表向きのテーマである「医師不足」について

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 「デマの効果」のエントリ本文におけるテーマは一応「医師不足」のようですので、まずそれについてコメントします。

 特定の診療科目における医師不足の原因を警察・検察のせいにしようという声は大きいものの,

 大きいかどうかは別にしてそういう声はたしかにあります。
 私は、ときどき切れそうになりながらたしなめてますけど(^^)
 例えば、最近では「再び医療側のみなさまへ」などですね。

 医師の数が足りていない特定の診療科目において刑事訴追される割合が顕著に高いことを示す資料は今のところないようです。

 2ちゃん経由
 産婦人科医が減少する本当の理由 福島から(産科医療のこれから)
 「着実に増加している医療訴訟、高い産科の訴訟」あたりをどうぞ。
 以上は民事訴訟の資料のようですが、刑事訴追はもともと件数が少ないので、統計的根拠としての意味を求めても仕方がないと思います。
 大野病院事件は、悪い意味での一罰百戒(一罰百壊が正しいという意見もある)効果が顕著に生じた事例と見るべきでしょう。

 また,医師不足が比較的早い段階で顕在化していた小児科についていえば,むしろ医療過誤にもとづく損害賠償請求に晒される割合は,外科どころか,内科よりも低く,そういう意味では訴訟リスクが低いのに,不足状態から抜け出せないでいるとすらいうことができます。

 読者としては、このような認識の根拠となる統計資料を読みたいと思うのではないでしょうか。

 さらにいえば,民事的な訴訟リスクは概ね賠責保険の保険料率を見るとわかるのですが,日本の医師賠償責任保険の保険料は著しく低額であり,医師の民事訴訟リスクの小ささをかいま見ることができます。

 医師が感じている「訴訟リスク」の実態が理解されているのかどうか疑問です。
 この点について興味がある方は、本館ブログの過去ログをどうぞ。

 本当のところは,医師の診療科目間の偏在の主たる要因は,診療科目により,仕事の厳しさと収入等の相関で決まる「待遇」に差があることです。

 医師ではない小倉秀夫弁護士が、どうして「本当のところは,」と断言できるのか疑問です。
 

 従って,この解決策は, (中略) 薬剤師のみで処方できるように思われます。)。

 この解決策がどの程度有効か、についてはよくわかりません。
 ある程度の効果はあるかも知れません。
 しかし、経済的見返りつまり収入を少々改善したからといって、問題が解決するとは思えません。
 私の認識する範囲では、勤務医からも「給料が少ないから嫌になった。」という声はほとんど聞かれません。

 小倉弁護士の医師というものに対する認識はかなり偏っているのではないかと思われる節があります。
 bewaad.com の「医療過誤関連問題の個人的一区切り」に小倉弁護士は以下のようなコメントを投稿しています。


OguraHideo 2008/08/23 15:46

 医師は何も責任を負わないと言うことになると、ミスを回避する工夫も不要になりますね。

 このコメントはけっこうものすごいコメントだと思います。
 医師が完全免責されると、医療ミスを減らす努力はいらない、という主張です。
 このような主張の前提としてどのような認識があるか考えてみますと
 小倉弁護士は、

 「免責されていない現状において、医師は、自分の責任を回避するためだけの目的で、ミスを回避しようとしている。」

 と考えているように読めます。
 つまり、小倉弁護士によると、医師は自分のことだけ考えて患者のことなんか考えてない、ということになります。

 この bewaad.com のコメントと、「デマの効果」で示された認識とはよく符合します。

 つまり、小倉弁護士が認識している医師像というのは、仕事が楽で報酬がたくさんもらえれば満足する、という自己中心的医師像ということになります。

 しかし、私はそのような認識は間違いだと思います。
 間違った認識に基づいて医師不足を論じても、間違った主張かピントはずれの主張にしかならないと思います。

 また,医師の絶対数が不足しているという点については,仮にそうだとしても,医師過剰による競争の激化を恐れた医師会の要請に応じて医学部の定員を削減したことが伸び率鈍化の主たる要因です。民事又は刑事の訴訟リスクを恐れて,医学部の卒業生の多くが医師以外の職業に就いたり,一旦は医師としてのキャリアを開始した者が医師をやめて他の職業に就いたりしたために医師の絶対数が不足したと見るに足りる統計資料はありません。

 医療側の主張には統計資料を求めるが、自分の主張には不要ということでしょうか?

 ちなみに、こういう分析があります。 ↓
  「なぜ医師不足が生じたのか?」(pdf)
 この論考は、本館ブログの最近のエントリ「医師不足に関する経済学者の見解」で紹介したものですから、小倉弁護士も当然ご存知と思うのですが、完全無視のようです。

(続く)

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コメント(6)

医師過剰による競争の激化を恐れた医師会の要請に応じて医学部の定員を削減したことが伸び率鈍化の主たる要因です。

弁護士間の競争激化を恐れて弁護士会が法曹人口を増やすのに反対したというのは聞いたことがありますが、医師会がそんな要請をした記憶はないんですがねぇ。
医療費が増えるのは医者が増えて需要を喚起するからだ、と健保側が主張していたのは遠い過去に見たことがあるんですが。

小倉先生には、bewaad氏のとこで「吉村仁」氏を知っているのかと質問しましたが、黙殺されました。

彼の内的世界では、医師会の陰謀で医師不足になったということになっているようです。

 小倉秀夫弁護士は、常に黙殺します。
 ある意味で賢明な対応でしょう。

もしかしたら小倉秀夫弁護士は
http://www.courts.go.jp/about/siryo/jinsoku/hokoku/02/pdf/038_072.pdf
これの12ページ目を見て言ってるのかな?
もしそうだとすれば注釈すら読めないアホと言うことになりますが、まさかまさか・・・。

旧過失論のお話にお返事をいただける見込みもなさそうですね。
残念です。

いいえ、ありえます。
あの方はfigureについてしか言及しない事が多いので。
読んでない、読んでも理解していない、もしくは読んで脳内でストーリーを作り上げる・・・。

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