エントリ

前親方「ビール瓶で10発殴った」 制裁目的は否定(asahi.com 2008年02月10日10時13分)

 前親方は「相撲を続ける気があるのか、はっきりしない態度に怒りがわいて殴った」としているが、制裁目的ではないと否認を続けているという。

力士暴行死:ぶつかりげいこ「長いと思った」…兄弟子供述(毎日新聞 2008年2月9日 21時12分 (最終更新時間 2月9日 22時08分))

 山本容疑者は殴ったことについて「説教をした時に(相撲をやめるか続けるか)はっきりしないので怒った。制裁の意味はない」と犯意を依然否認しているという。

 最初に明確にしておきますが、このエントリは、角界批判ではなくて、新聞社の犯罪報道の姿勢に関するものです。

 両紙とも、山本容疑者(元時津風親方)が、「制裁」の目的ないし意味を「否認」していると報じています。
 毎日に至っては、「犯意を依然否認」とまで言っています。

 いくつかの問題を指摘できるのですが、最大最悪の問題は、両紙とも警察発表を鵜呑みにして自分の頭で考えることを放棄しているのではないか、と思われることです。

 「制裁目的」を「否認」という言い方は、

 本件の真相は制裁目的なのだが、元親方はそれを否認して責任逃れをしようとしている

 という意味に読めてしまいます(私の深読みまたは読み過ぎでしょうか?)。

 私の深読みを前提にして話を進めますが、少なくとも現時点においては「制裁目的」とういのは警察が想定した事件の構図に過ぎないように思います。
 真相はこれから解明されるはずなのに、両紙は警察発表を鵜呑みにして「制裁目的」が真相であると(無批判・無検討に)前提にして本件を見ているように感じられるのです。

 さらに言えば、そもそも「制裁目的」という言葉自体が抽象的です。
 朝日によれば元親方は「「相撲を続ける気があるのか、はっきりしない態度に怒りがわいて殴った」と言っているようですが、この供述と「制裁目的」という言葉とは矛盾するとは思えないのです。

 要するに、両紙の記事からは、自分たちの主体的判断で事件の真相を解明しようという姿勢が認められないのです。

 ちなみに、読売新聞は、たんたんと供述要旨を伝えているだけです。
 あまり突っ込まないのでぼろが出ないだけかも知れませんが。

 例によって揚げ足取り的エントリですが、私なりに気になるところを書くのがこのブログですので、こんな見方もあると思ってお読みください。

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コメント(22)

昔から良く新聞報道などで「否認」という表現が使われることに違和感を覚えていました。といいますのは、我々の業界では、薬物やアルコール依存症の患者さんたちが、それらに関連した現実的な問題が顕在化してきているのに、本人があたかもそういった事実そのものが無いかのように否定する事を「否認」と呼んでいるからです。
つまり、「否認」と表現されると、事実としてそういったことはあったが、本人が認めていない、と私は感じるわけです。事実としてはそういったことがあったと言外に言っているように聞こえてしまうのですね。
私は非常に特殊(かもしれない?)な「否認」の用法に慣れているからそのように感じるのかも知れませんが、asahi.comで、見出しでは「否定」という言葉を使っておきながら、本文では「否認」と表現しているところは、一般的には、どのような印象を受けるのでしょうか?

例によって揚げ足取り的エントリですが、私なりに気になるところを書くのがこのブログですので、こんな見方もあると思ってお読みください。
私は揚げ足取りとは思いません。新聞は本当に警察発表・捜査員からのリークをまったく裏付けすら取らず、内容的におかしいかどうかすら判断せずに書くことが非常に多いと思います。
朝日によれば元親方は「「相撲を続ける気があるのか、はっきりしない態度に怒りがわいて殴った」と言っているようですが、この供述と「制裁目的」という言葉とは矛盾するとは思えないのです。
私も同じ記事を読んで同様に感じました。記者さんは自分で書いたものを推敲したり、誰かチェックを受けたりしないのかしら。

この事件は週刊誌の報道がかなり先行していて、週刊誌側には相撲界の「前近代性」を報じることで「八百長報道をめぐるトラブル」の「意趣返しをしてやろう」的な気持ちがあるように思えます。
ただ、被害者が亡くなってからかなり立ってからの「逮捕」には疑問を感じてしまいます。また、大手メディアの報道姿勢にも他の暴行致死事件と少し異なるように思える部分があります。
警察発表だけを報道するのではなく、「かわいがり」や「不透明な金の流れ」が横行しているという噂がささやかれている相撲界の実態も明らかにして欲しいな、と思います。逮捕された人たちが「トカゲの尻尾」にならないためにも。

すでにNo.3 通行人1さんがご指摘されていますが、私もこの事件に関するマスコミの報道姿勢は、その他多くの犯罪報道と違うように思います。

マスコミが警察の発表をそのまま事実のように報道している点はいつもと一見同じですが、本件の場合は厳密に言うと、マスコミにあおられた警察が、マスコミが望むような捜査をした上でマスコミが望むような発表をして、それがそのまま事実のように報じられているように見えます。
要するに、タマゴが先かニワトリが先か、という話ですけれどもね。

過去の有名事件で例を挙げると、ロス疑惑や和歌山カレー事件の時と報道の感じが似ているような気がしますね。

>>モトケン先生
>最大最悪の問題は、両紙とも警察発表を鵜呑みにして自分の頭で考えることを放棄している

私も全く同感です。近年顕著な傾向だと考えます。
これが私が日本の報道メディアをマス「ゴミ」と呼ぶ最大の理由です。

匿名HNで誰かメディア業界の人、これに反論してくれないかな(笑)。

「日々是よろずER診療」 にて、新聞報道されている「死因」に、医学的な解析から、疑義を提示されております。できれば非医療者もご覧下さい。
時太山の死因は高Kって本当?

私は、この事件の最近のニュースを見ていて、どうも違和感が少しあるな〜と思っていたのですが、モトケン先生の本文を拝見して、合点が行きました、ありがとうございます。
本当に、素人すぎて、自分の気持ちをうまく表現できなく、お恥ずかしいです。(私は刑事裁判の当事者になりたくはありませんが、いざという時は、やはり弁護人に弁護士の方について貰う、というのは必須です。裁判形態として、当たり前ででしょうが・・)

エントリ記事を拝読して疑問がパラパラパラと湧いてきました。(^^;

1.制裁でないと主張することで兄弟子たちの量刑を
  軽くすることは可能か?それを狙っているのでは?

2.自分たちの主体的判断で事件の真相を解明しよう
  という姿勢が報道の立場として適切なものだろうか?

3.マスコミが警察当局から公表される以外にどんな
  取材ソースがあるだろうか?
  例えば勾留中の被疑者への取材は可能なのだろ
  うか? 弁護人の選任は行われていると思うが、
  その弁護人は取材に応じてくれるのだろうか?

上記1.は、このエントリのトピックスから逸脱するものですが、ちょっと気になってます。制裁だとすると部屋ぐるみとなるでしょうが、親方の個人的感情から弟子達に指示したとなれば、責められるのは親方個人に集中するのではないかと思えるのですが・・・。

2.については、報道の立場の方に私は真相究明など期待してないということです。報道に求めるのは取材して裏付けを取ることに尽きる。いい加減に探偵ごっこは止めて頂きたいと思います。

3.じゃあ、現状の刑事司法制度のなかで報道に携わる方々が具体的にどのような取材を行うことができるのか。これも暗澹たる気分にさせられます。
被疑者側だけじゃなく被害者側のプライバシーの問題もありますでしょうし、どれだけ掘り下げた取材や報道が可能なのか。私も普段はマスゴミなどと既存のメディアをバカにしてしまいますが、もし自分がジャーナリストとして活動しようとしたら、もしかしたら何も書けなくなるかも知れない。
そんな気がする今日この頃であります 〆(。。)

No.1 mm3さま

「否認」 はそういう意味でも使われているのですね。

報道で言われているのは、法律用語としての 「否認」 のほうの意味だと思います。
法律用語としての 「否認」 とは、法律上の要件である事実を認めないという主張で、 「自白」 の反対語です。
刑事・民事共通ですが、刑事事件の場合、取調べの段階での言い分も含まれます。
(「そもそも人違いだ」とか「お金は受け取ったけど脅してはいない」など、犯罪成立要件ごとに認める/認めないという言い分は成立するので、全部否認とか一部否認と呼んで区別します。)

医学にも法学にも通じていない一般人がどう受け取るのかは、人それぞれになってくるのではないでしょうか。
単に「否定」と同義語と思う人もいるでしょうし、何か特殊な意味だと思う人もいるかもしれないし。
記事に注釈でもついているのが望ましいんでしょうけど。

No.8 青木さんの

2.自分たちの主体的判断で事件の真相を解明しよう   という姿勢が報道の立場として適切なものだろうか?
2.については、報道の立場の方に私は真相究明など期待してないということです。報道に求めるのは取材して裏付けを取ることに尽きる。いい加減に探偵ごっこは止めて頂きたいと思います。

という部分ですが、本件の報道に関する意見としては、同感するところが少なくないです。
今回の報道について、マスコミが警察発表を鵜呑みにして垂れ流していると捉えておられる方が多いようですが、個人的には今回はマスコミは「探偵ごっこ」のパターンにハマッていると思うからです。

たとえば、エントリで引用されている朝日の記事の

角界の慣習として、けいこは親方が指示しないと終わることができないとされる。「ぶつかりげいこ」が終わったのは斉藤さんが倒れたからだった。前親方は「通常のぶつかりげいこだった」と主張しているという。

という3つの文で構成された最後の段落の最初の一文は、警察の話を元に書かれているわけではではなく、朝日の記者が独自に拾ってきた「被疑者に不利な話」だと私は思います。

今回はむしろ、マスコミの多くは「悪い意味」で真相解明に意欲満々のような気がします。あらかじめ頭の中で決まっている「被疑者=トンデモないヤツ」という真相にちょっとでも早く近づくべく必死に取材している、または警察をあおっているように見えます。

連投すみません。

>No.8 青木さん

 おっしゃられている2の点について、かなりの部分に共感しつつ、多少気になったことをレスし忘れていました。
モトケン先生のエントリの

要するに、両紙の記事からは、自分たちの主体的判断で事件の真相を解明しようという姿勢が認められないのです。
     という部分は、マスコミに対して、捜査機関の情報だけに頼らずに自らが「捜査」して真相解明をしようという姿勢が認められない、という意味のことを言われたコメントではないと思います。  たぶん、権力の言うことを鵜呑みにせず、自分の頭で考える姿勢が認められない、というような感じのことを言われているのだと思います。  モトケン先生の言われていることも、青木さんの言われていることも、もしかしたら私こそが誤読しているかもしれないような不安も少々ありますが…

話の流れとちょっと異なりますが、すみません。
以下、適当に流してください…。

* * *

一般人の一人としては、「否認」という言葉が「否定」に変わっても、受け取るニュアンスはあまり変わらないように感じました。

「制裁目的ではないと否認を続けている」や「犯意を依然否認している」という言葉からは、取り調べ室(?)で「制裁目的だったのではないか?」とか「犯意があったんだろう?」と疑いをかけられて質問された際に、「いいえ、違います」と被疑者が否定しているイメージが湧きます。
刑事ドラマに影響されすぎですか?(^^;


個人的には、「…態度に怒りがわいて殴った」という記述からは、「カッとなってつい殴った」という衝動的で一時的な暴力という印象を受けました。

一方、「制裁目的」という言い方からは、これまでも暴力に訴えた制裁があり、習慣化していたという印象を受けます。(「かわいがり」等に関する報道を観ていたせいかもしれませんが。)

>No.11 けんさん
私はジャーナリズムに真相究明など期待してない、探偵ごっこは止めてほしいと前述しました。少々極端な書き方だったかなあ、(^^; 事件の真相を究明しようとするジャーナリズムを否定しちゃあんまりですけど、つい私はそこまで云い切っちゃった。

この事件に関して、モトケン先生が言われる真相解明とは、事件の背景となった様々な事情や「犯行」の動機を明らかにすることだろうと思います。
捜査や裁判の過程で明らかにされるのは事件の真実というより寧ろ事実関係ですから、真実を知りたいという我々の願いに応えられるのはやはりジャーナリズムしかない。そうでありながら実際に提供されるのはお粗末で見当外れの推理ドラマばかり。少し私は言いすぎたかも知れません。

ただですね、来年から裁判員制度が導入されます。新聞各社は先頃それに対処すべく自主的に心構えのようなものを定めたみたいですが、まだテレビ放送局各社は、それに対応したガイドラインを作成してないように見えます。

せめて裁判員制度を用いた裁判だけでも、予断に繋がりやすい「真相解明」なんて報道は、結審するまでは規制すべきなんじゃないか、私はそう思っています。
ジャーナリズムが自分の頭で考えて報道するのは、結審してからでも遅くはないと思うんですが。

>No.13 青木さん
>ジャーナリズムが自分の頭で考えて報道するのは、結審してからでも遅くはないと思うんですが。

その文面は誤解を招き易いと思います。
たぶんエントリーの趣旨は
「警察発表に犯人扱いの予断や誤解が含まれていないかを、鵜呑みにせず良く考えて、極力調べて正確な範囲で報道してもらいたい」
辺りで、ほぼそれと同様な御意見なのでは?

ちなみに、裁判員制度のためには、報道は余計な邪推を招きかねないので一切禁止、でないと拙かろうと思います。

青木さんのご見解に全面的に賛同です。

かつて吉展ちゃん誘拐事件のころの新聞記者は、記事に記者魂をあふれんばかりにぶつけて徹底的に煽情報道を避けていたと思います。あのころ日本は一億総白痴化する前(笑)ですが、ジャーナリズムは確かに存在していました。当時はフィクションとノンフィクションを職業文筆家が自ら作法をもって厳密に書き分けて(別職業として)いたからであると思います。

「遠山の金さん」なんですよね、この手のマスコミ報道って。
警察のみならず本人や周囲の関係者・目撃者からいろいろの取材を通じて話を聞いて、その内容の「正しさ」には(偏りはあっても)自信を持っている。
だもんで、「おぅおぅおぅ、しらばっくれんのも大概にしな!ネタはぜーんぶ挙がってンでいっ!」って感じになるのではないかと。マスコミ報道が『否認』と言うときには、多かれ少なかれそのニュアンスが含まれているものと私は受け止めています。

ところが、刑事司法的にその「挙がったネタ」が証拠能力を持ったり重用証拠と位置づけられたりするものかと言えば、必ずしもそうじゃない。ただただ、世間さま(と、他ならぬマスコミ自身)の心象を固める材料にしかなってない・・・ということじゃないでしょうか。

だもんで、福岡市元職員が起こした飲酒追突3児死亡事故もそうでしたけど、実際の御白州では、挙がってた筈のネタが「不当に低く評価」されたり「まったく評価されなかった」りしたように感じて『司法の危機』だの『司法に正義は無い』だのの感想に結びつく気がします。

でも瓦版屋の昔から、こういうワイドショー的なセンセーショナリズムやカタルシスは(それを見たがる知りたがる『世間さま』の需要に裏打ちされた)マスメディアの基本属性のようなものですから、止めろといって止むものでもないでしょう。

No.16 惰眠さま

「遠山の金さん」言い得て妙ですね。
メディアというのは得てして自分たちを「安全地帯」に置いて、「わるもん」を叩くのが好きですからねぇ。
少し話がずれますが、阪神淡路大震災の時、タクシーで「大阪から神戸までどれくらいかかるか」なんて企画をする所もあって多くのメディアはお祭り状態、2ヶ月ほどして「行政」を叩いてもどうしようもないな、ネタ切れだな、という空気が流れ出したとき、東京で「サリン事件」がおきました。
被災者が「最初の混乱が収まって、これから報道して欲しい事がたくさんあるのに」と思っているときに、今度は本物の悪人を見つけたメディアは東京で狂喜乱舞。
民間企業が不祥事を起こしたら、通用口に張り付いて関係ない社員をも追い掛け回すのに、某テレビ局が大問題を起こしても局員を追いかけまわさない、というのも変だな、と思ったことがあります。
「厳しく追及他人の失敗、笑ってごまかせ自分の失敗」
責任感のあるジャーナリストは表に出て来ることができない時代になったのでしょうか?

最近、自宅からなぜかコメントできないので・・・・でもちゃんと毎日診ています。
ところで、この報道で気になった点ですが、警察はK値(カリウム値)が高いので他殺、と言っておられるようですが、死亡すればK値は高くなるので何ともいえないのでは?と思いました。
もちろん、生きているときに殴られたりしたらK値は上がりますから証拠にはなり得ますけどね・・・。

言葉の意味としての観点から

1.ジャーナリスト=責任感強い

2.責任感無しで何でもかんでもガキの使いと変るところなく誤字脱字お構いなく紙面に書きなぐる=タブロイド記者やゴシップ記者の類(ジャーナリストとはまったく別の文筆業に中ります)笑

今の日本にジャーナリズムは存在しないと思います(笑)。

>No.13 青木さん

私はジャーナリズムに真相究明など期待してない、探偵ごっこは止めてほしいと前述しました。少々極端な書き方だったかなあ、(^^; 事件の真相を究明しようとするジャーナリズムを否定しちゃあんまりですけど、つい私はそこまで云い切っちゃった。

私もまあ、ジャーナリズムが真相究明をしようとする行為のすべてを否定し切っているわけではないです。
マスコミに関して一番気になるのは、すぐに真相がわかったつもりになりやすいように見えることです。

>No.11 けんさん

 ピンポンです。

 で、その原因はといえば、私の経験からしますと記者の勉強不足によるところが大きいと思っています。
 さらに言えば、勉強不足であることの自覚がないのかも知れません。
 そこまで言ったら失礼かも知れませんが、警察発表情報しかないのならそれの基づいて記事を書くしかないとは思いますけど、もう少し自分の頭で疑問点の有無くらいは考えて書いてもいいんじゃないかな、と思う記事が散見されます。

>No.21 モトケン先生

ピンポンです。

そうですか、良かったです(;^_^A

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