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書類送検された医師の実名公表・報道は遺憾 長野県医師会が声明文(産経ニュース ウェブ魚拓

 犯罪報道における実名報道は以前から議論のあるところですが、容疑者として実名報道されると大きな社会的制裁効果を生じることは間違いないでしょう。
 とすると、実名報道にあたっては大きな社会的制裁効果を与えてもいい程度に容疑が濃厚である必要があると思われます。

 逮捕・勾留されたとしても(裁判所が令状を発する程度に容疑が濃い場合であっても)嫌疑不十分(証拠不十分)で不起訴になる場合が珍しくありません。
 書類送検された本件の事件としての嫌疑の濃さは報道からは分かりませんが、例えば(あくまで例えば)、被害者・遺族が医師を告訴している事件では、警察は嫌疑の有無や濃さにかかわりなく(つまり嫌疑がほとんどない場合であっても)書類送検しなければなりません。

 ちなみに、長野県警広報課は

 「公益性と事案の軽重を総合的に判断して発表しており、引き続き総合的に判断し、適切な発表に努めたい」

と言っています。

 しかし、広報課が事件の内容はともかく、嫌疑の濃さを的確に把握しているかどうかについては、一般論としては私はかなり懐疑的です。
 捜査担当者の本音の認識とはかなりかけ離れた発表がなされる場合が珍しくないというのが私の経験則です。
 つまり、スタンドプレー的発表が多いように思っています。

 報道された側にとってはたまったものではありません。

 但し、実名報道するかどうかの最終的な見識は、警察ではなく報道した報道機関が問われるべきものです。
 書類送検、それも医療過誤業過の書類送検の意味を検討している、または検討する能力のある記者はどれほどいるのでしょうか?

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コメント(20)

 うーん・・・難しい!非常に難しい問題だと言う認識です。
 結論としては実名報道はすべきでないというのは間違いないのですが警察が実名で発表しないというのは・・・
 やっぱりマスコミが実名報道を控えると言う形が理想だと思うのですが、でも・・・うーん・・・うーん・・・

警察側の記者会見で、マスコミから「実名を教えろ」の大合唱になっているような予感がします。

とくに、最近のマスコミは、医師などを叩くことで、人気を集めようとする傾向があるので、警察側も、嫌疑の濃さなどで総合的に判断しているのではなく、「医者は実名でもいいか」といった安易な判断で公表しているような気がしてなりまません。

本来は、実名公表の明確な基準を警察庁等が打ち出す必要があると思います。

>但し、実名報道するかどうかの最終的な見識は、警察ではなく報道した報道機関が問われるべきものです。

私もそう思います。純然たる報道倫理の問題ですね。

マスコミの見識。
に尽きると思います。

書類送検のニュースにおいて、「書類送検」がいかなる意味を持つ手続なのかを記事内、あるいは欄外注記でも、いっさい書いていないということは、一般市民の 「書類送検=犯人に対する何らかの処分」 という誤解を解く気がなく、むしろそれに乗じているのだとみなさざるを得ません。

 この事件は患者遺族である夫の加罰要求が非常に厳しく、示談交渉にすら全く応じるつもりが無い言っていると報道されています。

くも膜下出血見逃し女性死亡 佐久病院医師を書類送検
信濃毎日新聞 5月13日(火)

 この状況下でマスコミが医師・病院側に配慮することを望むのは困難であろうと思います。…ただし、現に実名報道したのは、自分が確認できる限りではこの新聞社だけのようではあります。

>警察は嫌疑の有無や濃さにかかわりなく(つまり嫌疑がほとんどない場合であっても)書類送検しなければなりません

であるならば、なぜ広報は書類送検をしたことを発表しなければいけないんでしょうかね。起訴された段階で発表すればいいことだと思うんですが。

通常、送検は(書類のみにしろ身柄送りにしろ)警察の広報発表はないので、記者が個別に取材をかけて当局の確認をとって記事にしていると聞いた覚えがあります。ですので、送検で原稿を出すのはひとえにマスコミの問題と言いきっていいと思います。

まあ、メディアが原稿を出せる「節目」と言う意味で考えると、在宅事件の場合は送検を大扱いせざるを得ないのかな、と言う気もするのですけども。

ところで産経の記事を見ると長野県警が書類送検したこと自体も広報発表しているみたいにも見えるけれど、これって声明を受けて警察広報全般についての一般論を言ってるだけじゃないのかなあ。

確か、アメリカかな? 実名はおろか、性別、人種も公表は差し控え手いるって聞いたが。

いつものように、ふと思いました。
警察が被送検者氏名をマスコミに教えることと、長野県個人情報保護条例の兼ね合いはどうなってるのかと。
氏名をマスコミに教えてもいい根拠はこれでしょうか?

第5条 実施機関は、記録情報の収集目的以外の目的のために、記録情報を実施機関の内部において利用し、又は実施機関以外の者に提供してはならない。

(中略)
(7) 記録情報を犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安 全と秩序の維持を目的として公的機関以外の者に提供する場合において、記録情報の 提供を受ける者が当該記録情報を当該目的以外の目的のためには利用しないものと認められるときその他特別な理由があると認められるとき。

これだとしても、どうもシックリきません。他にあるのでしょうか。

大西会長は、報道機関には報道の自由があるため実名報道しないように強制できないとする一方、県警に対しては今後、書類送検で氏名を公表しないよう求めるとしている。
この部分の意味が分からない・・・ 報道機関に限らず県警に対してだって強制出来ないだろうに・・・ あくまで自主的対応を求めるなら報道機関でもいいのではなかろうか?

>この事件は患者遺族である夫の加罰要求が非常に厳しく、示談交渉にすら全く応じるつもりが無い言っていると報道されています。

病院が加害者かどうか認定されていない状況で、加罰感情が優先されるってどうなのよ?
という気がします

”示談交渉に応じる気が無い”って、過失すら認定されなければ賠償責任も負う必要がないので、何をか言わんという印象です。

自称”被害者”の主張が単なるイチャモンに過ぎなかった場合に、どうやって本当の医療側”被害者”の損失を償うことができると言うのだろう???

患者側弁護士のいつも言う医療裁判五箇条
1.現状回復
2.真相究明
3.反省・謝罪
4.再発防止
5.損害賠償

のうち、自称”被害者”が加害者であった場合に、どうやって、1.3−5が果たされるのか問い質したい
自称”被害者”が個人であるなら、多くの場合の医療側”加害者”も個人が多い。
報道過誤、報道被害に対して、報道側は無神経すぎるのではないか???

報道側の姿勢は多くは無節操に見えます
報道する前に、常識持てよ!感情だけで動くな!
という感想をいつも禁じえない

警察のリークにマスコミが踊らされてる面もあったりして。

素人故、疑問が多く、なんとも歯がゆくなるスレなのですが・・。

>警察は嫌疑の有無や濃さにかかわりなく(つまり嫌疑がほとんどない場合であっても)書類送検しなければなりません。

であるならば、なぜ警察は実名を、ある種危険なマスコミに発表したのか?「書類送検」という言葉を聴くだけで、私のようなトーシローは「何かしでかしたな」という灰色の目で容疑者(?)を見てしまう傾向にあるので、No.5 rijin様のご紹介の記事中の

>受診時に小林さんはくも膜下出血の恐れを伝えたが、深沢医師はCT(コンピューター断層撮影)検査などをしなかったという。

なども合わせて素人判断してしまえば深沢医師(まだお若いのに)の社会的信用にかなりのダメージを与えてしまったと思います。
さらに不起訴処分になった時には、

>医療側”被害者”の損失を償うことができると言うのだろう???

ということになるので、当事者の憤りも想像できますが、これからを嘱望された若き医師の損失にも繋がり非常に困った話です。
(しかも本人は潔く過失を認めているような節も伺われますので、潔い真摯な医師にも感じますし)

お亡くなりになってしまった方へはご冥福をお祈りいたします。
もう取り返しもつかないことではありますが、もう少し「CTなどを是非してください」という突っ込みを入れることはできなかったのかなあ、という疑問もあります。実際、我々も今後同じような場面に出くわすことも有り得ると思いますので、患者側からそのような申し出があった時、拒まれてしまう事もあるのでしょうか?
私や家族が今まで経験してきた中では、拒まれたことが無かったので上記記事をホントかな?と勘繰ってしまうところはあります。

>No.10 ろくろくびさん

私感ですが

マスコミの良識はもはや期待できない、頼んでも「報道の自由」を盾に聞く耳を持たないだろうし、もちろん強制もできない。警察ならまだ耳を傾けてくれるだけの良識があるのではないか。

というようなマスコミ不信からの言葉ではないかと思ってしまいます。考えすぎでしょうか?

No.14 無印粗品さま

 その可能性はあるかもしれません。
 個人的には産経の記者のまとめが上手くなかっただけかもしれない、と思ったり。
 長野県医師会の声明を見てみたら

長野県医師会として、実名報道に遺憾の意を表明するとともに警察及び報道各社に慎重な対応を求める。
と言ってますし。

 今回の実名報道は被疑者の医師が過失を認めている、と言う点も考慮されたのでしょうから「医療側”被害者”の損失を償うことができるか」と言う視点に欠けていたかは即断できないかと思いますが、やはり慎重にして欲しかったなー、と・・・

 しかし、患者遺族は起訴させる気マンマンのようですねぇ。検察官も板ばさみですなぁ・・・

起訴不起訴の判断が、こういう情緒論に左右されるという。

不必要な検査は避けようという医者ほど、酷い目に遭うリスクが高くなるわけですね。言われるがまま検査三昧というのがスタンダードになることが、国民の望みなんでしょうか。少なくとも国は、医療費を圧縮したい筈なんですけども。

久しぶりに投稿します。

しばらく前、学生のレポートに
「くも膜下出血の診断は簡単そうですが、治療は大変そうだと思いました」
と書かれてあり、脱力しました。。。

実際は(よく)見逃されるんです・・・くも膜下出血って・・・。
「嘔吐しているから『胃炎』」とか、「頭痛だから『感冒』」とか。
疑ってCTを撮ってさえも、見逃すことがあります。
私の施設で扱っただけでも、この半年で2例の(他院での)見逃しがありました。

「見逃す」ことを前提にした教育がなされていないことも、事実かもしれません。

で、「見逃す」ことが結構あると知っている私(専門家)としては、実名での報道(=素人による制裁)は「納得できない」です。

 ウチではCTに異状なしと画像付き紹介状で転院してきた患者さんが、2ミリスライスMRの結果、解離性椎骨動脈瘤&小脳梗塞と診断された症例がありました。
 血管障害で倒れた直後はでCTで読影が判明しないで翌日以降に明瞭となる例もあります。

そもそもこういった類いの事例で,刑事訴訟なんてcrazyです.
医師をひとりもいない状態にしたいのでしょうかね?

私もなんで実名報道?と考えていた一人です。

http://case-report-by-erp.blog.so-net.ne.jp/20080515

このエントリーで、SAHを話題にしていますが、いかに、診断の困難なSAH事例であるかを、ネットアンケートの形で70名あまりの医師の意見をもとに示しました。

今に、始まったことではありませんが、メディアは、報道に対して無責任です。

そして、医師達は、先の「自民党 VS TBS」事例の自民党のような明確な抗議行動をなかなか出せません。

メディアも報道責任者は、後だしで逮捕や賠償されるようになれば、私たちの気持ちが分かるようになると思います。

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