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 医療行為中の不審死(医療関連死)について、第三者機関が原因を究明する仕組みを構築する作業が、来年度から本格化することになった。

 厚生労働省が、外部の専門家による検討会を来年度に設置することを決めたもので、早ければ2008年度にも新制度がスタートする。厚労省では昨年から、5年計画で第三者機関による死因究明のモデル事業を進めており、その実績をみて検討を始めることにしていたが、患者、医療機関双方からの要望の高まりに応え、検討作業を前倒しすることにした。

 厚労省では、医療関連死の数を年間1万件前後に上るとみている。しかし、公的に死因を究明する制度はなく、患者側が病院の説明に納得できない場合は、民事訴訟を起こすか、捜査機関が立件するのを待つしかないのが現状だ。

 警察庁によると、05年に全国の警察が送検した医療事故は91件で、1997年の3件に比べ急増している。一方、最高裁によると、医療訴訟の審理は迅速化が進んでいるものの、05年に判決が確定したり和解したりした訴訟の平均審理期間は26・8か月と、訴訟を起こす負担はなお大きい。

 このため厚労省は昨年から5年間の予定で、死因究明のモデル事業を東京など6都府県で開始。第三者の医師が解剖と診療録(カルテ)の分析、医療機関に対する聞き取りなどの調査を行ったうえで、法律家も交えた評価委員会が報告書をまとめ、医療機関と遺族の双方に渡している。検討会でも、このシステムを参考に議論が進む見通しだ。

 このほか調査の実施主体や、費用を公費でもつべきか医療機関の負担とすべきかなど、制度設計の詳細についても検討する。実施主体については、〈1〉厚労省〈2〉新たな公益法人〈3〉学会や医療関係の団体〈4〉当事者以外の医療機関――など様々な可能性を議論する。

 医療機関にとっても、患者側との紛争の回避や早期解決につながるメリットがあり、刑事事件となるケースが減るのではないかという期待もある。

 今年3月には、福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた妊婦が死亡した04年の事故をめぐり、産婦人科医が業務上過失致死罪で起訴されたが、「結果が悪ければ医師個人の刑事責任が問われるというのでは、現場の委縮につながる」との反発が医療界から噴出。医療の専門家がかかわる死因究明制度の実現を求める声が医師らの間で強まった。

 医療事故に詳しい鈴木利広弁護士は、「調査に加わる医師に本来の仕事と同様の真剣さがなければ、第三者機関を設けても成功しない。また、中立性を保つため、モデル事業と同じように、調査結果の評価には、医療関係者以外に法律家なども加わることが絶対に必要だ」と話している。

 厚労省は動き始めているようですが、実効性のある制度にできるかどうかが問題であり、実効性の確保のためには現場の声がどれだけ届いているか、厚労省側に聞く耳があるかがポイントだと思います。

 ポイントの2番目として、医事紛争は法律紛争でもありますので、民事及び刑事の裁判との関係をどうするのかということも議論されないと、トータルとしての実効性が発揮されないと思います。

 どこかが音頭取りをする必要があると思うのですが、厚労省にそこまでの視野の広さがあるのでしょうか?

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2006年8月23日 晴れ医療行為中の死亡を医療過誤によるものか?どうかを判断す 続きを読む

コメント(15)

ないよりは、ずっといいとおもいますよ。ほんと。
ようやく、腰を上げていただいた、そういう感じです。
ただし、うまくいかなかったときには、リスクの高い科が今以上に敬遠されることは間違いないですが。

共同通信記事
http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack.cgi?national+CN2006082201005819_1

来年度予算要求額700万円
これを「本格化」とおっしゃるあたりが
読売新聞の見識でしょうか

「不審死」という言葉は厚労省が使った言葉なんでしょうか?
どうもしっくりこなくて、もしも読売新聞がつけた言葉だとすると、
印象操作のような感じがしますが・・・

不審死と言うのは、死因究明を依頼するのが患者の遺族側だからじゃないでしょうか。
不審を抱かなければ、問題はないはずですから。
でも、最終的に医療上の問題は無いと言う結論が出た時に、
依頼者側はちゃんと納得するのでしょうか?

「不審死」というのは、マスコミが犯罪を前提に使う言葉です。

なので、この報道はすでに読売新聞による医師を犯罪者にしたい意向が含まれています。

この場合、記事の一行目のかっこ内の「医療関連死」を使うべきで、さらに正確には「診療行為に関連した死亡」というのは通常の用語です。

いわゆる「モデル事業」http://www.med-model.jp/ですね。

ただし、本当に正確には「診療行為に関連した疑いのある死亡」です。

いずれにせよ、初年予算700万円で、早ければ2008年なんて噴飯ものです。

上記の「モデル事業」さえ、満足に機能していないのですから。

こんばんは

       「いなか小児科医」のbefuです。

まさしくモトケン先生の言われる通りと思います。厚生労働省には頑張って、実地医家や患者さん、法曹界の方々の意見を吸い上げてほしいと切に願っております。(無理かな〜?)

トラックバックさせていただきました。

>来年度予算要求額700万円
>これを「本格化」とおっしゃるあたりが読売新聞の見識でしょうか

人件費と考えて1人/年ですね。とりあえずやっておいてます・・・という態度の提示ぐらいにしか見えません。やらないよりまし・・・というのはその通りですが、厚生労働省の官僚の中には、3つぐらいの項目を掛け持ちしている状態で、正直てんてこ舞いしてるところを見ますと、・・・・・・・どうなんでしょうねえ。(ため息)

私は前向きに考えたいです。昭和47年の提言が漸く胎動しはじめたと。

http://www.med.or.jp/teireikaiken/20060808_1.pdf

検討会に出席する有識者の方々は、おそらく手弁当ではないでしょうか。財源が乏しければ全国の医師会員、医療関連企業から寄付金を募るようなことを行ってもよいと思います。

法律家の皆様も、ぜひ参加して下さい。

こんにちわ。いつも拝見しております。全くの門外漢で申し訳ありません。
今朝の北海道新聞でも関連する記事を見かけましたので参考まで。

「医療関連死調査モデル事業、札幌市で10月開始 全国7番目」
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060825&j=0022&k=200608246079

>総合調整医となる加藤紘之・斗南病院院長(札幌)は「すべての医療関連死を警察に届けることになれば、医療現場は難しい手術を避けるようになり、医療の質の低下を招く。専門知識を持つ第三者機関が調べることで、遺族、医療機関の双方が納得できるよう、道筋をつけたい」と話している。

実効あるものになれば良いですね。とりあえず本年10月からスタートするそうです。

予算要求700万円は、概算要求資料を見ていないので分かりませんが、多分、外部有識者の検討会のランニングコストではないかと思います。

なお、お役所の予算要求上は、当該事業の事務担当職員の人件費は計上されません。(バイトさんや非公務員は別ですが)→民間企業から、人件費無視と揶揄されるゆえんです。

700万なら、検討会の会場代(外でやるときだけ)、委員の報酬、費用弁償(足代など)、事務経費(資料印刷代・事務用品代)、連絡経費(電話代・切手代)、講師謝礼などではないかと思います。要は、検討会を立ち上げて、何回か(年4回程度でしょうか?)開く経費というところでしょうか?

私は700万どうこうというより、モデル事業を2005年度から2009年度までの5か年計画でやっておきながら、早ければそのまん中の2007年度に結論を出そうという一貫性のない性根の方が心配です。モデル事業を、期間の半分も前倒しにするとかなりずさんなものになりそうですし、下手をすればモデル事業の結果を見ずして結論を出そうと・・・。やってることがちぐはぐで、全くビジョンがない。だから、財務省にバカにされるんです。

新聞内の
> 医師法では、医療ミスなどで「異状死」が起きた場合、
> 医師が24時間以内に警察に届けることが義務付けられている。
は間違っていますね。義務づけられているのは「異常死を届ける」という部分のみで、医療事故死を異常死に含むかどうかは各機関で見解が異なっているはずです。マスコミの嘘つきはこういうところから始まるのですね。

また2chソースで申し訳ない

>436 名前: 卵の名無しさん Mail: sage 投稿日: 2006/08/26(土) 08:06:50 ID: P7zIvdT/0
>この本とは関係ないが、
>来月(つまり来週)から、うちでは院内の死亡全件を異状死体として届け出ることになった。
>ただの骨折で入院している屈強な若者であっても、すぐ届出できるように
>入院時には届出に必要な書類は準備してある。

「医療崩壊」小松秀樹著 読んだ?
http://society3.2ch.net/test/read.cgi/hosp/1148615662/

> 「医療崩壊」小松秀樹著 読んだ?
読みましたよ。
医療事故を届け出るかどうかは学会でも違うはず。法医学会は届ける、外科学会は届ける必要は感じない、でなかったか?ともかく法律で医療事故を届けるという義務はないはず。

当方、この件がトリガーになって『「医療崩壊」小松秀樹著』を読み始めました。読みながら、工業の世界でも関連つけることがあるなあと思うのです。実はパロマの事故にも関連するのですが、それは置いておきまして・・・立ち去り形のサボタージュという考え方自体がすでに英国に前例があるという筆者の分析は、恐れ多くて余りあります。(その前の青戸病院事件・・・からの引用文がおおいので、そっちを読まないと一寸分からないことがあるのが、一寸残念)
工業倫理にも通じる考え方なのですが、一旦崩壊すると止まらないという意味では一致しています。ところが、「安全」をメインにとるのと、「技術の保持育成に伴う社会の向上」をメインにするのとでは、結論が正反対になるんです。
信頼性工学という意味合いで考えると、全世界中で「100%」保障できかねるという議論が一般化しつつあります。医学で、100%を期待するのはある意味人体に対する人間の能力の過信ですよね。したがって上に書いた700万円/年というのが人件費の意味でないということがあっても、専任の医務官を置いて当たらせないと、各識者間の意見の相違があって、結論賛成でも各論相違という一番「なあなあ」な形になるのではないでしょうか。そこが一番錯誤の元になるんでは。

私の勤務する病院で行なわれた研修会の講師は、第三者機関モデル事業の委員の方でした(弁護士)。
昨年度の事業費は約1億円程度要し、扱った「診療行為に関連した死亡」例の法医・病理医による解剖調査例は26例であったといっていました。正確な数字はわかりません。しかしこの解剖数でこの費用ですから、700万円というのはどのような部分に当てる費用なのでしょうか。とても制度を前倒しにできるような熱意は感じない数字だと思います。いつになれば現実に機能するかわからないような気もします。

しかし、私は前向きに捉えたいと思っています。故武見太郎時代の提案が動き出したことは(No.8或る内科医さん)遅きに失してはいますが、止まっていないということですから。

これまで医療事故の検証は、社会問題となるようなケースでは高名な医師が関わり報告書が作成されています。その内容は必ずしも現実の臨床に即したものではないものも多いと考えます。高名な医師というと、多くは教授。彼らは研究者であり、臨床医としては貧弱な方が多く含まれていることは、これまでも多く指摘されているところです。
しかしその報告書ひとつで医学知識の乏しい裁判官が線引きをして、無罪の医師が有罪とされている、もしくは立件されているケースが少なくないのが現実です(法律用語は門外漢ですので、用語が誤っていたらご指摘ください)。

わたくしは現役の有能な臨床医が第三者調査機関に多く加われるようなシステムが必要だと、ぼんやりと考えています。近く始まる陪審員制度では一般の人が選出されます。第三者調査機関では、ある一定の要件(例えば臨床経歴10年以上を有する現役臨床医とし、専門分野を区分しその領域での年間症例数、年間手術数などの基準を規定)をクリアーした医師の自薦・他薦による登録医プール制を導入することはどうかと考えています。登録の有効期間は5年程度とします。更新はありです。
殺人的に多忙な臨床医ですから「他薦は迷惑だなぁ」と思う医師もいるでしょう。しかし真摯に医療事故のずさんな検証を改革したいと望んでいる医師も多いですので、自薦はありと思います。医師の世界は自浄作用が弱いのではないかとどなたかが書かれていましたが、体質的にそうなのではなく、時間的にとても無理だからです。しかし現在の医療崩壊に歯止めがかかるならば動く医師はいると思います。それが、患者、医師を救うことになるからです。医療関連以外の人に訴える意味でもよさそうに思います。

最近、医療崩壊に関するエントリーのコメントが多く、すべて読みきれていない可能性がありますので、すでに語られていたらごめんなさい。

P R

ブログタイムズ

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