エントリ

歯科女児麻酔死:医師不起訴は不当 さいたま検察審査会(毎日新聞 2006年10月19日 13時35分)

 虫歯治療中の4歳女児を死亡させたとして、業務上過失致死容疑で送検された埼玉県深谷市の男性歯科医が不起訴となったことについて、さいたま検察審査会が不起訴不当の議決をしていたことが分かった。

 議決書(4日付)などによると、02年6月15日、深谷市の会社員、木部寿雄さん(40)の長女遙加ちゃんは、同市の歯科医院で治療中、局所麻酔により重篤なアレルギー症状「アナフィラキシーショック」を起こし、同夜に死亡した。県警は05年1月、歯科医師を書類送検したが、さいたま地検は同年7月、嫌疑不十分で不起訴とした。

 議決はショック症状について「予見可能」とした。また、「現在の開業医の歯科医の(設備、技術)水準では、救命可能性に疑問が残る」とした地検の判断について「同種の事件で刑事責任が問えなくなる。開業医と他の病院に差があること自体が問題」と指摘した。

 「同種の事件で刑事責任が問えなくなる。」という論理が不起訴不当の論理としてどうなのか、という疑問を感じますし

 「開業医と他の病院に差があること自体が問題」という点も、過失犯論に対する理解不足を感じさせます。

 刑事責任を問うことが目的化しているようです。

| コメント(98) | トラックバック(1) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

トラックバック(1)

トラックバックURL: http://www.yabelab.net/mt4/mt-tb.cgi/1784

歯医者さん日記 - 歯医者さん (2006年11月 7日 13:47)

コメント(98)

例によって情報不足ですが、文面通りとらえるのであれば、もはや検察の論議では医学的に論点がずれています。予見可能かどうかが問題なのではなく、アナフィラキシーショック後の対処がどうだったかが問題と思います。
大体、麻酔アレルギーは予見不可能ですよ。神様じゃあるまいし。

>yama さん

>もはや検察の論議では

 これは、「検察審査会の論議では」ということですよね?

> yama さん  (No.1のコメントについて)

 念のため。検察審査会は、一般市民から無作為に選ばれる11名のメンバーによって構成される機関です。検察官が起訴・不起訴を適切に判断しているか、市民の健全な常識でチェックしようという目的を持っています。

 今回は、いわば市民の代表である検察審査会が不起訴不当との判断を出したので、検察官としては、起訴すべきかどうかもう一度検討する、ということになります。なお、今のところ起訴・不起訴の最終的な判断権限は検察官にありますが、もうすぐ、一定の条件下で検察審査会の議決が拘束力を有する(起訴を強制される)という法律が施行されます。

 医療崩壊エントリでも書きましたが、自分としては、どうしても裁判員制度のゆくえと関連付けて考えてしまいます。検察審査会は、市民による議決後、検察官・裁判官の判断が介在しますので「市民感覚」が最終的な結論を導くわけではありませんが、裁判員制度は、市民がダイレクトに判決内容を決める制度ですので・・・・。

最高裁の検察審査会の紹介ページでは、改正検察審査会法施行の予定について一言も触れられていないのはなぜでしょうか。
11人の「一般市民」たちが2回「起訴相当」の議決をしたら起訴が確定する、という新制度を故意に触れないようにしているのかと勘ぐってしまいます。

あんな法律を国会で通過させてしまったことについて、何も知らなかった自分の愚かさがつくづく身にしみます。

リンク貼るのを忘れてました。

・最高裁の検察審査会の紹介ページ
http://www.courts.go.jp/kensin/index.html

医師からみた印象ですと、さいたま検察審査会の判断は全く理解できません。
まず、アナフィラキシーショックを予見することは、絶対できないと思います。
開業医と他の病院に差があること自体が問題というが、これも無理でしょう。開業医も、総合病院か大学病院に準ずるレベルの器具・技術・スタッフを用意しろということでしょうか。
薬剤を使う職場である限り、同種の事件?は未来永劫なくなることはありません。そのたびに、刑事責任を問われていては、誰も医師なぞ目指さなくなり(特に産科など)、ますます医療崩壊の方向に向かうでしょう。
頭の悪いマスコミ連中が騒ぎ立てるだけならともかく、審査会などがこの方向にいってしまうと、日本の医療は取り返しのつかない方向にいくのではと危惧しています。

審査会って、素人市民11人なんですか?知りませんでした。
なんで、医療や法曹の専門的知識が皆無で、マスコミに煽動されがちな素人を選ぶのでしょうか?そういう人たちが、起訴までごり押せるシステムが理解不能です。

> FFF さん
それは知りませんでした。大変な誤解をしてしまいました。検察審議会というのでてっきり検察のメンバーで構成されているのかと・・・。
まあ、それなら一般人の無知と言うことで・・・・としてもひどいですね。いくら何でもそういう審議会のメンバーは最低限必要な知識を勉強すべきかと個人的には思います。出なければ審議会に出席する資格はないと考えますが。素人が集まる井戸端会議程度の議論ならともかく、法的拘束力を持つとなるとこれは問題です。いずれにしてもおかしいことかと思います。いくら知ろうとといっても許せませんよね。そもそも起訴された側はどれだけ苦労するか知っているのでしょうか?
陪審員は当面、凶悪な犯罪だけではありませんでしたっけ?私の素人記憶では過失に関しては関係ないのかと・・・。

> モトケン様
私の無知が原因かもしれませんが、誤解が生じる可能性もあります。検察審議会の注釈もあった方が助かりますかもしれません。

> 開業医と他の病院に差があること自体が問題
この件自体が開業医と病院の差の問題に結びつける方が無理があると思いますが。どう考えても結びつかないでしょう。検察の判断もさることながら検察審査会も関係のない議論をしていると言うことになります。従ってこの点だけとってもみても、検察審査会という組織自体が何も分かっていない無知の集団と判断せざるを得ません。

審議会ではなく、審査会ですね。失礼しました。
審査会のメンバーは是非このブログをみて猛省して頂きたい。明らかに間違ったことを言っているのだから(多少なりとも可能性のあることならまだ許せますけどね)。

>yamaさん
何を持って不起訴不当と判断したのかが分からない以上、「明らかに間違った」とは言い切れないと思います。

このような世の中では、もう医療ができません。
アナフィラキシーを予見しつつ治療することは、神以外無理ではないでしょうか。
撤退 しかないです。

非医療者の方も、ここまで進めばさすがに理解できるのではないでしょうか。
理解されるされないに拘らず、日本での真の意味の医療はもう おしまい なのは変わりありませんが。

検察審査会は市民の方々が検察の判断をチェックする、ということですが、その判断が「参考程度」にあつかわれるのならまだしも、

>もうすぐ、一定の条件下で検察審査会の議決が拘束力を有する(起訴を強制される)という法律が施行されます

とのことです。本気でしょうか…

集団ヒステリー状態に容易になりやすく、被害者の感情に相乗りして判断していく傾向があるのはどうしても一般市民の集団では仕方ない面もあるかと思います。別に医療裁判に限らず、様々な刑事事件(になってしまった事項)で、そのような専門的知識に欠ける判断が主流をなす可能性が増すのではないでしょうか。これでは、責任のある仕事をすることができません。日本は終わりなのでしょうか?

>審査会のメンバーは是非このブログをみて猛省して頂きたい。

ただ、不起訴が相当との判断を下して、それをマスコミが報道すると、やはり国民の怒りを買うことになるでしょう。

国民一般のレベルの底上げがないとこの流れは変えられないと思いますね。
だからこそ、もっと医療現場の声を大きくと言っているわけです。
 知らせないとわからないのです。

政治も裁判も国民の民度を超えることはできないと思いますから。

> yama さん   (No.8の書き込みについて)

 おっしゃるとおり、裁判員制度の対象は重大事件に限られますので、今回のような業務上過失致死事件については従来どおり職業裁判官が判断することになります(それが医師の方にとって好ましいのかどうかは分かりませんが・・・・)。

 検察審査会は、むしろ素人判断であること自体がウリというか、市民感覚を反映させるということが目的なので、〇〇を勉強した人でなければいけないという前提条件をつけるのは、たぶん制度の趣旨に反するのだろうなあと思います(検察審査会制度の是非についてはひとまず措きます)。だからこそ、どのような資料が用意されてどのような議論がなされたのか、是非とも知りたいところです。

> しまさん
ショック症状について「予見可能」とした というくだりは明らかに間違いです。少なくともアナフィラキシーショックについては。従って明らかに間違っていると考えます。報道内容が誤報でしたら勿論間違っているとは言えないと思いますけど。

> FFFさん
だとしたら、法的拘束力を持たせるというのは良いことなのかどうか疑問です。参考程度にとどめるべきではないでしょうか?

ただ一つ言えることは、医療事故の場合、通常「一般市民の感覚」は圧倒的に事故被害者寄り、ということですね。
奈良の事案のマスコミ報道とそれに基づく「一般市民」の反応を見るまでもありませんが。

「メディア検察制度」と言い切ってもいいかもしれません。

>元内科医さん
検察審査会の定員は11名ですから、一般市民の集団とは切り離された集団であると思います。それに、被害者の感情に相乗りするというのなら、「不起訴不当」「起訴相当」の判断ばかりになってしまい、「不起訴妥当」の判断が極めて少なくなると思うのです。

この面から言っても、事故調査委員会のような医療専門家による認定と処分を優先するシステム構築が必要ということになると思います。

>オジヤマ虫さん
作ること自体は賛成ですが、行政主導で行うか政治主導で行うか医師主導で行うかが問題になってくると思います。

>しまさん

 どこが主導するかでどの辺りが変わってくるのでしょう?

>モトケンさん

想像で物を言いますが。


行政主導の場合、システム作りは厚労省に丸投げとなります。また、医師の厚労省に対する不満を聞く限りでは、恐らく「結論が現場の声を反映していない」とか不満がでると思います。国民からは「厚労省と医師が癒着している」という声も出るかと思います。また、行政と政治では、政治の方が立場が強いので、権限も大きくないだろうし、予算の増大も望めないと思います。人選に関しても、国民の声を無視出来ないので委員会を人選するに当たっては医師ばかりでなく、第三者の参加も求められると思います。


政治主導の場合、首相直轄の機関になると思われるので、それなりの権限と予算を手にすることになるでしょう。また、行政と調査期間とを完全に切り離すことになり、厚労省の影響力が弱くなるでしょう。ただ、政治が絡んでいるので、政府の人気取り、ご機嫌伺いの道具になってしまうことも考えられなくはありません。人選に関しては行政主導と同じく、第三者の参加は求められるでしょう。


医師主導の場合、自由自在にシステムを作ることができる反面、誰がシステムを作るのかという問題が残るでしょうね。厚労省や政治が協力しないわけですので、医師だけで合意を形成し、医師だけでシステムを作り、医師だけで国民の同意も取り付けなければなりません。また、財源に関しても自分たちで用意しなければなりませんので、医師が政治力を持つことが前提となるでしょう。人選も自分たちで決められる反面、国民からは「かばい合い」と受け取られることは必至なので、透明性を確保しなければならないでしょう。医師で何事も決められるだけ、困難が増えるだろうと思います。

> しまさん
結局のところ、医師、行政、政治=国民(と仮定)が共同で作らなくてはダメ、ということでしょうか?

>yamaさん
現在、国民と医師とが違う方向を向いているようなので、共同で作ると医師の意図が反映されず、結局は医師にとって都合の悪い組織ができてしまうように思います。

個人的には医師が主導で作って、実績で国民を説得するというのが理想なのでしょうが、そんなシステムを作る余力も資金もなさそうですね。医師会が機能しているのなら可能なのでしょうが。

> しまさん
そうでしょうね。それを懸念していました。

No.4の元田舎医さん、

>最高裁の検察審査会の紹介ページでは、改正検察審査会法施行の予定について一言も触れられていないのはなぜでしょうか。

どっかで誰かが抵抗しているんじゃないでしょうか。

http://www.yabelab.net/blog/medical/2006/10/15-105406.php
でコメントしましたが、この制度の施行は非常に不安を感じております。

>あんな法律を国会で通過させてしまったことについて、何も知らなかった自分の愚かさがつくづく身にしみます。

私なんか、「え!こんな改正が通ってたの!?」って情けない状態です。

最近では、立法や法改正の流れが速くて、日弁連でも法案の問題点を検討して意見表明しようとしても、法案の問題点を検討している間に国会を通過してしまったりするようです。

>PINEさん
日弁連の意見書には、以下のように記載されているわけですが。

>2.検察官は検察審査会の議決を尊重した取扱いをすべきである。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/060720_5.html

検察審査会の権限強化自体には必ずしも賛成という訳ではないのでしょうか。
つまり、議決は尊重するべきではるが、権限を強化する事には反対だと。

No23:しまさん

個人的な意見ですが。
「医師にとって都合の悪い」なんていうのはどうでもいいんです(ほんとはあんましよくないけど)。
どれだけ社会的に理不尽な対応を受けようが、どれだけ労働環境が厳しかろうが、その職を選んで行う人がいる限りは。
現在の最大の問題はこういった一つ一つのことが積み重なって医師が逃げていることです。大変な科から、大変な勤務形態から、大変な地方から逃げている。それで苦しむのは国民なんです。それに対する警告なんです。医師が理不尽なしうちを受けているので改善しろという要求ではないんです。
ならば、それは医師主導でやることではない。国民が、あるいはそこから委託されている行政や政治が国民のために行うのが本筋でしょう。

もう何年も前からこういった警告は繰り返されてきています。
しかも警告するのにも疲れたという感すら漂ってきていました。


自分の中でこういった「理不尽なことに対する医師としての怒り」と「医療が崩壊して国民が苦しむという警告」の両者は厳密には峻別できるわけではないんですが。

>立木さん
>ならば、それは医師主導でやることではない。国民が、あるいは
>そこから委託されている行政や政治が国民のために行うのが本筋でしょう。


医師が苦しむことによって医療崩壊が起こる、医療崩壊が起こることによって国民が苦しむ、というのであれば、医師にとって都合の悪いシステムは国民にとっても都合が悪いでしょうし、医師が幸せなシステムを作るのが国民の幸せに繋がると言えるでしょう。


そして、どのような待遇、どのような環境、どのような条件がそろっていれば働きやすいのか知っているのは医師自身です。システムに関しては医師が主導し、政治や国民がバックアップする、行政は具体的な体制を整えるのが理想だと思いますが。


個人的には、医師も国民に要求を突きつけるべきだと思っています。

No28:しまさん

「医師が幸せなシステムを作るのが国民の幸せに繋がる」
僕はそう思っているんですけどね。

ただそれも国民が望まないのならしょうがないと思います。自ら不幸せになる道を選ぶのも選択でしょう。
大事なのは上記のことがコンセンサスになるかどうか。
そういった自覚のない方々に要求だけ突きつけてもうまくいかない気がします。

最近ではそういう自覚を持つために医療は早く一度完全に崩壊したほうがいいと主張する方すらいますな。

>立木さん
>そういった自覚のない方々に要求だけ突きつけてもうまくいかない気がします。

うまく行く、行かないの前に医師が要求してきた例をあまり知らないのですよ。取り上げないマスコミにも問題はあると思いますが、医師の方々も広報活動にはあまり目を向けてこなかったのではないでしょうか。


「自分たちがきちんとやっていれば何も言わなくても分かってくれる」という認識が根っこにあるのではないでしょうか。それが段々と「おかしい、自分たちがいくら一生懸命やっても国民には全く伝わってない。伝わってないという事は国民に問題があるのでは」と、国民不信へと変化しているような気もします。


個人的には「このレベルの医療サービスを提供するには、○○億円の金と○○人の医師が必要だが、現状では全く不足している。物理的に無理だ。市民がこれらの医療サービスを必要としているが、現状ではリソースが不足しており物理的に無理だ。金を出すか、医療サービスをあきらめるのか、あなた方の選択に任せる」と言ってくれれば、納得しやすいかなと思います。

No.26 しまさんのコメント

>検察審査会の権限強化自体には必ずしも賛成という訳ではないのでしょうか。
つまり、議決は尊重するべきではるが、権限を強化する事には反対だと。

日弁連執行部の真意はわかりませんが、おそらく反対する趣旨ではないものと思います。
検察審査会法の改正に抗議したり憂慮を示す会長声明等は出ていませんから。

No.25の私のコメント『最近では、立法や法改正の流れが速くて、日弁連でも法案の問題点を検討して意見表明しようとしても、法案の問題点を検討している間に国会を通過してしまったりするようです。』というのは、「今回の法改正について」という意味ではなく、「こういうことが目立つようになってきた」という私の感想です。
誤解を与えるような書き方で申し訳ありません。

 問題は「命を金で計るのか?」と宣う方が後を絶たないことですね。
 そろそろ大人になって欲しいものですが・・・。

検察審査会の『開業医と他の病院に差があること自体が問題』との意見は、正直驚きました。
今回検察審査会を構成した普通の国民の皆さんは、このように考えているんですね。

診療所と病院の機能分担なんて話は、すべてぶっ飛んじゃいますね。

 皆さまが指摘しておられるとおり、この議決は問題が多そうですね。
 検察審査会はあくまでも個々の事案において検察官の公訴権行使・不行使が適正に行なわれているかどうかを審査するのが仕事であって、「同種の事件で刑事責任が問えなくなる」なんて、余計なお世話というものです。
 もしこのような議決が乱発されるようであれば、改正法をもう一度改正しなおす必要がありますね。

そもそも設備と構成人数が違うのに同等のはずがありませんよね。
やはり欧米のように病院は紹介状がなければ受けられないようにするのが一番国民の目が覚める方法だと思います。
ついでに言うと、欧米では科ごと、職種ごとに請求書が来ますから、病院にかかると開業医にかかる費用どころの話ではなくなります。
日本人のこうした平和ボケがツケとなって現れている良い例でしょう。

> 最高裁の検察審査会の紹介ページでは、改正検察審査会法施行の予定について一言も触れられていないのはなぜでしょうか。(No.4元田舎医さま)

検察審査会の起訴強制のしくみは、裁判員制度と同時期(2009年5月27日まで)に施行される予定の法改正で、正確な日付がまだ決まっていないために、表示していないのだと思います。
http://www.kensatsu-kyoukai.gr.jp/saibanin.html

No.26しま様、No31PINE様、
日弁連の現執行部は基本的に司法改革に賛成路線ですから、検察審査会の権限強化についても、賛成の態度です。

しま様が引用された日弁連意見書(2006年7月20日)は、
改正法が国会成立したことを受けて、制度を活かすために運用をどうせよ、という話で、
法律を先取りして、検察審査会の起訴議決には従えという趣旨です。
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/060720_5.html

日弁連が改正法審議の段階で出した2つの意見書
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/2003_77.html (2003年12月20日)
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/2004_08.html (2004年2月12日)

検察審査会に法的拘束力を与えることとのバーターとして、
「被疑者に検察審査会の審議における弁明の機会を保障せよ」という提言がなされていました。
結局、この提案は法案には取り入れられませんでしたが、私はそれがセンスの良いアイディアであるとは思えません。
弁明の機会とは人民裁判の前倒しではなかろうか。日弁意見書の起案者は、自分が弁明に呼ばれて、11人の素人から無茶苦茶ツルシ上げをくらうさまを、想像したことがあるか?

------
> 皆さまが指摘しておられるとおり、この議決は問題が多そうですね(No.34 an_accusedさま)
「医療事故と検察」エントリNo.3で述べましたように、素人判断による市民感覚を取り入れるということは、必然的にある程度は間違いを許容するということになります。
みんな、本当にそうしたいの?それでいいの?

裁判員制度も検察審査会議決の起訴強制も、施行日までにまだ間がありますので、再考の余地はあります。

裁判員制度にも検察審査会議決の起訴強制にも恐怖を覚える者ですが、

>施行日までにまだ間がありますので、再考の余地はあります

ってそうなんですか?

もう規定路線でどうにもならないのではないですか?

検察が検察審査会法の改正について触れない(あるいは積極的に言わない)のはある意味当然ですね。
なぜなら、検察をチェックする機能強化の方向=被害者保護の方向=国民の意思反映という構図ですから、誰も文句がない(から敢えて言うまでもない)と思っていた(いる)はずだからです。
これに不満があるとすれば権限縮小される検察だけで、不満を主張すれば国民の意思反映(民主化)に反することになるわけですから。
全然他意はなかった(ない)と思いますよ。
もし問題だと思うなら、検察と医療界がタッグを組むことになりますが、さて可能でしょうか?

 改正法の施行は動かないでしょう。

 ただし、検察審査会の起訴議決に基づいて起訴された事案について、裁判所が軒並み無罪を言い渡したら(その可能性はけっこうあると思っているのですが)、マスコミが検察審査会を批判するのか裁判所を批判するのか、不謹慎ですが見物です。

>YUNYUNさん
>11人の素人から無茶苦茶ツルシ上げをくらうさまを、想像したことがあるか?

YUNYUNさんは検察審査会の場に居合わせた事はあるのですか?
個人的に知りたいのは、検察審査会でどのような審査が行われているかです。

----------
検察審査会が審査した結論に基づいて,検察官が再検討の結果起訴した事件は,50年間で1,051件を数え,その中には,懲役10年,懲役8年などといった重い刑に処せられたものもある⇒⇒起訴した事件の92%は一審で有罪の判決が出ている
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/kennsatusinnsakai.htm
----------

ある程度は機能しているようですが。


>素人判断による市民感覚を取り入れるということは、
>必然的にある程度は間違いを許容するということになります。

いつまでも間違いを許容出来ない社会であっても困りますので、素人判断を取り入れるべきじゃないでしょうか。判断が拘束力を持つと言うことは、同時に批判されることでもなりますよね。いつかは必要なことだと思います。ただ、制度を強化べき時期として、今が適切なのかどうかは分かりませんが。

No.39のモトケンさん
>マスコミが検察審査会を批判するのか裁判所を批判するのか
検察官でもないのに、実際に公訴・公判を遂行するハメになって、挙句の果てに無罪判決をくらった弁護士ではないでしょうか(笑)。

>PINE さん

 引き受けたくない仕事です。
 ただ、幾らくらいの報酬を出すのかは興味があります。
 否認されたら100万円程度では全然割に合わないですね。
 で、無罪になったら結果責任。
 たまりませんね(^^;

 
>しまさん

>起訴した事件の92%は一審で有罪

 通常の有罪率(99%以上)より有意に低いですね。
 それくらいの有罪率が適正であるという意見もありますが。

>モトケンさん
そうとも言えますね。ただ、現状の制度としては検察審査会は「ある程度」機能しているとは思います。今後、拘束力を持つことでどのようなブレーキがかかるか、アクセルがかかるのかは興味深いところである反面、実験台にされる当事者にしてはたまらないなとは思います。


検察審査会がどのように機能しているのかを分析した論文を読んでみたいところですね。諸外国における陪審制は、本がある程度はあるようには思いますが。

>YUNYUN先生
 検察審査会制度は大陪審(起訴陪審)制度と異なり、あくまでも検察官による公訴権の不行使を事後的に審査するという、限定的な機能しか有していません。また、起訴強制の効力も、一度だけではなく二度「起訴相当」の議決が必要であり、相当の縛りがかかっています。
 複数の合議体によって公訴権を行使すべきであるという意思がしめされたものであれば、検察官による詳細な理由説明が社会に対してなされるなり、裁判所によって最終的な判断がしめされるなりすべきであって、現行のように大した理由も明らかにせず検察官が無視しつづけることができるというのはあまり健全な制度であるとは言えないように思われます。
 社会制度というものは、何らかの形で民主的正統性を確保する必要があります。また、「素人による間違いを許容できるか」とのことですが、「検察が専門家であるがゆえに犯す間違い」があることもまた考慮する必要があるのであって、従来警察官の職務犯罪などに限られていた付審判制度を一般犯罪に拡げるかわりに検察審査会の複数の議決を要求する改正法は、それほどおかしなものではないように思います。
 もちろん、今回のような疑問の多い議決が乱発されているというのであれば、再度見直す必要があると思いますが、起訴強制の要件にかからない不起訴不当の議決がひとつあったからといって、制度そのものを全否定するようなことをおっしゃるのはやや早計ではないでしょうか。
 そういうわけで私は、裁判員制度と異なり、検察審査会制度の改正については、YUNYUN先生のお考えとは異なる考えを抱いています。
 パソコンが不調で、ケータイメールで投稿しているので、まとまりに欠ける文章になってしまい申し訳ありません。

> YUNYUNさんは検察審査会の場に居合わせた事はあるのですか?(No.40しま様)
済みません、No.36は誤解を招く書き方だったようです。

まず、私自身は成人してからこのかた検察審査会に選ばれたことはなく、審議内容を見たことはありません。
法曹は委員に選ばれる資格がないので、今後とも見る機会はないと思います。
審査の実際については、目撃した方にご報告願うしかありませんが、守秘義務との兼ねあいで難しいかもしれません。

検察審査会の審議としては、現行法上は、捜査関係書類の書面審査のほか、申立人や証人を呼んで話を聞くことができるとされています。実際に、どの程度証人を呼んでいるのかは分かりません。
それで、日弁連は、「起訴強制するなら、審査会に被疑者を呼んで話を聞け」という提案をしたのですが、もしその方法が実現したとしても、被疑者の権利を守る効果はないと思う、というのが私の意見でした。
なぜなら、検察審査会のムードが既に起訴方向で固まっている場合には、そこへ乗り込んで被疑者がいかに弁明しようとも、「嘘つき」「往生際の悪い奴」「反省心がない」という評価にしか、ならないような気がします。現状の一般人やマスコミの、逮捕者に対する「犯人扱い」のさまを見ていると。
弁護人としては、とてもそんな恐ろしい場所へ被疑者を行かせるわけにはいきませんね。
ま、いずれにしても、改正法は被疑者の弁明という制度を入れませんでした。

-------
> 起訴した事件の92%は一審で有罪の判決
> 通常の有罪率(99%以上)より有意に低いですね(No.42 モトケン様)
最初の検察官が起訴を躊躇したのは、やはり危うい要素があったからと言えそうです。
現行制度上はこれでも「検察官が再検討して」選んで起訴した結果であり、改正法によりオール起訴となれば、有罪率はもっと下がるでしょう。
つまり、間違いで起訴される不運な人が増えると予想されます。
起訴されても有罪判決が確定するまでは無罪の推定があるのだから、犯人扱いしてはならない、不利益な取り扱いをしてはならない、ということの社会的なコンセンサスができなければ、困った事態になると思います。

> 検察官でもないのに、実際に公訴・公判を遂行するハメになって、挙句の果てに無罪判決をくらった弁護士(No.41PINEさま)
これは、一般には意味が分かりにくいかと思いますので、補足。
改正法の下で検察審査会の起訴議決に基づいて起訴される事件については、検察官が起訴するのではなく、裁判所が選任した指定弁護士が検察官役を務めます。
現行制度で、公務員犯罪に関する準起訴手続(付審判請求)において、弁護士が訴追することと、似ています。

刑事事件の公訴提起や訴追側としての訴訟活動は、弁護士にとっては全く不慣れな仕事なので、上手くできるかどうか心配です。
モトケン様がおっしゃるように、すごく報酬が高いならともかく、そんな大変そうな仕事を、わざわざ引き受けようという弁護士は少ないのではないでしょうか。
刑事訴追の仕事で名を上げてたとしても、メインの民事事件のお客さんが寄って来るかどうかは分からないですよね。

うーむ、「医療事故と検察」エントリのほうでも感じたのですが、やはりan_accused様とは、考え方の根本が違いますね。大げさに言えば、世界観が違うというか。

私は、こんな仕事をしていながら何ですが、裁判そのものに対してあまり期待を持たず、社会の必要悪という認識です。国家の刑罰権の発動は少ないほうが望ましい。検察官よ、頑張るな。
特に、現状では刑罰適用性がない人まで刑務所へ行かされていることがあるが、行政や福祉等、他の手段で代替できるものは、できるだけ代替すべきである。
だから、司法改革の項目では、起訴を拡大する方向に進みそうな検察審査会の起訴強制に反対だし、裁判員制度は有罪率拡大の要因になるのではないかと不審の目で見ています。

an_accused様は、国民の司法参加は良識有る運用がなされるだろうという楽観主義。
また、医療事故調査委員会のような専門機関がない現状では、裁判の真相解明機能を活用するべし、というご意見です。

弁護士の考え方も一様でないと、皆様にお解りいただけると思います。
弁護士会はギルドであっても、個々の弁護士の思想・活動を統制する権限はありません。
日弁連会長といえども、ヒラの一会員に対する影響力の行使としては、説得によるのみ。
基本的に独立自営業者の集団(開業医と同)であって、雇われていない、ということが大きいです。「あんたから、給料をもらってへんわ」と言われたら、どうしようもないですもん。
法改正や新制度づくりの折衝では、弁護士会が一枚岩になれない点で、いつも裁判所・法務省(検察庁)連合軍に負けるんだよね。

念のため。
起訴強制は、2度の起訴相当議決です(不起訴不当ではないので救いですが)。
現実に起訴相当決議は極めて少ない(拘束力が与えられることによって増えるかどうかは読めない)。
検察が起訴しない場合と比較すべきで、そういう意味では付審判請求と比較すべきでしょう。これは公権力乱用等の犯罪の不起訴につき、被害者が直接裁判所に申し出、裁判所が裁判開始を決定したら、弁護士が検察官役になって訴訟遂行し、もちろん別の弁護士が被告人側にも付く。
裁判所が付審判請求を認める件数がここ何年もゼロですが、認められた付審判請求の有罪率(無罪率ではありません)は、たしかかなり低かった(40%程度ではなかったですかね、統計も調べずにすみません)。

ところで、埼玉新聞の報道だと少しニュアンスが違います。

-----
検察審査会は「歯科医は被害者の容体観察を怠り、漫然と治療を継続した過失によりアナフィラキシーショックの発症に気付かず救命措置が遅れた。直ちに救命措置を講じていれば、死亡という最悪の結果には至らなかった可能性がある」としている。
http://www.saitama-np.co.jp/news10/20/28x.html
-----

刑事で問えるかどうか、起訴出来るかどうかは難しいような気もしますが。


民事でも訴えているようなので、同種と思われる事例の判例のリンクを掲載します。
http://homepage3.nifty.com/medio/watching/hanrei/151016.htm

> yama さん (No.15のコメントについて)

 これまでの制度は、まさに「参考程度にとどめる」ものでした。最終的には検察官が判断しますので。今回の法改正は、それでは足りないと判断したということなのでしょう。国会議員や、その背後にいる国民が。

 検察審査会は、あくまで「裁判をすべきかどうか」の次元に留まるのに対し、今後は市民が直接裁判を行い、判決という結論自体を決めるという制度になるわけで(※一応は裁判官も議論に加わる形にはなるけど、裁判官はできる限り口を出すな、とにかく裁判員を誘導してはいかん、ということになっています)、裁判制度全体が、非専門家たる一般市民の関与を劇的に増やそう、国民の意見を強く反映させよう、という方向に変わってきています。この潮流の中で改正検察審査会法の施行を阻止するというのは、現実的には困難であろうと思います。一方、何事にも極端に触れるとされる日本人の特質からすると、法の施行直前になってマスコミがネガティブな報道を繰り返し、一気に棚上げ→廃止となる可能性もなくはないのかなあと想像(妄想?)しています。

> 裁判所が付審判請求を認める件数がここ何年もゼロですが、認められた付審判請求の有罪率(無罪率ではありません)は、たしかかなり低かった(40%程度ではなかったですかね、統計も調べずにすみません)。(No.47 オジヤマ虫さま)

有罪率を計ること自体が統計的に無意味というか、
付審判請求の申立ては毎年数百件されているが、認容(起訴決定)件数は戦後に制度ができてから17件しかないし、そのうち有罪になったのが8件だそうです。(2001年の文献から拾った数字ですが、その後、有罪件数は増えていないと思います。)

付審判事件の有罪率が低い原因の一つとして、検察官役を務める弁護士に対して捜査機関が非協力的であることが上げられています。
公務員犯罪(特に警察の違法捜査案件)を訴追することについて、当然ながら警察は全くヤル気がなく、頼んだ資料は出してくれるという程度のため、検察官役は非常にやりにくい、ということを聞きました。
やや古い本ですが。警察官が被疑者に暴行した事件で、付審判事件の検察官役を務めた弁護士の体験談。
三上孝孜、森下 弘 『裁かれる警察―阪神ファン暴行警官と付審判事件』日本評論社
http://www.amazon.co.jp/gp/product/453551075X/

検察審査会の新制度による起訴決議は、公務員犯罪に限られないので、警察も協力的に動いてくれるのでは。
(それが良いことかどうかは、わかりませんが。)

---------
> 埼玉新聞の報道「救命措置が遅れた。直ちに救命措置を講じていれば、死亡という最悪の結果には至らなかった可能性がある」
> 刑事で問えるかどうか、起訴出来るかどうかは難しいような気もしますが(No.48しま様)

毎日新聞のほうは、「ショックを予見しなかったことが過失である」というように読めますが(←医学的には予見は不可能と批判される)、
埼玉新聞の書き方では過失の中身が全然が違いますね。

「救命措置をとらなかった」という不作為を過失と捉えるためには、そのような作為義務があることが前提となります。
本件は医師ではなく歯科医師ですから、一般人以上の措置ができなくても、仕方がないでしょう。「業務上」の作為義務があるといえるのかどうかも疑問。
あるいは、救急救命士と同じ程度には、人工呼吸や心臓マッサージができなければならないかもしれませんが、
でも、それで、アナフィラキシーショックに適応するのか?

>あるいは、救急救命士と同じ程度には、人工呼吸や心臓マッサージができなけ
>ればならないかもしれませんが、
>でも、それで、アナフィラキシーショックに適応するのか?

これまでに何度もアナフィラキシーを目の前で見てきた経験から書きます.
アナフィラキシーショックであれば救急のABCつまりBLS(ベーシックライフサポート)が行えたとしても蘇生することは困難です.
すくなくともボスミン(アドレナリン)の投与は必須でしょう.気管支攣縮が生じればたとえ気管挿管していても換気不能になることもあります.
歯科や一般の医院では激烈な場合は救命は難しいと思います.
全身麻酔中のようにすでに気道確保されていても救命できる保証はないのが実際のところだと思います.

アナフィラキシーは予見することも不可能ですし,救命することも条件が整っていなければ非常に困難と考えるべきでしょう.(もちろん重症度によってそのレベルは異なりますが)

>YUNYUNさん、Level3さん
埼玉新聞の記事を読む限りではポイントは、

1.歯科医はアナフィラキシーショックに気が付く必要があるのか
2.歯科医はアナフィラキシーショックに対して救命措置を施す必要があるのか
3.救命措置を施さなければならないとしたら、どのレベルの措置が必要なのか

と言う辺りでしょうか。

>1.歯科医はアナフィラキシーショックに気が付く必要があるのか
>2.歯科医はアナフィラキシーショックに対して救命措置を施す必要があるのか
>3.救命措置を施さなければならないとしたら、どのレベルの措置が必要なのか

しまさん,
私の個人的見解ですが,1.は必要だと思います.2.も必要でしょうが,先に書きましたようにここだけの処置で救命できる可能性は低いように思われます.従いまして2.を行いながらQQ車を呼ぶ(蘇生できる技術のある人間+蘇生に必要な道具,薬剤を手配する)必要があると思います.

なお,予見に関しましては何度も書きますがほとんど「不可能」です.既往歴にあれば「その特定の薬剤を使用しない」ことはできてもそれ位でしょうね.

>なお,予見に関しましては何度も書きますがほとんど「不可能」です.

とのことですが、VIPに対する治療としてどうしてもその危険を回避せよと至上命題があった場合、その危険回避に対するコストはどの程度になるのでしょうか?

そのアナフィラキシーショックを未然に防ぐとすればパッチテストとか事前にテストすることが必要なのでしょうし、当該ショックが発生率が低いとするとそれより確率が高い危険に対しても事前検査が必要でしょう。
このアナフィラキシーショックは統計的な発生率はどの程度で、もっと発生率の高い危険を防ぐための検査項目はどれぐらいに及ぶのでしょうか?

これが明らかになれば非医師(歯科医師)にも審査会の不見識がよりわかりやすいのですが?

治療上代替の利かない薬などで、アナフィラキシーが出た可能性がある場合、アナフィラキシーの有無を本気で確認しなければいけないことはあります。

そのときは最低でも、これによって命を失う危険もあることを説明。
点滴を確保して、いつでも挿管(のどの奥・気管に管を入れて人工的に呼吸させること)できる準備を整える。心電図と酸素モニターを装着。麻酔のときに使う、自動血圧計もまきます。
その上で薄めた液を皮膚の上に載せるところからはじめて
濃度を濃くして、そのあと皮膚に引っかき傷をつけて液をのっけて・・・

数人で半日がかりです。
全ての患者の、全ての薬に対しこれをやっていられないというのは明らかだと思います

>そのアナフィラキシーショックを未然に防ぐとすればパッチテストとか事前
>にテストすることが必要なのでしょうし、当該ショックが発生率が低いとす
>るとそれより確率が高い危険に対しても事前検査が必要でしょう。
>このアナフィラキシーショックは統計的な発生率はどの程度で、もっと発生率
>の高い危険を防ぐための検査項目はどれぐらいに及ぶのでしょうか?

クルンテープさん,
場合によってはパッチテストでアナフィラキシーが起こってしまう危険性もあります.発症には抗原量に依存しませんので.もちろんテストでは出なくてもokという保証はありません.このような理由から,最近では抗生剤の皮内反応は行わないようになっています.投与してしばらくの間厳重に監視するのみです.あとは,既往歴をしっかり聴取しておくことくらいですか.
採血して血球で調べることはできますが,すべての患者さんに使用可能性のあるすべての薬剤について検査することは事実上不可能でしょう.
発生頻度というのは難しく,薬剤によっても頻度は異なります.例えば私が専門の麻酔領域ではアナフィラキシーを起こしやすい薬剤というものがいく
つか知られていまして筋弛緩薬(ベクロニウムやパンクロニウム),消毒薬(クロルヘキシジン)などが挙げられています.
日本人の場合クロルヘキシジンにアナフィラキシーを起こす確率が高く,以前は軽度(少し血圧が低下して蕁麻疹が出た程度)のものまで入れますと年に2例くらいは経験していました.最近はあまり経験がないんですが.
麻酔領域の発生頻度についてはフランスでのサーベイが論文になっているのを読んだことがありますが,手元にはありませんので詳細な数字については調べないと解りません.

繰り返しますが,発生した場合100%救命できる保証はありません.発生してもどうしても助ける必要があるような患者さんがもし仮にいたとすれば,そばに予めPCPSを組んで準備しておくことでしょう.ここまでやれば99%以上の確率で助けられると思いますが,普通ならこんなことするはずもありません.コストが全くみあいません.(PCPSのカニュレーションのできる心臓外科医がそばにスタンバイすることも条件です)

PCPSをスタンパイしておけば99%以上助けられるの「99%」は言い過ぎかもしれません.
「通常の場合よりは救命できる可能性はかなり上がる」に訂正しておきます.

No.55 立木 志摩夫さん、No.56 Level3 さん

御説明ありがとうございます。
少なくとも検察は御説明くださったことを理解して、不起訴としたんでしょうね。
検察審査会もきちんと説明を聞けば、医師のような知識が無くても理解ができると思うんですがね。

私は問題は非常に単純であると思います。
開業医に挿管の道具があるでしょうか?麻酔科や救急を回ったことのない医師・歯科医師が挿管を確実に出来るという保証があるでしょうか?そう言う意味では検察の判断は正しいと言えるでしょう。
よく飲み会で医師以外の方に言うのですが、飲み会で「医者がいるから何が起きても大丈夫」と医師以外の方は言います。そのときに私は「任せてください。心臓マッサージと救急車を呼ぶことくらいは出来ます」って言います(注:人工呼吸は必須ではありませんし、やっぱり抵抗ありますよね)。って、あれ?そんなこと一般の人でも出来ますよね?と思われますよね。その通りです。医師でもこれくらいしかできません(おまけに酔っぱらいです)。つまり、このケースの場合、せいぜい救急車を呼ぶことくらいしか出来なかったのではないでしょうか?とても5分での救命は不可能な話です。救急車を呼ばなかったなら過失に問われる可能性は無くもありませんね。いずれにしても刑事事件とするには根拠が無さすぎます。救急車を呼ばなかったという点を論点にしたうえで民事で争うべきではないでしょうか。おかしいと思った時点で救急車を呼んだのであれば必要なことを行ったとはっきり言え、歯科医の判断も正しいといえるし、民事でさえ争うことは意味がないと言えます。
予見は明らかに不可能です。この点については以前、私の言ったとおりです。予見可能とした審査会の判断は明らかに100%間違っています。

>yama先生

>開業医に挿管の道具があるでしょうか?麻酔科や救急を回ったことのない医師・歯科医師が挿管を確実に出来るという保証があるでしょうか?そう言う意味では検察の判断は正しいと言えるでしょう。

 それ以前に歯科医も挿管技術が必要ということで、歯科医に挿管実習させた札幌市立病院の麻酔科の先生が起訴されています。

 どちらかにしてもらえなければ歯科医も立つ瀬がないでしょう。

>(注:人工呼吸は必須ではありませんし、やっぱり抵抗ありますよね)

 実は私はディスポのフェイスシールドをいつも持ち歩いています(笑)。

level3先生にちょっと補足。

 PCPS(percutaneus cardio-pulmonary supportの略)を直訳すると経皮的循環呼吸補助装置です。要するに人工心肺の一種です。さすがに一般の方はPCPSの意味を知らないかと・・・

連投すみません。

 なお、アナフィラキシーショック時の挿管はそれ自体が危険を伴います。喉頭浮腫(声門の腫れ)を伴っていれば、声帯損傷->挿管のさらなる困難+呼吸困難の悪化の可能性もありますし、挿管の侵襲によって喘息発作を誘発することもあります。歯科の先生のように普段挿管をやり慣れていない方がこういう危険な挿管にトライすることはそれこそ「一か八かでやってもらっては困る」です。

僻地外科医様
>  それ以前に歯科医も挿管技術が必要ということで、
> 歯科医に挿管実習させた札幌市立病院の麻酔科の
> 先生が起訴されています。

情報ありがとうございます。上記の詳細分かりますでしょうか?とても気になります。
歯科とはいえ、歯科麻酔や口腔外科分野での挿管技術は必須ですし、法的に可能なわけですよね。何故これで起訴されるのかが文面をとらえただけでは不思議に思えます。別件でとがめられたというのであれば分かりますが、挿管は指導医の元で法的に可能な者が行ったと言えば合法的と思います。いかがでしょうか?私自身、麻酔医から挿管を教わりました。これが実習でなくて、何というのでしょうか?そもそもそれが認められなければ新たな医師・歯科医師は挿管を認めないと言うのと同じではないでしょうか?

僻地外科医先生,
補足ありがとうございます.

>なお、アナフィラキシーショック時の挿管はそれ自体が危険を伴います。喉頭
>浮腫(声門の腫れ)を伴っていれば、声帯損傷->挿管のさらなる困難+呼吸困
>難の悪化の可能性もありますし、挿管の侵襲によって喘息発作を誘発すること
>もあります。歯科の先生のように普段挿管をやり慣れていない方がこういう危
>険な挿管にトライすることはそれこそ「一か八かでやってもらっては困る」で
>す。

喉頭浮腫は恐ろしいです.さらにアナフィラキシーでは気管挿管できたとしても末梢気道の攣縮(言ってみれば喘息発作の強烈なもの)が生じると換気できません.
どれだけ恐ろしいか,体験しなければ解らないでしょう.
少なくとも換気できなければ助けられませんから「一か八かでやってもらっては困る」なんて言っていたら助けることは不可能なんですけどね.こういった医療現場のことは片岡判事には解らないんでしょうね...

現場の人間がベストを尽くしたならそれで良いじゃないかと思いますが、一般の人にはそれは伝わらないのでしょうね。

> 歯科医も挿管技術が必要ということで、歯科医に挿管実習させた札幌市立病院の麻酔科の先生が起訴されています。(No.60 僻地外科医さま)

不明にも、歯科医師らの間に、救急救命措置を学ぼうという機運があることを、初めて知りました。(口腔外科では全身麻酔も行うというのが、驚き。)
歯科医師と医師とでは養成コースが違いますが、救急救命措置を学ぶのに支障はないと考えられているのでしょうか?
むろん、歯科医師過程で前提とされる基礎医学知識があるものなら、救急救命の技能を身につけてもらったほうが、患者の安全のためになると言えます。

一審札幌地裁は罰金6万円の有罪判決。挿管は医業であって、歯科医業ではないから、およそ医業を扱えないはずの歯科医に研修させてはならない、という原則論です。
一方、厚生労働省は、一審判決後の平成15年9月19日に、救急研修ガイドラインを出して「こういう条件で研修してよし」と言いました。
http://dentalclub.jp/notice/log/2006/08/post_13.html

しかし、札幌地裁判決の基準では歯科医師は研修として見学くらいしか許されないのだから、ガイドラインのやり方でも違法になるのでは?
裁判は控訴中とのことですが、結果どうなったか、ご存知の方は教えていただけないでしょうか?

> どちらかにしてもらえなければ歯科医も立つ瀬がないでしょう
その通りですね。
a)歯科医師の救急救命措置を正面から認めてきちんと研修させた上で、救命措置を行わなかった場合に専門家としての責任を問うこととする
b)歯科医師にとっては救急救命措置は業務ではなく素人と同じ立場だから、救命措置をしなくても(救急車を呼ぶくらいはすべきだと思いますが)、刑事責任を問いえないと構成するか。
★業務に当たらないとした場合に、単純な過失致死罪が成立しないかという問題がありますが、この場合は一般人が目の前で麻酔ショックに陥った人に対して何もしてあげられなくても一切刑事責任を問われないのと同様、歯科医師にも責任を問えないと考えます。

a)かb)かについて、私は、
将来的に全ての歯科医師が救急救命研修を義務づけられるようになれば別ですが、現状においては全員が研修を受けるわけではなく、
本件のように、単なる虫歯治療の麻酔でも重篤なショック症状が出るケースがあることを考えると、
b)刑事責任を問うべきでない、という考えです。

------
ところで、素人の疑問。

挿管はなぜ麻酔医の領分とされているのですか? (救急というのは理解できますが)
呼吸が止まった患者は、内科でも外科でもありそうに思うのですが。

> 歯科とはいえ、歯科麻酔や口腔外科分野での挿管技術は必須です(No.63 yama様)
ここでyama様のおっしゃる「歯科麻酔」は、さいたま事件のような開業医の虫歯治療のケースも含みますか?

根本的な疑問ですが、なぜ医科と歯科とで資格が分かれているのですか?
少なくとも「口腔外科」はアゴの骨まで診るし、医師の外科医なみに大がかりな手術もするというなら、歯科ではなく外科にやらせるべきではないのですか?

>ところで、素人の疑問。
>挿管はなぜ麻酔医の領分とされているのですか? (救急というのは理解でき
>ますが)
>呼吸が止まった患者は、内科でも外科でもありそうに思うのですが。

麻酔科医としてコメントします.
気管挿管は医師であれば誰でも行えるものです.単に麻酔科医は毎日毎日全身麻酔の一環として行っていますので,最も熟練している(経験数が多い)というに過ぎません.

2ちゃんねるに関連スレッドがありましたね
http://school.2ch.net/doctor/kako/1026/10268/1026893623.html

160や193あたりの情報が核心に触れていそうですが
ソースが曖昧なため鵜呑みにするのも考え物ですね

> No.67 YUNYUN さん
開業医レベルでは挿管はほとんど不可能でしょう。ただ、経験ある場合は積極的に行うべきと考えます。
ともかく、歯科医はほとんど救急を経験しません。ただ、救急しかという分野があるのかどうかは私には解りません。ところが、口腔外科領域には立派な歯科麻酔科や口腔外科の領域があり、口腔外科では医師と歯科医の両方が対応しています。そして、挿管は合法なはずです。実際に多くの歯科医が挿管を練習します。麻酔については当然全身麻酔も勉強しますし、実践も行います。内容はほとんど医師の麻酔科と変わらないと聞いています(この点については少し情報不足)。
おそらく、上の刑事事例は、医科の分野で歯科医が挿管するのは違法という判断なのでしょう。しかし、前例がない上、解釈上は合法とも取れる内容で刑事処分というのはおかしな話ですよね。厚生省がガイドラインを出しているのなら話は別ですが。

歯科麻酔については下記参照
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdsa/public/index.html

 喉頭浮腫が疑われるような中等症〜重症のアナフィラキシーで、歯科の先生に気管挿管まで要求しても、それ以前にラインがとれるんですかね?とほほ。ボスミン&アタP筋注、酸素投与で改善しなければ昇圧しつつ救急車を待つ、で駄目なんですかね。ほんと現場軽視も甚だしい。

 幼児の高度喉頭浮腫に、経鼻ファイバーガイド下で2.5mm(超未〜極小児用)チューブをブラインド挿管成功したことありますけど、あんなの歯科の先生どころか、もう一回成功させろと言われても、そうそうできませんよ。尿道に視界が悪い側から45度でストローつっこむような物じゃないですか?(^^;

 ちなみにそのケースでは3.5mm(成熟新生児用)は入りませんでした。

>小児科10年目さん
>喉頭浮腫が疑われるような中等症〜重症のアナフィラキシーで、
>歯科の先生に気管挿管まで要求しても、それ以前にラインがとれるんですかね?

今回の事故がそのようなケースだったかは報道されていないわけですが

>しまさん

 当日に死亡するような幼児のアナフィラキシーとすると、少なくとも中等症〜重症の可能性が極めて極めて高いと推測できます。

 アナフィラキシーへの対応は、「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」がよくまとまっていますので、もしよろしかったらご参照ください。
http://www.chemotherapy.or.jp/journal/reports/hinai_anaphylaxis_guideline.pdf

yama様(No.70)
解説ありがとうございました。

> 口腔外科領域には立派な歯科麻酔科や口腔外科の領域があり、口腔外科では医師と歯科医の両方が対応しています。
> そして、挿管は合法なはずです。実際に多くの歯科医が挿管を練習します。
> おそらく、上の刑事事例は、医科の分野で歯科医が挿管するのは違法という判断なのでしょう。

札幌の研修会は救急医療の場で行ったものでしたが、札幌地裁の解釈でも、口腔外科で行う研修ならば歯科分野だから合法とされるはず、いうことですね。
医科と歯科との業務を厳密に分ける考え方によれば、
例えば、歯科の治療中に、歯科治療と無関係に持病によりブッ倒れた患者さんに対して、歯科医師がたまたま身につけている挿管技術により蘇生を施すことは、医科分野への侵入であり傷害罪?の構成要件に該当すると評価されるでしょう。(緊急行為として違法性は阻却されるのではないかと考えます。)

しかし、研修の問題は、急変した患者を扱うための実践的な技術を学ぼうという場合に、どこに行けば事例に出会えるかということです。
救急科で待機しておれば、次から次へと措置を要する急患が来て、材料に事欠かないでしょうが、
口腔外科で待機していても、通常の手順通りの患者が大半で、急変事例はめったにお目にかかれない。それでは現実に研修が成り立たないので、歯科医は緊急対応はせんでよろし、ということになってしまう。

通常麻酔科や外科以外の医師の場合挿管というと救急対応がほとんどになるわけですが、逆にそうした医師ほど麻酔科研修等で予定手術の挿管手技に慣れておくべきだと思いますね。十分に麻酔深度があり事前に状態評価も出来ており準備も万全という最善の状態で経験を積んでおかないと、いきなり何が起こるか判らない救急現場でやれといわれても無理ですから。

かくいう自分も麻酔科で200ほど全麻の症例を経験させてもらって挿管やら術後の全身管理やら学ばせてもらったようなものです。今はお客様研修が増えているようなので上の先生も対応が難しいのでしょうが、少なくともやる気のある研修医は未熟ながらもそれなりの経験が積めるように制度的にも守り育てる体制を整えられたらと感じています。その意味でも昨今の何でも裁判沙汰という風潮は非常に困惑するわけなのですが…

>小児科10年目先生

> アナフィラキシーへの対応は、「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」がよくまとまっていますので、もしよろしかったらご参照ください。

 このガイドラインには載っていないのですが、アナフィラキシー時にはとにかくやれることは何でも・・・という考えで私がやっている方法

-> ボスミンの吸入です(成人では原液、小児では体重に応じて希釈し1ml)。ボスミンの気管内投与は静注と同等の効果があると言われてますので、吸入でも効果があるだろうという考えでやってます。また、粘膜浮腫を軽減する可能性があると思います。

>しま様

 アナフィラキシー時の死亡原因は大きく分けて2つあり得ます。
1.血漿成分の血管外漏出によるショック(血圧低下)
2.気道粘膜浮腫&気管支平滑筋の過敏性による気道閉塞

で、小児の場合特に2が起きやすいのです。何故かというと、もともと小児の気道は成人に比べ狭いので、ちょっとした浮腫でもすぐ完全閉塞に陥りやすいからです。

ゆえに小児がアナフィラキシーショックでなくなった・・・と言う情報がある場合、大抵医師は喉頭浮腫による気道閉塞が原因だろうと推測します。その部位が最も死亡原因になりやすいからです。

> No.74 YUNYUN さん
私はそのように解釈しています。とはいえ、そんなことをしてはいかん!なんてことはどこにも書いていません。あくまでも今後、どうするかという解釈がそのときにできあがったことであり、厳密にはその救急医を刑事事件として取り上げたことは事後法にならないでしょうか?だとしたら救急医を裁くことは法治国家としての重大な犯罪に当たるのではないでしょうか?

こんにちは、整形Aです。

札幌の研修医の事件ですが、あれがなぜ事件として扱われたというと、どこかの新聞社のキャンペーンが元だったような記憶があります。
まあ、要するに医療バッシングをやりたかった。それで歯科医に医療行為をさせていると・・・。
マスコミに騒がれると、警察も何かやらないわけにはいかないので、挿管を槍玉にあげた。そんな構図だったと思います。

その新聞社は、その前には大学病院医師の名義貸しについてキャンペーンをやっていたはず。
名義貸しがだめになって、道内、特に僻地の病院はばたばた潰れてしまいました。まあ今日の僻地の医療崩壊の先鞭をつけたわけですね。

それでも新聞社は自分たちに責任を何も感じていないとしたら、それこそ非人道的ですね。責任を感じているんでしょうか、新聞社は。それとも医療関係者や役人に責任転嫁をしようとしているのでしょうか?
前者だとしたらとんでもない極悪人ですね。マスコミは第四の権力と言うことを自覚して欲しい。そして責任というマスコミが最も疎い概念を自ら感じて欲しい。いつまでも他人に責任をなすりつけないで欲しい。発言するからには自分たちの責任を果たして欲しい。こんな人間として当たり前のことがマスコミは出来ていません。

 ちょっと,時間がたってしまいましたが,ここのブログの多くの医師の方とは反対に,わたしはこのさいたま検察審査会の議決は間違っていないと判断します.
 結構長くなってしまいましたが,まともな議論をするには,これくらい饒舌にならざるをえないことと,もともと持っている情報量の違いです.
 以下,その理由を記します.
 このさいたま検察審査会の議決は間違っていないと判断します.
以下,その理由を記します.

 1)「日本法医学雑誌」60巻2号に,この事案の司法解剖結果の報告が掲載されています.ここでは,死因はアナフィラキシー・ショックと判断していますが,同時に「適切な初期治療・蘇生処置を施行していれば救命できた可能性は高いと考えた.しかし,本事例はエピネフリン皮下注射,酸素投与や気道確保等を施行しておらず,特に治療終了後ラバーダムシートを除去するまで患児が心肺停止状態に近かったことを認識していなかった.これらの行為は患児の全身管理を怠った医療過誤行為に該当すると判断した.」

2)同報告では「女児は治療開始直後も暴れていたが次第に沈静化し話し掛けにも応じなくなった.約30分間治療を施行した後,ラバーダムシートを除去したところ,女児の顔色不良に気が付き,救急車要請,(略)」と事例の概要を示しています.

3)この経過から,女児はアナフィラキシー・ショックを発症してから少なく見積もっても10〜20分程度,歯科治療が続けられていた,換言すれば,歯科医は女児の急変に10〜20分気づかずに治療を継続していたと考えられます.

4)予見可能性に関して.
予見可能性は,当該女児がアナフィラキシー・ショックを発症するか否かを予想することではなく,一般に局所麻酔剤使用時にアナフィラキシー・ショックを発症することがあるということを知っていることです.そして,それを前提に患者のvital signの確認等を行っているかという点を考えねばなりません.予見可能性としては,アナフィラキシー・ショックを起こすことがあり得ることを前提に患者の全身状態の観察を充分に行っているかが問われることになります.
本件では,局所麻酔剤を使用した以上,アナフィラキシー・ショックを起こす可能性はあり,それにも関わらず,歯科医は「体幹部と両上肢をバスタオルで包み全身を固定し(事例の概要)」,患者の全身状態の管理を怠り,患児がアナフィラキシー・ショックを発症したことに気づかないまま,漫然(よく弁護士や検事が使う言い方)と歯科治療を施行した過失があったと考えられます.

(続く)

(承前)

5)結果回避可能性について
早期の発見がそのひとつになりますが,医療機関として救命処置がどの程度行われたかが検討課題になるでしょう.この場合,現在の歯科開業医の設備・技術水準で考えるのではなく,アナフィラキシー・ショックを起こしうる薬剤を使用するうえでの医療水準を考えるべきです.それは,ICUやERなみの設備を持つことではなく,心電図モニターやパルスオキシメーターを用意し,基本的な薬剤の使用法を学んでいることになるでしょう.歯科医であろうと,アナフィラキシー・ショックを起こしうる薬剤を使用する以上,緊急時にラインを確保し,エピネフリン(ボスミン)や副腎皮質ホルモン(ソルコーテフ等)の投与程度はできるようになっているべきではないでしょうか.
本件では,歯科医師はmouse to mouse人工呼吸と閉鎖式心臓マッサージを行ってはいますが,アンビューバッグや酸素ボンベ等の用意はなく,ラインの確保も行われていません.
局麻剤の添付文書には「異常が認められた場合に直ちに救急処置のとれるよう,常時準備をしておくこと」とあります.また,これは民事訴訟での最高裁判決(平成8年1月23日)ですが,「医療水準は,医師の注意義務の基準となるものであるから,平均的医師が現に行っている医療慣行と必ずしも一致するものではなく,右医療慣行に従った医療行為を行ったからといって,医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない」と考えられるので,そのような救急処置の用意がないのは開業歯科医としては一般的であろうと,それは求められる医療水準(直ちに救急処置のとれるよう,常時準備をしておく)を満たしていないと判断できます.

6)ちなみに,しばしば「法医の医者は臨床を知らない」と批難するお医者さんがいますが,前記の司法解剖の結果を報告したのは元小児科医ですので,小児救急に関してはそれなりの経験をお持ちのはずです.

7)報道について
今回の毎日新聞の報道では触れられていませんし,それがここでの皆さんのコメントをミスリードしていることになりますが,ここまで医療集中部watcherが記したように,この事故では,顔を覆い口腔内だけしか直視できないラバーダムシートの使用と,タオルによる全身の抑制が,アナフィラキシー・ショックと並ぶ問題になります.この記事にはこのラバーダムシートの使用とタオルによる抑制については書いてありません.新聞等のデータベースを検索しても,この事故に関する新聞報道は,麻酔ショックに偏り,ラバーダムシートや抑制のために発見が遅れた過失にはあまりふれていません.
「週刊朝日」2005年2月11号にこの事件の父親が経過等を話しています.被害者の家族の言葉は常に割り引いて読まねば(聴かねば)なりませんが,参考にはなります.

(続く)

(承前)

8)判例:(_地裁平成17年7月14日判決,∧_地裁平成18年4月20日判決
福岡地裁の上記ふたつの判決は,同じ歯科医療事故(2歳児が歯科治療中に急変,死亡した)に関するもので,話甘歯科医のひとりに対して,△脇瓜件の理事長に対するものです.この事故の判決を知ることは今回の深谷の事故を考える上で必須です(知らないでこの事件を論じてはいけないくらいです).,糧酬菫簡犬枠單脹冀忙瓩痢峽沙医療過誤供徃塾礇織ぅ爛瑳劼房録されています.蛇足ですが,この本も医療事故の刑事処分を考えるうえで必読です.

9)福岡の事件は,2歳女児がレストレイナー(身体抑制具)で抑制されたうえ,ラバーダムシートを装着されて歯科治療を施行され,治療終了後に歯科医が,患児の呼吸停止に気づき,救急病院に搬送されたが,結局死亡したというものです.
死因は,司法解剖ではアナフィラキシー・ショックとされましたが,判決では急性循環不全の原因は,アナフィラキシー・ショックかラバーダムシートによる窒息かは特定できないとしています.
この事件では,抑制・局麻剤使用から,治療終了,患児の呼吸停止発見まで20〜30分程度かかっています.また,診療システムとして,ひとりの患者に複数の歯科医師が交代でつき,歯科医は患児を継続して観察していませんでした.そのためにかえって,2歳児が急性呼吸循環不全に陥ったときに処置をしていた歯科医師が誰か特定することが困難となり,結果,当該歯科医師が処置中に急性循環不全が発症したと立証しきれず,業務上過失致死で起訴された医師は無罪になりました.

10)ところが,福岡地裁平成18年4月20日判決は,新聞記事によりますと,同歯科医院理事長に対して,「一般の歯科医院より医療事故が起きる危険性が高い分担医制を採用していたのに、医師らを指導監督する注意義務を尽くしていなかった」と指摘して,理事長に対して罰金30万円の支払いを命じています.報道を思いっきりまとめてしまうと,児の観察を頻繁に行っていれば,早期に児が急性呼吸循環不全に陥ったことに気づき,救命措置がとれたはずだと考え,それができない診療システムにしていた理事長に責任があるとされた,ということだと思います.
この判決文も早く入手したいところですが…….あっ,ルートがあった…….

(続く)

(承前)

11)実は,医療集中部watcherは,ちょっとした必然性から,歯科医療死亡事故例を調べたり,歯科の先生にインタビューしているのですが,歯科医は診療中のアナフィラキシー・ショックや「急変」に対する意識が低すぎます.蘇生に使うアンビュー・バッグは1セット10万円以下で買えますが,どれくらいの歯科医院で用意しているのでしょうか.

 12)端的に書こうと思っていたのですが,結局3,000字を超えてしまいました.

 13)医療集中部watcherは,医療事故に対して刑事処分は相応しくないと考えていますが,基本的な注意義務を怠ったあまりにもお粗末な死亡事故には,やはり,何らかの刑責が生じるべきだとも考えます.その「基本的な注意義務」の線をどこに引くかはまた議論があるとは思いますが,例えば,塩化カリウムをワンショットしてしまった死亡事故,10%キシロカインの静注を指示してしまった,というケースはやはりお医者さんとしてまずいのではないか,と考えます.その結果罰金50万円くらいならむしろ責任を自覚するためにあってもいいと思っています.

 14)ただ,現行の医道審議会の行政処分は,罰金50万円にはほぼ自動的に医業停止1年がついてきます.これでは,その間臨床のトレーニングすらできませんから,いかがなものかと思います.本年4月この点については医師法改正が予定されていますので,どのような運用になるか注目しています.

 15)おまけですが,このさいたまの事件は民事の損害賠償請求訴訟が進行中です.原告側弁護士はあの赤松岳弁護士です.

 16)最後まご精読ありがとうございます.

(終わり)

うんうん。すごく勉強になります
ありがとうございますです。

>医療集中部watcher さん

>アナフィラキシー・ショックを起こしうる薬剤を使用するうえでの医療水準を考えるべきです

歯科医はアナフィラキシー・ショックを起こしうる薬剤を使用することを業としているので、それに対する、対処が必要

という論理が成り立てば、

蕎麦屋はアナフィラキシー・ショックを起こしうる蕎麦を提供することを業としているので、それに対する、備えが必要

ともいえます。

歯科医は、基本的な医学知識を有するはずの、国家資格ですから、医療事故に対処する責任は、一般人よりは大きくなるとは思いますが、医業の資格は無いため、医師よりは要求されるレベルは低くなると思います。実際、どの水準からの、注意義務違反を刑事罰とするかは非常に判断が困難なのではないでしょうか。

この事件が刑事裁判となれば、新たに歯科医にとってのJBMが増えますから、他の歯科医にとっては、有用な面もあるかもしれませんが、ただでさえ経営の苦しい歯科医の逃散(廃業)を呼ぶ結果となるのでは?
ただし、淘汰によって医療事故に対処可能な歯科医が多く残れば、患者さんにとっては有用なことになるのですが。

先生に提示していただいた情報から、検察審査会の判断にも理があることが、理解できました。やはり報道のみを元に議論を進めるのは、危険ですね。

医療集中部watcher さま、詳しい情報をありがとうございました。

失礼ですが、医療集中部watcher さまは、医療関係者の方ですか?
差し支えなければ、お立場を明らかにしていただけると、ご主張の筋がよりよく理解されると思います。
つまり、ご主張のうち、どの部分が専門的な知見に基づくご判断で、どの部分が一般市民的な感覚によるご意見なのかを、区別したいと思いますので。
あなたは、次のどの区分に該当しますか。
 1)医師または歯科医師
 2)実務法曹、法律学者
 3)その他  
また、できましたら、医師である場合は診療科目、実務法曹の場合は職種の別も明らかにしていただけれると、大変助かります。
ここではなく、足跡帳のほうにご記入くださっても結構ですので、ぜひよろしくお願いします。

埼玉新聞の報道(No.48 しま様ご紹介)に出ていた内容ですが、
> 歯科医は被害者の容体観察を怠り、漫然と治療を継続した過失によりアナフィラキシーショックの発症に気付かず救命措置が遅れた。

これの、具体的な態様が解りました。
> 司法解剖結果の報告 「治療終了後ラバーダムシートを除去するまで患児が心肺停止状態に近かったことを認識していなかった」
> この経過からすれば、・・・歯科医は女児の急変に10〜20分気づかずに治療を継続していたと考えられます.(No.80 医療集中部watcherさま)

----
論点1 予見可能性

医学的に、「アナフィラキシー・ショックを発症するかどうかを、事前に知ることはほとんど不可能に近い」ということは一応、通説的見解であると思います。

その上で刑事の過失責任を問うためには、行為者が予見すべき内容は
No.80 医療集中部watcher さまがおっしゃるように、
> 当該女児がアナフィラキシー・ショックを発症するか否かを予想することではなく,一般に局所麻酔剤使用時にアナフィラキシー・ショックを発症することがあるということを知っていること
と解するしかないでしょう。

人間という生物が麻酔によってショックを発症しうる可能性があることは、現代社会では医療関係者の専門知識というよりもはや一般常識的でありますが、
予見の内容をこのように解するのでは、「予見可能性」の条件は無いも同然です。
反対に、当該患者の具体的な発症予測が必要と解するならば、麻酔事故はおよそ予見可能性がないためオール刑事免責となってしまいます。

> 予見可能かどうかが問題なのではなく、アナフィラキシーショック後の対処がどうだったかが問題と思います(No.1 yama さま)
というご意見もありますので、予見可能性についてはそれほど厳密に要求すべきでないという考え方が医師の皆さんの主流でしょうか?

なお、裁判所は特に医師の専門的行為に関しては、予見しなければならないレベルを非常に高く設定しているようですから(割り箸事件など)、
本件が起訴された場合に予見可能性を否定することは、まず無いだろうと思います。

-----
論点2 救命可能性(結果回避可能性その1)

司法解剖報告では、
> 「適切な初期治療・蘇生処置を施行していれば救命できた可能性は高い」
また、なすべき処置として、
> 「エピネフリン皮下注射,酸素投与や気道確保等」
を挙げていますが、この点について、他の医師のみなさんのご見解はいかがでしょうか?

私は、これまでの議論からは、
アナフィラキシーショックに陥った患者の救命は設備の整った病院でさえも困難であるから、手を尽くした結果が悪くても過失とみるべきでない、というニュアンスに受け取っていました。

> 救急のABCつまりBLS(ベーシックライフサポート)が行えたとしても蘇生することは困難です.
> すくなくともボスミン(アドレナリン)の投与は必須でしょう.気管支攣縮が生じればたとえ気管挿管していても換気不能になることもあります.
> 歯科や一般の医院では激烈な場合は救命は難しいと思います.(No.51 Level3 さま)

-----
論点3 作為義務(結果回避可能性その2)

歯科医師としては何をしていれば「手を尽くした」ことになるかについては、
私は、歯科医師が医師ではないことを前提として、「速やかに救急車を呼ぶ」程度で足りるかと思っていました(No.50後段)。

もっとも、この説をとっても、本件では少なく見積もっても10分以上、急変に気づかず、救急車を呼ぶのが遅れたという点で、過失アリとされる可能性があります。(少なくとも、民事上は大いに問題になることでしょう。)

これに対して、No.81 医療集中部watcher さまのご意見は、
> 心電図モニターやパルスオキシメーターを用意し,基本的な薬剤の使用法を学んでいることになるでしょう.歯科医であろうと,アナフィラキシー・ショックを起こしうる薬剤を使用する以上,緊急時にラインを確保し,エピネフリン(ボスミン)や副腎皮質ホルモン(ソルコーテフ等)の投与程度はできるようになっているべきではないでしょうか

これに対する疑問として、
(1)上記は歯科医師の治療行為の範囲であるか?(歯科医師は医療行為はできない)
(2)歯科医師の治療行為の範囲に含まれるとすれば、歯科医師はその技術を身につけなければ麻酔治療を行ってはならないと解してよいか?
そうすると、虫歯治療専門の普通の歯科医であっても麻酔事故への対応技術を身につける必要があるが、現在の歯科教育カリキュラムはそれに対応しているか? 
(3)歯科医師の治療範囲を超える、または、歯科医師の通常の教育課程で教えないとすれば、特別に研修を受けた歯科医か、または麻酔医を雇うのでなければ、歯科医を開業できないこととなるが、そのように解すべきか?
cf.「歯科医師は研修を医療機関(救急施設)で受けてはならない」という裁判例(No.67、70の裁判例)がある。

つまり、私は、そういう要求は歯科の医療現場の実態に合わないことだろうと思うのです。

No.82 医療集中部watcher さまのご紹介の判例は、いずれも、「急変に気づくのが遅かった」事案であり、
裁判所が歯科医師の救命活動としてそこまで要求しているかどうかは、この判例だけからは読み取れないと考えます。

医療集中部watcher さんに質問ですが,
激烈なアナフィラキシーショックの患者さんを体験したことがおありでしょうか? (医療関係者と仮定しての質問ですが)

麻酔科医を20年以上やっていても,アナフィラキシーショックの患者さんを確実に助けられる自信はありません.

>司法解剖報告では、
>> 「適切な初期治療・蘇生処置を施行していれば救命できた可能性は高い」
これがどのような所見に基づくものか不明ですが,このようなコメントはアナフィラキシーでなかった場合でなければできないと私は考えます.解剖所見でアナフィラキシーの救命性が断言できるようなものではありません.アナフィラキシーの病態は時々刻々と変わりますし,治療によっても修飾を受けます.蘇生操作による2次的な変化も加わります.そのような時系列的変化が死後の解剖で断定できるものではないからです.
アナフィラキシーに関しては解剖で解ることはわずかであろうと私は考えています.こういって点は心筋梗塞や脳梗塞などと異なります.
もし,この点に関しまして法医学の先生の反論があれば書いて頂けると有り難いです.

 No.86 YUNYUN さんへ

 わたしは,昭和の終わりから平成の頭に医学部に在学した医師です.
 専門科目は…….
 ちゃんと書くと簡単に身許が同定されそうなので,あいまいに…….
 現在はいわゆる社会医学の一分野に籍を置いています.
 以前は,会員数5,000弱,専門医数1,400程度のマイナー外科医をやっていました.その専門医にはなっています.
 
 残念ながら法曹資格はないですし(あと,10年早かったら法科大学院に入学したのですが),法学者と名乗るほど法学に通じてはいませんが,年報医事法学から原稿を依頼されたことはあります.
 医療事故に関連することなら,一般の弁護士さんより詳しい(はず)です.

>医療集中部watcher さん

 お手数ですが足跡帳のほうにも同じ内容でけっこうですからご記帳いただけますとうれしいです。

No.88 Level3 さんへ

倖いにして「激烈なアナフィラキシーショック」の患者さんに遭遇したことはありません.
「アナフィラキシー・ショック」でしたら,自験例では,全麻中に1件(第一助手で入っていたケース),局麻中に1件(術者でした.オペ室でしたの麻酔科の先生に助けていただきました)が記憶にあります.
あと,ボスミン肺水腫っていうのもあったけ.

アナフィラキシー・ショックについての救命可能性を考えるのであれば,
アナフィラキシー・ショックの救命は困難,あるいは不可能なのではなく,
一方,アナフィラキシー・ショックは確実に救命できるわけでもなく,
救命できることもあれば,困難なこともある,不可能なこともある,わけで,その蓋然性はどの程度かを事例ごとに検討しなければならないでしょう.
であるのに,いつの間にか,アナフィラキシー・ショックは一般に救命困難である,というような認識にみんななってしまってはいませんか?

解剖鑑定は,解剖所見のみならず,診療記録,検査記録,警察調書等を参考になされます.それらを検討したうえでの防衛医大の鑑定はそれなりの意義があると考えます.

刑事事件ではないのですが,民事訴訟では,
患者さんが検査室でアナフィラキシー・ショックで死亡した場合でも,適切な処置が適切に開始されたと認定され,請求が棄却されたケースが複数あります.
適切な処置が遅れたと認定されて請求が認められたケースもあります.

医療集中部watcher さんの言っていることは正しいことの一部(一部が正しい、ではありません)と言えるでしょう。
しかし、社会的背景が抜けています。残念ながら大部分の臨床医を納得させるには不十分と私は思います。
まず、歯科医の年齢です。高齢であればアナフィラキシーショックの対処法を知らないかもしれません。歯科医のすべてが救急を回っているとは思えないからです。診断→治療まで往くのは実践も必要です。一番正しい処置は開業医においては「救急車を呼ぶこと」かもしれません。
確かに医師は最新の情報を網羅しておくべきです。しかし、現実的にはすべての情報を網羅できるとはとうてい考えられません。地方ではそれは顕著でしょう。一般的な歯科開業医のレベルにあわせて判断すべきと私は思います。

問題提起という意味では非常に貴重な医療事故ではありますし、今後の対処に役立つでしょう。しかし、罰するという意味においてはこの歯科医を罰することは正しいことでしょうか?でないと、歯科崩壊を招くと言うことは他の方と同じ意見です。言い方は悪いですが、青臭い正義感は時に社会的に悪いことを招いたりするのです。
すでに歯科の保険点数はかなり削られていて、保険外か非合法的にやらないと黒字を生み出すことはできません。そこまで切迫している事情も考慮する必要があります。そのような事情の中で救命器具をすべての診療所におくことは不可能です。

追記
10万円以下で救命器具が購入できるのですが、財政的に許されるとしてもその知識は一般歯科医に浸透しているでしょうか?これはここの歯科医の責任と言うより、私はその啓蒙活動を怠った厚生省にあると思うのですが・・・。

>であるのに,いつの間にか,アナフィラキシー・ショックは一般に救命
>困難である,というような認識にみんななってしまってはいませんか?

医療集中部watcher さん,
おっしゃっていることはある程度正しいですが,こういったところ(ニュースとして我々に)に見えてくるという時点でかなりフィルターが掛かっていると考えるべきです.
つまり,軽症のアナフィラキシーでボスミンを打つまでもなく救命できる(死に至らない)程度のアナフィラキシーは,蘇生に慣れていない医師でも「怖い目にあったね」で済んでしまうくらいのものですし,当然ニュースにもなりません.この程度のアナフィラキシーでも「やはりアナフィラキシー」です.(好中球トリプターゼを計測しなければ確定診断できませんが)
また,適切な治療(ボスミン投与を含む)によってのみ救命できる場合もあれば,それでもなおかつ救命できない場合もあるわけです.(PCPSや人工心肺が直ちに準備できれば救命確率は高くなるでしょうが,一般的医療ではそこまで望めないでしょう.)ニュースになって出てくるのはほとんどが「死亡例」ですし,これらはアナフィラキシーのうちでも最重症の部類のものがほとんどではないですか?
つまり,「アナフィラキシー全体からみると救命できる(というか死なない)ものは相当ある」が「激烈なアナフィラキシーは,運が良くなければ助けられない」という事です.

2年ほど前に経験したアナフィラキシーでは換気不能で,ボスミン投与によりかろうじて救命できましたが,これが手術室でなく,麻酔中でもなければ無傷で助けられた可能性は非常に低かっただろうと後から背筋が寒くなりました.他にも何度か「本当に恐ろしい目」に遭いましたが,それ以外の多くのケースでは手術室で起こっていることもありますが治療に困ったことはありません.激烈なものはアナフィラキシー全体の一部に過ぎないと考えています.

放置すれば死に至るくらいのアナフィラキシーの患者さんを目の前にして,適切に治療して救命できる医師は医師全体の何%くらいでしょうか?
私はそれほど多いとは思いませんが...

まったく素人考えで申し訳ないのですが、提案?が有ります。

エントリーの(埼玉県深谷市の)歯科医は、患者にゴムマスク?を被せて体をタオルで覆い、拘束していたのですよね。
それを使わない治療法も有るわけで、歯科医が業務のために意図してそれを選択し行っていた。

業務上の注意義務とされる条件が、この点でアナフィラキシーショックを観察するべき一般の人、患者、あるいは蕎麦屋とは、相当違うのではないでしょうか。

また歯の治療中に呼吸や脈を診て救急車を呼ぶ、といった事は、その意識さえあればなんでも無い事に思えます。

起訴されたらほぼ有罪でマスコミからは犯人扱いと言った情勢では、その歯科医が気の毒で認識を改める必要を感じますし、その歯科医が逮捕とか実刑になるのを望む訳では有りません。

ただ患者になりうる部外者の私としては、不起訴で表沙汰にならずに済んでいくより、裁判で責任の所在を明らかにして欲しい。
ですから歯科医師会や監督官庁の責任も同時に問うよう、ひっくるめて起訴されたら良いと思いますが、無理でしょうか?

既にコメントが出ているかも知れませんが実際のところ法令上歯科医師にどの程度の救命処置が可能なのでしょう?厳密に言えばバギングも歯科領域ではないようにも思えますが…

内視鏡等の処置において鎮静を行う場合にはモニターはほぼ必須になりつつあるのが昨今の状況ではないかと思いますが、局麻の処置においてどこまでそれを行うかと言われるとはなはだ心許ない現状ではないかと思います。特に本症例のごとく肉眼的確認が困難である場合、元々発語等の行えない患者に対してどの程度確実にアナフィラキシー発症を認識できるものか。

既出かも知れませんが医療訴訟に関連して司法側から興味深い見解が示されておりますので参考までに。

http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2007/01/juge_1e70.html

>ただ患者になりうる部外者の私としては、不起訴で表沙汰にならずに済
>んでいくより、裁判で責任の所在を明らかにして欲しい。
>ですから歯科医師会や監督官庁の責任も同時に問うよう、ひっくるめて
>起訴されたら良いと思いますが、無理でしょうか?

MultiSync さん,
現在の医療裁判のように「医学的に正しいことをしていても裁判で負ける」情状では,医療側としてはとてもそんなことは言えないでしょう.
ここのブログには既にたくさん書き込まれていますが,裁判になるだけでも本来の仕事(医療業務)もできず,不必要な時間を浪費させられます.
たとえ裁判に勝ったとしても失うものはあれ,得られるものは何もありません.
医療裁判は「医学的な正しいさ,適切さを問う裁判ではない」のです.
真実が知りたければ,裁判ではなく医学的な検証を行なう必要があります.裁判では決して真実は明らかとならないことを認識しなければならないでしょう.

ここに書かれている内容は,この事故が歯科医師の手落ちであったのか,やむを得ない合併症であったのかを正しく判定できるだけのものではありませんので,断定的なことは言えません.ただもしも本当に重症のアナフィラキシーであったなら救命は必ずしも容易ではなかったと思います.
ひとつだけ気に掛かることは,アナフィラキシーが起こっていたとして何が原因であったかということです.「局所麻酔薬はしばしばアナフィラキシーの原因」と言われますが,現実にはほとんどありません.局所麻酔薬によるトラブルの大多数は局所麻酔薬中毒(血管内への流入)です.むしろラテックスや,クロルヘキシジンなどの消毒薬などの方が可能性は高いと思われます.いずれにしても想像の世界でしかありません.

>No.87 YUNYUN さん
そもそも、検察審査会は予見可能性を問題にしていたのかと言う疑問があります。つまり、アナフィラキシーショックを予見出来たかどうかではなく、気が付いたかどうかを問題にしているのではないかと思ったので、埼玉新聞の記事を紹介した次第です。

P R

ブログタイムズ

このエントリのコメント