エントリ

 万引き事件の無罪判決です(ボツネタ経由

 http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=3202
 被告人が共犯者と共謀の上DVDを万引きしたとされる事案につき,防犯ビデオ映像,共犯者供述などによっても,共謀について合理的疑いを容れない程度にまで立証がされているものとは認められないとして,無罪を言い渡した事例

 万引きについての共謀つまり事前相談の有無が問題になってます。
 有罪っぽい事情もあれば無罪っぽい事情も認定されてます。

 いろいろな観点から意見はありますが、ここでは裁判員制度の観点から問題提起してみます。

 さて、この事件が裁判員裁判として裁判されたとしたら(現在の規定では対象になりませんが)、裁判員の皆さんはどのような判断を下すでしょうか?
 
 以下に裁判所が認定した事実関係の部分を引用します。
 かなり長いです。

2 前提事実
(1) 被告人とAの関係

ア 被告人は,平成18年中ごろ,バイクに乗って外出した際にバイクが故 障し,そこへ通りがかったAと知り合った。
イ 被告人とAは,Aから被告人を誘って数台でのバイクのツーリングに行 ったり,スーパー銭湯に行ったりしたことがあり,知り合って以降,本件 までに会った回数は,10回に満たない程度であった。Aは,本件以前, 被告人にiPodやバイクの部品等を譲ったことがあり,その際に被告人 は,Aが他の人へ物を譲った場合とは程度が異なると感じるほど,非常に 喜んだ態度を示し,Aに礼を述べたことなどから,Aは,被告人に対して, しっかりと礼を言う,まじめであるといった好印象を持っていた。

(2) 本件に至る経緯
ア 被告人は,平成19年7月4日(以下,時刻のみを記す場合は同日の時 刻のことであり,日付を記す場合は同月の日付のことである。),Aとス ーパー銭湯へ行く約束をしていたので,午後8時40分ころ,Aを迎えに 行くために自動車を運転して自宅を出て,午後9時過ぎにAの自宅に到着 した。その後被告人は,Aを同乗させて,自動車でスーパー銭湯に向かっ たが,進路前方にaが見えた際,Aが同店に立ち寄ってほしい旨述べたた め,a店舗前の路上に自動車を駐車して,2人で店内へ入った。
イ 被告人は,Aがa店内のCDコーナーへ向かったため,同様にCDコー ナーに入りCDを見ていたが,その後,店内のDVDなどを見て回った後, 目に付いたアダルトコーナーへと入った。被告人は,aの会員カードを持 っていたが,アダルトDVDをレンタルする意思はなかった。
被告人がアダルトコーナーに入った後,後れてAもアダルトコーナーへ と入った。
ウ aでは,レンタル用のDVDを陳列する際,映写時間,発売時期等を記 載した紙片が貼付されている半透明のプラスチックケース(以下「ケー ス」という。)に,商品であるDVDを盗難防止用タグと共に封緘し,D VDの内容,写真等が印画された外箱の中にそのケースを差し入れて商品 棚に陳列し,利用客は外箱を見てDVDの内容を確認し,レンタルする際 は外箱からケースを抜き出して,ケースのみをカウンターへ持参し,カウ ンターで盗難防止用タグを無効化して貸し出すというシステムが採用され ていた。また,被告人らがアダルトコーナーへ入った際,同コーナー内で は音楽が流れていた。

(3) 防犯ビデオから判明する本件における被告人とAの行動
アダルトコーナー内の,Aが窃取したDVD2枚が置かれていた商品棚 (以下「棚」という)に面。した通路(以下「本件通路」という。)には, 通路を見渡せる位置に防犯カメラが設置されていて,同通路における被告人 とAの動静が撮影され防犯ビデオに録画されていた。その録画内容(検察官 請求証拠番号甲15)には,編集や改ざんされた形跡がないため,その映像 どおりの事実があったものと認められるところ,これと被告人及びAの両供 述を併せると,本件通路における被告人とAの行動として,以下の事実を認 めることができる。(なお,以下で示す時刻は,防犯ビデオ映像の左下に表 示されているそれを示す。)
ア 被告人及びAは,遅くとも午後9時48分ころには本件通路付近に現れ, 同通路を行き来しながら,それぞれがアダルトDVDの外箱を手に取るな どして,DVDの品定めをしていた。このときから,店員が現れる午後9 時52分20秒ころまで,本件通路付近には被告人とA以外の第三者はい なかった。
被告人は,午後9時49分50秒ころ,DVDの外箱を手に取って眺め た後,外箱からケースを抜き出して手に持ち,1枚目のケースを手にした ままDVDの品定めを再開し,午後9時50分32秒ころ,別のDVDの 外箱を手に取って眺めた後,2枚目のケースを抜き出して手に持った。 被告人及びAが本件通路付近に現れてから,被告人が2枚目のケースを 手に持つまでの間,防犯ビデオ映像からは,被告人とAが会話を交わして いる様子はうかがえない。
イ Aは,被告人と同様に本件通路付近を歩きながら,アダルトDVDの品 定めをしていたが,午後9時50分48秒ころ,ケース2枚を手に持った まま棚のDVDを見ていた被告人に声をかけた。
ウAが被告人に声をかけた午後9時50分48秒ころから,Aが2枚目の DVDを窃取して空になったケースを棚に戻した午後9時52分09秒こ ろまでの間の被告人及びAの行動は,別表のとおりである。
その間,当初Aは被告人の左隣にいて,2人とも棚の方向を向いていた が,別表のとおり,Aは,被告人に背を向ける方向に体を回転させるなど した後,被告人の後ろを通って被告人の右隣へと移動した。
エ 被告人とAは,Aが2枚目のDVDを窃取して空になったケースを棚に 戻した午後9時52分09秒ころ以降も,直ちに本件通路から離れて店外 へ出て行くことなく,その場にとどまってアダルトDVDの外箱を手に取 り眺めるなどしていた。その間,被告人とAとの間では,午後9時52分 15秒ないし同18秒ころ,Aが被告人にアダルトDVDの外箱を見せな がら話している様子がうかがえるが,午後9時52分20秒ころに店員が 本件通路に現れて以降は,被告人とAが接近して会話が交わされている様 子は乏しく,それぞれが,棚を見たり,DVDの外箱を手に取って眺める などしていた。
オ 午後9時55分12秒ころ,本件通路において,店員がAに声をかけて, Aは店内の事務室へと連れて行かれた。

(4) Aによる犯行後の被告人の行動
ア 被告人は,Aが店員に店内の事務室へと連れて行かれる際,一緒に来る よう言われたため,事務室の前までついて行ったが,事務室の中には入ら なかった。その後,被告人は,店外に出て煙草を吸い,自動車をa店舗前 の路上に駐車したままであったので,駐車違反の取締りを避けるため,自 動車を運転してaから離れた。
イ 被告人が自動車を運転しているとき,Aから被告人の携帯電話に電話が あり,店員に万引きの疑いをかけられている,被告人にもaに戻ってきて ほしいと言われたため,被告人は,自動車をどこかに駐車してすぐにaに 戻る旨応答した。
ウ 被告人は,Aからの電話を切った後,近隣のコンビニエンスストアの駐 車場に自動車を駐車してから,aへと戻った。被告人がaに戻ったとき, aの店舗前にはパトカーが止まっていて,警察官が立っていた。被告人は, 警察官にAと一緒にいた旨話して,aの事務室内に戻った。
エ その後Aは,警察官に連れられて事務室から出て行き,被告人も,店員 からAが窃取している場面の防犯ビデオ映像を見せられた後,警察官に連 れられて大阪府東成警察署へ行き,取調べを受け,翌5日に逮捕された。
被告人は,事務室に戻った後である午後10時41分ころから,東成警 察署へ行った後である翌5日午前3時19分ころまで,断続的に,当時交 際していたCとメールのやり取りを行っていた。被告人がCに送信したメ ールの内容は,一緒にいたAが万引きしたと警察に疑われていて,被告人 はそれが事実かどうかわからない,被告人自身も逮捕されることになるら しいといった旨のものであった。
被告人は,警察署内で,被告人の携帯電話を操作しようとした際,警察 官に制止されたことに憤慨して,自身の携帯電話を折って破壊した。

(5) Aの処分
Aは,本件により,平成19年7月23日,大阪簡易裁判所において,窃 盗罪で罰金30万円の略式命令を受けた。

3  A供述の概要
Aは,当公判廷において,本件通路でケースを2枚手に持っていた被告人に 声をかけてから,そのケースを被告人から受け取り,DVDを引き抜いてズボ ンの右後ろポケットに入れた後,店員に声をかけられるまでの行動について, 概ね,以下のとおり供述している。
(1) 被告人に声をかけてから,1枚目のDVDを窃取するまで
本件通路で,被告人が何かを見ていたので,「何見てんの。」みたいな感 じで声をかけたら,「これいいんですよ。」というような返答をされた。そ こで,被告人の持っていたケースを手に取ったが,このDVDを盗んだら被 告人が喜ぶかなと考え,以前被告人にiPod等をあげたときに被告人がと ても喜んだことがあり,被告人をまた喜ばせたかったので(なお,Aは,動 機について,「被告人を驚かせたかった。」とも供述している。),被告人に, 被告人のために盗んであげようかという意味で,「やったろか。」か「取っ たろか。」か「ぱくったろか。」というようなことを言った(なお,Aは, Aの発言と被告人からAへのケースの移動との先後関係について,「この発 言が被告人からDVDを受け取る前だったか後だったかわからない。」とも 供述している。)。そうすると,被告人は,ええっと驚き「ほんまですか。」 か「いけるんですか。」か「できるんですか。」などと言った(以下,この とき実際に交わされた被告人とAとのこの会話を「本件会話」という。)。
そして,1枚目のケースからDVDを抜き取ろうとしたが,ケースが硬く てなかなか抜き取れなかった。そばにいると被告人を巻き込んでしまうかも しれないということと,被告人に万引きするところを見られるのが恥ずかし いという気持ちがあったことから,ケースを開けようとするときには,被告 人に背を向ける体勢をとった。被告人に背を向けたときに防犯カメラに気付 いたが,店員が防犯カメラを見ていることは少ないから大丈夫だろうと思い, 気にしなかった。
ケースを指で広げて透き間からDVDを抜き取り,ズボンの右後ろのポケ ットにDVDを入れて,空になったケースを棚に戻した。ケースをこじ開け たとき,つめのようなものが壊れて,パキッという小さな音が鳴った。

(2) 1枚目のDVDを窃取してから,2枚目のDVDを窃取するまで
被告人から「これもいいやつですよ。」と言われて,2枚目のDVDを渡 された。2枚目も1枚目と同様に,ケースからDVDを抜き取ろうとしたが, 人影があったので,まずいなと思い,いったんケースを棚に戻した。その後, 再びそのケースを手に取って2枚目のDVDを抜き取り,1枚目と同様に右 後ろのポケットに入れて,空になったケースを外箱の中にいれた。

(3) 2枚目のDVDを窃取してから,店員に声をかけられるまで
2枚目のDVDを盗んだ後すぐに店員が本件通路に来て,万引きしたこと が店員にばれているのではないかと思った。早く店から出たかったので, 「もうそろそろ出ようか」と。被告人に言ったが,被告人が出て行こうとし なかったし,すぐに出るとその場に来ていた店員に怪しまれると思ったので, 出て行かなかった。
被告人にあげるために盗んだDVD2枚は,店外へ出てから被告人に渡す つもりだった。
本件通路で被告人に声をかけてから,店員に事務室へ連れて行かれるまでの 間の被告人及びAの行動に関するA供述については,防犯ビデオ映像と概ね矛 盾していないこと,記憶している部分については1枚目のDVDを抜き取る際 にケースが壊れる小さな音がしたことなど,具体的かつ詳細に述べ,記憶して いない部分についてはその旨供述するなど,その供述態度に作為的なところは 見受けられないこと,公判廷で証言する際には,前記2(5)のとおり,既に本 件に関する刑事処分が決まっていて,虚偽の供述をして被告人を罪に陥れる動 機に乏しく,むしろ被告人に対しては,Aが万引きをしたことで被告人を巻き 込んでしまって申し訳ないと考えていることなどからすると,Aの当公判廷に おける供述は,記憶を真摯にたどったものとして,以下に述べるような問題点 があるものの,概ねこれを信用することができる。

4 被告人とAとの間の共謀の存在を推認するについての積極的な事実
(1) 本件会話について
Aは,被告人に声をかけた直後に被告人との間で交わされた本件会話につ いて,前記3(1)のとおり,Aが「やったろか。」,「取ったろか。」,「ぱくっ たろか。」などと言い,被告人が「ほんまですか。」,「いけるんですか。」, 「できるんですか。」などと応答したと供述し,防犯ビデオにも,午後9時 50分48秒ないし同53秒ころまでにかけて,被告人とAが笑いながら会 話を交わしている様子が録画されている。
本件会話についての供述は,問い及び答えの双方について3つの言葉の可 能性を述べるあいまいなものではあるが,A供述は,前記3のとおり,全体 として信用性を概ね肯定することができるし,防犯ビデオに見られるとおり, Aが被告人から1枚目のDVDのケースを受け取るや直ちに窃取行為に及ん でいることや,A自身に後にDVDを鑑賞するなど窃取にあたり固有の利益 がなかったことに合致しており,発言の性質上,記憶に誤謬が混じることは 考え難く,本件会話中,Aがその述べる3つの発言のうちのどれかあるいは そのような意味の発言をしたことについては,これを認めることができる。
しかしながら,本件会話中の被告人の応答については慎重な検討を要する。 すなわち,A自身が「僕が言ったことはほんまに言ったんで,ただ,それを 彼がどう受け取ったんかというのは,そこまでちょっと分からないですけ ど」とも供述しているし,。Aの動機についても,前記のとおり,「被告人 を驚かせたかった。」と被告人がAの窃取行為を認識していないことを前提 としていると捉えることができる供述をもしている。また,AはDVDをケ ースから抜き取る際,1枚目の午後9時50分57秒ないし同51分09秒 ころ,2枚目の午後9時51分34秒ないし同41秒ころ及び午後9時52 分03秒ないし同09秒ころの間,いずれも被告人に背中を向けて,被告人 に窃取行為を見られない姿勢を取っていて,その理由につき,被告人を巻き 込みたくなかった,被告人に見られたくなかったからである旨供述している。
(中略)
さらに,本件会話の際の被告人の応答内容について,Aがその文言を正確 に記憶している訳ではないことも併せ考えると,A供述にある本件会話中の 「ほんまですか。」,「いけるんですか。」,「できるんですか。」といった被告 人の言葉自体について,本当に被告人がそのように述べたのか疑問があり, 被告人がAの真意を認識しないままに何らかの返答をしただけである可能性 を否定することができないし,仮にそのとおりの発言があったとしても,こ の発言自体からはAの「やったろか。」,「取ったろか。」,「ぱくったろか。」 といった提案に対する驚きや疑問の提起は推認できても,これに対する賛同 ないし承諾の意思があったとまで断定することは困難である。Aが積極的に 虚偽の供述をしているとは認められないことからすると,本件会話において Aの前記発言に対して,被告人から何らかの応答があったことは認められる ものの,結局その文言やその意味内容については不明であるといわざるを得 ない。
そこで,被告人とAとの間の共謀の成否については,本件会話の内容にと らわれることなく,その他の事情を総合的に検討して判断する必要がある。

(2) 本件会話とケースの授受の先後関係について
検察官は,防犯ビデオから,Aが1枚目のケースを手に取る前に被告人と 会話していたことが認められるので,本件会話の直後にAが1枚目のケース を受け取り,DVDの窃取に着手した旨主張し,確かに,本件会話の後に被 告人からAへ1枚目のケースが手渡されたとすると,被告人がAの窃取の意 図を認識して手渡したものと見る余地があり,遡って,その文言やその意味 内容を別にして,本件会話の存在自体を共謀を基礎づけるものと解すること が不可能ではない。
しかし,Aは,本件会話と1枚目のDVDの授受との先後関係について, 前記3(1)のとおりあいまいな供述をしていて,どちらかといえば「僕が取 ってから,やったろか言うて,ええっという感じやったと思います。僕が取 ってからだったと思います。」と,本件会話はDVDの授受の後だったよう に記憶していること,そのころ交わされた会話の内容は本件会話に限られな いこと,Aがケースを手にした後に本件会話を行うことも時間的に可能であ ることなどから,Aがケースを受け取った直後に窃取行為に着手したことは 防犯ビデオ映像から明らかであるものの,1枚目のケースを受け取る前に本 件会話があったとまでは認められない。

(3) 防犯ビデオ映像及びA供述から判明するその他の事情
いずれも信用することのできる前記防犯ビデオ映像及びA供述から,共謀 の存在を推認させる事実として,午後9時51分23秒ないし同25秒ころ, Aが1枚目のDVDを窃取して,空ケースを棚に戻している際に,被告人か ら「これもいいやつですよ」。などと言われたこと,午後9時51分26秒 ないし同28秒ころ,Aが手を伸ばして被告人から2枚目のケースを受け取 ったこと,被告人は,Aが2枚のDVDを窃取する間,絶えずAのそばにい て,午後9時50分57秒ころのように,Aのいた方向へ視線を向けている ように見える場面もあること,被告人はAの窃取行為を一切制止していない ことなどを認めることができる。
Aは,被告人がケースを渡した直後に窃取行為を開始していて,被告人に 背を向けている時間もあったとはいえ,そのかがみ込むような姿勢はDVD を吟味しているにしては明らかに不自然であるし,被告人自身,Aがどのよ うな反応を示すのか気になっていたと供述しているのであるから,被告人が Aの行動に全く気付いていなかったと断じるには疑問が残る。そうすると, 被告人が,DVDを窃取しているAを制止せず,1枚目のケースの帰趨を気 にとめることもなく「これもいいやつですよ。」などと言ってAが2枚目の ケースを被告人の手から取るがままにしていたことは,共謀の事実を推認さ せるものといえなくもない。
5 被告人とAとの間の共謀の存在を推認するについての消極的事実
他方,被告人とAとの間の共謀の存在を推認するについての消極的事実とし て,関係各証拠から,以下の事実を認めることができる。

(1) Aの窃取行為の際の被告人及びAの行動
被告人とAとの間に共謀があったのであれば,被告人としては,Aが窃取 行為に及んでいる間,周囲に人が来ないか様子をうかがうなどするのが自然 であるところ,被告人は,AがDVDを窃取する間,Aのすぐそばにいて, 目の前にある棚やAに視線を送っていることはあるものの,そのほとんどの 時間を手元のケースや外箱に視線を落としたり,棚の最下段をのぞき込むな どしていて,周囲の様子を気にしている様子はうかがえない。
また,前記4(1)のとおり,AはDVDをケースから抜き取る際に,あえ て被告人に背を向ける体勢をとっているところ,Aは,本件会話におけるA の真意を被告人が理解していたのかは分からないとの趣旨のことを述べたり, 本件窃取行為に及んだ動機について「被告人を驚かせたかった。」と述べる などしていることからすると,Aは,被告人がAの本件窃取行為に賛同ない し積極的な承諾を与えているものとは認識していなかったために,被告人に 見られないように,背を向けていたという可能性も否定できない。

(2) Aの窃取後の被告人の行動
被告人は,Aが2枚目のDVDを窃取した午後9時52分09秒以降も, Aが店員に声をかけられる同55分12秒まで約3分間もの間,Aから出よ うかと声をかけられることもあったのに,すぐにその場から離れようとしな かった。
そして,被告人は,Aが店員に連れて行かれた後,1人で自動車を運転し ていったんaから離れたにもかかわらず,Aからの電話により再度aに戻り, 店舗前に警察官がいたのに,その警察官に声をかけて,aの事務室へと戻っ ている。また,被告人は,事務室へ戻った後,Cに対して,Aが万引きをし たのかわからないという旨のメールを送信している。

 以上の事実を前提にして裁判官は無罪だと言っています。
 裁判官の判断の詳細は判決文を見てもらえればわかると思いますが、それを見る前に自分ならどう判断するかを考えてみてはいかがでしょうか。

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コメント(27)

>裁判員の皆さんはどのような判断を下すでしょうか?

法廷での被告人尋問、関係者からの証言を伺ってから判断すると思います。どのような判断を下すことになるか、それからだと思いますよ。

Jは有罪よ

私は未必の故意が成立して共同謀議有罪と考えます。量刑は裁判長に任せますけど(笑)。

No.3 ぼつでおk(医)様
関係ない話で恐縮ですが・・・、
確か、3〜4日ぶりにコメントを拝見しますが、お元気そうでなによりです。
余計なことで失礼致しました。

裁判員制度の議論がハイレベル過ぎてついていけない私ですが、モトケンさんはド素人がどのように判断するのかを材料として欲しいがためにエントリを立てたと思いますので、赤っ恥を覚悟でコメントしてみたいと思います。なお、この時点で判決文・行動別表は見ていません。

1.被告人とAの関係についての認識
Aがツーリング・スーパー銭湯に誘い、iPodやバイクの部品などをあげていることやAの感想などから、Aが兄貴分で被告人は「しっかりと礼を言う(上下関係を重んじる)まじめな」弟分という関係であり、どちらかというとAの方に被告人を弟分もしくは自分の優越性などの承認要求を満たす遊び相手として、積極的に囲い込みたいという意図が感じられる。本件でも被告人がAを出迎え、Aの指示でaに寄っている。どちらが主・従であるかの位置は確定しているが、そのつながりは過渡的であり、弟分の承認しだいの状況。

2.本件に関しての認識
エントリ文の情報を見た上での認識を結論から先に言うならば、一枚目についてはAが兄貴分であるところを見せたいために勝手にハネた行為であり、二枚目については調子に乗った被告人が欲を出してAが「パクってくれたらいいな」と充分期待しながら、やらせた行為である。したがって、エントリ文に書いてある限りの規定において共謀は成立しないが、二枚目については万引きの指示(罪名は分からない)があてはまる。以下、理由です。

2a.被告人が箱からケースを出して持ち歩いていることについて
被告人はスーパー銭湯に行く途中なので借りる意思はないが、アダルトコーナーを前にして、(男性なら誰しも経験あるが)心が揺らいでいる。今度もしくは、帰りに借りる作品をチョイスしておこうという意図が芽生えたと思われる。ケースを箱から取り出したのは、アダルトコーナーは似たような女性の裸の背表紙が所狭しと詰め込まれており、取り置かないと場所が分からなくなるから。また、箱ごと持ち歩かないのは、他の客が入ってきてすれ違いざまに見られた時に、趣味嗜好が分かり恥ずかしいから。現時点で借りる意思がなく、箱から出してケースを持ち歩いていたからといって、盗む目的があったことの傍証にはならないと考える。

2b.被告人とAとの意思疎通について
「やったろか」云々の話は、確実に「万引き」として被告人に伝わっている。あの状況で、その種の言葉が発せられ他の意味で使われることは考えられない。しかし、現時点で被告人に盗む意思(賛同・承認)はなく、「ほんまですか」などの発言から、ただ可能性に興味を持っているという段階だと思われる。なお、被告人が先輩もしくは兄貴分であったならば、この時点で「試み」をたしなめるなどして制止する可能性はあったかもしれない。しかし、先輩が「善意」でしようとしている「余興」に対して、後輩が冷や水を浴びせるのは、これまでの関係性に対するかなりの飛躍が求められ、また決断する時間的猶予もなかった。したがって、一枚目に対しては、会話とケース授受の先後関係に関わらず、盗む意思(賛同・承認)は認められない。

2c.二枚目について
ケース授受の先後に関わらず一連の会話がかわされた後に、被告人がケースの行方と目の前で屈むAの動向について注意を払わないことは考えにくい。故に、一枚目がAの懐におさめられたことを認識した上で、つい欲が出て二枚目を「期待」してしまったと考える。もともと、取捨選択できず2枚を吟味していた段階だったのだから。

2d.被告人の行動について
被告人はAを信頼し、かつ会話からaでの「パクれる」可能性についても初見であったことが伺われ、万引きが発見されるシビアなリスクについて認識できていなかったと考える。したがって、同意していない一枚目について見張りをしないことはもちろんのこと、二枚目についても「普通」の態度を取っていたと思われる。すぐに立ち去らなかったのは、Aが「大見栄」を切った手前、明確にリスクを説明できなかったことと、被告人の無自覚さが合わさった結果だと見て取る。

もう一度aに戻ったのは自分が要求した二枚目のDVDも絡んでいるし、「善意」でしてくれた兄貴を見捨てたら、「男がすたる」と良心が痛んだから。ケータイのメール内容は彼女への言い訳ととぼけ、そこに「やましさ」があるからぶっ壊した。ふつう、制止されたぐらいで、自分のケータイをおしゃかにするとは考えにくい。


以上、被告人尋問を伺っていないので、あくまでエントリ文を基にした見立てです。こんなにテキトーでいいんでしょうか。まぁ、後の投稿の呼び水となるように、わざと低いレベルで投稿したと思って、ご容赦下さい。

先ほどは関係ない投稿ですみませんでした。

ちょっと引っ掛かるところはありますが、無罪と判断します。
被告人の友人Aの,>「被告人を驚かせたかった。」>
というところを優先し、あとは曖昧に判断できてしまうところについては、被告人有利に判断したいと思います。

エントリ内の文書をナナメ読みした段階で一旦判断してみます。

私の判断は「無罪」。

1.Aの供述:被告人を驚かせようとした
・事前の計画性なし。
・供述の信憑性にも疑いなく、被告人を積極的に庇う必要性も感じられない。

2.被告人の言葉:ほんまでっか?
・疑問系の言葉により積極的に窃盗を肯定していないと看做す。
→「驚きの言葉」と捉えることのほうが自然。

3.Aの被告人に背を向ける体勢
・共謀していればあえて背を向ける必要無し。
→被告人を巻き込みたくなかったというAの供述もそれを裏付けている。

4.Aの窃取後の被告人の行動
・態々事務所に戻っている
→逃走意識なし。
・Aが窃盗したかわからないとのメール
→窃盗意識なし。
→元々計画性乏しい(無い)ため急遽言い訳のためにメールしたとは考えにくい。

供述全体に作為を感じられないし、共謀にあたる積極的な事実認定可能な部分が無い。「疑わしきは罰せず」から「無罪」と判断します。

良く解らないのですが、共謀が問題だという事は、起訴の罪状は窃盗の共謀共同正犯?でしょうか。

そうだとして、ポイントは皆さんとほぼ同じで。
積極的に参加、同意又は指示したとは断定できないので・・・無罪です。

幇助だったらもっと際どく・・・・でもやっぱり無罪かなあ。

>Aから出ようかと声をかけられることもあったのに,すぐにその場から離れようとしなかった。

 どうも弟分もしくは客分の立場からは、そぐわない行動に思えます。仮に事前の共謀関係があったとして、それとなく周囲に気配りをしていたはずですから、いまこの場ですぐに出るのはまずいと判断したように受け取れます。
 店に戻ったのも同じく、逃げれば間違いなく手配が掛かるので、当然戻っただけ。

 年齢が分からないのですが、16、7歳の少年でも十分可能は状況判断です。
 参考として自分の経験です。昭和56年(16歳)の秋頃、ある日の夕方のことです。金沢市の入江付近を5人ほどで歩いていました。
 そのうちの二人が、いいタイヤがある盗もうと言い出しました。自分を含めた3人は、能登の同郷仲間、他の二人は、金沢(厳密にはちょっと違います)でした。
 私たち3人も、悪さはしていましたが、あの二人は、やばいので絶対に一緒に行動しないでおこうと言い合いました。
 彼らと知り合ったのはその年の8月で、会った回数も数える程度でした。二人のうち一人は確か21歳の青年で、窃盗の常習犯、少年院から刑務所も出入りを繰り返していたと聞いていました。
 もう一人は、金沢の暴走族で、その後暴力団員になったとも聞いています。
 つまり行動を見て、目的が同じであっても、捕まる可能性が高いので、一緒に行動しないと判断しました。
 3人のうち、一人は非行歴も多い、リーダー格の札付きでした。似たようなことをやりながらも、やり方がまずいので、リスクが高いと即座に判断していましたし、3人ともすぐにそう感じていました。
 その場の状況判断というのは、状況を読み、より適切な行動を選択するということです。
 そこには、仲間の立場や、その後の関係も計算にはいっていることでしょう。l
 別の場面では、そのような読みと適応力がないと、最悪リンチにあったり、馬鹿にされます。
 思慮の浅い少年でもいろいろ考えるもので、私もそんな悪友との付き合いを避けるのを兼ね、19歳の時に、長距離のトラック運転手になりました。
 車に護身用の木刀を積んでおくような緊張感のある生活にも嫌気がさしていたし、刺激的なことをやり、スリルを楽しむという点でもほどほど満足していました。
 馬鹿なこと、警察に捕まるようなことをやるのも、もともと成人するまでと決めていました。

 なお、このエントリを読んだ範囲では、有罪、無罪の結論は出せません。まず、本人やAを見ないと、書面だけで最終的判断は下しがたいと思います。


この被告人と実行犯のA、どっちも遵法意識とか規範意識は極薄って感じだなぁ・・・。
なので、若気の至りにしても、その場のノリで平然とこういうことをやるクソガキには然るべき誅罰を下し早いうちに更生の機会を与えたいところでありますが(苦笑)No.5 お〜い紅茶さん、No.7 カツビンさん の考え方と同じで、私もエントリされた裁判所認定事実に基づけば無罪と判断せざるを得ません。
共謀が存在したと積極的に評価する材料が乏しいように見えます。共謀や共犯の意思がなかったとまで言い切るのは躊躇がありますが、あったと断言するには弱いです。

この事案についての私の心証は、「共謀とは認められず、よって被告人は無罪」です。理由については前の皆さんと特に変るところはありませんので、割愛いたします。

ですが、この被告人は幸せですね。レンタル店でのDVD2枚の万引き、それも実行行為者ではなく共同謀議の嫌疑。地裁裁判官から見たら、正直「またか!」と思うような日常茶飯の事案でしょう。

惰眠さんではないですが、被告人の印象は遵法意識はあまり有りそうもないし、真面目に正業に励んでいるというイメージも希薄。捜査にあたった警察官や検察官から見れば「見慣れた若造」であって、光市事件の元少年被告人や朝鮮総連ビル事件の被告人のように「大物」でもない。起訴事実そのものも地元新聞の3行記事にもならないような小さな犯罪で、ついチャッチャと流れ作業的に裁判を片づけてしまいたくなるような事件と思えます。

でも、デモ、チョット待て、オカシイぞ、これは充分に時間を掛けて審理すべき事件だぞ、と裁判官は何かを感じ取った。その違和感に忠実に従った裁判官は、検察官から連発されたであろう異議ありの声に屈せずに証拠を調べなおし、時間を掛けて証言を丁寧に聞き、裁判官として持てる全ての経験と知識を動員して審理した。その結果が無罪判決。この被告人はそんな職務に忠実かつ手抜きを知らない裁判官に裁いて貰って幸せと私には思えます。

こうした丁寧な審理を行なってくれる裁判官が例外的な存在であっては国民の一人としては困ることですが、実際にはどうなんでしょうか・・・。

(現職裁判官の方や法曹の方々が、読んで不快に感じられたとしたらお詫びいたします)

準備書面が遅々として進みません。どうしてこんなにのろいのか?
アドバイス下さい。

私も無罪です。
共謀罪は共謀しようと画策することも重要ですが、実際にそれと認められる行為があって成立するかと考えます。
例えば共謀してくれとの依頼があり、それに同意しても、実際に依頼した者が意図した犯罪を成立させる為の行為に至らなければ共謀罪は成立しないかと。
私が見るところ「共謀しているを立証出来る」だけの行為にはなっていません。
「疑わしきは被告人の利益に」、この原則に沿いたいと思います。

被告人の年齢が明らかではありませんが、想像するに若いように感じます。
友人同士の「ジョーク交じりのチョット危ない会話」は若者の間では良くある事だと思います。(私にもその昔経験があります)
しかし、それを実際に行動に移すか、どうかは又別の話です。私には友人Aが本当に実行して被告人は「ビックリ!」だったのではないかと感じます。交際していたCにメールしていますが、その中で「Aが犯行に及んだか判らない」としており、その後携帯を壊しています。このメールの遣り取りを「自分は知らなかった」の証拠作りとして行った行為だとしたら、携帯を壊すのは解せません。

>被告人は「ビックリ!」

 その可能性は十分にあると思います。
 ただ、判例上黙示の共謀、片面的共犯とかも成立しているはずです。たぶん、即席とか以心伝心、阿吽の呼吸とかも。共謀共同正犯として。
 これは、名文の規定ではなく、判例上形成された法概念のはずです。以前は、学者などからの反対も強かったそうですが、現在は反論も下火になっているようです。
 こういう指摘は、専門家が行った方が正確な情報に思えますが。

>No.14 廣野秀樹様

レスをありがとうございます。
「黙示の共謀」とかは、それが推測出来る状態にある事の立証が求められますよね。日常的に共同作業に当たっていたとか、所属するグループ内のルールに法って動いていたとか。
Aと被告人が他の何店かでも万引き犯として捕まっていたとしたら、日常的に共同作業に当たっていたとなり、「黙示の共謀」も有り得るとは思いますが、知り得る情報からは伺い知れないので、考慮には入れませんでした。

私は、被告人は不起訴処分でも良かったのではないかとの印象です。

私はNo.3のとおり有罪意見ですが、別エントリーで法務業の末席さんがお書きの「黙示の合意」という言葉がよりしっくり来たので、先に書いた未必の故意での共謀罪有罪ではなく、Aの万引き犯罪実行意志に対して黙示の合意を与えることでAに犯行を犯さしめた犯罪教唆の罪で有罪、としたほうがいいかも。もちろん量刑は裁判長におまかせ(笑)ですが。

「Aは,被告人がケースを渡した直後に窃取行為を開始していて,被告人に背を向けている時間もあったとはいえ,そのかがみ込むような姿勢はDVDを吟味しているにしては明らかに不自然であるし,被告人自身,Aがどのような反応を示すのか気になっていたと供述しているのであるから,被告人がAの行動に全く気付いていなかったと断じるには疑問が残る。そうすると,被告人が,DVDを窃取しているAを制止せず,1枚目のケースの帰趨を気にとめることもなく「これもいいやつですよ。」などと言ってAが2枚目のケースを被告人の手から取るがままにしていたことは,共謀の事実を推認させるものといえなくもない。」
 
 98%、有罪という印象です。しかし100%とは言えませんから無罪ですね。
 
 しかしこの検察官は積極派ですね。似たような事案で盗品を所持していない者を不問にすることは少なくありません。共犯の疑いがあっても自白しない以上は立証は困難です。99.8%の有罪率を確保するためには不起訴にするのが一番のようです。
 
 裁判員は「疑わしきは被告人の利益に」というより、起訴されるからには有罪だろう、という方向で判断すると思います。有罪率がこれ以上上がることは考えられませんから、起訴率が上がるようになるかもしれません。それが社会にとって有益かどうか、大いに疑問です。

コメント欄では、有罪説は少数で無罪の評議に至っているようですが、有罪方向に評議を動かすことができるか、試みたいと思います。是非、ご反論ください。

1 両名の客観的な行動状況について

被告人は、Aとともにアダルトコーナーの通路に現れるや、DVDの写真・内容等が印画された外箱を手にとって眺めた上で、外箱からケース2枚を取り出し、それを順次Aに手渡した。Aは、1枚目のケースを手渡されるや直ちにケースからDVDを抜き取ってケースのみを被告人を経由することなく自ら外箱に戻し、2枚目のケースを受け取った際には、周囲の様子をうかがいながらいったんケースを棚に戻したものの、結局は、ケースからDVDを抜き取ってケースのみを被告人を経由することなく自ら外箱に戻した。
AがDVDを抜き取っている最中、被告人はAのすぐ近くにおり、その際Aは、かがみこむような不自然な動作をしていた。
このような両名の行動からは、AがDVDを抜き取ったのは、両名が明示ないし黙示に意を通じた結果であったことがうかがわれる。

2 Aの供述にかかる両名の会話内容について

Aは、通路において、DVDを万引きする意図を持っていることを短い言葉で被告人に伝えたところ、被告人は、本当に万引きできるのか、という趣旨の返答をした。
その後、被告人は、ケースを手に取ってAに渡し、そのケースをAが外箱に戻そうとするのを見て「これもいいやつですよ」と2枚目のケースを手に取ってAに渡した。

Aがこのように供述したところが事実であるとすれば、AがDVDを抜き取ったのは、両名が明示に意を通じた結果であったということになる。
Aが、被告人を陥れるためことさらに虚偽を述べていると見る余地はない。
すると、検討すべき問題は、「実際には、被告人が事情を理解しないままAが単独で万引きを敢行したにもかかわらず、Aの認識・記憶に意図せざる誤りが混入した結果、それと異なる供述がなされた」という疑いの存在が、証拠から認められるかどうかということになる。

3 Aの言動に関する疑問点の検討

Aが、被告人に背を向けて防犯カメラの方を向くという行動を取っていることからは、「Aは、万引きしている様子を店員よりも被告人に知られたくないという意思を持っていた」と見る余地があるようにも思われる。
しかし、A自身「店員は防犯カメラなど見ていないと思い気にしなかった」と供述しているのであり、DVDを抜き取っている際のAの挙動が不自然であることや、Aのその後の行動状況に照らすと、Aは、店員の目を盗みつつDVDを抜き取ろうとしていたにすぎず、Aに知られたくないという意図を有していたとまでみることはできない。
Aは「被告人を巻き込みたくないと思った」とも述べているが、それは、自ら万引きを発案し実行した者の心境としてはいささか不自然である上、「自ら発案した万引きの件で被告人を巻き込み、逮捕・起訴されてしまって申し訳ない」というこの法廷での証言態度と一致するものであるから、Aが事件当時にそのような考えを持って行動していたとする根拠としては薄弱である。

また、Aが、会話とケース授受の先後関係につき曖昧な発言をしていることからは、Aがケースを受け取った後で前記の会話がなされたと見る余地があるようにも思われる。
しかし、Aは、被告人から受け取ったケースからDVDを抜き取る前に被告人に対して万引きする意思のあることを伝えたという点は明確に肯定している。そうすると、仮にケース授受がなされた後に会話があったのだとしても、そのことは、Aが万引きしようとしていることを被告人が察知しなかった根拠とはならない。

4 被告人の言動に関する疑問点の検討

被告人には、AがDVDを抜き取っている間、周囲の様子を気にしている様子がみられないこと、被告人が、DVDを抜き取った後、Aから「出ようか」と声をかけられてもなおその場にとどまったことは、いずれも確かである。
しかし、周囲の様子を気にすること自体が、店員の注意を引くこともありうることからすると、被告人は、単にDVDの外箱等を眺めにきただけの客であることを装う「カモフラージュ役」に徹したのだとみることも可能である。
そして、Aが2枚目のDVDを抜き取った直後に店員が通路に来ていたこと、DVD抜き取り後は両名の間に会話がなく「出ようか」との問いかけにも具体的な応答があった形跡のないことからすると、このような見方には証拠上の根拠があるというべきである。
したがって、Aの行動から、Aが情を知らなかったことが積極的に裏付けられるものとはいえない。

また、被告人が、いったん店舗から離れた後、警察官に声をかけて事務室へと戻ったり、事務室へ戻った後でCに対して、Aが万引きをしたのかわからない旨のメールを送信していることも確かである。
しかし、被告人が共謀していたのだとしても、Aとともに呼ばれながらも事務室の中に入ることを求められず店舗外に出ることにも支障がなかったことから、自らには万引きの嫌疑はかからなかったと考えて、以後、情を知らない者として行動したとみることも可能である(なお、Cに対して送信したメールは、AがDVDを抜き取る様子を目視してなかった可能性があることからすれば、積極的な虚偽とまではいえない)。
このような可能性の存在を直接に裏付ける証拠はないけれども、この事情が犯行後の事情であって、現場での意思疎通の有無を判断する材料とするには限界があることや、ここまで検討したところからは他に共謀の存在を疑わせる要素が見当たらないことからすると、このような共謀の存在如何との関係につき積極消極いずれとも評価しがたい事実が、共謀の存在に疑いを挟む根拠とはなり得ない。

ご苦労様です。

え〜評価ですが、最後の一行が。

積極消極いずれとも評価しがたい事実が、共謀の存在に疑いを挟む根拠とはなり得ない。

では、刑法の推定無罪の原則に合致しないので。

積極消極いずれとも評価しがたい事実は、共謀の存在に疑いが無いと信じる根拠とはなり得ない。

となり、コメの事実認定では証拠不十分です。

No.18 まげ様
No.19 MultiSync様
まげ様には恐れいりますが、私もMultiSync様に同調できます。

No.19 MultiSyncさん

「事件後の被告人の言動は、Aが万引きしたと知らなかったことによる可能性があり、その可能性を直接排除する証拠はないから、その事情以外には被告人とAとの共謀を否定する根拠は見当たらず、むしろ、共謀の存在を肯定する根拠ばかりが証拠にあらわれているけれども、Aを有罪とするわけにはできない」というのが、無罪推定の原則だ、ということになりますか?

共謀の存在を肯定する根拠
とは「疑いが否定できない」では無くて、 この場合だと「犯罪をやらせる意思が明確」「犯罪を目撃している事が明らか」と言った類のはず。

それに合致するものを私は読みとれ無かったのですが、有りましたか?

えー(笑)、この二人は何歳でしょうか。こういう店に入って二人でどういう動きをすればどういうことになるか、まったく知らない無邪気なこどもたち(笑)なんでしょうかね。李下に冠をたださずという言葉をかつて耳にしたことがない一種の箱入り育ちの世間知らずのやんごとなきご令息たち?んなわけないでしょうに(笑)。ああいう店でDVDを相棒が向こう向きに音立てて抜き取った意味がわからないほど純真無垢で通用する年齢といえば3〜4歳まででしょう。成人年齢でそんな純真無垢な人間だと主張するには普通には診断書が必要(笑)でしょうね。
であれば、知らなかったというのは間違いなく嘘ですね。嘘つきは泥棒の始まりです。そして躾けのところでも書きましたが無断で借りれば立派な万引きという泥棒(笑)ですね。
つまり彼らの年齢そのものが無罪推定するべき前提条件に欠けているといえます(笑)。よって私は相変わらず有罪。陪審員としてですから、量刑は生クリームみたいにおやさしいこの裁判長におまかせしますけど(笑)。

No.22 MultiSyncさん

なるほど。

現場の成り行きで一緒に事件を起こしたというような事件で、共謀の成否如何を判断するための証拠は、通常、ハッキリしたものはなく、多くの間接事実を総合して判断せざるを得ないのが実情だと思います。

また、残された痕跡=証拠から、有罪か否かを推測するという作業は、非常に制約が大きいので、事実が争われる事件では、有罪方向の事実と無罪方向の事実が混在することは稀ではないと思います。

そして問題は、証拠から何が読み取れれば、それが「合理的な疑い」を形成するといえるのか、ということだと思います。

これだけ厳格に無罪推定の原則を適用する裁判員ばかりであれば、冤罪が生まれることもなくて大変結構なのですが、おしまいの2行の表現如何で議論が終わってしまうと私としてはちょっとさみしいので、個別の証拠や事実に対する評価についても、ご批判をいただけるとありがたいです。

>No.23 ぼつでおk(医)さん

はい、立派な推定有罪論、有難うございました(^^;;

>まげさん

そうですねえ、1234全てが「疑いの〜」がキーワードなので・・・
まあ、1からはAを助ける動きは見えません。
2の Aの供述 では明確な意思に乏しい。 
3・4は ストーリーが描きうる、のレベルですね。

私の見方だと、被告はAの万引きを「疑っていた」とは認定されます、だから「幇助」はひょっとしたら有るかも?は始めのコメで書いたと同じです。

但し本人の為には有罪の方が良かったかも。消極的ながら幇助した、で執行猶予くらいだといいセンの様な気もします。

No.25 MultiSyncさん

うーん、なるほど。

私の感覚では、もし、被告人が「ホントに万引きするかもなあ」と思いつつ自分のお気に入りのDVDをAに渡して、実際にAは万引きしていた、と認められるのであれば、幇助ではなく共同正犯が成立するような気がします。

もちろん、共同正犯が成立するといっても、その果たした役割は従属的ということになりますが。

共同正犯と幇助の区別をどのように考えるかというのも、一つのテーマかもしれませんね。

>No.26 まげさん

もし、被告人が「ホントに万引きするかもなあ」と思いつつ自分のお気に入りのDVDをAに渡して、実際にAは万引きしていた、と認められるのであれば

その場合は、被告人がAの万引きを・・・
1 確認した後、一緒に店から出た
2 店先で確認し 共に立ち去った

このどちらかなら共同正犯、と思います。

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