エントリ

「出産数日本一」堀病院、無資格の助産行為で捜索(2006年8月24日14時32分 読売新聞)

 横浜市瀬谷区の産科・婦人科・小児科病院「堀病院」(堀健一院長、病床数77)で、助産師資格のない看護師らが妊婦に「内診」と呼ばれる助産行為をしていた疑いが強まり、神奈川県警生活経済課は24日、保健師助産師看護師法違反の疑いで病院と院長宅など十数か所の捜索を始めた。

 看護師らの助産行為を受けた女性は女児を出産後に死亡していた。助産師不足を理由に、より給与の低い看護師らに助産行為をさせているケースが多くの産院であるとされ、県警は、“氷山の一角”とみて押収したカルテなどを分析し、実態解明を進める。

 調べによると、看護師と准看護師ら数人は2003年12月29日、入院していた女性(当時37歳)に約2時間にわたって、産道に手を入れてお産の進み具合を判断する内診など助産行為をした疑い。女性は名古屋市から実家のある神奈川県大和市に里帰り出産のために帰省し、出産予定日を過ぎた同日、入院していた。

 女性は陣痛促進剤の投与や子宮口に器具を入れるなどの分娩(ぶんべん)誘導処置を受け、長女を出産。直後に多量の出血に見舞われ、大学病院に搬送されたが、約2か月後、多臓器不全で死亡した。女性の死亡と助産行為の因果関係はわかっていない。女児は元気に育っている。

 夫はカルテや分娩記録などの証拠保全を横浜地裁に申請。今年1月、保全手続きが取られている。

 堀病院が昨年1年間に取り扱った出産は2953件。病院のホームページなどで「出産数日本一」と宣伝している。

 病院への捜索は午前7時35分から始まった。病院は通常通りの診療をしており、捜査員約50人は裏口から、複数の班に分かれて次々と病院内に入った。

 堀院長は「助産師が不足しており、分娩室に入る前の内診は看護師にやらせている。支障はないと思うし、ほかの病院でもやっていることだ」と話している。


助産行為:「法律には限界ある」堀病院長が開き直り(毎日新聞 2006年8月24日 21時17分 (最終更新時間 8月24日 21時24分))

 「法律に基づいてやるには限界がある」。保健師助産師看護師法違反容疑で神奈川県警に家宅捜索された堀病院の堀健一院長(78)は、同県警の調べに、看護師らに助産行為をさせていたことを開き直って認めた。同病院の助産師数は同規模の病院より極端に少ない。厚生労働省は「助産行為は医師と助産師しかできない」との見解だが、公然と反旗を翻した格好だ。

 「出産数日本一(年間約3000人)を誇るユニークな産婦人科を目指して頑張っています」。堀院長は、ホームページでそうアピールしている。堀病院の05年の分べん数は2953人。産婦人科医は院長含め7人、助産師が6人。ところが、分べん数が2074件の東京都葛飾区の産院は、産婦人科医6人、助産師111人▽約2000件の分べんがある東大阪市の産科病院は産婦人科医が8人、助産師が約35人いるなど、堀病院より多くの助産師を配置している。

 安全な出産を目指す市民団体「陣痛促進剤による被害を考える会」(愛媛県今治市)の出元明美代表は「(捜索を受けた堀病院は)助産師が一切助産行為をしていなかったという関係者の話も聞いている」と話す。84〜05年、助産師ではなく、看護師や准看護師らが助産行為を行い、胎児や母親が死亡するなどの医療ミスが、全国で少なくとも14件発生しているという。

 しかし、産婦人科医の間では、一部の診療所などで、看護師が医師の指示を受けて助産行為を行っていることは、公然の事実。厚生労働省は04年に「医師の指示下でも看護師の助産行為は違法」との見解を示しているにもかかわらず、医師の指示があれば、看護師の助産行為はできるという医師らが多くいることが、この問題の背景にある。

 出元代表は「(堀病院は)助産経験が豊富で、誤った行為を指摘できる助産師より、医師の言うことを素直に聞きやすい看護師の方が任せやすかったのではないか。安全な出産について医師が真剣に考え、適切に助産師を雇用する意識改革が不可欠だ」と批判。厚労省看護課は「助産行為は特別な技能と専門知識が必要で、医師の指示下でも助産師以外はできない。安全で安心なお産を実現するため、医療機関側は適当な人数を確保して運営してほしい」と話している。【工藤哲、玉木達也】


無資格で助産か、横浜の病院長ら立件へ 神奈川県警(asahi.com 2006年08月24日21時00分)

 年間出産数が国内有数の約3000人に及ぶ横浜市瀬谷区の堀病院=堀健一院長(78)=で医師か助産師にしか認められていない内診を看護師や准看護師に行わせていたとして、神奈川県警は24日、保健師助産師看護師法(助産師業務の制限)違反容疑で同病院などを家宅捜索した。堀院長は任意の調べに対し、「開業間もない頃から看護師に助産をさせていた。違法だと分かっていた」などと供述しているという。県警は、同病院で看護師らによる内診が常態化していたとみて、院長らを立件する方針だ。

 県警によると、同法では出産の際、子宮口の開き具合や胎児の頭の下がり具合などを確認する内診は、医師か助産師しか行えないと定めている。厚生労働省は02年11月、看護師の内診を明確に禁じる通知を出していた。

 調べでは、堀病院は03年12月29日午後5時45分ごろから約2時間、神奈川県大和市内の実家から通院していた名古屋市の女性(当時37)に対する内診を、資格のない48歳と32歳の准看護師2人に行わせていた疑い。

 出産後、女性は体調を崩して転院。04年2月、多臓器不全で死亡した。今年6月、夫(44)が「妻の出産に助産師が立ち会わなかった」と県警に相談していた。

 横浜市によると、医師数は昨年10月現在で常勤の産科医7人、助産師は6人、看護師は約70人。出産数が同じ規模の病院に比べ、堀病院の助産師の数が極端に少ない。昨年の出産数1801件の聖母病院(東京都新宿区)は常勤の産科医は4人だが、助産師56人だったという。

 こうした実態からも、県警は堀病院では看護師の助産行為が日常的に行われていたとみている。

 気になっていたニュースです。
 マスコミのスタンスを比較する意味で、主要3社の記事を並べてみました。

 こういう状況は、どこの病院でも常態化しているようですが、常態化を非難する前に、なぜ常態化しているかを考える必要があると思います。

 匿名投稿の利点を生かして、赤裸々な実態に関するコメントをいただけるとうれしいです。

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コメント(32)

キジも鳴かずば撃たれまい。
院長の「法律に基づいてやるには限界がある」というコメントが報道されているが、このコメントが真に日本の医療を良くしたいという気持ちからでているものなのか、それとも報道どおり開き直りなのか。
真に日本の医療を良くしたいと思っているのであれば、ぜひとも刑事裁判で主張を貫き徹底的に頑張ってほしい。

私がこの間診てもらいに行った診療所は、お医者さんと看護婦さんが1人ずつのところでしたが、看護婦さんが、レントゲンの撮影から、注射から、処置から、1人でやっていた。
看護婦さんも大変だと思いました。

毎日新聞の見方が正しいでしょう
合法的な診療ができないのなら、しないのが正論
行き所の無い妊婦 いわゆるお産難民が出るかどうかは別問題
違法にならない程度に入院数を制限するのが遵法精神というものです
そして人手が足りないから患者数に対応できない
これもまた現実です

上でPINEさんのコメントが気になったので一言。
>看護婦さんが、レントゲンの撮影から、・・
看護師にレントゲン撮影する資格はありません。医師・歯科医師・放射線技師にのみ許可された行為です。

>看護婦さんが、レントゲンの撮影から、・・
おそらく、そこの診療所でもそうだと思いますが、撮影ボタンを押すのが医師の仕事。そこまでの設定を看護師がやるのではないでしょうか。

こんばんは

「看護婦さんが、レントゲンの撮影から、注射から、処置から、1人でやっていた。」

多分、これも常態化しているのではないでしょうか?小さな診療所では...ありえると思います。

あんまり法廷で争う点が無いんですよね
現状の医療崩壊 産科医療従事者の絶対数不足という事態を
法律が想定してない

法律が正しいという前提が法廷のあり方ですから
法廷では現状を申し上げる程度
無罪放免は難しいでしょう

かくしてまた、医療崩壊は進む
大野病院事件を広島原爆にたとえるなら
今回の事件は長崎原爆並のインパクトでしょう
もうすぐ無条件降伏が待ってます

周産期医療の崩壊をくい止める会コメント
http://plaza.umin.ac.jp/~perinate/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=FrontPage

いま、産科医の集約が言われていますが、助産師の集約も考えないと行けませんね。この病院でも「助産師を募集しても、応募がなかった」と言っていますが...

http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/08/post_0cef.html

> 最近は病院の産科部門閉鎖が相次ぎ、全国的に問題となっていますが、
> 病院の産科部門閉鎖に伴い産科医が去ったあと病院にとり残された助産
> 師達が、一般看護師として働くケースが増えているのは非常に問題だと思います。
>
> 助産師資格を生かせなくなった有資格者がどんどん増えている一方で、産科
> 業務を継続している病院には地域の妊産婦が集中して分娩件数が増えて
> いるにもかかわらず、なかなか助産師を集められず、助産師不足で窮地に
> 陥っている病院が増えているという非常に矛盾した現状があります。
>
経験豊富なベテラン助産師は地域の宝です。その貴重な地域の宝を他業務に
> 就かせて死蔵させておくのは非常にもったいない話です。
>
> 助産師を地域内で適正に配置すること!が非常に大切だと思います。

私も、そう思います。

看護師が内診をしたのと母胎死亡との因果関係は全くないとおもわれます。
母胎死亡を業務過失にするのは困難だと判断し、とりあえず違法行為が証明しやすい本件を取り上げたのだろうと思います。医学的に見て、単純に子宮口の開大の程度を確認するだけの内診行為は、血圧測定などと全く同じで、現在の状態を判断するには非常に重要であるが、助産行為(産を助ける)には該当しないと思われます。
「●○病院は助産婦○人」というのは、ナンセンスだと思います。都会の大病院では産科病棟の看護婦は全て助産師資格を持っていると言うだけで、うちの病院では食事の配膳や体ふき果てはシーツ交換なども助産師がやっています。(これを助産師の偏在といいます)
助産師様は小さい診療所なんかには勤めてくれません。小さい診療所で働く助産師は、若干「ドロップアウト」的に見られる風潮ももあります。ハッキリ言えることは、現状で看護婦の内診を禁ずるのを徹底すると、大変な事態になると言うことです。

不勉強で申し訳ないのですが、看護師と助産師では、一般的にどちらが人件費が高いのでしょうか。

助産師不足ということですが、別のところでは助産師の女性が「助産師として雇われるはずが、実際には看護師として雇うと言われ、抗議したが涙を呑んで承諾した」という告白を読んだことがあります。
人数の関係?給料(経営側からは費用)の関係?
やはり偏在とか経営とか色々な要素が絡んでいるのでしょうか?
この辺りが良く分かりません。

えー、実は我が家の長男はここで生まれました。
しかも、最近のこの近郊の産婦人科が続々とクリニック化されたりして、ますます産科の一点集中傾向が集まっているというのは確かです。(産科がない総合病院はこの地域では、少しずつですが増えています。)
この病院は、10何年前でも朝5時から院長が診察をしていました。(はたらくお母さんのためみたいです。)こういう病院は時として、付加価値を上げるために食事がグレードアップしているとかもありますが、ここではそれはなかった。ただ看護婦が注射!や処置応援のため騒々しい医者だという印象はのこりますね。
「正しい」行為ではなかったとしても、現実の対応に追われているというべきか。

この事件ですが、どう見ても「看護婦の助産行為」と「女性の死亡」は因果関係がないようですね。医療事故があったので警察が調べたら「看護婦の助産行為」が判明した結果のようです。モトケンさんが先日から言っておられた「警察の功名争い」の結果と思われます。

私の妻はもうすぐ出産するのですが、「看護婦が産科医師の指示を受けて助産行為をするのは何も問題なかろう」と言っております。看護婦が助産婦(産婆)と称して「**助産院」を開業するのとは訳が違います。

ところで、この産院の院長は「私が指示したことである。責任は私にある。法律が間違っている」と堂々と表明している点が潔く、好感を持てます。

マスコミの報道を見ていて強く感じたのが彼らは「内診」と「助産介助」の違いが全く理解できてないという事です
いかにも詳しそうに批判しているナントカ会代表をはじめとするコメンテーターの方々もです

実際問題として「助産介助」はともかく全ての「内診」まで医師・助産師がやるとしたら小規模の開業医はほぼ全滅です
産道の確認やどこまで降りてきたか常に医師・助産師がついていなくてはならなくなります
それでなくても一人医長なんて寝る時間もないのに・・・

素人同然の救急隊員に気管内送管させるほうが遙かに危険だと思うんですけどね

医療関係者の方にお伺いしたいのですが
看護士や他の職種の方への医療行為の権限委譲(?)は医師会が反対していたのかと思っていたのですが、そうではないのでしょうか。
それともお偉方の考えと現場の考えが乖離しているのが問題なのでしょうか?

40年前からこの状態が続いていたという話ですが、助産婦については当時から医療崩壊が顕在化していたということなのでしょうか。医療事故のことは脇に置くとして、この体制はもともと人件費節約のための裏技、つまり純粋な経営判断だったのではないかという気がしてなりません。今現在の産科の状況に照らせば、この院長は「あえて法を犯して世に医療崩壊を問題提起した殉教者」なのかもしれませんが。
医療界の自浄機能にも絡む話ですが、この件に限らず「医療崩壊の犠牲者」という言葉が黄門様の印籠みたいに使われて本質が見えなくなる危険性はないのかと危惧してしまいます。

朝日新聞の記事の「厚生労働省は02年11月、看護師の内診を明確に禁じる通知を出していた。」ですが、探してもその通知が見つかりませんでした。
どの通知か分かる方、いらっしゃいますか?
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/html/tsuchi/contents.html

>40年前

崩壊していたからというより、医師の指示指導により、医師以外の資格者や無資格者が医療行為をおこなう(当然何かあったら医師の責任ということです)のは、この件に限らず昔からおこなわれています。どこまでやらせていいのかということも、治療における医師の裁量と同じく、医師の裁量に任されていました。(逆から見ると医師が指導監督しない状態での医療行為には医師はとことん反対してきています)ところが、無資格者にさせるのはおかしいという意見が、徐々に沸き起こってきて、どんな資格の人間がどこまでならいいのかということを、厚生省も見解を示すようになりました。しかしながらその見解が、机上の、言葉の上での整合性を優先した論理で、現実的でないこともあり、法律でもない(準ずるものではありますが)ため、現場では無視されることもしばしばということです。無視しないというのなら、多くの医療機関が、工夫の余地もなく辞めざるをえないものもたくさんあります。

背景はこんな感じです。
この件の影響は、大野事件に勝るとも劣らないと思います。

某掲示板の話がわかりやすいので、抜粋して転載します。

『第37条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、
 主 治 の 医 師 又 は 歯 科 医 師 の 指 示 が あ つ た 場 合 を 除 く ほか、
診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。』

『医師の指示があればやっていいと読めるので、法律の条文からは違法とは言えない。
ただし、やるなという通達があったのだから、違法ではないが通達違反。
広い意味の法令違反。
だいたい、おそらく明治以来100年以上も看護師は内診をしていただろうと思われるのに、2002年の通達でいきなり禁止され、かわりの助産師の養成はなし。
通達そのものが問題有りと指摘されていた矢先の異例の事件。
世論をミスリードするための意図的な法解釈にもと図いた強引な捜査。』

私にはたいへん納得できる話なのですが、法律の専門家にご意見をうかがいたいと思い紹介しました。

>民473さま

産科医 | 2006年08月25日 02:25さんとは違う「to do the right thing」の産科医ですが、ややこしいので、これからは、産科医−1とさせて下さい。

2006年08月25日 12:57の「厚生労働省は02年11月、看護師の内診を明確に禁じる通知を出していた。」は、「医政看発第1114001 号」ではないでしょうか?

医政看発第1114001 号(平成14 年11 月14 日)にて厚生労働省医政局看護課長より鹿児島県保健福祉部長宛てに回答が送られた。(1)産婦に対して、内診を行うことにより、子宮口の開大、児頭の回旋等を確認すること並びに分娩進行の状況把握及び正常範囲からの逸脱の有無を判断すること。(2)産婦に対して、会陰保護等の胎児の娩出の介助を行うこと。(3)胎児の娩出後に、胎盤等の胎児附属物の娩出を介助すること。以上の行為を看護師はしてはならない、

元行政さんのコメントの引用で、保健師助産師看護師法第37条があがっておりますが、この条文は、「保健師等は、お医者さんの指示がないのに、こういうことを自分の判断でやってはいけませんよ。」という規定であり、今回の被疑事実とは関係ないと思います(令状を見たわけではないので断定はできません。)。
今回の事件で問題になっているのは、以下の条文だと思います。

保健師助産師看護師法第30条
 助産師でない者は、第3条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
PINEコメ・ただし書きは医師ならしてもいいということ。

保健師助産師看護師法第3条
 この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。

保健師助産師看護師法第43条
 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 第29条から第32条までの規定に違反した者

そして、「第3条に規定する業」すなわち「助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導」とは具体的にいかなる行為が含まれるのかについて、鹿児島県保健福祉部長からの照会に対し厚生労働省が回答したのが、産科医−1さんが上げてくださった通知だと思います。

ちなみに、通達とは、監督行政庁が、組織上の監督権に基づいて所管の下級行政機関に対し、法律の解釈や裁量判断の具体的指針等を示して、行政上の扱いの統一を期すために発する行政組織内部での命令をいいます(私が司法試験受験から現在まで愛用している原田尚彦行政法要論より。)。
上記の通知も、広い意味で通達と考えていいと思います。

通達は、行政組織内部の命令であり国民を直接拘束するものではないため、通達の内容を争うためには、通達に基づいて自分に対して具体的な不利益処分がなされた段階で、その通達の違法性を理由にその具体的な不利益処分を争うことになります。
これを例えば今回の事件でやると、院長が刑事裁判を起こされた後で、その裁判で「内診は法第3条に規定する業務に含まれると解するべきではなく、内診を助産師に限定する厚労省の通知は誤っているので、私は無罪だ。」と主張する、というふうになるでしょうか。

PINE先生ご教示ありがとうございました。

通達行政の中にいたこともあるので、多少は知っているつもりでしたが、民間との関係を明確に示していただけたおかげで、理解が深まりました。
その頃の経験上の話ですが、通達等を出す場合に担当官は、それが裁判等でひっくり返されることを特に嫌います。厚生省は、裁判になってそれが争点にはなってほしくないと思っているのではないかな。ただ、裁判官は社会的な影響を考えずに判決を出すと言う話もありますから、それこそ通達を補強して、産科を壊滅に追いやるかもしれませんね。

>PINEコメ・ただし書きは医師ならしてもいいということ。

医師が考えそうなことを先回りして書かれたと思われますが、あえて述べさせていただきます。
前述したように、医療行為の際には、医師は有資格者も無資格者も使いますし、使わなければ医療は成り立ちません。その際の理屈は、ハサミやメス、又はもう一本の腕として使っているという感じでしょうか。ですから、この場合の医師法は、道具としての看護婦(診療の補助)まで含めたものという理屈も成り立たないわけではないと思いますが、どうでしょうか。

産科医−1さまありがとうございました。
医政看発1114001の検索で、だいぶ分かりました。
厚生労働省の「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」 http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.html#isei の第9回あたりの議論を見ると、助産師会が「看護師は産婦を内診できない」と主張しているようで、隣接職種の縄張り争いを感じます。

産婦の内診にリスクがあるとも思えず、一方、看護師は産婦の内診より遥かに危険なことを業務として行っている訳で、こんな事件を立件して何になるのだろうと思います。

結局、「産院は、助産師資格を持った看護師を雇いましょう」→「助産師の給料アップ」ということですかね。

民473様の意見に賛同します。産婦人科医として内診のリスクというのを考えた場合、出血があり得るから看護師にとって採血並みのリスクはありますが、特殊な場合(たとえば前置胎盤に気づかず内診とか)を除いて、産婦に及ぼすリスクは血圧測定並みくらいかと思います。正しく内診所見をとれるかというのは、これはもう慣れの問題で、一年目の助産師よりベテランの産科看護師の方が当然正しい所見がとれるでしょう。
元行政様の意見にある、「道具としての看護師」というのはまさに産婦人科医会が主張していることだと思います。

元行政さん、道具としての看護師(看護師さんがこの表現を見て気分を悪くしないことを祈ります。)ということですが、保健師助産師看護師法は資格を定める法律であり、助産師以外の者が法3条の業務を行うことを一般的に禁止し、医師の場合には例外的に認めるということですので、例外は厳格に解釈するということになるんじゃないでしょうかねぇ。
いっぺん裁判所に判断してもらいたいと思いますが、ダメ押しになるかもしれませんよね。

現実には、民473さんご指摘のとおり、隣接職種の縄張り争いだと思います。

山口(産婦人科)さんのコメントによりますと、「道具としての看護師」というのはまさに産婦人科医会が主張しているとのことですが、産婦人科医会では線引きをどう考えていらっしゃるのか興味があります。
どういうことかといいますと、「道具としての看護師」であれば何でもできるのか、看護師に執刀させてもいいのか、看護師に診察させてもいいのか、助産師の業務だけ看護師を道具として使えるのか、ということです。

PINEさま
保助看法第5条(看護師の業務)については、どう考えられますか?
第五条  この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

看護師の業務の本質は、「診療の補助」となっています。医師の業務の補助と言える範囲は、看護師が自分の判断で取り扱って良いというのが第5条で、それでは広すぎるので「危険なことは医師の指示に従え」というのが37条に見えます。

では、「助産」と「診療の補助」が重なり合う部分に付いて、看護師が医師の指示で行った行為を違法と言えるんでしょうか。

同じ矛盾として、次があります。
第32条  准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。
第6条  この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定すること(注:第5条看護師の業務)を行うことを業とする者をいう。
文字通り、厳密に解釈すると、看護師は准看護師ではないから、医師等の指示を受けて看護師の業務をしていけない、ということになりませんか?

民473さん、保健師助産師看護師法の31条を見ると、

1 看護師でない者は、第5条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
2 保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第5条に規定する業を行うことができる。

とありますので、

看護師の業務=傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助
助産師の業務=看護師の仕事+助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導

という構造になると思います。
すると、「助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導」は、看護師にはできないことになる。

では、具体的には、「助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導」とは何か。
実際に医療監視等にあたる都道府県は分からない→厚労省に法の解釈を確認・照会した→厚労省が法の解釈を回答した

ということだと私は思っていたんですが。

それから、看護師と准看護師については、

看護師の仕事=傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助
准看護師の仕事=看護師の業務をするのに医師、歯科医師、看護師の指示が必要

ということで、准看護師の仕事は看護師の仕事を制限しているものなので、矛盾はないように思うのですが。

お医者さんから見ると、こういう書き込みは笑われるかもしれませんね。
弁護士っていっても、普段扱わない法令だと、こう説明が何だかぎこちなくなるんです。
で、私らも、最終的には、「所管官庁に解釈を確認してみよう!」ってなるわけです。
また、お医者さんから見ると、「また言葉遊びか。」と思われるかもしれませんが、これが私らの仕事だったりするんです。

「保助看法」の解釈はご専門にお任せして、なぜ、それまで問題にならなかった「内診」などの助産行為が、クローズアップされて来たのか、側聞する所をお書きします。

ご存知のように、准看護師さんは就職した病院の院長さんに恩義を感じている事が殆どです。看護師さんは、それ程でもないでしょうが、やはり雇用主には遠慮があります。ところが、助産師さんは(昔は看護師免許を取ってもう一年「助産学」を学びましたから)、結構、助産に対して思い入れがあります。それは院長さんへの、そうした遠慮以上です。

そこで、何を申したいかと申しますと、助産行為において、准看護師さん、看護師さんはどうしても院長さんを思ってしまい、つまり、患者さんの訴えを蔑ろにしがちになって、その結果、分娩事故が起こるのだとの思いが分娩被害者の方々にはあるのかと思われます。

ですから、内診で何センチ広がっているといった所見は少し慣れてくれば誰でもとれるのはそうですが、果たしてそれが異常なのか、そうして、早急な処置をして貰わなきゃいけないと判断し、自分が叱られても良いから院長さんにご足労願うまで食い下がる、っていうのは准看護師さんにはなかなか無理でしょうし、看護師さんにもしにくい、この辺に、この「内診」問題の本質があるのだと私は思っています。

問題となっている二つの通達(疑義照会回答)
1鹿児島県保健福祉部長からの疑義照会
2愛媛県保健福祉部長からの疑義照会
については「医療六法」(中央法規)に掲載されています

こんばんは。
報道では、堀病院の看護師の(産前産後の)体制がどのようなものであったか、は問われていませんね。

このHPは⇒【弁護士】神田[37歳]さんのですか?←此れで検索したら、トップに出ました。そうなら、岩波の現状を見て欲しい。

P R

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