エントリ

 千葉県鴨川市の亀田総合病院で01年に死亡した高校2年の男子生徒(当時17歳)の両親が、病院を運営する医療法人鉄蕉会(てっしょうかい)(亀田俊忠理事長)に約8800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、千葉地裁であった。小磯武男裁判長は「出血性ショックによる死亡で、カテーテルを適切に挿入せずに血管を傷つけた過失があった」などと両親側の主張を認め、病院側に約8100万円の支払いを命じた。病院側は「控訴を検討する」としている。

 判決によると、男子生徒にはぜんそくの持病があり、治療のため同病院に入通院していた。01年1月1日午前4時半ごろ吐き気を訴えて受診したところ、ぜんそく薬による中毒と診断され、胃洗浄、薬物投与などの治療を受けたが、けいれんなどを起こした。医師が血管にカテーテルを挿入した数分後、血尿が止まらなくなり、午後9時半ごろ死亡した。

 病院側は「死因はぜんそく薬による中毒だった」などと主張したが、小磯裁判長は「病院側に過失があったと言わざるを得ない」と退けた。【倉田陶子】

 判決文を読まずに判決を批判するのは法律家としてはあるまじきことなのですが、報道で見る限り、この裁判所は、

 カテーテルを適切に挿入すれば血管が傷つくことはあり得ない。
 カテーテルで血管が傷ついたということは挿入が適切でなかったということだ。
 よって、カテーテルで血管を傷つけた医師には過失がある。

と考えているのかも知れない、と思ってしまいます。

 どなたか判決文のソースをご存知の方は情報提供をお願いします。

 医療過誤訴訟に関する判例データベースサイトができていてもおかしくないと思います。
 医師会と弁護士会(または弁護士の有志)が連携すれば、容易に構築できそうです。


追記
 医療人1号さん紹介のサイト
 診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業

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>医師が血管にカテーテルを挿入した数分後、血尿が止まらなくなり、午後9時半ごろ>死亡した。
どのようなカテーテルをどのようにさしたら血尿になるのでしょうか。
CVを鼠径から挿入しても尿路を損傷するとはきわめて考えにくいのですが。

マスコミにも記事を鑑定する医師が必要だと思います。このブログの読者の医師ならば、記事になっていない部分に、余程そう思わせるようなことがあるかもしれないと、善意にとらえて、判決が妥当である可能性を否定しないでしょうが、多くの医療従事者はこの記事を読んで裁判官って馬鹿だと即断するでしょう。

新聞報道を見る限り、典型的な「トンデモ判決」にみえますね。このような判決を下した裁判官の常識を疑います。

思うに、専門家からみると突拍子もない判決がでてくるウラには、原告側に「敏腕弁護士」がいるのでしょう。彼(または彼女)の訴訟テクニックには舌を巻きます。もし、私が訴えられた時には、このような優秀な弁護士を雇いたいものです。

>医療人1号さん
優秀な敏腕弁護士としてことでこのような記事もあります
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2428777/detail

なんだか酷い言われようですけどね(笑

血管のカテーテルと尿道からの出血が結びつかないのですが・・・。

別の記事です。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news004.htm
http://www.chibanippo.co.jp/news/shakai/index.php
かなり重度のテオフィリン中毒だったようです。

血管損傷の有無を争っているようですがCTをとって血腫の存在を確認するなり
剖検をおこなうなりしなかったのでしょうか。
この場合は病院側は剖検を行うべきであることを話していると当然思いますが…

失礼致します。専門外ですが、ちょっと思ったので書いておきたいと思います。私も判決文を読んでいないので正確な内容は不明ですが、失血死は到底有り得ないと思われます。
・尿の色:
これはおそらく激しい痙攣の結果だろうと思われます。ミオグロビン尿ではないでしょうか。横紋筋融解症(阪神大震災で有名になったクラッシュシンドロームのような状態もこれと似てる)や悪性高熱などでも同じく見られ、一般人が見たときに「血尿」と錯覚するかもしれません。血の赤い色はヘモグロビンによるのですが、ミオグロビンも構造的にほぼ近く、色もほぼ同じですので。

・嘔吐、痙攣の原因:
薬物中毒ということも有り得ますが、ひどい喘息発作によるアシドーシスの為、とも十分考えられます。喘息は一般的にあまり怖れられていないと思いますが、「致死的疾患」なのです。

・死との因果関係:
喘息への対処で治療が奏功しなければ、死に至ることもあると思います。また、横紋筋融解症や悪性高熱とほぼ近い状態になっていたのであれば、CO2呼出障害、重篤なアシドーシス、高体温などが重なって起こってくるので、救命は困難なこともあると思います。横紋筋融解症は喘息治療薬で惹起される可能性も言われており、そうしたトリガーによって発症した可能性もあるのではないでしょうか。

少なくとも「失血死」だけは有り得ないと思います。

疑問となる点が多すぎますね。

1.致死量のテオフィリン中毒とのことですが、経口薬で何故そのようなことが起きたのか?
2.血尿はまさくに先生のおっしゃるように「ミオグロビン尿症」ではなかったのか?
3.失血死と判断した根拠は?また、誰が失血死と判断したのか。
4.どのように穿刺すれば鼠径部から刺したカテーテルが尿路と血管を同時に損傷して血尿を来しうるのか?

 私としては「血液が凝固したので・・・」という記載からして、痙攣→高ミオグロビン血症→DIC→出血傾向→血尿という流れが病態生理的には最もあり得る気がするのですが。

 判決は事実関係が分からないのでともかく、このような不正確な記事を垂れ流すマスコミには憤りを感じますね。

報道記事からは、なにがなんやらサッパリわかりません。推測するに、胃洗浄、薬物投与の効果が認められなかったので、血液浄化によるテオフィリン除去を選択したのではないでしょうか。

ブラッド・アクセスを得るため、鼠径ないしは鎖骨下静脈からダブルルーメンカテーテルの挿入を試みたが、並走する動脈を損傷してしまい、腹腔内ないしは胸腔内に大量出血をきたし、圧迫止血をすることもままならず、出血性ショックに至った…。しかも、緊急を要する処置なので、リスクに関するインフォームド・コンセントも、十分にできていなかった…。

若くして亡くなった方には、お気の毒としか言いようがありません。喘息発作はとても苦しいので、なんとか楽になりたいと、指示された規定量以上の内服・吸入薬を使用したのかもしれません。亡くなられた方に鞭打つようで、たいへん申し訳ないのですが、患者さん側の責任は、どのように判断されたのかなと思いますし、テオフィリン中毒による致死的不整脈が生じて、そのことが死因につながったのではないか、とも思ってしまいます。

残念なことですが、医師がこのような判決を知ると、懸命の治療を行わなければ、病院も訴えられることはなかったかもしれない、と不埒なことを考えてしまうのです。

>或る内科医先生

 脚部から・・・という記載が読売新聞の方にありましたので、ブラッド・アクセスは大腿動脈だと思います。

 で、腹部だとしても、血尿による失血死ってのはおかしいと思うんですよ。尿管なんて刺そうと思っても刺せないし、あるとすれば膀胱? 大腿静脈穿刺で膀胱に当てた・・・という報告は聞いたことがないですが、そう言う合併症はあるんですかね?それならもうちょっと別な記述になると思うのですが・・・

>判決によると、男子生徒にはぜんそくの持病があり、治療のため
>同病院に入通院していた。01年1月1日午前4時半ごろ吐き気
>を訴えて受診したところ、ぜんそく薬による中毒と診断され、胃
>洗浄、薬物投与などの治療を受けたが、けいれんなどを起こした。
>医師が血管にカテーテルを挿入した数分後、血尿が止まらなくな
>り、午後9時半ごろ死亡した。

まず,死因が「出血死」であったのかそれ以外(テオフィリン中毒
etc.)であったのかがはっきりしません.
もし仮に出血死としてもこれと「血尿」とは関連があるとは思えま
せん.大腿静脈穿刺時に高位で穿刺して,なおかつ大腿動脈を誤穿
刺しますと腹腔内出血が生じ,最悪の場合出血死する可能性はあり
ますが,この場合「血尿」は出ません.
おそらくは大腿静脈穿刺とは無関係で,みなさんが書かれています
ように「血尿」ではなく「ミオグロビン尿」の可能性が高いと思わ
れます.テオフィリン中毒の症状の一つに横紋筋融解症が記載され
ています.
とすれば,横紋筋融解症に続くものはDICです.その結果「出血死」
というのであればそれも最終死因は出血死でしょうが,これは血管
損傷による出血死と明確に区別される必要があります.
鍵は「尿中」および「血中」のミオグロビン測定です.サンプルが
残されていれば死後でもこれを計測しておけば病態は後から明らか
にできたはずです.
医師側に問題があった可能性は低いように思われますが,いかがで
しょうか?

元がテオフィリン中毒であったならそれを自ら服用した患者さん自
身にも問題があると思います.(テオフィリンは治療域と中毒域が
近いので注意が必要なのは確かなんですが...)

記事を読む限り自分もDICをイメージしました。そもそも極めてシビアな状態だったと思います。
実際の過失の有無に関わらず、この記事から受ける一般臨床医のイメージは病院側のコメント通り「このような症例で医療機関に責任があると判断されては、日本の医療は荒廃する」ではないでしょうか。これからの司法及び報道は医療側の疑問を解くことで自らの行為の社会的影響にも責任をもたなければならない気がします。

自分でいろいろな判決文を貼っておいてナニですが、私自身は個々の判例について法曹の方々と論議することはあまり建設的でないと思っています。
当該判決の判事さんたちは法学的に正しい論理作法に則り、法学的に正しい結論を導き出しているのです。
少なくともその信念の下で判決文を書かれたであろうことは疑いありません。
ほとんどの医事関係訴訟が「法学的に正しい」判決なのです。
なので、最近の医療者側からの反発の声に対して、多くの法曹(判事さんと検事さんと原告側弁護士のセンセイ)は「つっこみどころがないハズなのに、なぜか医者たちは食って掛かってくる」と思ってらっしゃるのではないでしょうか。

おそらく医療事故を民事では損害賠償請求事件として、刑事では業務上過失致死傷/殺人事件として裁こうとする限り、その乖離は今後もずっと続くでしょう。
裁く側と非医療者の一般国民は納得しているようですが、医療者側が今の事故処理システムに納得していないのです。
そして過去の判例をどれだけ法学的に解析しても、決してその納得しない原因には辿り着きません。
新しい枠組みが必要なのです。
患者側も医療側も双方が納得できる新しい枠組みが必要なのです。
20年後の日本医療再生のために。

>元田舎医さま

私は先生の意見に同意します。
法曹の一部の方は「現在の裁判のやり方に問題はない」と驚くほど堅く信じておられ、一部の方は全く医療者側の意見を聞いても理解しているとはいいがたいと思います。

このblogでさんざん話されたことがまた蒸し返され、「今の制度は問題ない」という結論ありきで話を進める一部の方の意識は改善しようがないとさえ思われ徒労を感じます。今の法学的枠組みで今の裁判制度を解釈したところで問題ないと結論されることはある意味あたりまえと思われます。

医療者側が全く納得できていない制度であることは明らかなのですが、このように理解を得ることが困難な場合どのようにすれば新しい枠組みができるのでしょうか。私にはその方法がわかりません。政治、法曹、世論全てに納得してもらい、新たな枠組みを作る必要があると思われるのですが、そんな大きなことをする余力は医療者には残されていません。現実的には、医療が崩壊し焦土と化してからの再生となるのでしょう。アメリカ型の再生となるのでしょう。絶望するしかないのでしょうね。私は疲れました。

>元田舎医さま

医療訴訟に携わる弁護士の本を読んでいるのですが、原告側も弁護士も
今の訴訟制度には不満を抱いているみたいです。

「医療訴訟に関わる全ての人が、不満を抱いている」事を出発点にした方が
よろしいかと思います。あと、一般の方々は、医療訴訟そのものには関心を
持ってないと思いますよ。「関心を持つ一部の訴訟」があるとは思いますが。

ここまでの議論は非常に高度で且つ説得力があるとおもいますが
それでも分からないのがテオフィリン血中濃度高値の原因の謎

一月一日発症ということは外来受診してから相当間隔があったはず
それなのにいきなり即死の重症で血中濃度が致死量
医師の処方通りに服用していてそんなことがありえるのか
どういう処方をしていたのか 薬局にミスがあったのか
前日まで症状が無いとか致死量になるまで我慢して飲み続けるとか
そんなことが有りえるのかという謎 普通はもっと早く症状が出て来院します

某掲示板の書き込みによるマスコミ関係者からの情報(自称)によると
「患者が当日 自殺目的にイッキ飲みした 来院時すでにDIC
家族はそれを認めたくない」

これが確定的事実だとは申しませんがわたくしの疑問に対する
一つの可能性の示唆ではあります.

>いのげさま
テオフィリンは致死量を一気飲みできるようなお薬なのでしょうか。
強い薬ならばいっぺんに飲むと吐いてしまうような気もしますが。

最近、非医療者の方々のコメントの雰囲気が少しずつ変わってきたのを感じます。
管理人さんですら、春先と今ではかなり違いますもんね。

>>No.14の元内科医さん
同意ありがとうございます。

そう言えば「元内科医」さんとはHNがアナグラムですね。

>>No.15のしまさん
>医療訴訟に携わる弁護士の本を読んでいるのですが、原告側も弁護士も
>今の訴訟制度には不満を抱いているみたいです。

確かに現行の民事裁判では原告勝訴例でも不満は大きそうです。
何より時間がかかります。
また「賠償金が手に入らなくても、手間と費用をかけずに医療側へ制裁を加えたいので刑事告訴」という流れもそろそろ定着しそうな気がします。

>「医療訴訟に関わる全ての人が、不満を抱いている」事を出発点にした方が
>よろしいかと思います。あと、一般の方々は、医療訴訟そのものには関心を
>持ってないと思いますよ。「関心を持つ一部の訴訟」があるとは思いますが。

前半の提言、同意します。

一般の方々は「医療訴訟には関心がないけれど、『医療ミス』の報道を見るにつけ医者は厳罰にしたらいいと思う」が大多数でしょうね。

もう一つ、現行の民事・刑事裁判で医療事故を裁くシステムの大きな欠点は、「同様の医療事故に遭っても声が大きい人しか報われない」ということだと思います。
気の弱い人はそれこそ「泣き寝入り」するしかないのです。
医療者側に「ミス」があるのなら、やはりそれは患者側の声の大小に関わらず公平に補償されるべきでしょう。

#そのために生命保険に入っているのでは、という話もありますが、ひとまず置いておきます。

嘔吐生じますが胃粘膜への刺激ではなく
吸収されて血中濃度が上昇することによって生じる嘔吐です
十二指腸に行ってる分は出ませんので
血中濃度抑制効果には限界はあります
もちろん治療としての胃洗滌は可能な限り行います
テフィリンで自殺することはおおいに可能です
(あんまり楽な死に方ではないのでおすすめはしかねます)
劇薬にも指定されています

製薬会社による症状・治療解説
http://www2.eisai.co.jp/essential/teo/qa/qa804.html

テオフィリン過量摂取一例報告(救命成功)
うっかり飲むこともありえるくらいですから
意図的に飲むことはたやすいと思います
http://www.tokushima-med.jrc.or.jp/zasshi/2003.htm

PS:痙攣がバンバンおこってるとしたら
血管損傷しない穿刺なんて不可能ですな

よく考えたら不可能は言い過ぎで
痙攣のコントロールが大変といったところです

表沙汰に出来ない事件の可能性あり、ですか…
う〜む、裏自殺マニュアルとやらが本当に実施されていそうな世の中ですな…

私は医学の徒でも法学の徒でもありませんので詳細には突っ込めませんが、ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学の関係に似ていると思います。
ユークリッド(エウクレイデス)は原論の中で、自明な命題(公理)と自明ではないが証明不可能な命題(公準)を用いて多くの幾何学の課題を証明しています。
そしてそれらは2千年の間紛れもない数学的真理であると考えられていました。
ですが近代ヨーロッパにおいて、ユークリッドの平行線公準(平行線は無限に延長しても交わらないという公準)が成り立たない場合の幾何学を考えた人がいて、その結果非ユークリッド幾何学が作られたわけです。

法的に無矛盾であっても医療的には正しくない場合もあるでしょうし、その逆もあるでしょう。
医療も法も正しいが、それぞれの立つ場所が違うから矛盾が生じる。
ただ私自身は科学の徒ですので法よりも医療に真理があると思っています。
人体が突然変異を起こさない限りヴェサリウスの解剖図は500年経とうと真理でしょうが、法は社会情勢や時代背景で作り変えられるものですから。

>WATERMANさま
>法よりも医療に真理があると思っています

個人的には、法には真理はないと思っています。
法律とは単なるルールであって、善悪やモラルとは関係がない。

そして、作り替えられることを前提として、考えなければならないかと。
自分の考えをどのように法に反映させるかが課題ですね。

病院側の主張と裁判所側の見解の相違を見る限り
剖検は行われていないとおもわれるのですが、
もしこのケースが自殺企図によるものであったと仮定した場合、
出血性ショックの疑いもあった場合ならそれこそ警察に届出を行ったうえで
剖検を行い白黒つけるべきであったと思うのですが。
(自殺の場合において司法解剖や行政解剖の法的な扱いはどうなるのでしたっけ?)
もし家族が剖検を拒否してなおかつこのような裁判を起こしているとしたら
とんでもないことだと思います。

http://www.sankei.co.jp/local/chiba/060912/chb000.htm
>二男に中毒症状はあったが、死因をテオフィリンによる心不全とする
>具体的な根拠はない
どの記事をみても死因が出血性ショックであったことを支持する
具体的な証拠が書いてないのですがどうなんでしょう。
院長のコメントを見る限り通常の医療裁判の際のコメントとあまりにも違いすぎて
よっぽど納得いかないのだな、と感じます。

亀田病院クラスならば複数の辣腕弁護士に依頼することなど経済的には雑作無いように思いますが、被告側の戦略に大きな誤りがあったのでしょうか?

諸先生方のご高察は非常に筋が通っているように思います。鼠径穿刺と出血の因果関係を強く疑わせる証拠があったのでしょうか?穿刺の「数分後」に急変したために因果関係を推定したのでしょうか?

ある治療行為のあとに状態が変化した場合、厳密な科学的説明ができなくてもその治療行為が原因であったと推定するのでしょうか?もしそうならすべての医師には少なからぬリスクが生じます。病院で亡くなる患者さんの多くは亡くなる前に多くの治療行為を受けているでしょうから。

しま様
法はただのルール、約束事でしかないのにそれを真理だと考えるから、医学的な真実(と言っても現代医学における真実)と相容れない結果になってしまうのでしょう。
この場合、法が医学に道を譲るべきだと思うのですが。

ループになりますが

>WATERMANさま
>法はただのルール、約束事でしかないのにそれを真理だと考えるから、

想像ですが、法律家は法を真理だとは考えていないのではないでしょうか
むしろ、非法律関係者の方が、法は真理だと思っているのではないでしょうか
そして、法律家が真理をもとに裁いていると誤解しているように思います


>この場合、法が医学に道を譲るべきだと思うのですが

医学が法を取り込めばいいのではないでしょうか
現代医学というものを反映させた法律を作り、公開して議論するべきでしょうね

医学が法律になじまないというのであれば、
法に変わる代替システムの提案が必要かと考えます

…てか事件は01年なんですよねぇ。うぅぅん?
裁判はいつからなんだろ。

No.24  ばんた先生

私が医療雑誌で昔読んだあやふやな記憶によると

医療機関が家族に剖検を受けないと裁判で不利になることを告げた上で剖検を受けない時のみ患者家族が不利になるそうです。証明責任は原告のはずなんですが、この辺りはちょっとおかしいと思っています。

民事でも疑わしきは罰せずというルールは通用するのでしょうか?今までの判決を見る限り、あまり民事では通用しないのではないか?と疑問を持つような判決が多いような気がします。

若くして亡くなった→患者の家族の憎悪をいっそう悪化させた

というような図式は成り立つでしょうか?以前、私も18歳の男の子の患者さんを亡くした経験がありましたが、このときはどう考えてもこちらに過失はなく、病理解剖で死因は病気とは全く関係のないストレス性の急性胃出血と判断されました。中には処置が早ければ助かったかも、という同僚も居り、意見はいろいろですが(私は死亡当時、点滴当番で患者さんのそばにいませんでした)、家族の感情は相当悪いもので、心臓マッサージを4時間!(当然交代で)もやりました。当然医学的に意味のない行為であり、書類上、同級生が到着するまで生かしておくためと割り切りましたが、当然4時間も続けられるわけはなく、途中休み休み心臓マッサージを止めたりしていました。
家族は案の定訴えてきたようで、医療側の家族対応は悪くなかったと思うのですが、とにかく後味の悪い経験でした。

掲示板の方に昨日予告した通り、今日の午後、某地裁へ初傍聴に行ってきました。

主感想:絶対当事者にはなりたくない

副感想1:裁判官はこちらを見くだしている
当然、人によるとは思います。
けれど、私が傍聴した数人の判事さんは、言葉遣いこそ丁寧ですが、多かれ少なかれ端々に「自分は一段高いところにいる」意識をにじませているように受け取れました。
「あのですねぇ、もっと簡潔に、質問されたことだけに答えて下さい。言ったんですか?言わなかったんですかっ?」というふうに一度でいいから問診してみたい...

副感想2:相手側弁護士は合法的恐喝士である
原告側にせよ、被告側にせよ、当事者にせよ、証人にせよ、相手側代理人からの尋問は、同じことをバッジを付けていない人がやればどう見ても恐喝です。
証言台に座る証人の目の前にドサッと投げつけるように証拠書類の束を置くやりかた、「あなたねぇ、確かに○○と言ったんですよ。わかってるんですかっ?」等の厳しい言葉、斜め右下に見くだす目線等々。
法廷戦術と言ってしまえばそれまでですが、とてもじゃないけど私はああいうのに耐えられそうにありません。
たとえ結果、自分側が勝訴するにしても。
相手の弱点を執拗に探し、見つけるや否や完膚なきまでに「言葉で」叩きのめすのが、法廷での弁護士さんのお仕事なんですね。
ネット論争で医者ごときが敵うわけがないのも道理です。
暴力団が弁護士さんを雇う理由もよくわかりました。
あと、意外に刑事裁判での検察官の振る舞いの方が紳士的である印象を受けました。

副感想3:自分側弁護士しか味方はいない
上で述べたような目に遭わされても、法廷で即座に論理で応酬・報復できるのは自分側弁護士だけです。
まさに心のよりどころです。
弁護人がつけられない刑事裁判など想像するだに恐怖です。

副感想4:民事事件で代理人が用意した書類の分厚さ、刑事事件で国選弁護人が用意した書類の薄っぺらさ
僕が傍聴した刑事事件が軽微なものだったのですが、それを差し引いてもその差に思わずあっと声を上げそうになりました。

副感想5:紛争解決の手段としての裁判はムダそのもの
大掛かりすぎます。
とくに民事では回避できるものは極力回避すべきでしょう。
そのためにも医療の日常業務にもっともっと弁護士に関与してもらう必要があります。
本来ならば、患者を診療し、医学書・論文を読み、研究をし、休息すべき時間が紛争処理、ことに裁判に費やされるのは全くもって医療・医学の発展に資しません。(実際、後退しているわけですが)
医師会は、司法試験合格者の抱き込みの他にも、司法試験合格後は医療側弁護士として数年勤務することを条件に、医師のロースクール入学に際して奨学金を貸与するなど、あらゆる手だてを講じて医療側弁護士の充実を図る必要があろうかと思われます。

結論:医療者は裁判を傍聴すべし
まず自分の目で見て、耳で聴いてみましょう。
その結果、何を思い、何を感じるかは人それぞれでしょうが、想像するだけでは絶対思い至らないことが必ず得られます。
傍聴の方法は簡単です。
抽選があるものと非公開であるもの以外、裁判所に入っていって、裁判途中でも構うことなく「開廷中」の表示のある法廷の「傍聴人入口」から勝手に(ただしそーっと)入ればよいだけです。
出るのも自由です。

私はもうしばらくお腹いっぱいです。

m3では、この症例は病理解剖がされているとありました。おいおい、情報がでてくるでしょうが、この記事を書いた記者は自分の文章になんの疑問も持たなかったのでしょうかね?

m3.comの書き込みによりますと,病理解剖されていて,なおかつ
それでも死因ははっきりしなかったようです.
つまり,腹腔内出血などの明らかな出血による死亡ではなかったこ
とがはっきりしているのです.その上でこのような判決が出た事は
異常としか言いようが有りません.
やはり裁判官がまともな思考をしていない証拠ですね.この事実を
あえて否定する根拠はどこにもありません.これでも裁判は公平に
判断していると言えるでしょうか!?

病院は控訴したわけですよね?それに期待しましょう。

>元田舎医さま

貴重なご報告ありがとうございます。

どんなに医師側が正しくても聞き入れず自分の意見しか通さない一部の弁護士の方々の議論(?)の進め方をみるにつけ、一介の医師には歯が立たない世界だと感じておりましたが、先生のお話をきいてある意味納得しました。

医学的正しさとかどっかにいってしまって然るべきだとおもいます。
こういった世界に対応するのは現実的にはどうすればよいのでしょうか。なかなか難しいですね。先生の案(ロースクール奨学金など)も面白いと思います。

>m3.comの書き込みによりますと,病理解剖されていて,なおかつ
>それでも死因ははっきりしなかったようです
だとするとなぜあのような判決がでたのか非常に疑問です。
(医療関係者の方以外のために説明しますとm3.comという医療情報系のサイトが
ありましてそこのなかに医師専用の掲示板があってそこでの書き込みの話です。)

>Level3先生
細かいことですが大腿動静脈や外腸骨動静脈は腹腔内でなく後腹膜腔にあるので
それらを損傷した場合に起きるのは通常の場合後腹膜出血だとおもいます。
もちろん腹腔を穿刺してしまう可能性もあるのですが。

私も昔(学生の頃)、法学部の友人に誘われて傍聴に行った事があります。内容は忘れてしまいましたが、その時は、淡々とビジネスライクに進んでいて、元田舎医さんが見聞きしたような言い争いなどはありませんでした。テレビドラマでしばしば見かける激しいやり取りを期待して行ったのですが...

裁判もそれぞれなのですね。

まぁ、裁判は、特に民事は「法律と言うルールで殴りあう格闘技」と例えられますから、自分の味方には強いプレーヤーをやといたいものです。しかし、高額でしょうね。これはプロスポーツ選手とおなじことか。

剖検を行いマクロの所見で取れる程度の出血もないにもかかわらずカテ誤穿刺による出血性ショックが死因であると本当に裁判官が言ったのだとすれば、明かな誤審であると思います。

今さら青いと言われるかも知れませんが、正直本当に日本の司法はこんなレベルなのかと思いました…

>>Level3先生
>細かいことですが大腿動静脈や外腸骨動静脈は腹腔内でなく後腹
>膜腔にあるのでそれらを損傷した場合に起きるのは通常の場合後
>腹膜出血だとおもいます。
>もちろん腹腔を穿刺してしまう可能性もあるのですが。

ぱんた先生,訂正ありがとうございます.
そうですね.通常ですと腹腔に届くことはあまりないですね.ずっ
と昔に小児で腹腔内出血が生じたことがあるという話を聞いたのを
覚えておりましたので,そう書いてしまいました.通常だと腹部大
動脈瘤と同様に後腹膜腔への出血ですね.どこかで腹膜に孔が開か
ない限りそれが正しいです.

>>元内科医さん
コメントありがとうございます。

「正しさ」と言い切ってしまうと「正義」と同じ程度うさん臭くなってしまうので、「医学的妥当性」ぐらいにしておきますか。

いや、なんか上でヒドいことを書いてしまったようですが、判事さん、弁護士さん、検事さんとも実際に働いているところを目の当たりにして、やっぱりスゴいなぁ、プロだなぁと感心したのは確かです。
例えば弁護士さんについて言うと、依頼人の話を聞いて、または聞き出して長い文章に起こし、それをまとめ、関係各所と連携をとり、膨大な資料を収集して、目を通し、訴訟戦略を立て、法廷戦術を考えて実行する、というのは、私のように頭の回転も遅く、記憶力も乏しく、行動力もなく、弁舌も立たず、凄みもきかない人間にはとてもできるところではありません。
純粋に他業種のプロとして尊敬します。

>こういった世界に対応するのは現実的にはどうすればよいのでしょうか。なかなか難しいですね。

難しいですね。
でも、相手を知らないことには対策が立てようがありません。
幽霊ではなく、現実の世界に住む生身の相手を。
裁判傍聴はまずその確実な一歩と考えます。
半日休みをとってでも一度体験されることを強くお勧めします。
その結果、枯れ尾花であったと安堵するか、やはり歯が立たぬ強大な相手と観念するかは「お楽しみ」ということで。

それから、やはり現状の民事裁判では代理人を含む双方の憎しみばかりを増長し、金銭面が解決したとしても、心情面まで解決することはほとんど有り得ないでしょう。
「和解」という終局も「東南アジアのバザールでの価格交渉」と全く同じで、「妥結」と読み換えた方がよいのではないかと思います。
双方がにこやかに握手を交わすような結末は希でしょう。
仮に当該事件での円満解決が図られたとしても、マクロへは全く介入されませんし、ミクロに於いても再発防止への取り組みの提案・指導などは完全に司法の埒外です。
何度でも繰り返しますが、医療事故を現行の民事・刑事裁判で裁くべきではありません。

>元田舎医さん

 元田舎医さんが傍聴された法廷の様子が目に浮かぶようです。
 裁判の一局面ではありますが、実際に傍聴されるのは裁判というものを理解するために有益だと思います。
 いろいろな法廷がありますけどね。

 掲示板のコメントに対するレスですが、検察庁の事務官は献身的と言っていいほど一生懸命検事を助けてくれます。
 私の立会事務官をみんなそうでした。
 事務官なしに検事の仕事はできません。

>>No.37の医療人1号さん
>>No.41の管理人さん

コメントありがとうございます。

私が一番長く傍聴した民事の裁判が相続ネタでしたから。
民法でも一番ドロドロしてエゲツないところなので仕方ないのでしょう。
おそらく会社同士の訴訟などでは、もっとビジネスライクに事が進むのでしょうね。
残念ながら医事関係訴訟はやっておらず、傍聴できませんでしたが、仮に傍聴できたとしても、10分間でさえ心静かに座ってられなかったと思います。

>掲示板のコメントに対するレスですが、検察庁の事務官は献身的と言っていいほど一生懸命検事を助けてくれます。

うらやましい。
とは言っても私自身はさほど露骨に足を引っ張られ続けた経験はありませんが。
そのあたりは大学病院等をメインの仕事場にしてらっしゃる方々から、そのうち一言二言〜百言二百言いただけるかと思われます(笑

それから私自身に関していうと、今回傍聴を経験して、またさらに臨床復帰する気力が萎えました。
医業が、寝ずにがんばっても結果次第であそこに呼ばれたり連れて行かれたりするような仕事だとすれば、やはり私には当分復帰できそうにありません。

そういえば、いままで話題に出てきませんでしたが(出てきていたらすみません)、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」というのが、始まっています。

http://www.med-model.jp/

私も某学会の臨床評価医としてこれに関わっていますが、基本的には現行法の枠内での活動で、司法に対する異状死体の届け出義務などはそのままです。確か、いままで30件程度がこの事業の対象になっているそうですが、事業目的として謳われている「死因究明及び再発防止を目的として、中立的立場で解剖、分析、検証します」というのが、どの程度役立っているかは、今後の行方をみる必要があります。まだまだ、極く限られた都市で、ようやく立ち上がってところですね。

私も、昔、医療訴訟の法廷にたびたびいきました。(無論病院のお手伝いですので、被告席ですが。)

民事訴訟は、裁判所でバチバチやりあうよりも、証人尋問以外は、準備書面の応酬で一通り済むので、法廷では事実上、次回期日の調整だけやってたようなイメージがあります。

同一時間に何件か訴訟が入るので、期日指定だけだと実質2〜3分で終わり、油断してトイレなんかにいってると自分とこの裁判が終わってたりします。

一応、柵を越えて、裁判官の正面の長いすか、被告席に座るので、さっと緊張したかと思うと、弁護士同士が、裁判官の期日提案に「差し支えます」などとやりあうだけ。
あっけないといえば、あっけないような気がしました。

たまに、裁判によっては裁判官室のラウンドテーブル(円卓)方式なんかあったりして、妙に打ち合わせっぽいこともありました。

証人尋問だけが唯一裁判らしい裁判(TVなどでやってるような)だったような覚えがあります。ただ、原告さんとは、必ず顔をあわせるので、よく罵倒されました。それが嫌で、傍聴席で集合したり、結構被告は大変です。

たまには左に行きたいね、が当時の合言葉でした。

刑事裁判は残念ながら傍聴する機会に恵まれませんでしたが、たまに、こちらの裁判の前に有名人の裁判があったりすると、傍聴席も満員で結構盛り上がっていました。

>医療人1号さん

 サイトの紹介ありがとうございます。
 コメント中では埋もれてしまいそうですので、エントリ本文に追記させていただきました。

 他の紹介サイトも私が気が付けば同様の取扱をしたいと思います。
 コメントが多すぎてフォローしきれないかもしれませんが(^^;

>やはり裁判官がまともな思考をしていない証拠ですね.
>この事実をあえて否定する根拠はどこにもありません.
>これでも裁判は公平に判断していると言えるでしょうか!?

2001年発売の本で、「困った裁判官」があります。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4796620281/ref=sr_11_1/503-2681136-6682349?ie=UTF8

この中にはすごい例が紹介されていますが、バイクのナンバープレートが鉄で出来ているとして判決した例が書かれていました。

自由心証とは言え物理的な事実まで間違った知識となると、これは意味がないです。

モトケンさん、

エントリートップに「モデル事業」のサイトを載せていただいて、光栄です。まだまだ始まったばかりで、正体不明・効果不明のものですが、せっかく立ち上がったところなので興味深くみています。

> バイクのナンバープレートが鉄で出来ているとして判決した例が書かれていました。
> 自由心証とは言え物理的な事実まで間違った知識となると、これは意味がないです。

元の本を読んでいないので見当違いなコメントかもしれませんが、(たとえば)原告側の「ナンバープレートは鉄で出来ている」という主張に対して、被告側が反論しなかったために、この訴訟のなかでは「ナンバープレートは鉄製」ということで、判決に至ったのではないでしょうか。

たしかに常識のない裁判長ではあったかもしれませんが、「ナンバープレートは鉄製」ということで判決をださせた担当弁護士の力量に、脱帽します。

今までの情報からすると、この判決は、おそらく高裁では被告勝訴になると思います。
最悪、最高裁では被告は勝訴するでしょう。
地裁はレベル低いです。仕方ないですが。

日本の医療をよくするためには、
 もう少し必要な医療にはお金をかけること、
 無過失保証制度の導入、
 医師・ナースなどの研鑽・教育・労働条件の改善、
 病院のシステムの改善、
 権力者である政治家・官僚・マスコミなどの医療に対する理解、
 些細な問題の揚げ足取りでなく日本の国をよくしていこうという気概のあるマスコミ(毎日・朝日などの反日新聞社は無理でしょうが)、
 患者と医療関係者がおたがいに尊敬・感謝しあうこと、
などなどが必要と思います。

現状では、一部のクレーマー患者と、一部の問題のある医療関係者のために、多くの国民や医療関係者が被害を受けていると思います。

検索してたらこんなの見つけてびっくり
なかなかできることではないですよこれは

第13回日本アレルギー学会春季臨床大会
会 期:2001年5月10日(木)、11日(金)、12日(土)
会 場:パシフィコ横浜
http://square.umin.ac.jp/allergy-2001s/

一般演題
O-250 テオフィリン中毒で死亡した1喘息剖検例
井上 明 桝沢政広 金子教宏 本島新司
(亀田総合病院総合内科/呼吸器内科)

これはすごい!。係争中の案件を発表するとは..と思ったら、この学会は2001年のものですね。

抄録なども証拠として使われたんでしょうか。

まだ裁判になってなかったというか
裁判になると思って無かったのかも

救命可能性が云々で訴えられるとかは考えたにしても失血死で過失認定とは思いもしなかったでしょう。

抄録集をみてみたいですね。

「○○の時点で○○していれば、救命できた可能性が示唆される」「早期に○○すべきであったと思われる」などと書かれていたら、そこを「過誤があったと認めているだろう!」と突かれそうです。

自分の過去の症例報告などを思い出すと、冷や汗がでてきます。これからは言い回しに十分注意して抄録をまとめなくては....

これから学会発表・学術誌ではこの手の「診断に苦慮した○○の症例」とか「治療に難渋した○○の症例」系のネタは全く見られなくなるでしょうね。

ちなみに別エントリで出した「無菌性髄膜炎様症状後のくも膜下出血」判例に関して、Medlineを漁ってたら、こんなのありました。
Sato Y, Mizoguchi K, Sato Y, Utsunomiya H, Hayashi T, Kaji M.
[A case of peptostreptococcal meningitis associated with subarachnoid hemorrhage and subdural hematoma]
No To Shinkei. 1986 May;38(5):469-73. Japanese.
PMID: 3741708
無菌性髄膜炎ではありませんが似たような経過を辿ってくも膜下出血を起こした症例です。
つまり1986年当時の日本は、このような例を埋もれさせず世界中の医師の目に触れられる形で公表するシステムが機能していたのです。
思わず感慨にふけってしまいます。

ついでにもう一つ蛇足を重ねますと
Kastenbauer S, Pfister HW.
Pneumococcal meningitis in adults: spectrum of complications and prognostic factors in a series of 87 cases.
Brain. 2003 May;126(Pt 5):1015-25.
PMID: 12690042
によれば、87名の肺炎球菌性髄膜炎患者の経過を追ったところ8名(9.2%)が頭蓋内出血(くも膜下出血を含む)を来したそうです。
無菌性髄膜炎ではどうかはわかりません。

→ No.14 「元内科医」先生
→ No.31 「元田舎医」先生
→ No.47 「酔うぞ」先生

 本当にどうしようもない連中が多いですね法律屋って。先生方の嘆きはもっともですがもはや脳の構造が違うと諦めた方がいいのかも知れませんね。およそ知性がないのも驚きだけどそのことを恥じる品性までないとは。人を見下す無能裁判官に暴力団まがいの恐喝弁護士が牛耳る司法は早く滅んで欲しいものです。

>ばんた先生、level3先生

 細かいことにさらにツッコミで申し訳ありませんが・・・。

 確かに外腸骨動静脈は後腹膜腔にありますが、その前壁は薄い後腹膜とごくわずかの脂肪層で腹腔と隔てられているのみですので、太い穿刺針のような固いもので前壁損傷した場合には腹腔内出血の可能性は十分あり得ます。

 立体解剖学的にも鼠径靱帯から大動脈分岐までは側面から見るとU字状の走行ですので、大腿動脈穿刺の場合、損傷する部位は前壁損傷の可能性も結構高いと思います(言葉で説明するのは難しいですね・・・(^ ^;)。

 また、腸骨動脈瘤や腹部大動脈瘤の破裂でも前壁破裂の場合、腹腔内出血するケースは希ではありません。これらの場合、手術まで持っていけないケースは少なくありませんので、麻酔科の先生がご覧になるケースは相対的に少ないと思います。

判決にある「病院の過失」の根拠を見たいものですが
ここまでの考察を踏まえると
この判決は他とは次元が違うトンデモ判決である予感がします

>抄録集をみてみたいですね。

医師の方でm3.comが読める方は,学会発表の抄録がm3.comに掲載
されています.参照して下さい.

>また、腸骨動脈瘤や腹部大動脈瘤の破裂でも前壁破裂の場合、腹腔内
>出血するケースは希ではありません。これらの場合、手術まで持って
>いけないケースは少なくありませんので、麻酔科の先生がご覧になる
>ケースは相対的に少ないと思います。

僻地外科医先生,
これまでに何度か,これで手術の麻酔を担当したことがありますがもう
大変です.こうなると救命率は非常に悪くなりますね.

>level3先生
 学会抄録を見ましたが、これはどこをどう読んでも「カテーテルによる損傷」ではなく、以前から話されているようにDIC→出血傾向ですね(ま、血小板35万というのが否定因子ですけど)。そもそも最初は血液吸着が出来ていることから考えても、損傷はあり得ないです。第一剖検してるのにカテーテルによる損傷と判断した理由が分かりません。また、仮に噂されているように自殺目的だったとしたら、何らかの別の薬剤を飲んでいた可能性もあり得ますね。

 話は変わりますが腹部大動脈瘤の件、腹腔内出血するとほんとに助かりませんね。腹部大動脈瘤破裂時の生存確率は約50%とされていますが、こと腹腔内出血に限れば生存確率10%も無いと思います。私自身、腹腔内出血した腹部大動脈瘤で救命したのは2〜3例しか記憶がありません。私の経験した症例はほとんどがDOAで、わずかに病院到着時血圧40台での搬送例があるぐらいです。

250 テオフィリン中毒で死亡した1喘息剖検例

通常とは異なった経過をたどったテオフィリン中毒による喘息症例を呈示する。
症例 17歳男性。2歳発症のアトピー型喘息。2000年に入ってから不安定になり発作にて何回か入院を繰り返していたが、2000/12/28に退院。2001/1/1早朝嘔 気にて来院。血清テオフィリン濃度が103μg/mlあったため活性炭を内服させるとともに、活性炭による血液吸着を行うことにした。腎臓内科の協力にて吸着を開始したが 、途中で活性炭カラム内が2回凝血したので通常の血液透析をの準備を行っているうちに痙攣が発症した。経鼻的に気管内挿管し呼吸器を装着したが、この時点から採血直後に凝 血する現象が始まり、次いで著明な肉眼的血尿とともに採血部位からの持続出血が始まった。この時点でAPTT 73.2秒と延長、FDP 39.6 μg/mlと上昇が認められたが血小板数は35万/μlあった。その後貧血が進行、大量の輸血を行うも死亡した。剖検では後腹膜腔への出血と肺鬱血が目立つ所見であり大血 管内の血栓は存在しなかった。2000/12/28の血液中のテオフィリンは検出限界以下であった。臨床的にはDICが急激に誘発され肺鬱血が生じたとの解釈は可能である が、その誘因として低酸素血症、活性炭カラムの可能性も考えられた。血栓形成傾向を示す先天性疾患は否定的であった。このような例は稀であると思われるので報告した。

医師以外の方へ

 上の抄録で「後腹膜腔への出血」と書いてありますので、やっぱりカテーテルによる損傷じゃないか・・・と思われる方がいらっしゃるかも知れません。
 一応解説しますと出血傾向時の後腹膜血腫は特別損傷が無くても生じ得ます。ワーファリン(抗凝固薬)内服の患者でなんらカテーテルなどを穿刺していない方でも、後腹膜血腫を生じたという事例はいくつか報告されています。

 では、本症例でも手術で止血すれば良かったのでは、と思われるかも知れませんが、これは不可能です。全身状態が危ういですので手術適応そのものが問題になりますし、出血の原因が「出血傾向」によるものですので、手術操作自体が危険を及ぼします。また、明確な出血点が無くじわじわと出ている(業界用語ではウージングといいます)状態ですので、手術的に止血はほぼ無理です。

ちょうど、「救急医学」を読んでいたらまさにこういう症例が載ってました。
救急画像カンファランスです。
(救急医学30巻9号、1119-1121p)

まず第1のポイントですが,血中テオフィリン濃度が103μg/mLです.
血中テオフィリン濃度が20μg/mL以上でテオフィリン中毒の危険性が
出てきます.この5倍以上の濃度だっということですが,通常の服用を
している限りこんな濃度になることはあり得ません.

従って先に考慮された「意図的な服用」(自殺企図)もしくはなんらか
の原因で誤服用(通常服用している薬剤を間違って大量に飲む可能性は
非常に低いはずですが)は考慮されるべきです.

この状態で血液の凝固能の異常亢進の後,著明な出血傾向が生じていま
す.高濃度のテオフィリンによる副作用と考えることが妥当です.治療
法は,ここで取られたように血液浄化です.治療法の選択にも誤りは有
りません.不幸にして救命できなかったわけですが,医師側のどこに問
題があるのでしょうか? 院長のコメントは当然のものでしょう.
少なくとも手を出さなければ100%死亡したと考えられる症例ですね.

素直に考えて死因は出血性ショックではなくテオフィリン中毒のように思えます。またテオフィリン血中濃度の上昇は非常に不自然です。インターネット上で得られる情報から判断する限り、被告側敗訴の判決には納得のいく説明がつけられません。

『休暇中の医師にも召集をかけ、懸命の治療を行った。(判決に)強い憤りを感じている。このような症例について訴訟を起こされ、裁判所も医療機関に責任があると いう判断をするようでは、日本の医療は荒廃してしまうのではないか。直ちに控訴する。(東京新聞)』 との亀田院長のコメントは心に響くものがあります。

これは単なる私人間の争いである民事訴訟のひとつにすぎない、と法曹関係者は思っておられるかもしれません。しかしそうではないと思います。医療は社会全体の財産である側面を非常に強く持っています。たとえ民事訴訟であっても社会にあたえる影響の大きさを考えれば、きちんと訴訟の内容が公開されることを望みます。

ふと思ったことに、今症例のようにどの施設でも難しいだろうと推定されるような重症に至る以前、施設によっては助かるかもというレベルの症例も当然あると思うのです。自殺者の増加や自殺マニュアルなどといったものの登場を見るにつけ、意図してそうした境界領域をついてくるという故意犯も考えていかなければならない時代なのかも知れません。
患者側の故意や過失による場合、法的に何らかの免責等は考えられないものなのでしょうか。

>>No.67のoregonianさん
>『休暇中の医師にも召集をかけ、懸命の治療を行った。(判決に)強い憤りを感じている。このような症例について訴訟を起こされ、裁判所も医療機関に責任があると いう判断をするようでは、日本の医療は荒廃してしまうのではないか。直ちに控訴する。(東京新聞)』 との亀田院長のコメントは心に響くものがあります。

大病院の院長レベルからこの旨の発言があり、しかも報道されたのはことによると初めてではないでしょうか。
どうもこの院長は常日ごろからこのスタンスで、亀田総合病院は、医療事故の度にトカゲの尻尾切りをやろうとする周辺公立病院から逃げ出してくる医師たちの受け皿になっているようです。

ただ、「日本の医療は荒廃してしまうのではないか」の認識はやはり甘いですね。
もう既に「シャットダウン」のボタンは押されてしまいましたから。
まだ背景にいつものデスクトップの画面が写っていて、ハードディスクが回っているとしても、それは終了の準備の一段階に過ぎません。
もうすぐ画面が特別なものに切り替わり、やがてハードディスクも静止し、漆黒の画面と静寂が訪れます。

次にとるべき方法はただ一つ、「OSを積み替えて」電源を入れ直すこと。

100を超えるテオフィリン濃度ですか..

ひどい頻脈・心不全、肺水腫・肺胞出血、痙攣・意識障害、横紋筋融解・DICなど、十分致死的な病態ですね。気管挿管・人工呼吸、血液浄化とカテーテル留置などの侵襲的治療を行っている最中に出血がおこり、コントロールできないまま(おそらくは)テオフィリンの急性毒性などによる多臓器不全で死亡したのだと思います。今の医療技術もってしても、救命は難しかった重篤な例でしょう。

しかし、この中で原告の主張を認めさせた弁護士はすご腕ですね。まずは「第1ラウンドは患者の勝ち」ということで、患者側弁護士のガッツポーズが目に見えるようです。

ディフェンダントは、選手を入れ替えるか、または強いプレーヤーで補強して、次のトライアルに臨んで欲しいです。

資料。

判例要旨
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=33764&hanreiKbn=03
平成18年09月11日千葉地裁判決 平成15(ワ)202
ぜん息の治療薬を服用した直後におう吐等の症状を訴えて被告の開設する病院を受診し,血液吸着療法,輸血等の治療を受けた患者が,受診から約17時間後に出血性ショックにより死亡したことについて,被告が患者の中心静脈ラインを確保するため右鼠径部にカテーテルを挿入した際に血管を損傷した過失があり,その損傷による出血が出血性ショックの原因であるとして,被告の損害賠償義務が認められた事例

判決全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061106163942.pdf

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裁判所が死因を「出血性ショック」と認定した根拠は、最初の死亡診断書と、剖検を担当した医師の証言です。
大量出血があると、医師がヘマをやってどこかの血管を傷つけたのではないかという先入観が働きますから、
本件を覆すためには、
カテーテルによる損傷がないこと(否認)だけでなく、テオフィリン中毒により腹腔内に大量出血したという因果関係の積極的な反証ができないと、難しそうな気がします。

>YUNYUN様

大量出血があると、医師がヘマをやってどこかの血管を傷つけたのではないかという先入観が働きますから、
 

あんまり恐ろしいことを言わないでください(^ ^;

本件を覆すためには、
カテーテルによる損傷がないこと(否認)だけでなく、テオフィリン中毒により腹腔内に大量出血したという因果関係の積極的な反証ができないと、難しそうな気がします。

 腹腔内ではなく、主たる出血部位は後腹膜腔ですね。なお、膀胱穿刺は剖検で否定されていますし、記述からも出血傾向があったことは間違いないですね。「痙攣を伴う」「DICもしくはそれに類似する血液凝固異常」があったことはあきらかですし、出血傾向があれば特に外傷が無くとも血腫を生じうることはNo.63、64で私が挙げたとおりです。ここから攻めれば何とか行けると思いますが・・・。

YUNYUNさま

資料の提示、ありがとうございました。

判決全文 p18-19
しかしながら,テオフィリン中毒により,出血,血液凝固異常等を生じ,出血性ショックを発症し得るとの医学的知見が存在しないことについては,証人Fも認めるところであり,さらに,Dの血中テオフィリン濃度は,A病院受診時以降,改善傾向にあったことをも考慮すれば,Dの死因となった出血性ショックが,テオフィリン中毒により生じたものであることを積極的にうかがわせる事情はないというべきである。
これに対し,前記認定のとおり,カテーテル挿入時に血管損傷が生じていること,一般的には,カテーテルにより血管が塞がれることにより,大量出血には至らないとしても,本件では,カテーテル挿入時の動脈損傷も疑われる上(複数鑑定の結果),カテーテル挿入以前に2回にわたり血液吸着療法が実施され,その際に,抗凝固剤としてフサン及びヘパリンが投与されたことにより,出血傾向が助長されていた可能性が高いことを考慮すれば,前記動脈及び静脈血管の損傷による出血が,出血性ショックの原因であったと認めるのが相当である。

テオフィリン中毒→横紋筋融解症→,出血,血液凝固異常
を来たすことは、ここやm3などのDiscussionで既に出てきていたと思います。
とりあえず、横紋筋融解症があったことが示せればよいのですが、判決全文には「血尿」という記載があるだけで、CK値やらミオグロビン尿についての記載がありませんね。


エーザイのサイトテオフィリンにより横紋筋融解症が惹起される可能性があることを警告。

厚生労働省編 重篤副作用疾患別対応マニュアル 横紋筋融解症 (平成18年11月)PDF
テオフィリンが横紋筋融解症の原因薬剤として挙げられており、さらに、

p10
障害が強いと、骨格筋より流出したミオグロビンによる腎障害が生じる。不可逆的な腎障害に進展した場合には永続的な血液透析が必要となるばかりではなく、播種性血管内凝固(DIC)、多臓器不全の合併から生命に関わる重篤な事態に至ることがある。

との記載があります。


判決文を読んでみて、臨床的にDICを疑った際にヘパリンを使用するということが、裁判官にはよく理解できなかったのでは?ということと、たとえ緊急時に挿入したカテーテルが血管を貫いていたとしても、これは避けられたとは言い切れない合併症(=過失では無い)ではなかったかと感じました。

そもそも致死量を超えた薬物中毒に対して、救えなかったことを過失と捉えられること(=救えて当然と思われること)が、納得できないところではあります。

>No.71 YUNYUN さん

>大量出血があると、医師がヘマをやってどこかの血管を傷つけたのではないかという先入観が働きます

これも医学知識がない法律家に良くある理論の飛躍です (No.72 僻地外科医さんが突っ込み済みですが)

亀田病院が学会で報告した抄録には、『採血部位からの持続出血が始まった ”O-250 テオフィリン中毒で死亡した1喘息剖検例 ”より』とあります
病理解剖に残されているのは、屍体の中の出血だけであり、膀胱からの出血量や、採血部位、点滴部位からの持続出血の量については計測不能です
大腸の微小な血管腫でさえ時に致命的な大量出血をすることを考えれば、生きている時の出血原因の推定が、剖検で全て解明できるというのは間違っています。
裁判所は、当該裁判の治療行為を信用していないのに、病理解剖であるとか、仮定の救命行為(当該医療行為=過失行為がなく、治療された場合の患者の状態)については神の手を想定しています。

>>カテーテルによる損傷がないこと(否認)だけでなく、テオフィリン中毒により腹腔内に大量出血したという因果関係の積極的な反証ができないと、難しそうな気がします。

カテーテルがあからさまに血管外に突き抜けたということは、造影CT時に造影剤が横溢していないことで、明々白々です (往々にして、このような明らかな、争点になりそうもない事実認定すら、医学知識のない裁判官は勝手に仮説の一つとして片付けてしまう)

”カテーテルによる損傷は、救命手技の上で避けて通れないとする”とどうでしょう
(カテーテル挿入がなければ、救命可能性すらなかったことを前提にしています)
通常、太いカテーテルを挿入する際には、セルジンガー法といって、血管を串刺しにしたあと、ガイドワイヤーを使って血管内腔を確認し、カテーテル内の血液の逆流を確認してカテーテルを進めます。串刺しにしても大丈夫とされているのは、その程度の穴は自然に止血するからであり、これは動脈でも同じ手技です。串刺しにしない方法は、血管を逆に大きく傷つけるリスクもあり推奨されていません (常識中の常識の手技です)
血管だけでなく、当然ながら底面の筋肉にも針を突き刺します。
血液がどうしようもなく固まらずに流れ出る場合、点状の傷からも大量の出血が予測されます(高度の蓋然性があります)

この事例では、
違法性なく (手技の過ちなし)
因果関係なく (医療行為に関係なく死亡)
結果なく (当該治療行為により死亡が早まった理由がない)
非難可能性なく (正当な医療行為、剖検も行っている。詳細を学会報告済み)
不法行為に基づく、損害賠償請求が認容される根拠はありません

それにしても慰謝料2000万円+両親の慰謝料200万円X2が認められるって、そんなにトンデモ医療をしたと裁判所が判定するのは如何なものだろう
医療裁判に限っては慰謝料認定が甘すぎると感じるのは私だけではないだろうと思う
交通事故のように利害関係のない新たな第3者を巻き込んだ事例ではない。正当業務において、救命努力を行い、救命が適わなかった事例であり、故意も重過失もない。

YUNYUNさんが推奨しておられるように、特許裁判や、海難審判などのような中立の審査機関で事実関係の確認をまずしないと、この手の低レベル判決が医療を崩壊させることでしょう

>Med_Lawさん

カテーテルがあからさまに血管外に突き抜けたということは、造影CT時に造影剤が横溢していないことで、明々白々です

複数鑑定の結果「あからさまに血管外に突き抜けた」とされているわけです。もちろん、複数鑑定が妥当なのか、H医師意見書が妥当なのかは裁判官に判断出来ないでしょうし、素人には分からないことでしょう。

言いたいのは中立の審査機関を作ろうとも、鑑定医師の判断によってはMed_Lawさん言われるところの「低レベル判決」が罷り通る可能性があるのではないでしょうか。

しま様 が指摘されたことと一部重なりますが,

この判決は,判決全文p12によると,(裁判所が選任した中立の)3人の鑑定人の複数鑑定(討議方式)の結果(補充鑑定を含む。)を行っているようです。鑑定人は,手続上,当然,カルテ,検査結果,剖検結果その他,この訴訟で提出された証拠を直接検討しているはずです。

 その複数鑑定は,
 1 血管損傷については,カテーテル挿入時に血管損傷が生じたとの結論を導いている。(p13.15行目)本件では,カテーテル挿入時の動脈損傷も疑われる(p19 5行目)としている。

 2 出血性ショックの原因
  (ア) 血管損傷による急性出血があれば,大量の凝固因子,血小板の消費を引き起こし,血液凝固障害に影響を与えるとともに,腹腔内大出血と血尿を生じ,出血性ショック,重症代謝性アシドーシスから,肺出血,多臓器不全へと進展し,死亡した可能性がある。
  (イ) 文献において,テオフィリン中毒により出血傾向又は血液凝固障害を生じた例は報告されていないこと,剖検において認められた出血が,後腹膜腔,腹腔内,膀胱周囲に限局していることからすれば,テオフィリン中毒は,出血の原因及び程度に影響を与えていない。
 としています。

 また,上記でYUNYUN様が指摘されたように,判決が出血性ショックを死因とした根拠は,(p17冒頭から)
 1 A病院において剖検を担当した証人Fが,明確に,テオフィリンの心筋毒性により心筋損傷を生じて,急性左室不全に陥ったとの機序を認めるに足りる所見はなく,死因は出血性ショックであった旨証言していること
 2 Dの出血量は少なくとも2000ccを超えており(証人F,複数鑑定の結果),同人の体重から推定される循環血液量を考慮した場合,出血性ショックを生じ得る程度の出血があったものと考えられること,
 3 死亡診断書作成時点では,出血性ショックとの診断がされていたこと
 とされています。

 判決は,患者側ではない,被告側ないし中立・複数の医師から出ている意見に乗っかっているようですが。。。

 緊急時のカテーテルで血管損傷をしたのを法的な過失というべきかどうかは,法的評価ですから,その判断の当否については裁判所ないし法律家を責めるのもわかりますが。
 医学的にトンデモだ,といいきれるんでしょうか。
 

医療者ですが、YUNYUNさんご紹介の判決文を読むと、想像していたほど「トンデモ判決」ではない、というのが第一印象です。感情で物事をゆがめて見るのは正しくないと思いますので、医療側からある程度の反感が起こるのは覚悟で以下を書きます。「カテーテルによる血管損傷があったのかないのか」に関して考察します。

《血管を損傷している可能性が高いとする医師の鑑定理由》

・CT画像及び腹部単純写真において,カテーテルが右大腿静脈及び下大腿静脈内に認められない
・CT画像において,カテーテルを中心に血腫の形成が認められる
・造影後のCT画像において,カテーテル周囲の血腫内に造影剤の血管外漏出が認められており,出血が疑われる

《血管を損傷している可能性が低いとする医師の鑑定理由》

・パーシャルボリューム効果(で一見血管外に見えるという主張)
・ビームハードニング(で一見血管外に見えるという主張)
・ 剖検時にカテーテルから注入された液体が見つかっていない
・ 血腫は様々な方向に広がるため,カテーテルを中心に血腫が存在することをもって,当該部位から出血があったものと認めることはできない
・カテーテルから造影剤が直接漏出した場合,原液のまま漏出することになり,この場合,ハレーションを引く程の高信号が認められるはずであることからすれば,本件CT画像で見られた造影剤は,カテーテルから直接漏出したものではなく,肺や心臓を通って希釈されたものであると考えるのが整合的である

可能性が低いとする鑑定は、アーチファクトによりカテーテルが血管外に見える可能性がある、という主張であり、鑑定医自身もそのまま見れば「血管外に見える」と証言しているのも同然です。血液は血腫となって剖検時に確認できますが、後腹膜に注入された液体は吸収されたり血液成分と混じっている可能性が高く、剖検で特定できる可能性は低いと考えます。血腫はいろいろな方向に広がるとは言っても、カテーテルの周囲に血腫があれば、カテーテルが原因の可能性が高いとするのは医者の一般的な判断だと思います。最後の「カテーテルから造影剤・・・」の一文は、そもそも造影剤がどのラインから注入されたのか記載がないので正確なことは判りません。造影剤がカテーテル周囲の血腫中に漏出していた事実は、造影剤投与ラインがどこであれ、血管損傷がその近傍にあった可能性が高いことを示すだけです。

これに対して、カテーテルが血管外に存在する可能性が高いとする鑑定は、いずれも根拠として考えやすいものです。実際に画像をみればまた印象は異なるかも知れませんが、判決文を読む限りカテーテルは血管外であった可能性が高いと判断します。剖検で骨盤内に大きな血腫が確認されている様ですから、この部分の出血に関しては、カテーテルが原因の可能性が高いと考えます。

また、判決文は血尿の直接的原因を穿刺とは断定していないことも注目に値します。これまでの議論では、「穿刺を血尿の直接原因とするなどとんでもない」でしたが、この見方は必ずしも正しくなかった様です。やはり判決文は最低でも読まないと(本当は証拠となる画像や細かいデータも見たいです)間違った結論になります。これは情報を伝えるマスコミに大きな責任があります。中学生の社会科見学の様なレポートは勘弁して欲しいです。

なお、この患者さんが亡くなられたのは不幸なことですが、血管損傷とは関係なく亡くなっていたのは皆様ご指摘の通りだと思います。死亡の原因が血管損傷ではない(と考える)以上は、判決は間違いだと思います。しかし、裁判官が医療の素人であることを考慮すると、比較的論理的に考証されているとも考えます。もう少し医療の実態が裁判官に伝わり、かつ争点が医療の本質的な部分に移行すれば(このケースで言えばDICなど)、必ずしも医療側が不満に思う判決ばかりにはならないと感じました。

いろいろなとらえ方はあると思いますが、担当医が頑張りすぎて深追いしてしまったことが、一連の法的トラブルの発端という印象を持っています。

これだけ高い血中濃度のテオフィリンですから、上にかいてあるように横紋筋融解とそれに続くDIC、多臓器不全は避けられないでしょう。テオフィリンの直接の薬理効果として、不整脈や高体温、痙攣もおきうるでしょうから、最初から救命することは非常に難しかったと思います。

担当医は、おそらく百にひとつの望みをかけて、血液浄化に踏み切ったんだと思いますが、血管損傷と言う地雷を踏んでしまったのでしょう。血液浄化がなんの合併症もなく実施されたとしても、生命予後は厳しかったのではないかな〜

ここら辺は、すでに語り尽くされたことでしょうが、自分だったら、(かたどおり)人工呼吸と予防的抗痙攣薬の投与、あとは循環管理までで様子をみたでしょうね。凝固障害のなか、ブラッドアクセスのカテーテルを留置する勇気はありません。(言葉は悪いですが)どうせ死亡する症例と考えると、あまり侵襲的なことは避けるべきだったと思います。わたしだったら、そのまま「おみとり」にしたかもしれません。

正月を潰して治療に携わった担当医の熱心さは認めますが、「李下に冠を整さず、瓜田に履を納れず」という古人の教えを学ぶべきです。

某救急医さんへ

http://www2.eisai.co.jp/essential/teo/qa/qa804.html
このような医薬品情報がありますが、こんどは血液浄化をしなかったことが、問題にされてしますかもしれませんね。さてどうしたらいいのか・・・

>うーん様

 最大のポイントは

 2 出血性ショックの原因
  (ア) 血管損傷による急性出血があれば,大量の凝固因子,血小板の消費を引き起こし,血液凝固障害に影響を与えるとともに,腹腔内大出血と血尿を生じ,出血性ショック,重症代謝性アシドーシスから,肺出血,多臓器不全へと進展し,死亡した可能性がある。
  (イ) 文献において,テオフィリン中毒により出血傾向又は血液凝固障害を生じた例は報告されていないこと,剖検において認められた出血が,後腹膜腔,腹腔内,膀胱周囲に限局していることからすれば,テオフィリン中毒は,出血の原因及び程度に影響を与えていない。

 ここですが、まず、テオフィリン中毒に於いて出血傾向を示した症例がないという事実をもって「テオフィリン中毒では出血傾向を示さない」と判断するのが医学的には間違いです。再三指摘していますように痙攣はそれ自体高ミオグロビン血症からDICを引き起こし得ます。これを示唆する文献は多数有ります。
 また、最初のカテーテル挿入時のカラム閉塞から、出血傾向を引き起こしうる事態であることは医学的には明白です。さらに「剖検に於いて認められた出血が後腹膜腔、腹腔内、膀胱周囲に限局していたこと」ですが、カテーテル穿刺自体で上記の所見を呈することは出血傾向がある場合には十分あり得ます。とはいえ、根本原因となるテオフィリン中毒を何とかしようとすれば、カテーテル穿刺は必須でしょう。助けるためにはカテーテル穿刺は必須だったのです。

 したがって、仮に出血性ショックが死因であるにせよ、主治医のミスと断定するには問題があります。重篤なテオフィリン中毒が根本にあり、対処しきれない事態だったとする判断を否定する理由が私には見あたりません。

 これが私が「医学的にトンデモ」とする理由です。

なお、残念ながらCT所見については原画を見ない限り、医師としては判定できません。しかし仮に血管外穿刺としてもいったい何万人に一人の医師がこの患者を救えるのか・・・。そこに思いを致さない判決を認めるわけにはいかないです。たまたま運が悪い患者に当たったらそれが賠償責任になるのでしょうか?

連投ですみません。
別スレで、いのげさまも述べていますが、血中テオフィリン濃度の急上昇の理由について全く述べられていません。大量服用などの可能性が高いと思うのですが。ネオフィリンは亀田で処方されていたのでしょうか。今となっては遅いでしょうが、残薬の数などから調べられたのではないでしょうか。それとも死因が、出血性ショックと判断されているから、それをテオフィリン中毒死と覆さなければ意味はないことなのでしょうか?

> http://www2.eisai.co.jp/essential/teo/qa/qa804.html

を拝見しました。非常に詳しく載っていますね。血液浄化については、末尾のほうに;

> ■血液浄化法
> 血液浄化法によるテオフィリンクリアランスの増加により、血清濃度は
> 速やかに減少するがこの方法による危険性を、有益性に対し考慮す
> べきである。

要するに「危険性と有益性を天秤にかけよ」と言っています。結局のところ、予後の見通しによって決めるしかないでしょうね。危険性と有益性を患者(もしくは代理人)に説明して、選んでもらいましょうか(Informed Choice)。

患者の個体差に合わせた現場の判断よりも、患者一般の平均値を記載したガイドラインがモノを言うのはおかしいと思うのですが、裁判の時にはその現場にいない素人さん(=裁判官)を説得するには、こうするしかないでしょうね。

「ベストを求めず、ワーストを避ける」は、私の最近の治療スタイルです。

判決の医学的見解の当否については、医師の皆様に議論を続けていただくとして、
No.74 Med_Law さまが提起された法理論の問題。

> 違法性なく (手技の過ちなし)

「過ちなし」が違法性の問題と分類してよいかどうかは疑問ですが、ここでは一応、行為無価値的違法論と善解しておきます。

> 因果関係なく (医療行為に関係なく死亡) 
> 結果なく (当該治療行為により死亡が早まった理由がない)

この箇所は因果関係の有無の問題と、(客観的事実としての)結果の発生とを、混同していると思います。
とりあえず、人が死んだということと、医療行為が介在しているので、不法行為か否かを問うべき「結果」はあります。
因果関係が否定されれば、生じた結果について責任を負わない、というだけです。

次ぎに因果関係の判断方法。
「当該医療行為がなかったとしても、同じ時期かそれ以前に死んだ(行為Pがなくても結果Qが生じた)から、因果関係は否定される」との主張かもしれませんが、
「PなければQなし」の公式は作為形式における判断基準であるのに対して、医療の不法行為は不作為形式(適切な治療をしなかったこと)ですから、この公式は使えません。
不作為形式では、「作為義務Pをなせば、結果Qは生じなかった」場合に、因果関係アリと判断されます。

> 非難可能性なく (正当な医療行為、剖検も行っている。詳細を学会報告済み)

「非難難可能性」とは責任の一要素と解するのが通説です。
私見ですが、この「非難可能性」の理論を医療の場面に適用するならば、
医師として十分注意し出来る限りの治療を行っても、不可避的に何割かの確率で発生してしまう合併症・副作用症状の結果について、医師を責めることはできないというする理屈が成り立つと考えます。
Med_Law さまがおっしゃる「正当な」という表現は、違法性がないことと混同されそうですが、行為無価値的に捉えたものとして、追及は避けます。

しかし、事後の事情である「剖検を行った、学会に報告した」(そのほか、警察へ異状死届けをした等)は、民事責任を軽減する事由になるとは思えません。
これは刑法における「自首」に相当する態度と解されますが、自首減刑の理由は、政策目的で国家の犯罪取り締まりを容易にしようする趣旨であって、被害者との関係で犯した行為の責任が軽くなるためではないからです。
民事法の目標は対等な立場にある個人と個人との利害対立の調整ですから、医療事故の真相が解明され今後の医学の発展に役立ったという公益的要素を大きく評価することはできないと思います。

なお、刑法においては、事後的に生じた事情でも、結果発生を阻止しようとする努力(中止犯、救命活動)は被害者の利益になる行為であり、責任軽減事由と評価します。
これを民事に置き換えると、高次医療機関への転送の努力といったことが考えられるかもしれません(これは私見であり、裁判所がどう評価するかは不明です)。

>No.82 某救急医さん

「ベストを求めず、ワーストを避ける」は、私の最近の治療スタイルです。

「100点ではなく80点を目指す」私も基本的に同じスタイルです。
100点でないと許してくれない藤山裁判長にかかると、二人とも酷い目に遭いそうです。

No.80 僻地外科医 様
 ありがとうございました。おっしゃられる点はよくわかりました。
 ただ,しつこくてすみません。 法律関係者寄りの見方から,僻地外科医様が「ここがポイント」とされる最初の死亡原因についてすこしだけ。
 先にも述べましたように,そこで引用されてる死亡原因は,この事件と関係ない,裁判所が選んだ(したがって,患者側に特に偏っているわけではないだろうし,裁判所はあんまり個人的つてはないだろうから,それぞれ学会か大学が裁判所に推薦してるような人だと思いますが。),3人の鑑定人の討議の結果から裁判所が認定しているようですが。

 この点は,3人の鑑定人がとっても医学的にトンデモだったということなんでしょうか。

 そしてそれを裁判であれば,裁判所や法律家が(第三者機関ならその審判担当者でしょうか。)が,見抜くべきだと。

 そうすると,法律家側,裁判所側,あるいは第三者機関ができた場合のその機関にしても,どんな人に,鑑定や審査をしてもらうべきなんでしょうね。

この点は,3人の鑑定人がとっても医学的にトンデモだったということなんでしょうか。

鑑定人という言葉が適当かどうかは置いておいて、事実認定だけに限れば、トンデモ判決の一番の原因は鑑定人だと思います。鑑定するほどの暇があるということは、現場から必要とされていないんじゃないかと疑っています。

外傷患者のCPK(筋が損傷したときに高値になる逸脱酵素)が上昇しているから心タンポナーデだと言い切っちゃう人もいますから。運動会でちょっと無理をしただけで上昇するのに、外傷なら上昇して当たり前なんですけどね。

そう言う人が学会での地位が高かったりするのが困りものなんですけど。

No.86 bamboo 様

鑑定人という言葉が適当かどうかは置いておいて

 このブログ全体の傾向で,ずっと気になってたんですが,法律上,いわゆる「鑑定人」というのは,今回のように,裁判所が選任した人をいいます。討議方式も,最近行われるようになったもので,「鑑定」であることには間違いありません。
 ところで,患者側「鑑定」,医療者側「鑑定」というのは,本来の「鑑定」「鑑定人」ではないので,法律関係者の中では,「私的意見書」「私的鑑定書」「私的鑑定人」なんて言って区別してます。細かいことですみません。
そう言う人が学会での地位が高かったりするのが困りものなんですけど。

では,非医療者はだれに聞いたらいいんでしょ。


 また,剖検の限界に触れられていた方もあったかと思いますが,本件の判決では,「被告側の剖検医が,『明確に』,死因は出血性ショックであった旨証言している」とされているんですよね
(剖検医は,少なくとも,「剖検上は,○○だけど,剖検には限界があるから,ほかの事情も考えてください」とか,「確度は××くらいです」とは証言しなかったということではないかと。)
(もしかしたら,被告側の弁護士もそういうことを聞かなかったか,弁護士が聞いても剖検医がそういうあいまいさを否定して出血性ショックと断定したということではないでしょうか。ここは完全な推測ですが。)。
 それなのに,剖検の限界を念頭に置けといわれてもどうかと。。。

それと,以下は,別のエントリ(藤山裁判官その2)でのMed Law 様の投稿に対するものですが,こちらのエントリの方がよいかと思って。ここに合わせて書いておきます。

No.168 Med_Law 様
 ところで,判決本文,もう読まれましたか(法律実務上,判決は本文に当たるのがとても大事です)。
 

>No.167 YUNYUN さん

>本件はそもそもテオフィリン中毒死の事案ではないから、テオフィリン中毒患者に対する治療方法の妥当性が問題となる事件では、別の判断がなされるであろう。

『これが裁判官の判断であり、正しい』というのには頷くことはできません
この事例は、テオフィリン中毒死事件なのです
 YUNYUN様の解説のあとに恐縮ですが,判決は,まず,なにが起こったのかという事実を認定して,それに法的評価を加えていくわけです。
 ところが,本件では,判決は,テオフィリン中毒死事件であるとは事実認定していないので(その事実認定に対する批判的検討は,しっかりされるべきと思います。),テオフィリン中毒死に関する治療行為上の過失の有無とか損害賠償請求権の有無とかは,全く判断していません。
 もし,ほかの事件で(あるいは本件の高裁で),そもそもテオフィリン中毒死の事件である,と事実認定された場合,それでも過失あり,損害賠償義務あり,となれば,Med Law様のいわれる議論も立ちうるでしょう。

 本件判決について,現段階で,批評,検討の対象とするのに適切と思われるのは,
  1)テオフィリン中毒死ないし同中毒の影響を否定し,カテーテル挿入時の血管損傷による出血性ショックによる死亡とした事実認定の当否
  2) 1)の認定を前提とした上で,緊急時の?(判決ではあまりその緊急性について触れてないようですね。)カテーテル挿入時の血管損傷を法的な過失とした,主に法的評価の当否
  3) テオフィリン中毒状況にあったこと(これは判決も認めているようですが,その重篤性については触れていないようです。当事者からの主張もなかったのでしょうか。)等を考慮した場合に,損害額について,交通事故と同様にとらえてよいものかという。主に法的評価の問題。
 などかなあと。(ほかにもあるとは思いますが,とりあえず) 

訂正です。

3) テオフィリン中毒状況にあったこと(これは判決も認めているようですが,その重篤性については触れていないようです。)

 というのは不正確でした。
 
病院においてはE医師が診察し,血液検査を行ったところ,同日午前8時ころ,血中テオフィリン濃度が,致死量域を超える103.50μg/mlの高値であることが判明した。(判決p9最後の方)
血液吸着療法を中止した後に行った血液検査では,血中テオフィリン
濃度62.88μg/mlとの結果であった。(判決p10真ん中くらい)

 との事実認定はされていました。
 
 ただ,テオフィリン濃度が下がってきたことを裁判所がどう見ていたのか,同中毒であるために,どの程度の緊急時であったのか等の評価について判示していないので,結局,2)過失の有無についての評価の判断や,3)損害額との関係で,テオフィリン中毒であった点(その緊急度の程度)は,あまり,判決の判断の要素にはなっていないようにも読めますね。

>うーん様

 ただ,テオフィリン濃度が下がってきたことを裁判所がどう見ていたのか,同中毒であるために,どの程度の緊急時であったのか等の評価について判示していないので,結局,2)過失の有無についての評価の判断や,3)損害額との関係で,テオフィリン中毒であった点(その緊急度の程度)は,あまり,判決の判断の要素にはなっていないようにも読めますね。

 おっしゃるとおりで被告側の訴訟戦略の失敗だった可能性はあると思います。

では,非医療者はだれに聞いたらいいんでしょ。

 ここなんですが、2つの異なる鑑定意見があるときにその当否を判断するのが医学に
関する知識のない裁判官であるというのが大きな問題なんだと思います。

 この判決文を読むと複数医師による討議が行われ、それとは別に各種意見書が提出されているようです。では何故、討議を行った医師達と意見書を提出した医師達の間でディスカッションが行われなかったのでしょう。そして、討議を行わないまま意見書を採択した理由は何だったのでしょう?

>No.89 僻地外科医 さん

>おっしゃるとおりで被告側の訴訟戦略の失敗だった可能性はあると思います。

 ほんとはここの部分がもっと検討されなければいけないと思います。

 判決書には当事者の主張として両当事者の主張が整理されているのですが、適切にまとめられていない可能性もありますし、準備書面を読んでみなければわらかない部分もあるかと思います。

 まして判決要旨だけでは全然分かりません。

 トンデモ判決、トンデモ起訴があれば、当然のこととしてトンデモ弁護もありえるわけです。

>No.89 僻地外科医 様

この判決文を読むと複数医師による討議が行われ、それとは別に各種意見書が提出されているようです。では何故、討議を行った医師達と意見書を提出した医師達の間でディスカッションが行われなかったのでしょう。そして、討議を行わないまま意見書を採択した理由は何だったのでしょう?

 それがいいかどうかは別として,おおよそその理由は想像がつきます。

 まず,意見書は,民事訴訟では,署名してあって提出されれば,証拠として採用されます。 また,患者側,医師側それぞれの医師の意見書,または意見を言う医師証人の法廷での「証言」と,裁判所の選んだ鑑定人による「鑑定」とは,手続法的に,一応,別個の証拠なので,それをぐたまぜにして,みんな一緒に議論して,という形が取れるか,という法律上の問題点があります。
 「鑑定」は鑑定人の意見,なので,鑑定人と一緒に議論したとしても,意見書を書いた医師の話した部分は,「鑑定の結果」と見るのは難しいでしょうから,証拠にできないことになるのかなあ。(手続法を改正しちゃえばできるかな?)
 もし,それらしいことを現行の制度でやるには,複数鑑定より前に,意見書を出しておいてもらって,鑑定人の人たちには,それを踏まえて検討,議論してもらい,意見書を出した医師は,その議論を傍聴し,直接質問・議論しないかわりに,自分側の弁護士に,疑問点,反論,その論拠を伝えて,質問の形でぶつけて鑑定医に再検討を迫る,または,鑑定医のいうことが当てにならないこと,あるいは不正確であることを裁判官に感じさせる(弁護士さんは意見医の人の操り人形になってみる)というまだるっこしい手続になるかもしれませんが,いろんな意味で,そんなことできるのかなあと。

  ところで,最近,医療集中部がやってる裁判では,裁判所が鑑定人を選任して行う,いわゆる「鑑定」は,(討議式であるか否かを問わず,)ほぼ,訴訟手続の最後の方で行っているようです。(鑑定終わったら,当事者双方最後のまとめの主張をして,手続終わり。あとは判決。)
 そうする合理的理由は色々あるみたいですがあんまり長くなるのもあれなんで割愛します。
 裁判所は,患者側からも医師側からも,できるだけ証拠を出させて,争点について共通認識を持って,それから証人の話を聞いて,それでも,解決できない問題について,最後に鑑定でけりをつける,という方向になっているらしい。

  で,本件の具体的事情はわかりませんので,あくまで推測ですが,本件判決の書きぶりから考えられるパターンとしてはこういうこともありえるのではないかと。
 1 鑑定前に,各当事者側の医学面に関する意見書(原告側G医師)や証言(F医師など)はある程度出揃っていた。
 2 複数鑑定をやった。 被告に不利だった。
 3 H意見書(複数鑑定への批判が書いてある)とJ意見書(番号からしてHの次に提出されている)は,おそらく,複数鑑定のあとで,その不利な結果を受けて,被告側から追加で出した(後出しじゃんけん?)。
 4 ところが,後出しにしては,両者は,複数鑑定をひっくり返すだけの具体性(H意見書では判決p15,J意見書では判決p17参照)がないとか,J意見書は,被告側の剖検医の見解と矛盾する,とか,あんまり説得力があるようには写らなかったんじゃあないでしょうか。

 (4’ さらに,こっからは,完全な推測ですが,本件の複数鑑定は補充鑑定もしているので,もしかしたら,H意見書J意見書を踏まえて3人の鑑定人に再度検討してもらい,補充鑑定としている可能性もあるのかもしれません。)
 

>うーん様

(引用略)
そう、そこなんですよ。医者の間ですら意見が分かれるような部分をどうして裁判官が「こっちが正しい、こっちが説得力がある」と判断できるのかな・・・と。

 あと、訴訟戦略の面で
 仮にこの患者にカテーテルを入れないで助けることが可能だったのか、
 カテーテルがうまく入っていて助けることが可能だったのか、可能だったとしてどのぐらいの確率か

そう言う点をもっと議論すべきだったのでは・・と思います。そう言う視点が一切抜けているというのは被告側の訴訟戦略に問題有りと私も感じる部分です。

>No.92 僻地外科医 さん

>そう、そこなんですよ。医者の間ですら意見が分かれるような部分をどうして裁判官が「こっちが正しい、こっちが説得力がある」と判断できるのかな・・・と。

これについては、人は、自分自身で(医療を)やるより、その(医療の)評価の方がうまくできるとか、経験則的に他の手段(専門家による判断)では、駄目だ等の理屈もあるようですが、いずれも、しっくりくるものではありません。

 むしろ、私自身としては、素人(日本の場合は裁判官ですが)がこの種の判断ができるというのは、欧米流の近代国家の司法においては、いわば、数学の公理と同じように論証抜きの前提ではないかと考えるのが一番すっきりするのではないかと思います。 

近代国家の司法というのは、基本的には、専門家不信の構造だと思います。特に最右翼(左翼)のアメリカの場合は、裁判官に対しても不信があり(植民地時代の宗主国の裁判官の経験からと書いた本を読んだ記憶があります)、事実認定については、陪審員という素人が判断することになっています。

 日本は、裁判官が判断するキャリアシステムという大陸法(フランス、ドイツ等)の流れですが、大陸法の国々でも、参審制など、素人が参加するシステムに変えてきており、日本の裁判員制もこの流れの中でとらえることができます。

 法律的に言えば、憲法を改正すれば、専門家による判断を最終判断とすることも可能です。また、むしろ、欧米も軍法会議については例外としていますが、ただ、その他の分野を、司法の範囲外とすることは、外交的には、極端に言えば、欧米から見れば日本が北朝鮮と同じ制度にするのと同じようなイメージに見られるのかもしれません。

 むろん、この点だけで駄目になったわけではありませんが、数年前、経団連を含めた政財界より、知財事件について、司法改革の要求があり、その中に、技術的知識を有した知財裁判官による知財裁判所との案もありましたが、結局、知財高裁という形になりました。知財高裁というのは、管轄の点だけが普通の裁判所とちがうだけで、そこの裁判官は、2〜3年ごとに替わる普通の裁判官ですので、技術的知識を有した知財裁判官は全くできませんでした。

 

>No.93 L.A.LAW さんのコメント
 深く同意します。

>No.92 僻地外科医 さん

>そう、そこなんですよ。医者の間ですら意見が分かれるような部分をどうして裁判官が「こっちが正しい、こっちが説得力がある」と判断できるのかな・・・と。

以前どなたかもおっしゃっていたかと思いますが,「判断できるか」,ではなくて,否が応でも判断せざるを得ない立場にあるのではないでしょうか。
裁判所は,持ち込まれた事件には,何らかの解決,判断を与えないといけないことになっているので。
 それと,『医者の間ですら意見が分かれるような部分』についての判断権者の判断能力の問題は,たとえ,医師が判断賢者になっても,理論上出てきますよね。確率的には,素人より判断能力が高まるのかもしれませんが。本件判決の複数鑑定人の人,HJ意見書を書いた人,剖検医,それぞれがたまたま判断権者の立場にあったケースを考えてみると,わかるかと。
 さらに,事実の判断のレベルをどの程度にするのかという問題もあります。どの程度の確からしさがあれば,ある事実があったと認めていいのか(常に全ての証拠の一致が必要か。どの程度確からしければいいか)。一人でもややありえそうな異論をいう人がいるならば,その事実は認められないというくらい厳しいレベルか,ある見解と,それに相反する見解とを比べて,前者の方が優勢なら,その見解に基づく事実が認められるというくらい緩いレベルか。その中間なら,どのあたりにするか。
 医師の方は,科学者なので,そのあたりかなり厳密なのでしょうが,患者と医師の紛争についての民事訴訟や第三者機関審判が,当事者間のルール化されたガチンコだとすれば,そこまで,厳密にするべきなのかどうか。
 
  なお,私は,この判決から,教訓を得るとすれば,
   1 自分のストーリーと異なっていても,裁判所に認められる可能性のある相手方のストーリー(本件ではカテーテルによる血管損傷による出血性ショックでの死亡)に乗っかった反論もしっかり出しておく。(そうであるとしても云々)
   2 ある手技の不良が過失といえるのかという背景として,どれほどの緊急状況だったのかとか,一般にどれくらいあることなのか,とかの背景事情についても,しっかり主張し,立証しておく。
   3 当事者は,出せる医学的意見は,どんどん早めに出す。
   4 当事者が出す意見書(特に鑑定人の鑑定書に反論するようなもの)のたぐいは,具体的根拠,一般的な議論にとどまらず,具体的な当該事例についての妥当性を記した,単なる鑑定書の論難に終わるのではなものがよい。その裏付け等になる症例報告,論文,その他もできるだけ提出して補足しておく。
   5 そういう訴訟時の対応次第で,結論が変わるかもしれないことを心に留めておく
   6 またトンデモ判決だっ!!と,自分に精神的ダメージを与えるのは,せめて,判決本文を読んでからにする。(本件のトンデモ度は,新聞時より判決の方が低いでしょ?)
  くらいでしょうか。
 
  結局,民事訴訟は,当事者間の「ルールに則ったガチンコ」的な要素は否定できないんじゃないかなあと思います。

>L.A.LAW様
>うーん様

 現在の裁判制度についておっしゃりたいことはよく分かりますし、今までの議論の流れ、法曹の皆さんの考え方も分かります。

 でも、その上でこの判決はまずいです。

 たとえば同じ事例がうちの病院であったらどうだったか。これは断言できますが100%救命できません。うちの病院で出来ることはせいぜいルートを確保し、挿管下に胃洗浄をして、抗痙攣剤を投与し高次の救命病院へ転送するところまでです。いや、もしかしたらテオフィリン中毒であることすら分からなかった可能性は十分あります。

 当然ブラッドアクセス(透析、吸着療法のために特殊なカテーテルを入れること)は遅れ、それがために高次救急病院へ着いても治療の遅れ(当院から3次救急施設まで救急車で最低40分以上かかります)から死を招いたでしょう。

 優秀なスタッフが数多くいる亀田総合病院だったからこそ「こうすれば、あるいはこうしなければ助かったかも知れない」という議論が出来るんです。

 この判決を許容することは確実に医療の崩壊を招きます。
 なぜならば、標準的医療のレベルを明らかに高く置きすぎているからです。医療レベルが高いことを根拠に「亀田総合病院ならばこれは救命出来たはずだ」では高度医療の担い手が手を引きますし、逆に亀田総合病院のレベルを標準とされれば私達のような中小病院のスタッフが救命救急から手を引きます。どちらに転んでもこの判決は医療崩壊への引き金を引いているんですよ。

 そう言う意味で私はこの判決は被告側弁護士の大きな戦略ミスだと思いますし(つまり、純粋に医学的な側面に的を絞りすぎたこと)、判決を出す方も医療の実情に関して不勉強すぎます。

裁判では,当該病院の診療レベルというのを比較的きちんとみて判断していることが多いように思われます

多いというだけで,時に,トンデモナイ高レベルの要求があります.

法曹の方々は,『きちんと,個別具体的に判断しているのだから間違いない』と胸を張りますが,亀田事件以降は,周囲の一般病院は怯えて,重症患者の高次病院への転送ばかり考えていることでしょう.高次病院である亀田病院や大学病院には逃げ場所はありません.

もっと恐ろしいことに,一般の人は,当該病院のレベルに関係なく,高次病院の医療レベルを期待し,権利を行使されるだろうということです
残念ながら,その期待をいつでもどこでもだれにでも満足させる状況ではありません.要求されたら身の危険を感じます

高次病院に期待される医療レベルにしても,その医療レベルに合った診療報酬はありません.

奈良救急事件(交通外傷後の心タンポナーデ死亡事件)が教えてくれるところは,救急指定病院として補助をもらえば,高度の救急医療を実践しない限り有責であるということです.
ほんの僅かな代償で大きな負担を強いられるのであれば,早々に救急指定返上病院が押し寄せてきても不思議ではありません.

医療崩壊は,医療側が望んだ結末ではありません
法曹が望んだ結果でもないでしょう
お互いに止める力はあるのでしょうか?

> 医療崩壊は,医療側が望んだ結末ではありません
> 法曹が望んだ結果でもないでしょう
まさにその通りだと思います。私もかねがね言っているように日本国民の問題としてとらえるべきではないかと思っています。

>Med_Lawさん

もっと恐ろしいことに,一般の人は,当該病院のレベルに関係なく,高次病院の医療レベルを期待し,権利を行使されるだろうということです

一般の人にとっては、当該病院のレベルをどのようにして知ることができるのか、分からないのが現状だと思います。救急で言えば「一次よりは二次、二次よりは三次」と思うでしょうし、○○専門医と名が付けばその病気に関してのエキスパートだと認識するでしょう。

ですが、肩書きが実情を表しているわけではないようなので、患者向けのわかりやすい病院レベルを解説してくれる本があれば非常に重宝するように思いますが、これは無理な相談なのでしょうね。

モトケンさんのお言葉に甘えて、別のエントリーにて手短に投稿します。

皆さん、判決文を読んで、問題となっているカテーテルは血液吸着用のカテーテルではない可能性があることを検討しましたか?治療の時系列をたどればそう考えることもできます。

とすると、問題のカテーテル挿入は患者の治療には必須でない可能性が出てきます。見方も少し変わるんじゃないでしょうか。

>元ライダー様

皆さん、判決文を読んで、問題となっているカテーテルは血液吸着用のカテーテルではない可能性があることを検討しましたか?治療の時系列をたどればそう考えることもできます。

 一応、判決文の内容から頭には浮かびました。
ただ、
1.とすると、挿入したのは通常のCVカテーテル
2.この先吸着などまだ必要な可能性があるときにもっともアクセスしやすいところからCVCを入れる?
3.14G・10cm足らずのカニューラで後腹膜損傷?(カテで損傷はあり得ないので)
 というか、カニューラでの損傷ならこれは手技自体に伴う必須の合併症(?)では?(セルディンガー法を否定されたらカテーテル挿入できません・・・)

 以上、あまりに前提条件を欠きすぎるので頭の中から消し去りました。

追加

 もし、CVカテーテルが後腹膜側に挿入されたとしたら、CTでこれは血管内なのかどうか
迷うことはなかったでしょう。必ずとぐろを巻きますから。
 また、逆に腹腔内側に挿入されたとしたら、出血の部位がおかしいです。明らかに後腹膜>腹腔だったとのことですから。

 故にCVカテ説は否定できると思います。

>No.101 僻地外科医 さんへのコメント

私も見逃していましたが、カルテ記載によれば問題のカテーテルはWルーメンのようです(判決文より)。

それでも、CPC流にプロスペクティブに検討すれば、すでに血液吸着用のWルーメンは留置されていたのに、この時点で新たなWルーメンを入れた意味は?という意見もありかと思います。
したがって、「必須の治療法における合併症」という考え方は検討が必要かと思います。

もちろんプロスペクティブに考えれば、おっしゃるように「この先吸着などまだ必要な可能性があるときにもっともアクセスしやすいところからCVCを入れる?」という思考過程はリーズナブルですから、新たなWルーメンを入れたこと自体が過失とされてはたまりません。

>元ライダー様

 判決文のWルーメンの記載とは16ページ目の

研修医として本件診療に関与していたI医師が剖検時の記録(乙A1・8頁)において「小骨盤に大きな出血塊があり、右鼠径部からのWルーメン挿入時、血管を損傷したことによる出血であろう」と記載していること

の部分でしょうか?

 もしこの部分だとすれば、これは最初に挿入した吸着用Wルーメンのことか、あとから挿入したカテーテルのことか、分からないと思います。最初の吸着用カテーテルの挿入時にも当然セルディンガー法で行うはずですから、この時に血腫を生じた可能性は十分あり得ます。

 次にあとから入れたカテーテルが通常のCVカテーテルだとすれば(ダブルルーメンだとしても)No.101で論じたようにとぐろを巻くか腹腔内出血を中心とするため、理屈に合いません。もし、最初に入れた吸着用カテが最初から血管外にあり、これに沿ってあとから入れたカテが進んだとすればとぐろを巻かない可能性はありますが、この場合「最初27分間血液吸着が可能であった」事実と矛盾します。

 また、あとから入れたカテーテルが血液吸着用のダブルルーメンであった可能性もあります。最初に入れたカテーテルがカラム凝固などで使用できなくなり、さらにカテーテル自体も閉塞してしまっていれば、新たなカテーテルを挿入しなければなりません。
 ただ、この場合理屈に合わないのは前にカテーテルが入っていた同側からもう1本のカテーテルを挿入するという選択は通常行われないこと(大腿静脈から透析用カテーテル2本入れるのは不可能に近い困難。また、出血傾向があるときに前のカテーテルを抜いて新たなカテを入れると言うことは考えにくい)です。

 以上の理論からしてどのカテーテルも血管損傷を来していなかった可能性が最も高いと思います。
 これがもっとも合理的な推測だと思われますがいかがでしょう?

さらに合理的推測について追加

 後腹膜血腫を来した理由ですが、最初のカテーテルを挿入したあと、約2時間後に全身性間代性痙攣を来しています。この時に(最初の)吸着用カテーテルの先端部が下大静脈もしくは右外・総腸骨静脈に微細な損傷を来した可能性は十分あり得ます。
 出血傾向がある場合には微細な損傷(ごく軽度の打撲など)から後腹膜血腫を来す可能性があることはいくつかの文献報告もあります(http://www.yabelab.net/blog/medical/2006/09/12-005947.php#c11493)。
 私はこの事例の後腹膜血腫の成因は上のものによると推測しています。

 次にもし2回目に入れたカテーテルが血腫の成因とされ、しかもそれが通常のCVカテーテルだとすれば、これは鑑定人の見識を疑います。後腹膜腔は腹腔と異なり、フリースペースではなく疎性結合織によって後面の筋膜(腸腰筋など)とゆるく結合しています。したがって透析用カテーテルのような固いものであればともかく、通常のCVカテーテルのような柔らかいカテーテルがその中をまっすぐ進むことはあり得ません。パーシャルボリューム効果とか言い出す前に「お前ら、カテ入れたこと無いのか?」と問い正したくなります。

 以上、一般・法曹の方もご覧になっていますのでやや蛇足的に追加しました。

>僻地外科医さん

最初に入れたWルーメンカテがどこから挿入されたのかは、判決文を読んでも判りません。仰る通り、右大腿静脈から2本カテを同時に挿入することはしないと思いますので、最初のカテは上肢から挿入されていた可能性があります。

>ヤブ医者先生

>最初に入れたWルーメンカテがどこから挿入されたのかは、判決文を読んでも判りません。

 たしかに・・・。でも、痙攣来すような患者の内頸や鎖骨下を穿刺するかな・・・

>僻地外科医さん

喘息患者さんに鎖骨下は穿刺しないでしょう。また最初は十分に意識があった筈なので、内頚も避けたいところです。ガイドワイヤーさえ進めば最も手っ取り早いのは肘静脈です。なので、可能なら肘静脈から入れたと思います。

>ヤブ医者先生

 単純なCVカテならばともかく、ブラッドアクセス用のカテーテルを肘静脈から入れることはあり得ないと思います。シャントでも置いてあれば別ですが尺側皮静脈でも太さが全然足りません。もし尺側皮静脈から最初のブラッドアクセスルートを取ったとすれば、正直言ってそれ自体医療訴訟の対象になりうると思います。

 やはり最初のブラッドアクセスは常識的には右大腿静脈でしょう。で、2回目のカテは内頸・鎖骨下からは穿刺しがたい、さりとて左大腿静脈は難しい・・・ということで、やむを得ず右大腿静脈から2本差しという流れならばしっくり来ます。

 ただ、この場合、ブラッドアクセス用カテというのは考えにくいですね。
 だとすれば、元ライダー様のおっしゃるように通常のCVカテの可能性が高く、とすれば
どのカテも血管外挿入していなかったのではないか・・・というのがもっとも常識的な回答じゃないかと思います。

追加

 というか、ブラッドアクセスカテーテルを肘静脈から・・と、言い出すこと自体、失礼ですがこのカテーテルがどういうものかご存じないと思います。

 成人用のブラッドアクセスカテーテルの経は11〜12Fr(4mm)です。肘静脈の径はせいぜい3〜4ミリですので仮に挿入できたとしても吸入孔に血管壁が吸い付いてしまうため、回路が回りません(希ですが、大腿静脈でもこのために回路が回らない人がいます)。

 もし肘静脈からWルーメンのブラッドアクセスを入れての血液吸着を本当にしたとすれば、私は亀田総合病院の医師は訴えられて当然、敗訴して当然だと思います。常識的に出来る訳のないことを無理矢理やったわけですから。

 ブラッドアクセス用カテーテルの挿入部位は左右の大腿静脈、鎖骨下静脈、内頸静脈の6カ所以外にはあり得ません。

> 僻地外科医さん
スミマセン。カテが11〜12Fもあるとは知りませんでした。これなら肘部からは不可能ですね。
ただ、私は外径6F程度だと聞いていたもので・・・6Fだとシース(外径は7F以上)でも平気で上腕動脈から入れますし、最近は橈骨動脈でも普通に入れてます。なので、尺側皮静脈に8F程度のシースなら簡単に入りますからね。

追加です。

「肘静脈の径はせいぜい3〜4ミリですので仮に挿入できたとしても吸入孔に血管壁が吸い付いてしまうため」
ならばブラッドアクセスのカテは短いのですね?(SVCまで届くものと考えてました。)
だとすれば、単純X線写真で下大静脈まで届いてないことが問題となったWルーメンは通常のCVカテだと思います。

>ならばブラッドアクセスのカテは短いのですね?(SVCまで届くものと
>考えてました。)
>だとすれば、単純X線写真で下大静脈まで届いてないことが問題となっ
>たWルーメンは通常のCVカテだと思います。

長さは20cmくらいです.従って先端が下大静脈に届くかどうか程度です.
透析用のブラッドアクセスカテテールは大腿静脈から挿入するか,もしくは右内頚静脈から挿入することになると思います.

さらに追加です。
 こうした場合に動脈を穿刺することはないのでしょうか?上腕動脈に18Gのサーフローを入れれば十分に採血できます。リターンも18Gかせいぜい16Gで十分ではないかと。少なくとも11〜12Fを鎖骨下に刺すよりははるかに安全だと思います。

>Level3 さん
ありがとうございます。20cmだと微妙ですね。

>ヤブ医者様

 こうした場合に動脈を穿刺することはないのでしょうか?上腕動脈に18Gのサーフローを入れれば十分に採血できます。リターンも18Gかせいぜい16Gで十分ではないかと。少なくとも11〜12Fを鎖骨下に刺すよりははるかに安全だと思います。>

 重度の心不全のある透析患者などでシャントを作りがたい場合、あるいはもうシャントを作るホストの血管が全然無いような場合に鎖骨下静脈に延長用の人工血管を繋いでAtoAのブラッドアクセルルートを作ることは希にあります。

 が、今回のような緊急ケースで行うことではありませんし、特別大腿静脈を刺すのに不都合な事情があったとも思われませんので、大腿静脈から入れたと考えるのが妥当だと思います。特殊なケースでなければ第一選択として動脈穿刺をすることはありません。

 何故かと言いますと、動脈に太いカテーテルを挿入することが後のQOLに非常に具合が悪いことはお分かりだと思いますし、かといって18Gサーフロのような細いものだとよほど短くない限り流体抵抗が強く回路が回りません。短いサーフロでは仮に穿刺できたとしても固定性が悪く、途中で抜けたり抜けかかったりした場合に重大なトラブルを起こします。

 なお、鎖骨下静脈をブラッドアクセスルートの一つに挙げましたが、ここを刺すことはそう多くはありません(私もやったことは数回程度です)。通常はlevel3様のおっしゃるように大腿静脈か内頸静脈です。しかも接続部が結構大きいものですので意識のある患者さんでは内頸静脈から刺すことも希です。

 ブラッドアクセスカテーテルはは20〜30cmで、これを超えて作ることはありません。
ご指摘のような肘静脈から挿入してSVCに届くようなカテーテル(60〜70cmぐらい?)を作ると(しかも太さ7Fぐらいのものだと)流体抵抗が強く、やはり回路が回りません。

大腿からブラッドアクセスカテを挿入した場合、側孔が完全に下大静脈に入るぎりぎりの長さが理想とされます。カテーテルは長ければ長いほど流体抵抗が強くなりますので、短い方が良いですが、かといって側孔が総腸骨静脈内にあると血管壁を吸着して回路抵抗が上がることがあります。

追加です

同じブラッドアクセスでもPCPS(経皮的心肺補助装置:非医療者のための解説です、蛇足ながら))の場合は動脈からもアクセスします。これは透析や吸着とはレベルの違う流量が必要になるからです。この場合動脈には15Fr程度、静脈には19Fr程度のものを刺します。ダブルルーメンでは追っつきません。

カルテ等はみていないのですが、最初に通常のCV用の細いカテを挿入、その後同ルートから太いカテに入れ替えをしたのだと思っていました。救急の現場でいきなり透析用の太いカテから血管確保を始めるというのは自分は少なくとも経験がありませんし…

>老人の医者様

 いや、経過からして初診時には内頸や鎖骨下から別のCVを取っていた可能性はあると思いますよ。

Dは、1月1日午前1時ころ、嘔吐して悪心等の症状を訴え、同日午前4時30分ころ、A病院を受診した。A病院においてはE医師が診察し、血液検査を行ったところ、同日午前8時ころ、血中テオフィリン濃度が致死領域を超える103.50μ/dlの高値であることが判明した。被告は胃洗浄、活性炭投与を実施した上で、同日午前2時23分ころから、抗凝固剤としてフサンを使用して(投与量は、開始時に50mgをワンショット投与、その後、1時間あたり50mgを持続注入)、活性炭による血液吸着療法を開始したが、同日午前2時50分ころ、回路内で血液が凝固したため、これを中止した。

 ということで救外で大腿からWルーメンを入れたのではなく、病棟で入れたんだと思います。2回目の大腿からのCVカテーテル挿入というのはそれからさらに約2時間後のことです。

げげ・・・、ふと読み返してとんでもない間違いに気づきました

No.115

重度の心不全のある透析患者などでシャントを作りがたい場合、あるいはもうシャントを作るホストの血管が全然無いような場合に鎖骨下静脈に延長用の人工血管を繋いでAtoAのブラッドアクセルルートを作ることは希にあります。

鎖骨下静脈×
鎖骨下動脈○

です。静脈じゃ回路まわらんですね。

>僻地外科医さん

 詳しい解説有り難うございます。今回の訴訟に拘る限りはカテーテルに拘らざるを得ないわけですが、一方において議論するほど虚しくなります。やはり皆様が繰り返し述べられている通り、出血傾向がその前にあったことが本質ですよね。

 ここから先は書くをためらってきたことですが、どうもモヤモヤするので書いてしまいます。批判・反論大歓迎です。

「DICの機序」についてですが、これに関してはこのブログや他の板で提唱された

テオフィリン中毒症→横紋筋融解症→DIC・・・A

もう一つは原告側が主張したかったと思われる論理

血液浄化回路が2度凝固→大量凝固因子消費→DIC・・・B

AとBのどちらが妥当かはにわかには判断できませんが、横紋筋融解症が生じていた客観的証拠はない様です。一方、体外循環回路が短時間に2度も凝固したのは認定された事実です。そして、専門的文献だけでなくネットにも以下の記載があります。

抗凝固剤

 活性炭は,メシル酸ナファモスタット(フサン)や低分子ヘパリンを吸着してしまうので,ヘパリンを用いる。イオン交換樹脂はヘパリンを吸着してしまうので,フサンを用いる。ヘパリンは1000〜2000単位/hr,フサンは40〜60mg/hrの速度で使用する。

他のサイトでも同様の記載がみられます。本件において吸着剤に活性炭を使用し、抗凝固剤にフサンを使用したのは事実認定されています。

後腹膜出血の原因をカテーテルによる血管損傷とする主張を覆すにはDICの客観的証拠を出すのが有効と思いますが、亀田側が腎組織など病理ミクロ所見を証拠としてこの点に言及した形跡は乏しいので、むしろ意図的にDICを争点の中心から外したのではないかと想像します。

活性炭療法においては,フサンはほぼ100パーセント活性炭に吸着されるため,抗凝固剤として効果がないことを示すにとどまり,これにより何らか の悪影響を生じるとの趣旨を含むものとは解されないから,フサンの使用が 禁忌であったとまでは認めることができない。また,ヘパリンの使用について,G意見書は,同文献上,血漿交換療法開始時におけるヘパリンの投与量 が2000ないし3000単位とされていることを指摘するものの,同文献 には,「患者の血液凝固系の状態に応じて投与方法は医師の指示に従って決 定して下さい。」との付記がされていることからすれば,上記投与量は絶対 的基準ではないものと解される。したがって,患者の出血傾向,出血性病変 の有無が不明であったことを理由に,可能な限り少量から使用したことはや むを得なかったとした複数鑑定の結論を覆すものではないというべきである から,ヘパリンの使用量が不適切であったと認めることもできない。よって, 被告に,抗凝固剤の使用方法を誤った過失があったと認めることはできない。 (4) したがって,この点についての原告らの主張は,採用することができ ない。

という判決文からは、裁判官は「とにかく出血は恐ろしいものだ」は頭にあっても、「これにより何らかの悪影響を生じるとの趣旨を含むものとは解されない」という書きぶりからは「凝固因子が大量消費されると後でその恐ろしい出血が起こる」ことは理解できていない、原告側には「禁忌」という言葉を用いた失敗がある、との印象を受けます。この部分に限れば、弁護側に軍配が上がったわけですから「訴訟戦略の誤り」はなく、むしろ優秀な弁護であったのではないかと個人的には思います。ただ、裁判官の「出血こそ死因」の拘りが最終的には「カテーテルによる血管損傷が死因」になったのだとも思います。その観点からは虚しい判決です。

テオロング大量服薬
→テオフィリン中毒
→DIC
→出血

どの段階を争点の中心に据えるかでこの件は全く違う判決になると思います。民事訴訟は所詮喧嘩です。自分に都合の悪いことは言わない、相手の都合の悪いことだけをことさら追求する、詭弁でもなんでも兎に角裁判官を納得させればよい、場合によってはFFFさんが他で言われた様にウソまでつく、これでは「真実が知りたい」とか「今後の教訓」とかにはならないでしょうね。

この件を社会的にみれば、

「自殺願望が本懐を遂げた」

しかしその結末は家族には到底受け入れられるものではないので、医療者が元旦から必死になってその結末を覆そうとしたけれど、それがかなわなかったために家族から訴えられた、ということに思えます。

自殺女性を救って殉職した警察官に賛辞が止まらないのは当然として、飛び込み自殺寸前の人を体当たりや引き倒しで阻止したら転倒→頭蓋内出血→死亡になった場合、業務上過失致死や「過剰救護」で責任を問われるのかしら?ましてや既に薬を大量摂取している場合、もう片足は棺桶に突っ込んでいる場合も多いと思う。三途の川から引き戻せないと責任を問われるというのは、たとえそれが間違いのない医療なら可能なことであったとしても、納得できる筈がないよ。

>ヤブ医者様

 まずは本質論として(それが事実であったかどうかはともかく)

自殺女性を救って殉職した警察官に賛辞が止まらないのは当然として、飛び込み自殺寸前の人を体当たりや引き倒しで阻止したら転倒→頭蓋内出血→死亡になった場合、業務上過失致死や「過剰救護」で責任を問われるのかしら?ましてや既に薬を大量摂取している場合、もう片足は棺桶に突っ込んでいる場合も多いと思う。三途の川から引き戻せないと責任を問われるというのは、たとえそれが間違いのない医療なら可能なことであったとしても、納得できる筈がないよ。

 には同意します。ですが、確か残念なことに(これはご遺族にとって不穏当な表現であることを承知で言います。が、臨床的にはどう見ても自殺です)警察まで捜査に当たって自殺である根拠は見つかっていない、とJBMサイトに投稿があったと思います。

次に


もう一つは原告側が主張したかったと思われる論理

  血液浄化回路が2度凝固→大量凝固因子消費→DIC・・・B

に関してですが、これについては弁護側の論理の方が正しいと思われます。
透析回路の回路内血液量はせいぜい350mlぐらいのものです(一度、透析回路のプライミングをやったことがあれば分かりますが、上手にやれば生食500mlを使い切りません。というか、若手の頃1リットル使ったらオーベンに怒られました(苦笑))。回路内全部が凝固×2回で700ml相当の出血量(つまり、回路内で消費された血液凝固因子もそれに相当する量)と計算できます。こんなもんでDIC起こすようでは産科手術は一切出来ないでしょうし、外科系の大手術のほとんども出来ません。
 ゆえにDICについては回路内凝血が起きる前からあったと考えるのが妥当だと思います。

そもそも回路内での凝血によってDICが起こるという現象は実際にあることなのでしょうか?乏しい症例経験内では見たことがないのですが…

>僻地外科医さん

解説ありがとうございます。そうすると、2回の凝固はむしろDICのためだと解釈した方が自然ですね。だとすると、何故出血傾向についてもっと突っ込んだ議論が行われなかったのか少し疑問を感じます。

私もご遺族が辛い思いをされたのは理解できます。しかし

逸失利益4865万7982円(賃金センサス・・・)

にはなんだかなあ、という思いです。


>老人の医者さん

私は血液浄化に関わったことがないので、実際のことは何も知りません。またネットなどで知りうる情報では「回路内凝血によるDICは経験なし」とする医師の意見しかみません。ただ、この様な記載もあります。

C)DICを生じ得る基礎疾患
1)重症感染症:ウイルス、細菌、リケッチア、真菌のいずれでもよい。
2)組織潅流低下:種々のショック、心停止、心筋梗塞、低体温、肺梗塞
3)悪性腫瘍:癌、肉腫、白血病(特に急性前骨髄球性白血病)
4)組織損傷:大手術後、広範囲の外傷、広範囲の熱傷、長時間の体外循環
5)血管内溶血:不適合輸血、PNH、溶血性尿毒症症候群、薬剤性など
6)血管病変:動脈瘤、人工血管、カサバッハメリット症候群、TTP、膠原病
7)産科的疾患:胎盤早期剥離、羊水塞栓症、妊娠中絶、死胎児症候群など
8)その他:ARDS、蛇毒咬傷、アナフィラキシー、痙攣重積発作、肝障害
  熱中症、アシドーシス、急性膵炎、活性炭による血液吸着、移植拒否反応

たぶん文献的上の報告くらいはあるのでしょう。

>ヤブ医者先生

 当の亀田病院の先生自体も活性炭カラムがDICの誘因になったかも・・・という考察をされてますね。まあ、学会発表での考察なんですが。(このスレのNo.62)
http://www.yabelab.net/blog/medical/2006/09/12-005947.php#c11490

私の経験でも「回路内凝血によるDICは経験なし」です.
CVVHDの回路が詰まることを数多く経験していますが,それがトリガーとなってDICが生じたようなことはありません.そもそもフサンもしくはヘパリンが使用されていますし...

また,経験的には「回路内凝血」が起こり易いのはsepsisの患者さんで,いくらACT(activated coagulation time)を延ばしても1日に2回も3回も詰まります.どうも,アナンダマイドなどが関与して白血球が目詰まりを起こすという話があります.目詰まりしてカラム内の流速も低下し結果的に凝血塊が生じて来ると考えるべきなんでしょうか.
この症例でもカラムを目詰まりさせる何らかの物質が血中を回っていたためにカラムが目詰まりして最終的に凝血塊で詰まったのではないでしょうか?

カラムの問題よりもこの症例の最大のポイントは「血中テオフィリン濃度が,致死量域を超える103.50μg/mlの高値であることが判明した。」の部分であり,放置すれば死亡する(致死量を超えているのだから)状況であったわけです.たとえ救命できなかったとしても莫大な賠償金を請求される謂れはないはずです.また,このような高値になった経緯をもっと正すべきではないでしょうか?

>Level3 さん

私も書かれたことには完全に同意です。とにかく致死濃度を下げるには血液吸着しかなかったわけですから。そして、おそらく不可逆的変化が既に生じていて、どうやっても挽回不能だったケースと思います。
また、本来的な病気や不慮の事故ならともかく、この様なケースで遺族が損害賠償を求めること自体私もおかしいと思います。警察の捜査が一応あったらしいのは
>No.121 僻地外科医 さんのコメント
にありますが、遺族感情もありますし、どこまで調べてくれたのかは疑問です。しかし、裁判ではこの点も争点にしてよいケースだと思います。「逸失利益4865万7982円(賃金センサス・・・」という損害賠償を求める以上、そこへ至る本人・家族の責任は問題としてよいと思います。思うに亀田は遺族感情を重視して遠慮したのではないでしょうか?でも負けた以上、次ぎは「真の原因」に拘った訴訟にして欲しいです。テオロングの包装から言って、間違えて大量に飲むことはあり得ません。本人が用法・用量を熟知していたのも間違いないし、この点から攻めて欲しいです。でも、ホントにゲームですね・・・

裏自殺マニュアルでしたか、

「自殺する前は医者にかかれ」
「遺書には医者の悪口を書いておけ」
「生命保険は自殺ではでないことがほとんどなので病院から慰謝料を取れ」

もはや冗談ではすまされない時代になってきている気がします。

結局出血の原因は穿刺手技ではなく
DICによる出血傾向が原因という可能性が相当有る
ということでしょうか

手技と結果との因果関係も無いし
DICの予見可能性も無いといえるでしょ

そこらへんについて判決文19ページから20ページにかけて
論じておられれますが どうやら説明が足らんから原告が正しいという
理屈の様ですな 補足すれば控訴審ではイケるかも

それと被害額認定が出血が無ければ
完全回復して当然と言う前提になってますけど
法律的にはこんなもんなんですかいな

周回遅れ(何周も)ですいません。

結局、右ソケイ部より挿入したカテーテルの先端は、血管外(後腹膜?)にあったと裁判官に判定されています。(ここが確信部分と思います。)

しかし、このカテーテルより点滴された大量の液体(出血を想定していたので、多分2000ml〈後腹膜への出血量〉は軽く超えると想像します。)はどこへ消えたのでしょうか?(判決文よりは、病院側もしっかり反論しているように思いますが?)

また、血管外(後腹膜)に点滴をして、点滴はスムーズに落ちるものでしょうか?圧が上がりすぐに落ちなくなってしまうように思うのですが?

やはり、右ソケイ部のカテーテルの先端は、血管内にあると考えないとすべての説明がうまく行きません。いかがでしょうか?

>通りすがり(内科医)様

しかし、このカテーテルより点滴された大量の液体(出血を想定していたので、多分2000ml〈後腹膜への出血量〉は軽く超えると想像します。)はどこへ消えたのでしょうか?(判決文よりは、病院側もしっかり反論しているように思いますが?)

 こちらの点については、大出血を想定している場合の補液をCVから行うことは逆に考えにくいと思います。(点滴速度は末梢>>>CV)。大出血に対応しようと言うのであれば末梢から大量補液が基本で、CVから入れるものは補液ではなくカテコラミン類などでしょう。2回目に入れたカテーテルが通常のCVCであれば、入れた目的もカテコラミンだと思います。また、2回目に入れたカテーテルがブラッドアクセス用であれば、補液はそもそも入れません。回路が回らないで終わり・・・でしょう。従って、この点に関しては議論の対象にならないと思います。

また、血管外(後腹膜)に点滴をして、点滴はスムーズに落ちるものでしょうか?圧が上がりすぐに落ちなくなってしまうように思うのですが?

これは私もそう思います。ですが、CVからの補液(と言うか薬剤)がシリンジポンプで押されていたなどの場合には、必ずしも点滴が止まってしまうわけではないと思います。この辺はもっと情報が欲しいですね。

P R

ブログタイムズ

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