エントリ

 和歌山県立医科大付属病院(和歌山市)で03年、がん治療の放射線を過剰に照射された患者が8カ月後に死亡した医療事故で、和歌山県警は22日、過剰照射が死亡の原因だった疑いが強まったとして、照射を指示した同大助教授の男性医師(48)と放射線技師ら数人を業務上過失致死容疑で書類送検する方針を固めた。県警や放射線医療の専門家によると、照射ミスの刑事責任が追及されるケースは「聞いたことがない」という。

 放射線の照射ミスによって、患者が死亡したり障害が確認されたりした例は、同病院以外にも、少なくとも全国の7病院である。照射ミスが相次ぐ背景には、医療機器の飛躍的な進歩で機器管理が複雑化する一方、対応できる医師や技術者が不足している実情があるといわれ、今回の書類送検は、照射ミス防止の環境整備にも影響を与えそうだ。

 和歌山西署の調べでは、助教授らは03年9月19日と22日の2回、初期の下咽頭(いんとう)がんで入院中の男性患者(当時70)の患部に放射線を照射。その際、本来は1回分の照射量が2.5グレイだったのに、過って2回とも10グレイを照射した。助教授が間違った照射量を機械に入力し、技師らも見逃したという。

 記録を見た別の技師が過剰照射に気づき、病院側が患者に事情を説明。患者は退院後、通院治療を受けていたが、04年3月に再入院。同5月に下咽頭にできた潰瘍(かいよう)から大量出血して死亡した。

 同署と県警捜査1課は、助教授や技師から事情聴取。さらに専門医に鑑定を依頼して、死因を詳しく調べた。その結果、照射量を機械に誤入力した助教授と、誤った数値を見逃した放射線技師らの「過失の競合」によって過剰照射が起き、それで生じた潰瘍からの出血によって患者を死亡させた疑いが強まった、と判断した。

 死亡した患者の長男(45)は「家族には退院時、誤照射の説明はなく、死亡後に初めて知らされた。退院させずにきちんと治療していれば、もう少し長生きできたはずだ」と話す。長男ら遺族4人は05年10月、約5100万円の損害賠償を求める民事訴訟を和歌山地裁に起こし、今年5月に大学が3750万円を支払って謝罪することで和解が成立した。

 事故発覚後、病院は医療事故調査委員会で内部調査を実施し、「過剰照射によって潰瘍ができた可能性は高い」との調査結果をまとめた。それを受けて大学側は05年2月、助教授を訓告、上司の教授や放射線技師ら4人を厳重注意にした。

 「家族には退院時、誤照射の説明はなく、死亡後に初めて知らされた。退院させずにきちんと治療していれば、もう少し長生きできたはずだ」

 この感想の当否はともかく、家族がこのように思うことが刑事責任追及の一因にはなっているのではないかと思います。
 病院の事故直後の対応に問題がなかったかどうかが問題と思われます。

 照射ミスが相次ぐ背景には、医療機器の飛躍的な進歩で機器管理が複雑化する一方、対応できる医師や技術者が不足している実情があるといわれ、今回の書類送検は、照射ミス防止の環境整備にも影響を与えそうだ。

 医療機器の設計にも問題があるのではないでしょうか。
 

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コメント(12)

だんだん医療過誤=書類送検という図式ができ上がってきましたね。

放射線照射に関するものとしては、弘前の過剰照射について良い記事があります。
http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/iryou-miss/index.html

今回の和歌山の事故と、新聞記事の内容を直接比較することは出来ませんが、医療事故とは個人の責任、システムの問題がからんでいて、責任の追及と原因の探求は一緒には出来ないものだと再確認しました。

1回10グレイの照射とは・・(絶句)。
これは、ちょっと申し開きのできない致命的なミスじゃないですかねぇ・・例えシステムの問題の関与もあったとしても。

>「家族には退院時、誤照射の説明はなく、死亡後に初めて知らされた。退院させずに>きちんと治療していれば、もう少し長生きできたはずだ」
死亡後に初めて知らせた・・とは、ちょっと理解できない行為です。なぜなのでしょう・・。

医師が照射計画を指示し、技師がパラメータを入力すると思っていたんですが、
これは私の思いこみみたいですね。

1.医師が照射計画を策定、プリントアウトし技師に渡す
2.医師が三次元治療計画装置からパラメータをリニアックにオンライン転送
3.技師がデータの整合性をチェックし、照射

その上で
>担当医師は、2.5Gy × 4 回のブースト照射を意図し、治療計画書には
>そのように記載した。治療計画装置へは、総線量と分割回数を入力する
>必要があり、正しくは総線量 10Gy、分割回数4 を入力すべきであった。しかし、
>実際は総線量としては10Gy を入力したが、分割回数はデフォールト(初期値)
>設定の1 のままであった。このため治療計画装置では、1 回線量10Gy に対する
>モニターユニット(MU)値が計算され、その値がリニアックにオンライン転送された。

>このときの計画装置とリニアック側のネットワークにおいて、装置導入当時から
>総分割回数と総線量はオンライン送信の対象になっていなかった。そのために
>総分割回数と総線量は送信されなかった。

>担当技師は、治療計画書で線量と回数は確認したが、表1 に示すデータの
>整合性を正しく確認せず転送されたMU値を用いる照射を4回行うものと
>思い込んでいて、1回10Gy に相当するMU 値のまま2 回まで照射を行った。
http://www.ics-inc.co.jp/qcrt/report_wakayama.pdf

システムから考えると、計画装置とリニアックのネットワークにおいて、総分割回数と
総線量もオンライン送信の対象とするべきなのでしょうか。機器を導入する際に、
使用者の意見が反映されないで、上の方だけで導入を決定していたようなにおいも
少々いたしますね。

分業が必要です
アメリカでは照射計画を立てる医師と
照射する放射線技師の中間に
照射量を管理する放射線管理師という職業が存在しています.
こういう点はマネするべきです
日本は放射線治療医の数からして他国に比較して
圧倒的に不足し,オーバーワークになっています
アメリカ以上に分業の必要があります.

 山崎行太郎氏へ

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>医療機器の設計にも問題があるのではないでしょうか。
モトケン先生のご指摘のとおりで、フェイルセーフの観点に立てば、放射線の機器に10グレイも照射できる能力があっても、医学的に通常使用しない(過剰照射となるような)範囲の数値が、入力できるということが、そもそもの問題と私も思いました。どれだけ優秀な人間でもミスを起こさないという保証はないのですから。

> 門外漢様
フェールセーフの考え方は医療にはあまり生かされていないと思います。が、このように明らかに過剰照射するような場合はシステム側できっちり行うべきでしょう。放射線治療について、私は無知ですが、例えばアラームを鳴らす(だけではOKを押せばそのまま通ってしまうようなシステムでは意味ありませんが)、パスワードを入力させるなどデス。
また、医療の世界にフェールセーフの考え方が浸透しないのは「例外が多いため」でもあると思います。呼吸器などはアラームが鳴りっぱなしで、アラームが鳴っている=呼吸器が外れた訳ではないので、「いつものことか」と無視する(実際には他に仕事が沢山あるので対応しきれないなどの事情もありますけど)。つまり、そのようなシステム設計がしにくいという点も上げられると思います。
その手の専門家の育成も必要だと思いますが、現実にはほとんどいません。

ちなみに、フェールセーフって性格には一つの系統が故障したときにもう一つのシステムが作動するシステムという意味ではありませんでしたっけ?我々も「ミスを事前に防ぐ」という意味で使うことが多いのですが、実は誤用かもしれませんね。

>>No.8のyamaさん
フェールセーフは「ミスを事前に防ぐ」で構わないと思います。
Wikipedia - フェールセーフ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%95

「一つの系統が故障したときにもう一つのシステムが作動するシステム」は「フォールトトレラントなシステム」の一例のようです。
Wikipedia - フォールトトレラント設計
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%88
Wikipedia - フォールトトレラントシステム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

yama様
>ちなみに、フェールセーフって性格には一つの系統が故障したときにもう一つのシステムが作動するシステムという意味ではありませんでしたっけ?…

フェールセーフの意味はおっしゃるとおりで、辞典でも次のように解説しています。「あらかじめ故障が起こることを想定し、被害を最小限にとどめるよう工夫しておくという安全思想。」とか「機械などで、一部に故障や誤操作があっても、安全なほうに作動する仕組み。」

誤操作があってもそれをカバーできる仕組みにしとけと、怒りに任せてコメントしたものでして、(^^;;)

「呼吸器などはアラームが鳴りっぱなし」という話は良く聞きますね。今もそうかは知りませんが、確かこれで、だいぶ前に医療事故があったようなぁ、

とにかく医療現場等、単純なミスが人命にかかわるところでは、二重三重のエラー対策が取られないといけないと、主張します。

皆様、コメントありがとうございました。

> 門外漢様
おっしゃる通りですね。
ただ、医療機器の場合は例外が数多く存在するため、そのシステム設計は決して容易ではないと思います。しかし、放射線照射過剰に対する対策については比較的可能でしょう。
ちなみに別スレの不整脈薬に対する考え方も同じ仕組みが必要だと考えます。詳細は下記参照くださいませ。
http://www.yabelab.net/blog/medical/2006/09/22-203121.php

<死亡後に初めて知らせた・・とは、ちょっと理解できない行為です。なぜなのでしょう・・。> 患者さんにはoverdoseがあったことを直後に説明したいた(調査団報告書)ので、死亡するまで過剰照射がわからなかったというのは当局発表と報道の捏造で、犯人仕立てのテクニックです。照射された線量の強さは他でも行われている強さで、そこからだけでは出血は予想されなかった。出血が起こった時点では経過や原因がわからず、照射との因果関係も不明だったが、死亡後、当局が照射との因果関係が否定できないと発表。一方8ヶ月の間に行われた同部への外科処置については公表せず。裁判で、専門家の鑑定で放射線照射のせいで出血したとは必ずしもいえない(普通は血管は閉塞)とあり、院内調査委員会もやり直すことになり専門家の鑑定意見を認めた。

P R

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