la_causette の「産科・産婦人科医の減少と出生数自体の減少」の本論についてです。
議論の経過を簡単に振り返ると
今回のエントリに直結するものと言えば、「デマの効果」になると思います。
そこで小倉弁護士はこう述べています。
また,医師不足が比較的早い段階で顕在化していた小児科についていえば,むしろ医療過誤にもとづく損害賠償請求に晒される割合は,外科どころか,内科よりも低く,そういう意味では訴訟リスクが低いのに,不足状態から抜け出せないでいるとすらいうことができます。
つまり、(現在でも)小児科の医師不足が存在するという認識が示されていると読めます。
ところが、Matimulog の「やはり産婦人科医の訴訟リスクは高いのか」のコメント欄において、小児科医は増えている。産婦人科医は減っているという指摘を何度も受けた結果、ようやくその事実を認めざるを得なかったようです。
減っているか増えているかの確認くらいしてから意見を述べればいいのにと思いますがそれはさておき
「産科・産婦人科医の減少と出生数自体の減少」では、統計資料に基づき(リンクは貼っていませんが)
確かに小児科は近年は微増し,産科・産婦人科は減少しています。
と述べるに至りました。
その文に続く
ただし,平成10年から18年にかけての減少率は約8.9%であり,内科医の約3.1%よりは大きいものの,外科医の約13.2%ほどではありません。
は、単なる負け惜しみと見てスルーします。
続いて小倉弁護士は、産婦人科医の減少に言及し
また,産科・産婦人科の場合,その主たる仕事の対象である「出生」の数自体が減少していることは軽視できません。実際,平成10年から平成18年にかけて出生数は約9.2%減少しており,現在のところ,産科・産婦人科の医師数の減少率は出生数の減少率に概ね沿っているということが可能ではないかとも思われます。
と述べます。
統計学については疎いので、統計的観点における分析・解析等はできませんが、常識的に考えて、人間は、出生を基点として、小児、少年、青年、成人、中年、老人という経年変化を辿るものでありまして、同世代の人口は決して増えず、確実に減少していくことを考えますと(海外からの移住者の影響はほとんどないものと見ています)、
産科の対象となる「出生」の数が減少すれば、その数年後には小児科の対象たる「小児」の数も減少するのではないかと思われます。
そうすると、医師の増減が対象の増減に影響されるという観点で見れば、産科医と小児科医は、数年のタイムラグはあるかも知れませんが、同様の増減傾向があるはずです。
しかし、そうはなっていないようです。
とすると、出生数の減少が産科医の減少の主たる要因と見ることは困難なのではないかと思われます。
少なくとも、小倉弁護士のエントリは産科と小児科の増減の根拠を十分示していないと言えます。
この項、不得意分野ですので、訂正・補足コメントを歓迎します。
実名・匿名を問いません。
ああ、一足違いで、エントリにしてしまいました。
http://ssd.dyndns.info/Diary/?p=2147
少子ッか
そんなグローバルな数字を出して産科医が減ってないなんていったって無意味でしょうね。問題は産科の実働医がどれだけいるかでしょう。つい最近まで医師数は足りていると言い張ったどこかの官庁よりお粗末ですね。
事実は雄弁に物語りますよ。とりあえずこれでもご覧ください。
http://jbbs.livedoor.jp/study/8599/#4
>産科・産婦人科医の減少と出生数自体の減少
出生率と産科医と小児科医の減少が相関関係にあるなら、参加医も小児科医も、出生率の減少率と連動して産科医も小児科医も減少率が相関するはずです。統計の相関関係の初歩の基本です。
ところで小児科医はわずかながら増加率を示していますよね(爆笑)。
小児科医は増加し続けていますが、不足は益々深刻化しています。
そういう意味で、エントリの「医師不足が比較的早い段階で顕在化していた小児科」には反証は存在しないと考えます。
小児科は需要が無限の増大をしていますからねえ。
ところで、彼は、自ブログで、産科小児科の不足の本態は、待遇・勤務条件の悪さだとも主張しています。
こちらに対しては、さほど反対意見は出ないと思いますが、なぜに不得手な統計学を使って「デマ」を作ろうとしているのでしょうか。
人間とは矛盾した存在と言いますが、その意味では、彼は実に人間的です。←三段論法の詭弁
小倉先生さー、私の地域は産科医一人当たりの出生数が全国で一番多くてさー、緊急医師対策を各県が要求した時に、当県だけはあまりに不足数が多すぎて、まったく要求できなかったちゅう県なんだけどさー、特にうちの市はさー、産科医の半数が70歳超えてるんじゃ!冗談抜きに数年後には大崩壊するのが間違いないんじゃー!そんな地域に経済原則が成り立つなら、一山当てようちゅう産科医がやってくるちゅうもんだろううがー。
(まじめに)
今年の夏にやってきた、夏季研修の医学生に話をしたが、友人の父親が産科医で産科医になって以来県外に出たことがないと聞いて産科医だけにはなりたくないと思っているといっていた。それは正しいと、そこにいた外科医と小児科医が同意し、それぞれの科のほうがまだましだからと、勧誘した。(どちらも絶滅危惧種)
絶滅危惧種同士が足を引っ張り合ってる現状で、産科医が増える見込みなどありえない。そして、産科医の平均年齢が50歳に近い日本の現状として、このままでは自動的な大崩壊が時とともに屋ってくくるのは避けられない。
小倉弁護士に知ってほしい。外科系の医師は一人前になるまで時間が必要だ、卒業後3-4年で一人前になれるわけではない。現状の新人数では、必ず来る大引退時代に対応できない。今主力の産科医の一部は産科医大量入局時代の生き残りにしか過ぎず、現状では新人産科医の数はその補充になりえない。(やめないとしても)
補足
当(地区)の人口は40万人です(どこだかわかってしまいますが)
決して、崩壊を簡単に吸収できる規模の地域ではありません。
予測が外れるのが悪いわけでない。
予測が外れても、頑として外れてないと言い張ったやつが悪い。
従前は医療者の側から「小児科医師不足」が叫ばれていたわけですから、それに乗っかってエントリを書いた小倉先生が医療者の方から批判を浴びるのは気の毒ですね。
2005年の記事ですが、「小児医療クライシス」「小児科に医師が来ない偏在」を訴える下記のような記事もあります。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/special/67/index2.html
「小児科の長期的な医師不足に対して、訴訟リスクが何らの影響も与えていない」とすれば、それは診療科間の医師偏在について、訴訟リスク以外の大きな要因が存在することの例証にはなるでしょう。
以下は素人的な考えですが、仮に医療に対する訴訟リスクがゼロになった場合、産科崩壊にストップがかかるかというと、全くかからないと思います。
No.6でも さんのコメントを一読しただけでも了解されることです。
産科崩壊にストップをかけるためには、奈良の産科の先生の超過勤務手当請求事件の方こそが注目されるところだと思うのですが、訴訟の進行はどうなってるのでしょうか・・・
なお、上記は、小倉弁護士の当該エントリに混入されている余計かつ嫌みな一言を弁護するものではありません。
>それは正しいと、そこにいた外科医と小児科医が同意し、それぞれの科のほうがまだましだからと、勧誘した。(どちらも絶滅危惧種)
ビール吹き出しそうになったww
でも、私は外科医だけど(とっくに地獄からは逃げ出した)
外科なんか来るな、と若い人に言ってます
やめとけ、望んで地獄に落ちることは無いって
冗談抜きで、産科・小児科・救急だけでなく、外科もハイリスクです
まぁ、真面目に医者やってること自体がハイリスクなのかもですね
ここまでモチベーションが落ちたのは3-4年前からですね
その理由、分かる人には分かると思いますけどね
分からない人も多いみたいですなぁw
「新小児科医のつぶやき」ブログの「2007-9-21 数字で見る産科危機」で、全国周産期医療データベースに関する実態調査の結果報告(日本産婦人科学会平成18年6月報告)にある分娩取り扱い施設数及び常勤医師数のデータが紹介されています。「2007-9-24 産科休止率一覧表」では、都道府県別の色分け地図が作成されており、その後も度々引用されています。
参考として、一般に産科医一人当たりの分娩数が150を越えると負担が厳しいとされるそうです。そうすると、26都道府県で150を超えており、数字上余力がありそうな地域はほとんどないことが示唆されます。
印象に過ぎませんが、もし少子化が産科医減少の主たる原因であるならば、産科医一人当たりの分娩数はこれほど多くならないような気がします。
年間1人当たり150人の分娩はきついと思います。だいぶ前ですが、統計をとったとき、2日に1回は分娩立会だと夜勤(宿直)がない勤務医でも、年間150人の分娩くらいになり、その150人あたりから、産科医の急な病欠や退職(転職・開業医へ転身)が増えるというデータが出ました。
今と違って、小さな町でも産婦人科の個人病院が見られたころですら、こういう統計でした。
>KTさん
>従前は医療者の側から「小児科医師不足」が叫ばれていたわけですから、それに乗っかってエントリを書いた小倉先生が医療者の方から批判を浴びるのは気の毒ですね。
大前提が共有できていないようですが、医者は全体として不足しているという前提があると思います。
小児科医が増加していることと小児科医が不足していることは、同時に成り立つことです。
小倉さんのエントリーの最大の問題は、訴訟が医師に増減に寄与しているかどうかの問題を、不足しているかどうかに置き換えてしまったことが最大の問題だと思います。
医師が全体として不足しているということはあるのかも知れませんが、それはそれとして、「診療科間における偏在の問題」が存在することは否定できないと思います。
私の理解としては、No.9で引用した記事に記載のように「医師数(殊に勤務医数)は着実に増えているにも拘わらず、小児科はほとんど増えておらず、産科に至っては減っている。」という「診療科間の偏在の問題」が存在し、そのために産科や小児科が崩壊の危機にあるらしい・・・ということになっています。
産科と小児科では、訴訟リスクの点では大幅な開きがあるわけですが、一方で「当直の多い苛酷な労働環境である。」というところが共通しています。
従って、「偏在の真の原因」は訴訟リスクではなく労働環境にあるという仮説が成り立つことになります。
実際の所、医師の皆さんに「訴訟リスクが無ければ産科・小児科にどんどん新人が入って来ると思われますか?」と質問をすれば、全ての方が「否!」と回答されることでしょう。
なお、少子化の問題は全然関係ないと思いますw