エントリ

悪質119番許さない! 横浜市罰則化の動き(2006年11月25日 読売新聞)

 読売新聞紙上では、社説のあるページに「スキャナー」として大きく取り上げています。

タクシー代わり 具合悪いのはペット…

 救急車をタクシー代わりに使ったり、病気やけがが軽い症状でも119番通報したりするケースが増え、総務省消防庁は、緊急度に応じて救急搬送の順位づけをする「患者の選別(トリアージ)」の導入を検討している。

 ◆救急車出動 最多528万件…10年で1.6倍

 この10年で救急車の年間出動件数は190万件も増加。これに伴い、救急車の到着時間が年々遅くなる中、軽症者の搬送で重症者が救えなくなる恐れがあるとして、横浜市は、悪質な利用者に過料を科す条例作りに着手した。(横浜支局・田中誠之、地方部・梅沢清次)

 「救急車を呼ぶケースに当たらない119番通報には、過料徴収も検討すべき」。横浜市で、有識者や市民代表でつくる「横浜市救急業務委員会」が、こうした報告書をまとめたのは今月15日。

 人口約360万人と国内第2の大都市・横浜市では昨年、14万9000人が救急車で搬送されたが、うち58%は入院の必要がない「軽症」とされている。「『子供が熱を出した』という通報で駆け付けたが、具合が悪いのはペットだった」など、委員会の調査でも、あきれるばかりの利用実態が数々、浮かび上がった。

 同市保土ヶ谷区の消防指令センターで指令管制員を務める金子秀二消防士長(43)は、119番通報者から「救急車なら早く診てもらえるから」と言われた苦い経験を明かす。「軽症と思われる通報者に救急車を向かわせた直後、その近くで重症者の通報が入ることも少なくない」。金子さんは顔を曇らせる。

 こうした中、委員会は、罰則と並んで救急車の有料化も検討した。日本では、消防組織法によって救急車の救急出動費用は市町村が負担することになっている。有料化を導入している米ニューヨーク市を参考に、料金のシミュレーションも行ったが、一人暮らしの高齢者が増加していることを考えると、導入には慎重にならざるを得ない。

 さらに、何を「悪意」ととらえるかも難しい問題だ。最終的に軽症でも、通報時に重症とみてもやむを得ない場合もあるためだ。

 このため、横浜市は、「悪意のある利用者」を判定する第三者機関も設置する方針。罰則対象については、通報内容が虚偽だったり、症状を誇大に言ったりする「不適正で悪意のある通報者」を想定しており、今後、過料の額や徴収方法、市民への周知期間などを検討した上で、来年度中の条例案提出を目指す。

 また、この条例で、市が行う救急搬送とそれ以外の業務に分類することも検討。救急搬送はこれまで通り救急車で対応するが、緊急性を要さないケースでは、専門の相談窓口や医療機関、民間搬送事業者を紹介することにしている。

 横浜市の常陸(ひたち)哲生(てつお)救急課長は「条例の目的は過料を科すことではなく、必要のない出動を減らして、患者の救命率を向上させること。救急車本来の目的を市民に理解してもらいたい」と話している。

 ◆救命率向上が大前提

 横浜市では、市のごみ収集車が毎朝のように、救急車の適切な利用を呼びかけながら走り回っている。

 救急隊員から、非常識な通報を続ける“常連さん”の話を聞いたことがある。オオカミ少年のイソップ寓話(ぐうわ)が思い起こされるが、“常連さん”がタクシー代わりに呼んでいると察しても、救急車は出動しないわけにいかない。本当に一刻を争うケースかもしれないからだ。

 モラルや常識が通用しない人たちに、どう対応するか――。罰則の導入は有効かもしれない。だが、それは、救命率の向上につながることが大前提で、必要な緊急通報をためらうことがないよう、市民から十分な理解を得ることが欠かせない。(田中)

 トリアージ 語源はフランス語の「選別」。救命率を高めるため、重症者から順に治療や搬送をする方式。大勢の負傷者が出た災害や事故現場などでも行われる。国内では2005年4月のJR福知山線脱線事故で初めて大規模に実施された。

 別エントリで、罰則化は立法技術的に難しいと書きましたが、それは罰則を科すべき119番と科すべきでない119番の区別を明確にできるかどうか疑問という考えからでした。

 しかし、さすがに記事で例示されているような悪質事例というかあきれた事例については、罰則化も可能かなと思います。

 さまざまな問題点が指摘されています。
 このブログで既出と思われる問題点もありますが、改めて議論のたたき台になればと思い、新エントリを立てました。

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コメント(23)

別エントリーでも興味深く読ませていただいておりましたが、過料は良いアイデアと思いました。

搬送については、従来と同じ対応を行う。消防署が悪質119番と考えた場合は、その旨の報告を行う。

調査委員会(本当はBoardが、よいと思うのですが、これも別エントリーでの議論のごとく、取りあえずは良い日本語が浮かばないので)が、悪質119番に該当するかどうかの審査を行う。審査結果、悪質と判断された場合は、条例に従い過料を課す。

調査委員会は、例えば月1回とかで良い。委員には、消防、医療、自治体関係者以外に、市民にも参加を願う。(公募が良いのかな?)

目的は、悪質119番をなくし、救急搬送が機能して市民の安全を確保すること。有料化よりこちらが、良いと私は思うのです。

救急隊に通報する以前に、できればかかりつけ医に電話連絡して相談して指示を仰ぐ、というのはひとつの理想かなとも思います。
勿論、夜間で普段の外来主治医が不在の事もありますし、また、誰もが持病を抱えてかかりつけ医があるわけでもないのですが。
不安神経症がメインで、私の病院にしょっちゅう電話してきては不定愁訴を訴え、「今から救急車で受診しても良いか?」と希望していた患者さんがいましたが、電話対応によってある程度抑止できたこともありました。
救急隊は、現場に到着してしまえば余程のことがなければ搬送先の病院を見つけて、そこに患者を送りつけざるを得ません。それが時として大変な労力と時間を要するわけです。
その前段階で、病院側が状況を把握し適切な指示(あなた位の病状なら自力で受診すべきですよ、など)を出すというシステムを、もっと一般に浸透させる努力をすべきと考えます。

悪質か・・・というのは判断が難しく、医療関係者の意見を入れて慎重に議論することが必要です。
私、2年ほど前、課長として単身赴任をしていました。そのとき、半身(右脳・左半身)が朝起きようとしても痙攣しており体が動かせない。右腕だけは動くので119を携帯電話で掛け、ろれつの回らない口で、住所を伝えますと、携帯電話の受信所の関係で、隣町の救急車が来た(笑)。結果的に、沈静剤投与で夕刻まで病院にいて引き取ってもらいました。これが2回ありました。症状としてはそこまで深刻ではないようです。
ただ、他にも症状を生じた経緯もあって、結果自宅近くに事務所を構え自営に転じました。ここはすぐのところに救急病院があります。
さてこの場合、救急搬送の必要・不要は判断に苦しむところですよね。現象的には立てない状態。病理的には軽微。判断に錯誤が見られる可能性も否定できないです。尤も高松の事例は極端ですが。

>酔うぞさん

そりゃきっとTIA (一過性脳虚血発作)で準緊急事態でしたよ。今からでも検査受けたほうがよいと思います。

大変失礼しました。酔うぞさんではなくデホバ1000さんでした。HNがHNなものですから大変な勘違いをしてしまいました。(^^;

うちの近所も救急車のサイレン音がよく鳴っています。悪質な呼び出しがあるんですね。
私は普通救命・上級救命の終了証を保持しています。きっかけは、2度も事故にあった経験があったからです。今は教習所でも教えているようですが。救急車が現場に到着するまでに5〜6分かかります。その間に出来ることはあるのです。心肺蘇生などです。それをするかしないかで病人の容態が変わるのです。応急処置として心肺蘇生を試みて、容態が酷くなければ、車やタクシーで病人を運ぶことが可能かと思えます。普通救命を知っているだけで、家族でも他人でも、助けることが出来るのです。うちの方では消防が無料で救急救命を教えてくれ、終われば終了証がもらえます。どれくらいの人が自分で出来る救急救命を知っているんでしょう?今は救命の講習でAED(軽い電気ショック)の使い方まで教えています。まず、119番へ電話する前に救命措置くらいが出来るといいんですけどね。掛かりつけ医・病院へ連絡して容態を話して判断を仰ぐのも良いかと思います。救急車を有料化にして、どうなのか?判りません。(医療関係は難しいですね。判らないなりの個人的意見)

場末の開業医さん

>HNがHNなものですから大変な勘違いをしてしまいました。(^^;

また、豪快な勘違いで(^_^)

本名が「洋三」なんですよ。 youzou ですね。
最後の u を落として変換したら youzo 酔うぞ になったわけです。

いや〜、あっちこっちで勘違いで覚えていただいてます。(^_^)

酔うぞ拝

>酔うぞさん

かくして患者取り違え事故が起こるのでした。(^^;

私は田舎にいるので、悪質な救急車の利用者はそれほど多くありませんが、やはり、自家用車かタクシーで来るべき、と思う患者さんは散見されます。

罰則化にしろ、有料化にしろ、緊急性の乏しい方の利用を控えていただいて、より緊急を要する人が使えるようにということが目的であることは、皆さん理解されていると思います。

このエントリーで取り上げられているような、ペットの発熱などは、罰則対象にしても皆さん納得されると思いますが、さすがに都会でも、このような明らかなケースは少ないと思いますが、都会の先生方、どうでしょうか?

今の救急の搬送件数急上昇の問題は、明らかに悪質なケースよりも、「これでなぜ救急車?」というケースが多くなっていることにあると思っています。

例1 30歳の男性、39度の発熱で、母が救急車を呼んで連れて来た。確かに見た目はつらそう(インフルエンザでした)
例2 深夜2時に乳児が38.5度の発熱、初めての発熱で両親があわてて救急車を呼んだ
本人は元気(突発性発疹でした)
例3 交通事故の現場から、かすり傷の人が、救急車で連れられてきた。(本人が救急車を呼んだわけではない)

上記のような例は、今回の罰則には当てはまらないと思いますが、このようなケースを減らすことが、重要ではないかと考えます。もちろん上記のような患者さんの中にも、重症のケースは含まれているとは思います。(No.4 デハボ1000 さんのケースは、器質的疾患の可能性があるので、救急搬送されるべきと思います)

上記のような、グレーゾーンの急病者が、自力での来院を選択するか、救急搬送を依頼するかが、救急をパンクさせないようにするためのポイントと思います。

横浜市の試みが、成功するかは興味深いです。殆どの人は自分(家族)は重病だと思って救急搬送を要請するのですから、悪質な例のみを罰しても、グレーゾーンの患者さんの要請は減らないと思いますし、グレーゾーンに近い患者さんから罰金を取ると、本人が納得しないと思います。有料化が救急搬送を減らす圧力になるとは思いますが、本当に悪質な人は、有料になっても踏み倒すと思いますので、善良な貧しい人が結局損をすることになりかねません。

どちらの方法が有用なのかは、今回のように、切迫した自治体から社会実験をするほか無いのかなと思います。

No7:PINGUさん

二度も事故にあわれるとは大変でしたね
心肺蘇生を必要とした方はどんなに状態が軽そうに見えても救急車で来てくださって結構です。というか、そうしてください。
皆さんがPINGUさんのように応急処置を心得ていただければ、多くの方の命が救われるんですけどね。

>PINGU様

>救急車が現場に到着するまでに5〜6分かかります。その間に出来ることはあるのです。心肺蘇生などです。それをするかしないかで病人の容態が変わるのです。

 全くご指摘の通りです。救急医学の領域ではbystander CPR(側にいた人による心肺蘇生)といいますが、これがあるのと無いのでは、患者の予後が統計上全く異なることが証明されています。最近は某中学校でCPRの訓練を行ったという報告が今年の臨床救急医学会で発表されていましたし、心臓発作の既往がある人を集めて、心肺蘇生法を講習すると効果が高いという話もありました。ただ、残念なことにこれらの講習はリピーターばかり集まることが多く、現状ではまだまだ普及していないと言うことです。

 なお、昨年ガイドラインの変更があったため、ぼちぼち新しい方法の講習が始まっています。一般の方向けの講習はまだまだですが、1〜2年後にはもう一度講習を受けられると良いかと思います。CPRの方法に内容変更がけっこうありますので。

No.6 場末の開業医さんのコメント について

ご配慮いただきありがとうございます MRIを1月にうけた結果、完全に神経の異常伝達だということが分かりまして、薬を飲み続けており、8月の検査でもOKだったことを申し添えます。

>デハボ1000さん

なるほどそれで鎮静剤と称するものをもらったのですね。納得。ともかく老婆心のようでした。大事でなくてよかったです。

それにしても内科の病気は症状のみでは重傷度の判定はほぼ不可能です。激烈な腹痛が尿管結石の発作やただの便秘だったり、(ただしこれらがまったく安全というわけではありません。)胸が痛いといってニコニコと歩いてきたおじさんが不安定狭心症で、直ちに救急搬送、緊急バイパス手術になったり、痙攣が過喚起発作だったり、咳が気胸だったり、ちょっとしためまいが小脳梗塞だったりとまあいろいろありました。(^^;

多くの自治体は,HPで救急医療情報センターの電話番号を示し,受診可能な医療機関の案内をしているようです。うちもお世話になったことが何度かあります。
しかし,119番はあまりにも有名であり,夜間や休日の急病等の場合も119してしまうのでしょう。HPだけでなく,TV広告でも広報する等,もっと知らしめる工夫が必要でしょう。


休日・夜間に急病のときは、まず、かかりつけ医へ連絡してください。
医師が不在などで連絡がとれないときは、以下の急病診療制度をご利用ください。
なお、急病診療は応急的なものですので、翌日かかりつけの医師の診療を必ず受けるようにしてください。

後半の↑段落が変わっているところ(休日・夜間に…以降)は,某市の事例です。

>休日・夜間に急病のときは、まず、かかりつけ医へ連絡してください。
休日・夜間に連絡の取れる医者というのに、出会ったことが無いです。
過去13年、首都圏内で8回引っ越し、小児科以外はたいていお世話になっていますが、それでも1回もありません。
昔と違って、自宅開業していない医師が大半で、時間外は相談も出来ず、夜間医療は空白という状態で、私が運べない重さの夫が、起きあがれないほどの腹痛に襲われた、などという場合、救急車を呼ぶ以外方法がありません。
例え、それが「入院するほどの事態」じゃなくてもです。

重症者を運べなくなる事態を防ぐには「売れない経営コンサルタント さん」の意見が一番よろしいような気がします。
常連からは、ガッポリいただいて、新しい救急設備を整えるのに回しましょう。

>No.10
>例3 交通事故の現場から、かすり傷の人が、救急車で連れられてきた。

かすり傷であっても異常が疑われたら救急搬送すべき症例です。
交通事故の現場で判断してはならない。

突発性発疹は「おばあちゃんの智恵」が必要ですが
最近の祖父母は父母以上にクレーマー予備軍ですので…

HAL.T さん

私の住んでいる自治体の事例だと,以下のような順番です。かかりつけ医に連絡が取れない場合,救急車を呼ぶ前に医療機関の案内や初期救急医療機関を利用する等が可能です。現に,うちでも初期救急医療機関を利用したことがあります。
他の自治体(五つ六つほど,HPをあたってみました)でも大差無いと思いますが,HAL.T さんのお住まいの/お住まいになった自治体では,そのような行政サービスはやっていないのでしょうか?

1. まず、かかりつけ医へ連絡
2. 医師が不在などで連絡がとれないときはxxxx救急医療情報センターへ電話
(診療可能な医療機関の電話による案内がある)
3. xxxx急病診療所(初期救急医療機関)へ電話してから,必要に応じて自分で行く
4. 救急車を呼ぶ,または上記機関に呼んでもらう

なお,実際には,「かかりつけ医へ連絡」の段階で,電話帳やネット検索等により診療可能な近所の医療機関を探すこともありました。

昔の話であれば,
・家庭医(開業医)の往診(経験あり)
・自身や家族では移動できない場合,親戚や友人,近所の人に手伝いを乞う
という手段もありました。
今は無理なのかもしれません。また,救急車を呼ぶ必要がある場合もあるでしょうが,呼ぶ前にできることも多いのではないでしょうか。

私の居住地では医師会の運営する時間外診療上があって、そこで午後11時までは診療可能です。開業医は時間外はほとんど見てくれないようです。私はアルコール飲んで寝てしまいますから診療禁止状態です。
結局、在宅支援診療所に24時間往診義務を課したように、診療報酬上夜間診療義務を課した何とか診療所をあらたに創設するしかないと思うのですが、結局これもお金の問題ですね。

タクシー代わりに使うというのであればタクシーと同じ料金をとるという方向には
考えないのでしょうか?それでもいい気がします。

5月の毎日新聞に下記の記事がありました。
トリア−ジの方法にもよるのでしょうが、ちょっと心配でもあります。
とはいえ、やたらに呼ばれても税の無駄。
私も、タクシー代+特定医療費程度の利用料は取って(只、後日払い)よろしいと思いますが・・。

<救急医療>救急隊、重症の35%過小評価 患者1万人調査
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060512-00000008-mai-soci
 救急車で病院に運ばれて医師が重症と診断した患者の35%は、救急隊が病状を中
等症や軽症などと過小評価していたことが、東京消防庁の調査で分かった。特に、け
が以外の内因性の病気では、過小評価は42%に達した。(以下略)

>No.21 ないかいいさん

タクシー代わりを追認するだけではないでしょうか?
タクシー代わりは困るんですから、それはまずいかと。

P R

ブログタイムズ