エントリ

 またか、という感じの腹の底から憤りが湧いてくる事件ですが、衝突時の状況がはっきりしませんでしたので、(遺族側にとって)最悪の場合、道交法違反(不救護・不申告)しか成立しないかも知れないという気もしておりました。

 しかし

 発表によると、市川容疑者は16日午前2時50分頃、軽ワゴン車で東川さんのバイクに追突してけがをさせたが、救護せずに逃走し、駐車場に放置して死亡させた疑い。市川容疑者は「飲酒運転だったので必死に逃げた。(はねた)後のことはあまり記憶にない」などと供述。逮捕後、呼気からアルコール分が検出された。市川容疑者は今年6月にも酒気帯び運転で検挙され、免許停止30日の処分を受けたばかりだった。

ということで、この発表のとおり「追突」であれば、基本的に容疑者に過失は認められますから、自動車運転致死罪、道交法違反までは成立しそうです。

 また、被害者を引きずっていることを認識しながら6キロも走ったということであれば、衝突時に被害者が即死状態でもない限り、殺人既遂罪も成立しそうです。

 しかし、以上の記述からお気づきのように、自動車運転致死傷罪も殺人罪も当然に成立するわけではありません。
 いずれも、いくつかの条件があります。
 本件に即して言えば、

 自動車運転致死傷罪が成立するためには、過失が必要です。
 不可抗力の衝突のような場合は、自動車運転致死傷罪は成立しません。

 本件で殺人罪が成立を考える場合、別事件のようにわざとぶつけたのでない限り、引きずりながら走り続けたということが殺人行為としての検討の対象にあたります。
 そして、引きずりながら走り続けたということが殺人行為になるためには、ひきずり始めたときに被害者がまだ生きていることが必要です。
 死者は殺せませんから。
 そして、走行中の容疑者に引きずっているという認識があったことが必要です。

 このようにクリアすべき条件が多いということは、容疑者側にいろいろ言い訳するネタも多いと言うことになります。
 もっとも、(特に車両対車両の)交通事故というのは、客観証拠がたくさん残っている代表のような犯罪ですから、安易な言い訳は後で馬脚を表す場合が多いです。

 ところで、先ほど「死者は殺せない」と言いましたが、死者に対する殺人行為が殺人罪を構成する場合も考えられます。但し、殺人未遂ですが。

 ここまで考えて、ふと気になったことがあります。
 裁判員制度が始まった場合、検察官が本件を殺人罪で起訴すれば裁判員裁判の対象事件になるのですが、自動車運転過失致死罪で起訴すれば対象事件にならないのです。

 裁判員制度に批判的な私ですが、実施するならこういう事件こそ裁判員の判断を仰いでみたいという気がします。

 今回は、法律家的視点で考えて見ました。

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