ができなければ、いずれ民事訴訟になる可能性はあります(数はもちろん減る)。
ところで、刑事事件を避けたいなら、「調査委」の告発を要件とする手もありますが、ことは刑法の問題ですから無理でしょうかね。
でも警察も検察も懲りていると思いますので(最近の不起訴増大)、事故調で死因が究明されて当事者間で解決するなり、それなりの行政処分がなされるなら、ますます不起訴になるのでは?
なお、昨今のニュース(学位に絡む謝礼)で気になったことは、事故調に厚労省役人や医療関係者が関与するのは性質上当然ですが、どんな形であれ「金銭の授受」が行われないよう・・・(挑発に聞こえるかもしれませんが、それだけでアウトになるので、老婆心です)。
そんなことは論外として、遥かに高度な倫理・姿勢が求められます。
法務業の末席 さん、psq法曹 さん、こんにちは。
コメントありがとうございました。
基本的に法理上の問題よりも、医療現場での死によって傷ついた患者家族をどう救うのかという問題だと考えています。そこがおざなりだと、立法措置が空洞化することは避けられません。
法理で言えば、たとえばドイツ連邦の場合、各州医師会が主体の職業裁判所は、故意犯などの疑いで通常の刑事裁判が行われた場合は、その間、調査等を停止します。(時効も停止するのだろうと思いますが、確認できていません。)職業裁判所については下記(特に判例提示の後ろ)を御覧下さい。
東京医科歯科大学名誉教授 岡嶋道夫 先生HP
ドイツの医師職業裁判所の判例
http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/m412/m416.htm
つまり構造上、州医師会による事実認定とADR、職業裁判所による倫理審査と資格審査あるいは罰金刑等、さらに通常の民事訴訟という階梯を辿ることになっているわけです。
厚労省二次試案の場合も、これと同じような階梯が念頭にあるものと思います。重要な差違は、岡嶋名誉教授がご指摘のように、それが医師自身の自律の中から出るものではなく、医療崩壊の主因となっている厚生労働省官僚による恣意的な制度となっているということです。
読売新聞社説(12月6日付 医療事故調査委 医師と患者の相互信頼に必要だ )のように、目的が正しければ方法はどうでもいいというような粗雑な議論では、この件は処理できないと考えます。
読売新聞社説 12月6日付 医療事故調査委 医師と患者の相互信頼に必要だ
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071205ig90.htm
No.18 psq法曹さま
法律的なアドバイス、ありがとうございます。
特にADRの妨訴抗弁の要件については、大変参考になりました。
私ども社労士の世界でも、個別労働紛争に関してトラブル(解雇や給料、労働契約の面でのトラブル)が増えており、雇用主にとって訴訟リスクが急速に高まって来ています。役所や民間が設置するADR機関も整備されつつあり、また裁判所では労働調停の制度が用意されました。こうした制度は「和解・調停などの当事者合意型」の仲裁制度ではありますが、当事者にとって「いきなり訴訟」より遙かに負担は軽くなります。その面でご指摘頂いたように、予めADR前置を雇用契約書に盛り込んでおく、という手法は使えるのではないかと思いますので早速研究してみます。
rijinさま
医療事故調査委員会が医療者にとって良い制度なるのか、それには現場の実態を知っている医療者が、どれだけ検討案に「注文」を付けるのかが鍵ではないかと思います。医療者からの「注文」の声が無ければ、現場の実態を知らない役人と政治家が作る、使い勝手の悪い中途半端な制度になってしまうのではないでしょうか。
No.15でrijin様の「具体的提案が必要」との末尾の一節は、まさしくその通りだと思います。
法務業の末席 さん、こんにちは。
残念ながら、厚労省も自民党案のとりまとめに当たっている大村秀章代議士も、現場に聞く耳を持ちません。
どうしたもんだか、厳しいところに来ています。
大野病院の帝切産婦死亡症例が刑事事件という結果になった原因があの「事故調査報告書」にあると考えていますが、あのケースでは術後直ちに産婦人科と麻酔科と整形外科(院長)の3人の専門医のカンファでいったん病死と判定し届け出に及ばずとしました。
しかし後になって院長が検討不足の疑義を抱き、自院の実態を知らぬ他院の産婦人科専門医にだけ事故調査鑑定を依頼してつくられたのが問題の「事故調査報告書」です。
医学的真実を究明しようという目的からすると、そもそもこのような事故調査のやり方と経緯そのものがまったく合理的なものではなく、その結果まったく合目的的でなかったと思います。
大野病院裁判の端緒をこの不適切な事故調査方法にあると分析する立場から、私なりに今回の医療事故調査委員会についてその構成内容と運用の実際を考えるとすると、予期し得ぬ(厳密な確率学的にではなく現実的に妥当なレベルの医学的注意を払った上での不可抗力的治療中突発イベントによる)患者死亡が起こった場合、事故調査委員会の立ち上げを24時間以内に行なって病死か異状死かを決定するようにするのが現時点では最も現実的なやり方ではないかと思うものです。
それを実現するには、以前本館でも述べたと思いますが現場の各科専門医を召集して現場で詳細な検討を行なう、ドラマ「ER」のカゥンティ病院での事故調査検討会のような制度しか、現時点で私の少ない脳味噌では(笑)想起できかねます。
No.20
>こうした制度は「和解・調停などの当事者合意型」の仲裁制度ではありますが、
1 この表現を見るに、誤解があります。
ADRは裁判以外の解決を広く指し、仲裁・調停・和解などがあります。
「仲裁」とは、仲裁人の判断に従う(結果が自分の意に沿わなくても)というものであり、必ず裁断型になります。
ですから「当事者合意型の仲裁」という表現は自己矛盾であり、「当事者合意型のADR」と言うべきところです。その意味では、私の先のコメントも曖昧でした。
もしかして、仲裁を話し合い解決と思っているとしたらそれは誤りで、裁判類似の裁断になります。もちろん、仲裁の過程で和解ができることもありますが、それは概念としては仲裁とは呼ばない代物です。
2 それから民間ADRについては、新しい裁判外紛争処理手続の利用の促進に関する法律(ADR促進法)で法務省の認証を得れば、訴訟が存在していても4か月間を限度として手続停止効が認められます。
3 行政型ADRについては、それぞれの法律で要件効果が定められており、これが区々になっていたはずですが、ADR促進法とアンバランスが生じないように徐々に法改正しているところだと思います。
4 雇用契約の場合には、立場の強弱が大きいので、契約書に書いたからといってそのままOKかは疑問ですが、まあ研究ということですから、よく研究してください(無責任で失礼)。
No.23 psq法曹様
いつも親切なアドバイスを頂き、ありがとうございます。
法令用語の概念については、私自身は過去に法学部などで系統立てて学んだ経験が無く、資格受験の際に自己流で身に付けた知識ですので、理解不足や混乱は自覚しており、恥ずかしく思うことも多々あるのが実情です。機会あるごとに勉強していかざるを得ず、このブログ投稿欄でのpsq法曹様はじめ、皆様からのご教示は大変ありがたいものです。
なおこれは弁護士の方々には釈迦に説法かと存じますが、裁判外の紛争解決を制度化したのは労使関係の分野が古く、労働関係調整法が昭和21年制定され、その後平成16年のADR促進法制定より3年早い平成13年には、個別労働紛争の解決の促進に関する法律が制定施行され、実際に裁判外の紛争解決が行なわれてきた歴史があります。こうした労使の裁判外紛争解決制度では、基本は委員が提示する「斡旋」であり、紛争当事者は提示された斡旋案を受諾するか、拒否して次の段階として裁判(労働関係紛争法では労働委員会→裁判、個別労働紛争では紛争調整委員会→裁判)に駒を進めるかという裁断に近い制度設計となっています。こうした制度設計の概念は、終戦後の民法改正や労基法制定などの戦後法制の整備より早い時期に、GHQが労働組合法や労働関係調整法を急がせ、アメリカ直輸入で持ち込んだシステムと言われております。
大分トピズレの話題が長くなりました。医療の世界ではADR機関など紛争解決の制度整備は緒についたばかりのようですが、労使紛争における裁判によらない紛争解決の手段は、上記の行政型制度以外にも複数のシステムが用意されていて、それぞれが役割分担をしながら運用してきた歴史があります。医師や医療業界の皆様方がこうした歴史のある労使の紛争解決制度などを研究して、医療の世界にも使える部分は参考にされることも検討してみてはいかがでしょうか。